英国・欧州

フィンランド就労許可:料理人の労働市場テスト

ヘルシンキの飲食店が料理人採用でフルの労働市場テストを受ける理由、MaRa労働協約による調理担当・料理長の給与水準、認定事業主制度、求人票とオファーレターのひな形、総費用とスケジュールを解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

料理人はウーシマー地方の「労働力が不足している職種」リストに載っていないため、ヘルシンキの飲食店が日本から料理人を呼ぶ場合、Job Market Finlandへの2週間の求人掲載と採用活動報告書という労働市場テストを一通り経る必要があります。給与は月1,600ユーロ以上が許可条件ですが、実際の提示額はMaRa労働協約に基づき、ライセンスのある飲食店の調理担当で月2,179〜2,392ユーロ、料理長(keittiömestari)で月2,624〜2,855ユーロを目安にしてください。あらかじめMigri(移民局)の「認定事業主」になっておくことが、その後の手続き全体を早める唯一の方法です。

このページは、フィンランドで料理人のスポンサーをすべきか、労働市場テストの根拠をどう作るか、給与をどう決めるかを検討しているオーナーや日本の本部向けです。日本人料理人の多くは大学の学位を持たないため、EUブルーカードはごく一部の国を除いて対象外ですが、フィンランドはその数少ない例外で、学位の代わりに5年の実務経験を認めています。詳しくはEUブルーカードガイドにまとめており、このページでは繰り返しません。短期の人材については欧州ワーキングホリデーガイドをご覧ください。

目次

  1. 労働市場テストが全てを決める理由
  2. いくら払うか:許可の下限と労働協約
  3. 認定事業主:早めにやっておく価値のあること
  4. 求人票とオファーレターのひな形
  5. 総費用と逆算スケジュール
  6. 新規許可なしで雇う方法

1. 労働市場テストが全てを決める理由

フィンランドの飲食店が日本人料理人を雇う場合、料理人は就労者向け在留許可(TTOL)を申請します。最初の許可は必ず労働市場テストを経て、Migriは地域の労働許可方針、Job Market Finlandへの求人掲載、採用活動報告書、労働力バロメーターの4つを見て判断します。

ウーシマー経済開発センターの2026年6月1日から12月1日までの地域方針では、労働力が不足している職種として挙げられているのは医師・看護師・准看護師などの医療職のみです。飲食・調理関連の職種は載っておらず、同じ文書によると2026年4月時点でウーシマー地方の失業者は約115,000人、サービス・販売職の失業が特に増えています。つまりヘルシンキの飲食店は毎回フルの労働市場テストを受けることになります。Job Market Finlandへ2週間求人を掲載し、応募者が合わなかった理由を採用活動報告書にまとめてください。

これだけサービス業の失業者が多い市場では、単なる「調理担当」の求人は正当化しにくいものです。プロ水準で寿司や日本料理を仕込め、日本人の料理長と日本語でやり取りでき、日本で定められた技法・基準に従って作業できる人材が必要だと求人票にはっきり書いた案件の方が見込みがありますが、それでもMigriは案件ごとに審査するため保証はありません。方針は6月と12月の年2回改定されるので、着手前に最新版を確認してください。

2. いくら払うか:許可の下限と労働協約

許可の条件は、許可期間全体を通じて月額総支給額1,600ユーロ以上(2026年)で、更新時に遡って平均額を確認されます。これはMigriの許可条件であって相場ではなく、自社に適用される労働協約の水準も満たす必要があります。

フィンランドの多くの飲食店は、PAM(サービス業労働組合)とMatkailu- ja Ravintolapalvelut MaRa ry(観光・飲食・レジャーサービス業協会)の間のMaRa労働協約に従います。2026年6月1日発効の賃金表では、ライセンスのある飲食店の調理担当(賃金グループ4)と、別建ての管理職向け協約における料理長(keittiömestari、賃金グループ5)は次のとおりです。

職種0〜2年5年超10年超
調理担当(ライセンスのある飲食店、賃金グループ4)月2,179ユーロ月2,307ユーロ月2,392ユーロ
料理長/keittiömestari(賃金グループ5、管理職向け協約)月2,624ユーロ月2,776ユーロ月2,855ユーロ

これらは労働協約上の最低額であって上限ではありません。労働市場テストを通過できるような専門性の高い日本料理のポジションこそ、この表を上回る額を提示すべきです。夕方・夜間の割増分は1,600ユーロの許可条件の計算には含めませんが、協約上は支払い義務があります。また1,600ユーロのうち最大半分までは、社宅など現物給付を課税評価額で算入できます。

3. 認定事業主:早めにやっておく価値のあること

Migriは、EU・EEA域外から定期的に人材を採用する企業向けに、任意の「認定事業主」制度を運営しています。認定は最初2年、更新後は3年ごとで、手続きが自社に有利に変わります。認定事業主は雇用条件をEnter Finland for Employersで代理入力でき、料理人本人が単独でその項目を入力する必要がなくなります。さらに認定事業主に雇われる場合、在留許可申請と同時にDビザを申請でき、通常より1〜2週間早くフィンランドへ渡航できます。

この制度は企業内転勤、季節労働、研究職、インターンには適用されませんが、通常の飲食店の採用はまさに対象そのものです。必要になってから申請するのではなく、Enter Finland for Employersであらかじめ申請しておきましょう。費用はかからず、Migriの処理スケジュールに対して雇用主が持てる数少ない有効な手段のひとつです。

4. 求人票とオファーレターのひな形

Job Market Finlandの求人票と在留許可申請書は、同じ要件を記載する必要があります。以下を自社の店舗に合わせて調整してください。

求人票(Job Market Finland)
Cook, Japanese cuisine – [店舗名], Helsinki
We need a cook with professional-level skill in Japanese cuisine: sushi preparation, knife technique for raw fish, and the ability to work directly under a Japanese head chef in Japanese, following recipes and standards set in Japan. [X] years of documented experience in a Japanese restaurant kitchen is required. Full time, [hours] hours a week, gross salary EUR [amount], collective agreement (MaRa) applies. Start date: [date].

オファーレター(英語)
[Company name] offers [Full name] the position of [Cook / Head Chef], Japanese cuisine, at [restaurant name], Helsinki. Duties: [sushi preparation, menu items, training]. Employment begins [date], gross monthly salary EUR [amount], under the MaRa collective agreement. We will complete the employer's terms of employment in Enter Finland and support your residence permit application.

日本語
[会社名]は、[氏名]様に、ヘルシンキの[店舗名]における日本料理[調理担当/料理長]としての勤務をお願いいたします。業務内容は[寿司の仕込み、献立、後進の指導]です。勤務開始日は[年月日]、月額総支給額はユーロ[金額]とし、MaRa労働協約に準じます。当社はEnter Finlandでの雇用条件の入力を行い、在留許可申請を支援します。

5. 総費用と逆算スケジュール

項目初年度(経験中位の調理担当)
給与 月2,240ユーロ×12(賃金グループ4、2年超)26,880ユーロ
Migri 初回許可手数料(オンライン)750ユーロ
Job Market Finlandへの掲載無料
認定事業主の取得(未取得の場合、任意・一度きり)手数料なし、手間のみ
航空券、当初の住居費用、翻訳費用各社の見積もり
開始日までの時期やること
14週間前ウーシマーの方針に変更がないか確認し、求人票を専門職として書き、未取得なら認定事業主を申請する。
12週間前Job Market Finlandに掲載し、2週間維持する。
10週間前掲載を締め切り、採用活動報告書を作成し、料理人との条件を合意する。
8週間前料理人がEnter Finlandで申請し、同じ週に雇用条件を入力する。
申請から結果までMigriによると2026年7月の平均処理日数は許可の場合17日、不許可の場合64日。17日は楽観的な数字と考え、余裕を持たせてください。
許可後料理人はフィンランドの在外公館で本人確認を行う(認定事業主の場合は同時発給のDビザで渡航)。許可が下りるまでは働けません。

6. 新規許可なしで雇う方法

日本の外務省によると、2025年10月1日時点でフィンランドの在留邦人は2,545人、うち1,484人が永住者です。この中には許可手続きなしで働ける人もいます。日本とフィンランドは2023年からワーキングホリデー制度を開始しており、公表されている人数上限はありません。詳しくは欧州ワーキングホリデーガイドをご覧ください。ウーシマーの労働市場テストの状況を踏まえると、多くのヘルシンキの飲食店にとって現実的な計画は、すでに就労資格のある人材を中心に厨房を組み、日本人料理長のもとで育成し、スポンサー付き採用はテストを本当に通過できる専門職に絞ることです。

変わる数字:ウーシマーの地域方針は6月と12月の年2回改定されます。上記のMaRaおよび管理職向け協約の賃金表は2026年6月1日発効分で、独自の交渉サイクルで改定されます。月1,600ユーロの収入要件とMigriの手数料は2026年の水準です。次回確認は2026年12月、新しいウーシマー方針の公表時です。

よくある質問

ヘルシンキの飲食店は調理担当の労働市場テストを省略できますか。

現行の地域方針では省略できません。ウーシマーでは料理人は労働力不足職種に載っておらず、Job Market Finlandへの2週間の掲載と採用活動報告書というフルのテストが適用されます。求人票に明記した上で、現地の応募者にはない技能が本当に必要な職務でなければ、現実的な見込みは立ちません。

フィンランドの就労者向け在留許可の最低給与はいくらですか。

2026年時点で月額総支給額1,600ユーロ以上で、許可期間全体の平均で判定されます。これは許可条件であって相場ではありません。多くの飲食店はMaRa労働協約にも従っており、ライセンスのある飲食店の調理担当は経験に応じて月2,179〜2,392ユーロ、料理長は月2,624〜2,855ユーロです。

認定事業主になると具体的に何が変わりますか。

認定事業主はEnter Finlandで雇用条件を代理入力でき、料理人は在留許可申請と同時にDビザを申請できるため、通常より1〜2週間早く渡航できます。認定は最初2年、更新後は3年で、費用はかからず申請の手間だけです。

自社の料理人はEUブルーカードの対象になり得ますか。

大学の学位があるか、大卒相当の水準で5年以上の実務経験を書類で示せる場合に限り、可能性があります。加えてオファーがフィンランドの2026年ブルーカード給与基準(TTOLの下限より大幅に高い)を満たす必要があります。詳しい判定基準はEUブルーカードガイドをご覧ください。シニアで高給のポジションに向いており、一般の調理担当にはほとんど当てはまりません。

フィンランドの就労者向け在留許可はどのくらいの期間で下りますか。

Migriによると2026年7月の平均処理日数は許可の場合17日、不許可の場合64日ですが、これは直近の平均であって保証ではありません。申請前の2週間の求人掲載と自社の採用活動の期間も見込んでおいてください。

本記事は2026年9月時点でフィンランドおよび日本の公的情報源を確認した一般的な情報で、法律や出入国手続きの助言ではありません。地域の労働許可方針は半年ごとに、労働協約の賃金は独自の交渉サイクルで改定されます。申請前にMigri、経済開発センター、PAM/MaRaで最新情報を確認してください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

和食料理人を採用しませんか?

世界中の和食料理人が登録するWashokuJobに、貴店の求人を掲載できます。