アジア・オセアニア

香港出店:料理長はGEPが先、ESLSは第2段階

香港出店ではGEPとESLSで間に合う時期がまったく違います。3対1の比率と6週間の現地募集がESLS調理スタッフを開業当日に間に合わなくする理由、人数別コスト、逆算スケジュール、出向者のMPFと税金を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

香港出店の人材計画で最初に押さえるべきは、料理長(GEP)と調理スタッフ(ESLS)とで、開業日に間に合わせられる順番がまったく違うということです。GEPには現地雇用の枠という制約がなく、書類さえそろえば数週間で動きます。一方ESLSは、輸入する調理スタッフ1人につき現地のフルタイム従業員3人がすでに雇用されている必要があり(2026年6月16日から3対1)、さらにその職種で6週間の現地募集を済ませてからでないと申請できません。開業したばかりの店に現地スタッフはいないため、ESLSでの調理スタッフの輸入は、開業当日ではなく、現地の厨房が育ってからの「第2段階」と考えてください。

GEPとESLSの制度そのもの(適格基準、費用、期間、3対1の比率、Cook (Japanese Cuisine) の賃金中央値19,670香港ドルなど)はHong Kong Work Visa for a Japanese Chef(英語)で詳しく扱っています。このページが扱うのは、複数人を送り、現地スタッフもゼロから雇う「出店」というプロジェクトに固有の、誰をいつ送るかという順序と、出向者・現地採用の社会保険・税金の違いです。

目次

  1. 誰をいつ送るか:GEPが先、ESLSは第2段階
  2. 3対1の比率が生む「鶏と卵」の問題
  3. 出店チームの人数別コスト
  4. 出店の逆算スケジュール
  5. 出向者と現地採用:MPFと税金の違い
  6. チェックリスト

1. 誰をいつ送るか:GEPが先、ESLSは第2段階

料理長は一般雇用政策(GEP)で送ります。現地雇用の枠に縛られず、審査自体は書類がそろってから通常4週間です。学位のない料理人の場合に必要な実績の証明(経歴、受賞歴、推薦状など)は英語記事で詳しく扱っています。

一方、調理スタッフを補充労働輸入計画(ESLS)で送るには、輸入する1人につき現地のフルタイム従業員3人がすでにその厨房・ホール部門で働いている必要があります(2026年6月16日施行、以前は2対1)。開業したばかりの店には、この現地スタッフがまだいません。つまり、ESLSでの調理スタッフの輸入は、開業当日に間に合わせるものではなく、料理長の指導のもとで現地スタッフを採用・育成し、比率を満たしてからの追加策と位置づけてください。開業当日の厨房は、料理長(GEP)と現地採用だけで回す前提で計画を立てるのが安全です。

2. 3対1の比率が生む「鶏と卵」の問題

ESLSにはもう一つ、現地3人という比率とは別の条件があります。輸入したい職種について、申請の前に6週間の現地募集(最初の2週間は広告、以降は2週間に1回、労工処が指定する就職フェアへの出席)を行い、それでも人が見つからなかったことを示す必要があります。開業前の店には、この「現地で募集したが見つからなかった」という実績そのものがまだありません。

整理すると、ESLSで調理スタッフを1人輸入するには、(1)その部門にすでに現地フルタイム従業員が3人いること、(2)その職種で6週間の現地募集を行い、就職フェアにも出席していること、の両方が必要です。開業したばかりの店はどちらも満たせないため、ESLSは「開業してしばらく経ってから」使う経路になります。

したがって、開業計画の実務的な結論は次のとおりです。日本人を複数人送りたい場合でも、開業当日にESLSで送れるのは実質ゼロと考え、料理長(GEP)1人と、それ以外は現地採用で立ち上げてください。ESLSでの調理スタッフの輸入は、現地の厨房チームが育ち、3対1の比率を満たしてから、増員策として検討します。

3. 出店チームの人数別コスト

料理長1人(GEP)に加え、開業後の増員としてESLS調理スタッフを何人検討するかで、必要な現地フルタイム従業員の人数と年間コストがどう変わるかを示します。給与は英語記事が示すESLSの中央値、Cook (Japanese Cuisine) 月19,670香港ドルを使います。

ESLS調理スタッフ必要な現地フルタイム従業員(3対1)ESLS調理スタッフの年間給与・レビー概算現地スタッフの年間給与概算(中央値ベース)
1人3人約245,640香港ドル約708,120香港ドル
2人6人約491,280香港ドル約1,416,240香港ドル

ESLS調理スタッフの年間給与・レビーは、中央値19,670香港ドル×12か月に、レビー(1人あたり最大9,600香港ドル)を加えたものです。現地スタッフの年間給与は、同じ中央値19,670香港ドルで計算した概算で、実際には職種や経験で上下します。この表からわかるのは、ESLSで調理スタッフを増やすたびに、その3倍の現地フルタイム従業員の人件費が連動して発生するということです。料理長(GEP)自身の費用と、GEPに枠の制約がないことは英語記事の費用表にまとめています。

4. 出店の逆算スケジュール

GEPの審査期間そのものは公式情報にもとづきますが、月数は計画上の目安です。

開業日からの月数やること
6か月前料理長候補を決め、学位がない場合の実績(経歴・受賞歴・推薦状など)を集め始める。現地厨房チームの採用計画を立てる。
4〜3か月前法人設立後、GEPを申請する(書類がそろってから通常4週間)。並行して現地スタッフの採用を開始する。
2か月前料理長が来港し、現地スタッフの研修を始める。
開業料理長(GEP)と現地採用スタッフで営業を開始する。
開業後、現地チームが育ってから現地フルタイム従業員が3対1の比率を満たした段階で、ESLSでの調理スタッフ輸入を検討する。その職種で6週間の現地募集(就職フェアを含む)を行ってから申請する。

ESLSの審査そのものにかかる期間は公表されておらず、英語記事は「更新でも8〜9か月前から動くのが労工処自身の案内」としています。開業直後の初めてのケースはこれより早くなる見込みは薄いため、ESLSを開業当日の計画に組み込まないでください。

5. 出向者と現地採用:MPFと税金の違い

誰を出向にして誰を現地採用にするかは、GEPかESLSかとは別の判断です。ただし、香港はシンガポールと違い、この判断が社会保険のコストに直結します。

6. チェックリスト

変わる数字:法定最低賃金(毎年見直し)、Common Postsの賃金一覧(年に数回改定、直近は2026年6月22日)、MPFの上限(2014年から変わっていませんが定期的に見直し)。ESLSの飲食関連の運用は2026年6月16日に改定されたばかりで、今後さらに変わる可能性があります。次回確認は2027年3月です。

よくある質問

香港出店では、料理長と調理スタッフのどちらを先に手配すべきですか。

料理長(GEP)です。現地雇用の枠に縛られず、書類がそろえば数週間で動きます。調理スタッフをESLSで輸入するには、現地フルタイム従業員がすでに3対1の比率で雇用されている必要があり、開業したばかりの店ではこれを満たせません。

開業当日にESLSで調理スタッフを送ることはできますか。

実務上は困難です。ESLSは、輸入する1人につき現地フルタイム従業員3人がすでにその部門で働いていることと、その職種での6週間の現地募集の実績を求めます。開業前の店にはどちらもないため、ESLSは開業後の増員策と考えてください。

ESLSで調理スタッフを増やすと、コストはどう増えますか。

調理スタッフ1人につき、現地フルタイム従業員3人分の人件費が連動して発生します。中央値ベースで見ると、現地スタッフの人件費は輸入する調理スタッフ本人の給与・レビーの3倍近くになります。

出向者と現地採用で、社会保険の扱いはどう違いますか。

香港のMPFはシンガポールのCPFと異なり、GEP・ESLSの保有者にも原則として適用されます。日本の健康保険・厚生年金への継続加入を検討する場合、香港側のMPFと二重の負担になり得る前提で試算し、個別にMPFAや専門家に確認してください。

日本と香港の間に社会保障協定はありますか。

ありません。日本年金機構によれば2026年3月時点で未締結で、年金記録の通算はできません。日本側の継続加入は、年金記録を切らさないための会社の判断になります。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。制度の内容は2026年9月時点で確認したものです。最新の要件は香港入境事務処、労工処、MPFAでご確認いただき、税務は日本と香港双方の専門家にご相談ください。

出典

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