採用の進め方

海外和食店の開店前16週間の採用スケジュール

海外で和食店を開く前の、ビザを除いた現地採用の16週間計画。短縮できないリードタイム、計算例による必要人数、職種別の採用順、4週間前のGo/No-Go判断、開店が遅れやすいポイントを解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

海外で飲食店を開くとき、時計は2つ同時に動きます。日本から来る料理長やその他のスタッフのビザにかかる12か月以上の時計と、開店日から逆算する現地採用の16週間の時計です。本記事は後者を扱います。現地職種の採用順と、開店前16週間の週単位の計画、そして人員数の計算例を1つ示します。16週間前の時点で料理長のビザ手続きが動いていなければ、リスクにさらされているのは現地採用ではなく開店日そのものです。

賃貸契約を結び、開店前のプロジェクトを進めている方で、各職種をいつから採用すべきか知りたい方向けです。日本から来るスタッフのビザ主導のスケジュールは海外出店時の人材計画に、月々の人件費予算と開店前の立ち上げコストは海外出店の人件費予算にあります。特定の都市への出店チームについては、その都市ごとの計画(ニューヨーク、バンコク、シンガポールなど)をご覧ください。

目次

  1. 2つの時計:ビザの軸と現地採用の軸
  2. 短縮できない現地のリードタイム
  3. 必要人数:計算例
  4. 職種別の採用の順番
  5. 開店前16週間の進め方
  6. 4週間前のGo/No-Go判断
  7. 開店が遅れやすいポイント

1. 2つの時計:ビザの軸と現地採用の軸

開店日を実際に左右する職種の多くは、本記事が扱う16週間の軸ではなく、ビザの軸に乗っています。日本から来る料理長やマネージャーには、労働市場テストや適正賃金の手続き、審査期間を含めると、本サイトが扱う市場の多くで12か月以上かかるビザの手続きが必要です。この手続きは海外出店時の人材計画とそこからリンクする各国別ガイドで扱っています。本記事はその時計がすでに動いている前提で、それ以外の現地採用スタッフを、開店日から逆算した16週間の時計でどう進めるかを扱います。

開店16週間前の時点で、次のことが済んでいる前提です。賃貸契約を結び、内装工事の現実的な完了日が見えていること。メニューのコンセプト、想定客数、営業時間が決まっていること。厨房を誰に任せるかが決まり、ビザが必要な場合はその手続きがすでに動いていること。16週間前の時点で料理長のビザ手続きが動いていなければ、開店日を仮のものと考えてください。以下の現地採用計画そのものが揺らぐわけではありません。

2. 短縮できない現地のリードタイム

ビザではなく現地側の手続きにも、法律で最低限の期間が決まっているものがあります。まずそれを計画に入れ、そこから逆算してください。英国の食品事業登録は営業開始の28日以上前が必要です(GOV.UK)。シンガポールは食品を扱う前にFood Safety Course Level 1に合格し、SFAに登録する必要があります。オーストラリアは所定の食品取り扱い作業を始める前に認定食品安全監督者を任命する必要があります。詳細は海外の食品衛生資格と、米国については米国のフードハンドラーカード(州別)にあります。カナダのLMIA広告期間、オーストラリアの労働市場テスト、米国のH-2B申請期間などビザ側のリードタイムは、上記の12か月の軸に属するもので、ここでは扱いません。

3. 必要人数:計算例

和食店の客数あたりの人員について公的な基準はなく、本記事でも目安を作ることはしません。白紙から始めなくて済むよう、計算例を1つ示します。60席の居酒屋で、8席の寿司カウンターがあり、1日2回転、週6日営業する場合です。

持ち場担当ピーク時の必要人数
寿司カウンター寿司職人のみカウンター6〜8席に1人が目安、よって1〜2人
火場(焼き場・揚げ場・煮方)ラインコック2〜3人
冷菜・仕込み仕込みスタッフパスに1〜2人、日勤のみの仕込み担当を別途
洗い場キッチンポーター1〜2人
ホール案内係、フロア、バー60席で案内係1人、フロア3〜4人、バー1人

これを必要人数に換算すると、ピーク時に厨房とホールで同時に動く人数はおよそ9〜12人です。1人あたり週5日勤務・休日ありを前提にすると、ピーク時の1席あたり約1.4〜1.6人分のフルタイム換算人員が必要になるため、休日、休暇のカバー、全員が毎回のピークに入るわけではない点を加味すると、合計で13〜19人を見込んでください。さらに、新しいチームがメニューを覚える最初の6週間は10〜15%上乗せしてください(下の囲みも参照)。そして訓練を受けた料理人しかできない持ち場(カウンター、魚の仕込みなど)に印を付け、できる人が1人しかいない場合は、開店前に代わりの人か、その人の休日をどうするかの対策を用意してください。

シフトぴったりではなく、少し多めに採用しましょう。入社しない人も、最初の数週間で辞める人もいます。開店後3回目の土曜日に持ち場を1つ閉めるより、調理スタッフを1人多く抱えて開店期を乗り切るほうが安く済みます。この必要人数にかかる月々のコストと、売上が立つ前にどれだけ支払うことになるかは海外出店の人件費予算をご覧ください。

4. 職種別の採用の順番

  1. 料理長の休みの日に厨房を回せる二番手・副料理長。16週間のできるだけ早い段階で採用します。
  2. スーパーバイザー:フロアマネージャー、バーの責任者、そして現地語が堪能で両チームの橋渡しができる厨房のスーパーバイザー(日本人と現地スタッフの混成厨房参照)。
  3. 専門職:寿司職人、酒ソムリエ、パティシエ。
  4. ラインと仕込みの調理スタッフ。
  5. ホールスタッフ。
  6. キッチンポーターと洗い場スタッフ。最後になりますが、この人たちがいなければ厨房は止まります。

各職種の説明は和食の厨房の職種解説とホールスタッフの採用をご覧ください。

5. 開店前16週間の進め方

開店までの週人員に関する作業
16〜13週前支配人と副料理長の着任日を確定。第3節の方法で最終的なシフトと必要人数を決定。全職種の給与の幅を決める。現地語と日本語で求人広告を作成。食品衛生講座と管理者試験を予約。スーパーバイザー職の募集を開始。
12〜9週前スーパーバイザーと専門職の料理人の面接・実技試験。ライン、仕込み、ホールの募集を開始。雇用契約書とスタッフハンドブック(ユニフォーム、包丁、ハラスメント防止方針)を準備。給与計算の仕組みを整える。
8〜6週前ラインとホールのスタッフに、4〜3週前を着任日として内定を出す。ユニフォームと店の包丁を発注。写真付きの厨房用語集とレシピカードを作る。全採用者の就労資格書類を確認。
5〜4週前スーパーバイザーが着任。食品を扱う前に研修が必要な人の食品衛生研修を完了。中心メンバーでレシピの試作。開店時のシフトを確定。
3〜2週前全員が着任。オリエンテーション:衛生、ユニフォーム、安全、ルールブック。持ち場ごとの研修。ホールスタッフが全料理を説明できるよう試食会。模擬営業。
1週前客数を絞ったプレオープン(関係者・知人向け営業)。毎日の振り返り。学んだことに合わせてシフトを調整。来なかった人の補充。
開店と開店後1〜4週最初は客数を絞る。新しいスタッフと毎日話す。1か月目の終わりに最初の試用期間面談(試用期間の評価参照)。

6. 4週間前のGo/No-Go判断

4週間前になれば、希望的観測ではなく判断できるだけの材料がそろっているはずです。次の4点を確認してください。(1)料理長のビザや渡航が、申請中ではなく確定しているか。(2)内装工事が開店前検査に合格したか、合格の確定日があるか。(3)資格が必要な役割(食品安全の責任者、現地の許認可など)がすべて取得済みか、開店日までに取得できる予約があるか。(4)第3節のシフトが、希望していた採用ではなく、実際に採用できた人員でピークのすべての営業をカバーできているか。どれか1つでも「いいえ」であれば、開店日を遅らせる、資格や専門職が少なくて済むよう絞ったメニューで開店する、正式な採用者のビザが下りるまで、すでに就労資格を持つ料理人に一時的に入ってもらう、のいずれかを選んでください。これを決めるのは4週間前であって、1週間前ではありません。

7. 開店が遅れやすいポイント

求人広告そのものについては日本の料理人向け求人票の書き方を、日本から呼ぶ料理人1人あたりの一時的な費用については海外での料理人採用コストの見積もりをご覧ください。

変わる数字:上記の各国別ガイドが示すビザ側のリードタイム、食品衛生資格の期限と講座の要件。16週間の現地採用の骨組み自体は変わりません。2026年9月27日確認、次回見直しは2027年3月です。

よくある質問

16週間の計画には料理長のビザも含まれますか。

含まれません。ビザが必要な職種は別の時計で動き、労働市場テストや審査期間を含めると12か月以上かかることが多く、海外出店時の人材計画と各国別ガイドで扱っています。本記事はその時計がすでに動いている前提で、それ以外の現地採用の順番とカレンダーを扱います。

60席の店には何人のスタッフが必要ですか。

公的な比率はないため、自店のシフトから組み立ててください。本記事の計算例(8席の寿司カウンターを持つ60席の居酒屋、1日2回転・週6日営業)では、休日、休暇のカバー、最初の数週間の余分な人手を含めて、合計でおよそ13〜19人になります。この数字をそのまま使うのではなく、第3節の方法に自店の目標客数を当てはめてください。

開店日が遅れる最も多い原因は何ですか。

ビザの結果が想定より遅れることと、それに続く内装工事の遅れで、待っている間に他の仕事に移ってしまうスタッフが出ることです。どちらも、開店週になって初めて問題に気づくのではなく、4週間前にフォールバック案を決めたGo/No-Go判断の理由になります。

計算したシフトぴったりの人数を採用すべきですか。

いいえ。入社しない人も、最初の数週間で辞める人もいるため、開店期間中は1人分ほどの余裕を持たせてください。忙しい夜に持ち場を1つ閉めるより安く済みます。

人件費や開店前の予算はどこで扱っていますか。

本記事では扱いません。ここで組み立てた必要人数にかかる月々のコストと、売上が立つ前にどれだけ支払うことになるかは海外出店の人件費予算にあります。

本記事は一般的な情報であり、法務・入国管理に関する助言ではありません。掲載したリードタイムとルールは2026年9月に確認したもので、変更されることがあります。開店日を決める前に関係当局にご確認ください。

出典

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