海外出店|出店戦略

海外出店の形態比較:直営・合弁・フランチャイズの違いと各国の規制

直営・合弁・フランチャイズ・ライセンスを資本・権限・収入・撤退で比較。一風堂、CoCo壱番屋、モス、大戸屋、吉野家の開示から国別の使い分けを示し、米国FDD14日前交付、豪州コード、中国「两店一年」、韓国・マレーシアの登録制を整理。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 4つの出店形態を比較する
  2. 日本の外食企業は形態をどう使い分けているか
  3. 外資規制で形態が決まってしまう国
  4. フランチャイズ本部になると各国で何が求められるか
  5. 合弁を選ぶなら契約前に決めること
  6. 自社に合う形態の選び方

海外に1店目を出すとき、最初に決めなければならないのは「どの国に出すか」と同じくらい「誰のお金と誰の責任で出すか」です。自社で現地法人をつくって直営するのか、現地企業と合弁会社をつくるのか、現地企業にフランチャイズやライセンスを与えて運営してもらうのか。この選択で、必要な資金、店に対する発言力、入ってくるお金の形、うまくいかなかったときの撤退のしかたがまったく変わります。

本記事では、4つの形態を比較表で整理したうえで、日本の外食上場企業がIRや公式サイトで開示している実際の使い分けを紹介し、フランチャイズを使う場合に本部側に課される各国の規制を、米国・オーストラリア・中国・韓国・マレーシアについて公的情報で確認した範囲でまとめます。

1. 4つの出店形態を比較する

まず全体像です。ここでの「ライセンス」は、商標やレシピの使用を許諾して対価を受け取るが、運営ノウハウの継続的な指導までは約束しない契約を指し、「フランチャイズ」は商標に加えて運営方法を指導・管理する契約を指します。ただし、どちらに当たるかは契約書の名前ではなく中身で判断される国が多い点に注意してください(後述の米国の例を参照)。

直営(現地法人・支店)合弁マスター/エリア・フランチャイズライセンス
出資・資金全額自社負担。店舗投資・運転資金も自社出資比率に応じて分担店舗投資は現地側。本部は原則出資なし現地側が負担
店への権限すべて自社で決められる株主間契約と取締役構成しだい。過半数を持てない国もある契約で定めた基準・監査権の範囲内弱い。品質基準を契約に書いても強制しにくい
本部の収入店舗の利益そのもの持分に応じた配当(ロイヤルティを別契約にする例もある)加盟金・ロイヤルティ・食材供給マージン一時金とロイヤルティ
日本側の人手店長・料理人の派遣や採用がすべて自社の仕事役割分担による立ち上げ指導と定期監査が中心少ない
撤退時閉店・清算・賃貸借の解約を自社で行う。損失も全額自社持分の売却先や買取条件を契約で決めていないと揉めやすい契約解除、看板・商標の使用停止を相手に求める必要がある同左。商標を相手に押さえられていると回収が難しい
向いている状況資金と人材があり、ブランドを自分で育てたい外資規制がある、物件や許認可に現地の力が要る運営を任せられる現地企業がいて、多店舗化を急ぎたい商品販売や監修に近い関わり方で十分な場合

直営のなかでも、支店(日本法人の一部)と現地法人(子会社)では責任の範囲が違います。ジェトロの貿易・投資相談Q&A(米国、2026年1月更新)は、支店の場合は日本本社が米国法の管轄下に置かれ訴訟の当事者になり得ること、現地法人なら責任が原則として現地法人にとどまることを説明し、訴訟リスクのある事業では現地法人を勧めています。客との事故や労務トラブルの起きうる飲食店では、支店を選ぶ理由はあまりありません。

2. 日本の外食企業は形態をどう使い分けているか

上場企業の開示を見ると、1社が1つの形態だけで展開している例はむしろ少数で、国ごとに形態を変えているのが分かります。

企業(ブランド)開示されている海外の形態時点・出典
力の源HD(一風堂)海外145店のうち直営75店、ライセンス70店。シンガポール・台湾・インドネシア・米国・英国・フランス・スペインは直営、マレーシア・タイ・フィリピン・中国/香港・ミャンマー・ベトナムはライセンスと表示。オーストラリアは「一部ライセンス」、ニュージーランドはライセンス海外は2026年3月末。2027年3月期第1四半期決算補足説明資料
壱番屋(CoCo壱番屋)海外218店。全業態で直営85店、フランチャイズ133店。国別ではタイ45店、台湾43店が多い2026年2月時点。同社IR「店舗に関する情報」
モスフードサービス(モスバーガー)台湾・シンガポール・香港・タイ・韓国・フィリピンの6市場で計405店。公式FAQは「いずれも、モスフードサービスが出資する現地法人が展開」とし、海外店舗のフランチャイズオーナー募集は行っていないと明記店舗数は2026年8月31日時点。同社「店舗数」ページ、公式FAQ
大戸屋HD(大戸屋)香港・米国・シンガポールは100%子会社。タイは出資比率45.0%と49.0%の会社。台湾・上海・インドネシア、タイの別会社はエリア・フランチャイズ加盟企業同社「グループ会社」ページ(2026年9月閲覧)
吉野家HD(吉野家)海外の沿革で、インドネシア(1994年)、タイ(1995年)、韓国(1996年)、オーストラリア(2004年)、カンボジア(2013年)、ベトナム(2020年)などの1号店をフランチャイズ店と記載。上海(2002年)、深圳(2004年)、マレーシアの再出店(2015年)は合弁と記載。海外店舗は合計1,079店店舗数は2026年8月。同社「海外沿革」「グループ店舗数」ページ

この表から読み取れることは3つあります。

3. 外資規制で形態が決まってしまう国

形態を「選べる」のは、外資100%で飲食店を開ける国の話です。国によっては、規制がほぼ答えを決めます。

ASEAN各国の外食分野の外資規制は、ジェトロが「サービス産業フランチャイズ関連法含む外資規制:ASEAN10カ国規制調査」として国別にまとめています。ただし2017年公表の資料なので、使うときはジェトロの国別ページ(「外資に関する規制」)の最新更新日と照らし合わせてください。

4. フランチャイズ本部になると各国で何が求められるか

フランチャイズやライセンスは「お金を出さずに済む形態」と思われがちですが、日本の会社が海外で本部(フランチャイザー)になると、その国の開示義務や登録義務を負います。確認できた主な国の要件は次のとおりです。

国根拠本部側の主な義務(2026年9月時点で確認)
米国FTC Franchise Rule(16 CFR Part 436)23項目を載せた開示書面(FDD)を、契約締結または支払いの少なくとも14日前に交付。本部が契約条件を一方的に重要な点で変えた場合は、変更後の契約書を署名の7日前までに交付
オーストラリアFranchising Code of Conduct(2025年4月1日施行の新コード、一部は2025年11月1日から)開示書面を契約締結の少なくとも14日前に交付。新規契約には14日間のクーリングオフ期間がある
中国商業特許経営管理条例(2007年5月1日施行)少なくとも2店の直営店を1年超運営していること(第7条、いわゆる「两店一年」)。最初の契約締結から15日以内に商務主管部門へ届出(第8条)。契約の少なくとも30日前に書面で情報開示。契約期間は原則3年以上
韓国加盟事業取引の公正化に関する法律情報公開書を公正取引委員会または市・道知事に登録。新規登録時、同一ブランドの直営店が1年以上運営されていないと登録が拒否され得るが、国内外で同じ業種を1年以上営んでいる場合などは適用除外
マレーシアFranchise Act 1998フランチャイズ事業開始・募集開始前に登録局(Registrar of Franchise)へ登録。外国のフランチャイザーも登録が必要で、登録官は理由を示さずに申請を拒絶できると法に明記。外国本部と契約した加盟者側も、事業開始前に登録と登録官の許可が必要(ジェトロ2017年資料による)

いくつか補足します。

米国:FTCの規則には適用除外があり、たとえば加盟者の初期投資が1,469,600ドル以上の場合や、支払い総額が735ドル未満の場合などが定められています(金額は4年ごとに物価に応じて改定)。また、ジェトロのビジネス短信(2017年5月)は、FDDや販売担当者・広告の登録を州レベルで求める州が15州あること、ニューヨーク州は商標使用・支配や支援・支払いの3要素のうち1つでも当てはまればフランチャイズとして扱う厳しい定義であることを紹介しています。「ライセンス契約」と名付けても規制を避けられるとは限らないため、米国で現地企業に看板を貸す計画があるなら、契約書を作る前にフランチャイズ法に詳しい現地弁護士に相談してください。

中国:「两店一年」の直営店は中国国内になくてもよいとされています。上海市商務委員会の解説は、中国国外の直営店でも要件を満たすのに使えると説明しています。一方で、外国の本部は商務部に届け出ることになり、国外で作成した書類には現地での公証と中国大使館・領事館の認証、または条約に定める証明手続きが求められます(商務部「商業特許経営企業備案」)。

韓国:直営店要件の例外として「国内または国外で同じ業種の事業を1年以上営んだ場合」が挙げられています(法制処「生活法令情報」)。日本で長く店を営んできた会社なら、この例外に当たるかを確認する価値があります。

マレーシア:根拠としたジェトロ資料は2017年のものです。その後の改正の有無を含め、最新の要件は国内取引・生活費省(KPDN)の登録窓口か現地弁護士に確認してください。

要点:フランチャイズで海外に出る場合、コストは「出資」から「開示書面の作成・登録・現地弁護士費用」に移るだけで、ゼロにはなりません。中国の「两店一年」や韓国の直営店要件のように、直営の実績そのものが条件になる国もあります。

5. 合弁を選ぶなら契約前に決めること

ジェトロ・ニューデリー事務所が特許庁の委託でまとめた「ジョイント・ベンチャーと知的財産保護」(2023年9月)は、可能であれば出口戦略の概要を交渉段階で計画しておくのが理想だとしています。また、商標を共有にすると、どちらの当事者も単独では商標を使用したり、そこから生まれた信用や収益を取得したりできなくなる点を指摘しています(インドの法制度を前提にした報告書ですが、考え方は他国でも参考になります)。飲食の合弁に置き換えると、最低限次の項目は合弁契約(株主間契約)で決めておくべきです。

6. 自社に合う形態の選び方

ここまでの内容を、判断の順番に並べ直すと次のようになります。

  1. その国で外資100%の飲食店が開けるかを確認する。ジェトロの国別ページ「外資に関する規制」で、飲食業の扱いと最低資本金を見ます。開けないなら、合弁かフランチャイズ/ライセンスに絞られます。
  2. 日本側から出せる人を数える。直営なら、開店前後に店長と料理人を最低でも数か月は現地に置く必要があります。社内に出せる人がいないなら、現地採用や日本人料理人の新規採用の計画と費用を先に見積もります(海外出店の採用スケジュール、海外和食店の採用コスト)。
  3. 失ってもよい金額を決める。直営の損失は全額自社です。1店目の投資額を失っても本業が揺らがないかで、直営に踏み切れるかが決まります。
  4. フランチャイズを使うなら、本部になる国の規制を確認する。上の表の国なら、開示書面の準備と登録に数か月単位の時間がかかります。中国では直営2店・1年の実績が前提です。
  5. 相手を決める前に、商標を現地で出願する。合弁・フランチャイズ・ライセンスのどれでも、商標を自社名義で押さえてから交渉するのが原則です。確認の手順は海外出店パートナーの見極め方にまとめています。

一風堂が欧米やシンガポールで直営、東南アジアの多くでライセンスを使っているように、「1国目は直営でブランドの型を固め、2国目以降や規制のある国はパートナーと組む」という組み合わせは、ほかの企業の開示にも見られるパターンです。どの形態でも、撤退と切り替えの条件を最初の契約に書いておくことが、後で選択肢を残すことにつながります。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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