採用の進め方

日本人料理人と現地スタッフのマネジメント:厨房の実践ガイド

日本人料理人と現地スタッフの混成チームで今月から変えられること。用語集、レシピ標準、仕込みリストの雛形、指導のルール、3つの具体例、料理長が文書化や委譲を嫌がる場合の対応を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

混成チームがうまくいくのは、料理長の頭の中にしかない知識を文書にし、指導のルールを思い込みではなく合意で決めたときです。用語集、写真付きのレシピ標準、持ち場別の仕込みリストの3点を作り、料理長を通さずに相談できる窓口を用意し、対立が繰り返されたら人ではなく仕組みを変えるサインだと考えてください。店舗所在国の雇用法は、日本から採用した料理人を含む全員に適用されます。

このページは、日本人の料理長と現地スタッフがうまくいっておらず、今月中に具体的な手を打ちたいオーナー向けです。混成チームを1つのチームとして機能させるためのマネジメント習慣と、実際に使える成果物を扱います。他のページが扱う内容は繰り返しません。現地スタッフの技術を育てる研修プログラムは現地スタッフへの和食の教え方に、労働時間・残業・賃金の遵守事項は海外の和食店の労務管理の基本に、職種ごとに求める語学力は和食の厨房で求める語学力に、指導がハラスメントに変わる境界線は厨房のハラスメント防止方針にあります。

目次

  1. 摩擦はどこから生まれるか
  2. 今月作る3つの成果物
  3. 上下関係と指導の仕方
  4. 3つの具体例
  5. 料理長が文書化や委譲を嫌がる場合
  6. 2つのチームではなく1つのチームに
  7. オーナー・マネージャーがすべきこと

1. 摩擦はどこから生まれるか

海外の和食店の多くは、日本で修業した料理人が1人か数人、そして現地採用の調理スタッフ、キッチンハンド、ホールスタッフがその何倍もいる混成チームで運営されています。対立が料理そのものから始まることはあまりありません。始まりは、仕事の教え方、ミスの扱い方、1日の長さについての思い込みの違いです。繰り返し出てくるずれは3つあり、どれも「どちらの文化が正しいか」という話ではありません。

2. 今月作る3つの成果物

「もっとコミュニケーションを」という助言は何も変えません。次の3つの文書は変えます。今は料理長の頭の中にしかない知識を置き換えるものであり、料理人が辞めたときの備えにもなります。

1. 厨房用語集の雛形(1行に1用語、可能な範囲で写真を添える)
桂剥き(かつらむき)— katsura-muki — 野菜を薄く連続した帯状にむく技法
飾り切り(かざりきり)— kazari-giri — 装飾のための切り方
煮切り(にきり)— nikiri — みりんや酒を煮立ててアルコールを飛ばし、寿司の味付けに使うもの
シャリ — shari — 酢飯
まかない — makanai — 営業前のスタッフ食事
下ろす(おろす)— orosu — 魚をさばくこと
後ろ通ります(うしろとおります)— ushiro toorimasu — 背後を通るときの声かけ
熱いです/あちち — atsui desu — 皿や鍋を運ぶときの「熱いです」の声かけ
[自店の料理名、切り方、持ち場の用語を随時追加してください。]

2. レシピ標準の雛形(1料理につき1ページ)
料理名(日本語・現地語):___
持ち場:___ 出来上がり数量:___人前
材料(グラム表記):___
手順(分と温度で。「少々」「いい感じになるまで」は使わない):___
写真欄①:仕込みの状態
写真欄②:調理の途中経過
写真欄③:デシャップから見た最終盛り付け
よくある失敗と対処:___
作成者:___ 確認者(現地スーパーバイザー):___ 日付:___

3. 持ち場別仕込みリストの雛形
持ち場:___ シフト:___
開店前(時刻):作業 — 担当者 — 確認者
営業開始前(時刻):作業 — 担当者 — 確認者
営業中:注意する在庫の下限 — 補充担当者
シフト終了時:片付け・保管の作業 — 担当者

これらは日本人料理人ひとりにではなく、現地のスーパーバイザーと一緒に作ってもらいましょう。料理人が技術を示し、現地のスーパーバイザーが表現が伝わるかを確かめます。2人が先生と生徒ではなく、対等なパートナーとして働くきっかけにもなります。スキルの段階表も役に立ちます。キッチンハンドから仕込み担当へ、仕込みから火場へ、火場からカウンターへ上がるには何ができればよいかを書き出しておけば、「昇格は料理長の気分次第」という不満が減ります。

3. 上下関係と指導の仕方

厨房はどこの国でも上下関係のある職場です。違うのは権限の示し方です。指導の仕方について料理長と合意し、全員にそれを守ってもらいます。

4. 3つの具体例

出来事対応放置した場合のリスク
忙しい営業中、料理長がお客様の前でデシャップ越しに大声で指摘した。その日のうちに料理長と2人だけで話す。指摘の内容自体は問題なくても、声の大きさとお客様に聞こえる場所は問題。「指摘は個別に静かに行う」というルールを文書にし、次のシフトから適用する。怒鳴る対応が続けば、現地の法律上のいじめやハラスメントにあたりうる。現地スタッフが数週間で辞める典型的な理由でもある。
客足が引いた後も「営業はまだ終わっていない」という理由で、若手の休憩が認められない。自国・自州の休憩に関する規定を確認し、休憩のタイミングを持ち場別仕込みリストに組み込んで、その場の料理長の判断に左右されないようにする。法定休憩の未取得は、厨房の文化とは関係なく、多くの国で労働時間・賃金に関する法令違反にあたる。
厨房での在籍年数が長い日本人の若手より先に、現地の調理スタッフが持ち場に昇格した。第2章のスキルの段階表に照らして昇格を採点し、記録を示せるようにしておく。判断の理由を、双方にそれぞれの言語で個別に説明する。文書化された基準がなければ、昇格しなかった側には恣意的な判断に見え、結果がどちらに転んでも出身国に基づく偏りと受け取られかねない。

5. 料理長が文書化や委譲を嫌がる場合

レシピを文書にすることや後継者への指導を嫌がる料理人もいます。レシピを自分の資産だと感じている場合もあれば、教えることが自分の修業の一部ではなかった場合もあります。所有権の問題は正面から扱ってください。多くの雇用関係では、仕事の中で生まれたレシピや手法は個人ではなく事業のものですが、そう感じていない料理人は、こちらがそう言うだけでは協力してくれません。

6. 2つのチームではなく1つのチームに

7. オーナー・マネージャーがすべきこと

異文化の問題とされるものの多くは、実は料理長に任せきりにされたマネジメントの問題です。オーナーや総支配人は次のことを行ってください。

  1. 日本から採用した料理人全員に、現地の雇用ルール、職場での行動規範、ハラスメント防止方針を、着任前か着任時に日本語で説明する(日本から来る料理人のオンボーディング参照)。
  2. 料理長に、料理だけでなく人のマネジメントについての研修を受けてもらう。料理の腕で昇進した人が多いためです。
  3. 少なくとも月に1回、現地スタッフと直接話し、日本人料理人とは別に日本語で話す。
  4. 繰り返し起きる対立は、人を替えるだけでなく、仕組み(役割、シフト、指導のルール)を変えるべきサインとして扱う。

混成チームの厨房は、単一文化の厨房より運営が難しいものです。しかし、海外の和食店が層の厚さを築く道でもあります。日本から来た料理人がいずれ離れるときに料理の質を守るのは、彼らが育てた現地のチームです。

このページはマネジメントの実践を扱っており、期限のある数字を持ちません。変わりうるのは休憩・残業に関する雇用法で、その内容は海外の和食店の労務管理の基本で、独自の周期で見直しています。

よくある質問

最初に手をつけるべき、最も効果の大きい変更は何ですか。

料理長のレシピと基準を、写真付きで、現地の調理スタッフが二度聞かずに従える形で文書化することです。すぐに迷いがなくなり、その料理人が辞める日への備えにもなります。

料理長が営業中に大声で指摘します。問題でしょうか。

問題なのは指摘の内容そのものというより、声の大きさと聞かれている相手です。説明は営業後の静かな場に移し、その傾向が現地の法律上のハラスメントにあたらないか確認してください。厨房のハラスメント防止方針もご覧ください。

現地の調理スタッフにはどの程度の日本語を学ばせるべきですか。

オーダーや指示を安全に理解できる程度の厨房用語で十分で、講座ではなく1枚の用語集で教えるのが早道です。職種ごとにどこまで求めるかは和食の厨房で求める語学力をご覧ください。

料理長がレシピを文書にしてくれません。どうすればよいですか。

最も売れている料理から始め、かかる追加の時間には別途対価を払い、料理人が調理する横で現地のスーパーバイザーに記録してもらいます。これから採用する料理人については、内定通知の段階から文書化を職務に含めておきます。

日本から採用した料理人にも現地の雇用法は適用されますか。

適用されます。労働時間、残業、休憩、賃金のルールは、日本から異動してきた人を含む全従業員に、店舗が所在する国の法律がそのまま適用されます。海外の和食店の労務管理の基本をご覧ください。

本記事は一般的な情報であり、法的助言ではありません。日本から採用した人を含め、すべてのスタッフに店舗所在国の雇用法が適用されます。

出典

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