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海外和食店の開業シフト:仕込み・閉店作業を含めた組み方と各国の労働時間ルール

早朝の受け入れや閉店後の洗浄など営業時間外の作業を書き出し、シンガポール(残業月72時間)、英国(週平均48時間・勤務間11時間)、NY、カリフォルニアの休憩規定、豪州アワード(勤務間10時間)を早見表にして、開業1カ月のシフトの作り方を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 営業時間の外にある作業を書き出す
  2. 国ごとの労働時間ルール早見表
  3. 「閉店して翌朝に開ける」シフトの注意点
  4. 休憩の取り方を先にシフトに書き込む
  5. シフトを公表する時期と変更の扱い
  6. 1日のシフト例を、ルールに当てはめてみる
  7. 開業1カ月のシフト表の作り方

開業直後のシフト表は、営業時間に合わせて「ランチに何人、ディナーに何人」と組みがちです。しかし和食店の仕事の多くは、客がいない時間に行われます。早朝の魚の受け入れ、出汁やシャリの仕込み、閉店後の洗浄と清掃、翌日の発注。これらをシフト表に載せずにいると、実際には誰かが残って片付けることになり、労働時間の上限や休憩の規定に触れる原因になります。この記事では、営業時間外の作業を含めたシフトの組み方を、シンガポール、英国、ニューヨーク、カリフォルニア、オーストラリアの労働時間ルールとあわせて整理します。

1. 営業時間の外にある作業を書き出す

最初に、1日の作業を時間帯ごとに書き出します。ランチ(11時半〜14時半)とディナー(17時半〜22時)の2部営業をする寿司・定食の店を例にすると、営業時間外の作業は次のようになります。

時間帯作業担当の例所要時間の目安
開店前(早朝)魚・野菜の受け入れ、温度確認、冷凍記録仕込み担当1人30〜60分
開店前出汁、シャリ、タレ、ランチの仕込み、冷蔵庫の温度記録厨房2〜3人2〜3時間
開店前客席とトイレの清掃、テーブルセット、朝礼ホール1〜2人、全員30〜60分
中休みディナーの仕込み、洗い物、休憩厨房、ホール3時間のうち一部
閉店後器具の洗浄・消毒、床清掃、ごみ出し、残った仕込み品のラベルと保管厨房2人、ホール1人60〜90分
閉店後レジ締め、日報、翌日の発注店長30〜45分

時間は例です。開業前の模擬営業で実際に計り、数字を置き換えてください。この表を作ると、1人のスタッフが早朝の受け入れから閉店後の片付けまで入ってしまう組み方が、どれだけ長い拘束になるかが見えてきます。

2. 国ごとの労働時間ルール早見表

シフト表を作る前に、出店国の労働時間の上限を確認します。主な国・地域のルールを公式ページで確認した結果は次のとおりです。

国・地域主なルール(2026年9月確認)
シンガポール雇用法Part 4の対象者の通常の労働時間は、週5日以下の勤務なら1日9時間まで、週5日超なら1日8時間まで、いずれも週44時間まで。残業を含めても1日12時間まで(事故など例外あり)、残業は月72時間まで、残業代は1.5倍以上。週1日の休日。原則として6時間を超えて休憩なしで働かせない(業務の性質上8時間まで連続勤務させる場合は45分以上の食事休憩)。管理職・役員はPart 4の対象外
英国週の労働時間は平均48時間まで(通常17週で平均)。労働者は個別に適用除外(オプトアウト)を選べる。1日6時間を超える勤務には20分の休憩、勤務と勤務の間に11時間の休息、週24時間(または2週間で48時間)の連続休息
ニューヨーク州ホスピタリティ産業賃金命令で、週40時間を超えると1.5倍の残業代。始業から終業までが10時間を超える日は最低時給で1時間分を追加
ニューヨーク市(ファストフード)Fair Workweek法:全国30店以上のチェーンで、注文と支払いを着席前に済ませる業態が対象。シフトは14日前までに公表し、それより後の変更には割増手当。休息11時間未満の「閉店→開店」勤務は本人の書面同意と1回100ドル。着席後に注文するフルサービスの店は、法律の定義(限定サービスの店)に当たらない
カリフォルニア州5時間を超える勤務には、5時間目の終わりまでに30分の食事休憩、10時間を超える場合は2回目。4時間ごと(またはその大半)に10分の有給休憩。取らせなかった日は1時間分の賃金を追加で支払う
オーストラリア(Restaurant Industry Award)フルタイムは4週以内の平均で週38時間。1日の通常労働は6〜11.5時間。カジュアルを除き、勤務と勤務の間に10時間の休息(ロスター切り替え時は8時間)。4週間で8日以上の休日。分割シフトの拘束時間は12時間まで

ニューヨーク市のFair Workweek法は、チェーンのファストフード店向けの規定で、一般的なフルサービスの和食店には適用されません。ただし、カウンターで注文と支払いを先に済ませるラーメン店や丼の店を多店舗展開する場合は、対象になり得ます。市のFAQによると、ブランド全体の店舗数が30を超える場合は、個別に所有されるフランチャイズ加盟店も対象です。業態の決め方と合わせて確認してください(→業態の選び方)。

3. 「閉店して翌朝に開ける」シフトの注意点

開業直後に最も起きやすいのが、同じ人が閉店後の片付けをして、翌朝の受け入れにも入る組み方です。英国では勤務間に11時間の休息が原則で、たとえば夜8時に終われば翌朝7時までは次の勤務を始めないのが目安とされています。オーストラリアのアワードでは、通常労働の間に10時間の休息が必要で、残業の後に8時間の休息が取れない場合は、休息が取れるまで残業の割増率で支払う規定があります。

ディナーの片付けが23時に終わる店で、同じ人が翌朝8時に魚を受け取ると、休息は9時間しかありません。これを避けるには、早朝の受け入れ担当と閉店担当を分け、受け入れ担当は中休みまでで上がる、といったシフトの型を最初に作っておきます。

要点:早朝の受け入れを担当する人と、閉店後の片付けを担当する人を、同じ日に同じ人にしない。これを原則にするだけで、休息時間の違反の多くを防げます。

4. 休憩の取り方を先にシフトに書き込む

開業直後は忙しく、休憩が後回しになりがちです。休憩が取れなかった場合の扱いは国によって違い、カリフォルニア州では食事休憩や有給休憩を取らせなかった日に1時間分の賃金を追加で支払う必要があります。オーストラリアのアワードでは、5時間以上10時間以下の勤務に30分以上の無給の食事休憩があり、勤務開始から1時間後から6時間以内に取らせる決まりです。

シフト表には、休憩の時間帯を個人ごとに書き込みます。「中休みに適当に」ではなく、「Aさん 15:00〜15:30、Bさん 15:30〜16:00」と決めておくと、全員が同時に休めない2部営業の店でも、休憩の漏れを防げます。

5. シフトを公表する時期と変更の扱い

シフトの公表時期にもルールがあります。オーストラリアのアワードでは、雇用主はフルタイム・パートタイムの従業員の始業・終業時刻を示したロスター(勤務表)を作り、見やすい場所に掲示する必要があります。変更は本人との合意か、7日前の通知によります。休日(rostered day off)は、可能な限り2週間前に通知します。

ニューヨーク市のFair Workweek法の対象店舗では、14日前までの公表が必要で、それより後に勤務を追加すると1回10ドル、減らすと20ドル、7日を切ると追加15ドル・削減45ドル、24時間を切ると追加15ドル・削減75ドルの割増が発生します。対象外の店でも、開業直後に何度もシフトを変えると、スタッフの定着に響きます。最初の1カ月は「2週間分を先に出し、変更は理由を添えて本人と合意する」という運用を店のルールにしておくのが安全です。

6. 1日のシフト例を、ルールに当てはめてみる

ランチ11時半〜14時半、ディナー17時半〜22時の店で、実際に起きやすいシフトをルールに当てはめてみます。時刻は例です。

担当勤務時間実働・拘束確認結果
仕込み担当8:00〜16:30(休憩30分)実働8時間・拘束8.5時間各国のルールの範囲内。翌日に閉店担当を入れないこと
寿司場(修正前)10:00〜14:30と17:00〜22:30実働10時間・拘束12.5時間オーストラリアのアワードの分割シフトの拘束上限12時間を超える。ニューヨーク州では拘束10時間超で1時間分の追加支払い。シンガポールで週5日勤務なら1日9時間を超える1時間は残業
寿司場(修正後)10:30〜14:30と16:30〜22:00実働9.5時間・拘束11.5時間アワードの分割シフトの上限内。ニューヨーク州の追加支払いは引き続き必要。シンガポールでは0.5時間が残業
閉店担当15:00〜23:30(休憩30分)実働8時間・拘束8.5時間翌朝8時の受け入れに入ると休息は8.5時間で、英国の11時間、アワードの10時間に足りない

このように、1人ずつ当てはめると、どこで規定にかかるかがはっきりします。寿司場のように昼と夜の両方に必要な人は、分割シフトの拘束時間が長くなりがちです。昼と夜で担当を分けるか、中休みを短くして早く上がる形にするかを、人件費と合わせて比べます。

シフト表に載せる項目

シフト表は、名前と時間だけでは足りません。開業直後のシフト表には、次の項目を1行ずつ載せておくと、確認の手間が減ります。

表計算ソフトでシフト表を作るなら、前日の終業時刻から休息時間を自動で計算し、規定を下回ると色が変わるようにしておくと、組んだ時点で問題に気づけます。

7. 開業1カ月のシフト表の作り方

開業後の最初の1カ月は、客数の予測が外れやすく、作業時間も読めません。シフトは次の順で作ると、上限の違反と人手不足の両方を避けやすくなります。

  1. 固定の作業から埋める:受け入れ、仕込み、閉店作業、レジ締めは客数に関係なく発生します。これを先に担当者と時間で埋めます。
  2. 営業のピークを埋める:予約数と模擬営業の結果から、ランチとディナーのピークに必要な人数を置きます。
  3. 上限を確認する:1人ずつ、1日の労働時間、週の合計、勤務間の休息、休憩、休日を早見表のルールで確認します。
  4. 予備を1人置く:開業週は、急な欠勤と想定外の混雑に備えて、呼び出せる予備のスタッフを決めておきます。ニューヨーク州のように、呼び出した場合に最低時間分の支払いが必要な地域では、その費用も見込みます。

作ったシフト表は、実際の勤務時間と毎週比べます。予定と実績の差が大きい作業は、所要時間の見積もりか、手順そのものを見直す対象です。人件費の見通しは週次の資金確認で、料理長が休む日の配置は料理長不在対策で扱っています。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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