海外出店|出店戦略

海外出店パートナーの見極め方:登記・信用調査・商標で確認する手順

紹介された海外パートナーを、ACRA・Companies House・香港公司註冊處の登記、ジェトロ・帝国データバンク・東京商工リサーチの信用調査(料金・納期付き)、面談の質問、商標の先行出願と補助制度、マドリッド出願、契約条項で確認する手順。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 紹介を受けてから契約までの確認の順番
  2. 法人登記で実在・役員・株主を確かめる
  3. 信用調査レポートを取り寄せる
  4. 面談と現地訪問で聞くこと
  5. 商標はパートナーより先に出願する
  6. マドリッド協定議定書で複数国に出願する
  7. 契約で決めておくこと

海外出店のパートナーは、商社や金融機関、知人、展示会などからの紹介で見つかることがほとんどです。紹介そのものは悪いことではありませんが、紹介者は相手の財務や過去のトラブルまで保証してくれるわけではありません。合弁やフランチャイズで組む相手は、自社ブランドの看板を現地で数年にわたって背負う存在です。

本記事では、紹介された相手について「登記」「信用調査」「面談」「商標」「契約」の順に確認する手順を、実際に使える公的な検索サービスや日本の支援制度の料金・条件とあわせて説明します。料金や条件はいずれも2026年9月時点で各機関のページで確認したものです。

1. 紹介を受けてから契約までの確認の順番

  1. 自社の商標を現地で出願する(相手に社名やブランドを詳しく伝える前が理想)
  2. 相手の法人登記を取り、実在・設立年・役員・株主を確認する
  3. 信用調査レポートを取り寄せる
  4. 面談と現地訪問で、運営実績と資金計画を確かめる
  5. 契約条件(独占権・目標・解約・商標)を詰める

商標が最初に来ているのは誤りではありません。理由は5章で説明します。

2. 法人登記で実在・役員・株主を確かめる

多くの国は法人の登記情報をオンラインで公開しており、無料か数百円から千円台程度で取得できます。相手が名乗る社名と登記上の正式名称・登録番号が一致するか、いつ設立されたか、誰が取締役で誰が株主か、を最初に確認します。

国・地域窓口分かること・料金
シンガポール会計企業規制庁(ACRA)のBizfileBusiness Profile(登録番号UEN、名称、登記日、役員・株主、払込資本金など)S$5.50。1人の人物がどの会社に関わっているかを調べるPeople ProfileはS$33。財務状況やコンプライアンスを見るCorporate Compliance and Financial ProfileはS$50。過去の提出書類(年次報告、監査済み決算など)の写しはS$11から
英国Companies House登記住所・設立日、現任と退任した役員、提出書類の画像、担保(charge)情報、旧商号、倒産手続情報を無料で閲覧できる
香港公司註冊處(Companies Registry)のe-Search会社の基本情報(company particulars)の検索はHK$22。提出書類の画像はオンラインでのダウンロード・閲覧で1件HK$9〜29(書類の種類と登録利用者かどうかで異なる。2025年5月の料金表)
米国各州の州務長官(Secretary of State)法人登記は州ごと。たとえばカリフォルニア州はbizfile Onlineで事業体を検索できる。相手の法人がどの州で設立されているかをまず聞く

登記を見るときの着眼点は次のとおりです。

ここに挙げていない国でも、登記の取り方が分からなければ、ジェトロの貿易投資相談(無料)で国ごとの調べ方を聞けます。また、相手が「現地の有力グループの一員」と説明する場合は、そのグループ企業と契約主体の資本関係が登記上つながっているかを確かめてください。つながっていなければ、グループの信用は契約上は何の裏付けにもなりません。

3. 信用調査レポートを取り寄せる

登記は「存在」を確かめるもので、支払い能力や評判までは分かりません。そこは有料の信用調査レポートで補います。日本から依頼できる主なサービスは次のとおりです。

サービス料金の目安納期・特徴
ジェトロ・メンバーズ向け外国企業信用調査(提供:コファス・サービス・ジャパン)会員料金で1社1件:北米・西欧・東欧13,900円、アジア・中南米・中近東・アフリカ18,500円、中国(香港含む)・台湾の和文レポート23,100円(いずれも税抜)。非会員は年間契約が必要(最低36.3万円・税込)登記所から入手される基本情報、事業内容、取引リスクなどを記載。至急対応は1件4,600円(税抜)の追加
帝国データバンク「海外企業信用調査」会員制。1枚で1社を依頼できる「調査問合票」が5枚で120,000円(1枚24,000円)から。枚数が多いほど単価が下がる新規調査は普通で23営業日前後。超特急(7営業日前後、+20,000円)・特急(14営業日前後、+10,000円)も選べる
東京商工リサーチ「ダンレポート」(ダン・アンド・ブラッドストリートの海外企業調査)1件6,700円から(ポイント購入の場合)在庫のあるレポートは最短即日。新規調査は平均4.8日

ジェトロのサービスはジェトロ・メンバーズ(有料会員)限定で、契約はコファス・サービス・ジャパンとの直接契約になります。レポートの評価は調査会社の見解であり、ジェトロは結果に責任を負わないと明記されています。どの会社のレポートでも、小さな非上場企業は財務データが載っていないことがよくあります。その場合は、次の面談で決算書そのものの提出を求めます。

4. 面談と現地訪問で聞くこと

登記と信用調査で基本情報をそろえたら、面談で次の点を確かめます。回答は口頭で済ませず、資料で受け取ります。

現地訪問では、相手が運営している既存店に予告せずに客として入り、厨房の清潔さ、スタッフの定着(同じ顔が長く働いているか)、繁忙時間帯のオペレーションを見ます。本社の会議室だけで判断しないことが大切です。

5. 商標はパートナーより先に出願する

特許庁の「海外商標出願のススメ」は、商標は国ごとに権利が発生する(属地主義)こと、同じ商標を別々の人が出願したら先に出願した人だけが権利を得られる(先願主義)ことを説明しています。日本で登録していても、海外では守られません。特許庁は、日本の地名・地域ブランド・有名商標と同名の商標が海外で出願・登録される問題(いわゆる冒認出願)について、国別の商標検索マニュアルや対応リーフレットをまとめて公開しています。

出店交渉では、ブランド名、ロゴ、メニュー名を相手に詳しく見せることになります。交渉が決裂したあとに、相手や第三者が現地で先に商標を出願してしまうと、自社が自分のブランド名で出店できなくなったり、買い戻しを求められたりします。特許庁のページも、他人に先に登録され高額での譲渡を求められる事例を典型的なリスクとして挙げています。

出願の前に、進出候補国で自社ブランドと同じか似た商標がすでに出願・登録されていないかを調べます。特許庁は、中国と台湾の商標データベースの使い方を解説した「商標検索マニュアル」や、韓国の検索システム(KIPRIS)の簡易マニュアルなどを公開しています。すでに誰かに出願されていた場合は、出店交渉より先に、取り消しや買い取りの可能性を弁理士と検討することになります。

中小企業が使える支援は2つあります。

制度内容(2026年度)窓口
外国出願の補助(中小企業等海外展開支援事業費補助金)外国出願にかかる費用(出願手数料、国内・現地代理人費用、翻訳費用など)の1/2を補助。上限は商標1件60万円、1企業300万円都道府県等中小企業支援センターなど。公募期間や申請方法は実施機関ごとに異なる
抜け駆け商標無効・取消係争支援事業(中小企業等海外侵害対策支援事業)海外で無断で出願・登録された商標を取り消すための異議申立て、無効審判、取消審判の費用(弁護士・弁理士費用を含む)の2/3を助成、上限500万円。日本国内で同一または類似の商標権を持っていることが条件。和解金・損害賠償金は対象外ジェトロ。2026年度の締切は2026年10月30日17時(予算に達し次第終了)

要点:冒認された商標を取り戻す手続きには補助があっても時間がかかり、その間は出店計画が止まります。まず日本で出願し、それを基礎に進出候補国へ出願してから、パートナーとの具体的な交渉に入るのが安全な順番です。

6. マドリッド協定議定書で複数国に出願する

複数の国に出願する場合は、マドリッド協定議定書による国際登録出願が使えます。

1国ずつ直接出願するか、マドリッドでまとめるかは、進出候補国の数と、各国で現地代理人が必要になるかによって費用が変わるため、弁理士に両方の見積もりを出してもらうのが確実です。

7. 契約で決めておくこと

確認が終わったら契約です。合弁・フランチャイズ・ライセンスのどれでも、次の4点は必ず条文にします。形態ごとの違いと各国のフランチャイズ規制は海外出店の形態比較にまとめています。

項目決めること
独占権対象地域(国全体か都市か)、期間、独占を維持する条件。独占を与えるなら、出店目標を達成できなかった場合に非独占へ切り替えるか、地域を縮小できるようにしておく
目標(KPI)と報告年ごとの出店数、最低ロイヤルティ額、月次の売上報告、品質監査(覆面調査を含む)の頻度と、基準を下回ったときの是正期限
解約と終了後解約できる事由(支払い遅延、品質基準違反、支配株主の変更など)、終了後の看板・メニュー・内装の撤去期限、在庫の扱い、一定期間の競業避止
商標商標は日本本社の名義で登録し、相手には使用を許諾するだけにする。相手が自分の名義で出願しないこと、似た商標を出願しないことを義務づけ、違反時の移転義務も書く

加えて、準拠法と紛争解決の方法(どこの裁判所か、仲裁か)も決めておきます。相手国の裁判所で争うことになると、時間も費用も読みにくくなります。ジェトロが特許庁の委託でまとめた合弁と知的財産の報告書も、出口戦略の概要は交渉段階で計画しておくのが理想だとしています。関係が良好な契約前こそ、別れ方を決めやすい時期です。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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