給与・コスト

料理人の採用コスト:自店の採用単価を自分で出す方法

飲食業に固有の採用単価の統計は存在しません。有効求人倍率と紹介手数料の平均額を土台に、5行の積み上げ式で自店の数字を作る方法を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

飲食店に固有の採用単価を示す公的統計は、日本にも他国にもありません。最も近い公式な数字は、有料職業紹介事業者が請求する手数料です。2024年度の常用就職1件あたり平均は約103万円(厚生労働省)。飲食物調理従事者の有効求人倍率は2026年7月で2.18倍と、全職業の約2倍で推移しています。以下の積み上げ式で自店の採用単価を出し、ビザ・渡航費は別枠で足してください。

このページは、1人の料理人を探して選考するのにかかる費用と、市場の逼迫度を扱います。ビザ費用・レビーと国際採用1件の総コストは海外からの料理人採用の予算の立て方に、離職率のベンチマークと1人辞めたときのコストは飲食店の離職率に、日本の調理職の有効求人倍率の全時系列は日本の調理人の労働市場データにあります。

目次

  1. 「採用難」を数字で確認する
  2. 自店の採用単価を出す:積み上げ例
  3. 離職率という掛け算の要素
  4. どこにお金をかけるか
  5. 今週やること
  6. よくある質問

1. 「採用難」を数字で確認する

厚生労働省は職業別の有効求人倍率を公表しており、飲食物調理従事者(パート含む)は2026年7月に2.18倍。全職業の1.05倍に対し、求職者100人に求人218件という水準です。2023年のピーク2.90倍からは下がっており、正直に言えば「毎年悪化している」という語り口は現在のデータでは支持されません。逼迫は構造的だが、ピークは過ぎた、というのが実際です。

分類の変更に注意してください。2022年4月以降、旧「調理の職業」区分はなくなり、対応するのは「飲食物調理従事者」です。古い区分名で検索しても最新値は出てきません。

全期間の推移や2022年の分類変更、接客・給仕職業との比較は日本の調理人の労働市場データにまとめています。予算を組むうえで大事なのはもっと単純な話で、これだけ逼迫した市場では、決まらない候補者にかけた時間は戻ってこない、という点です。これを金額にするのが次の章です。

2. 自店の採用単価を出す:積み上げ例

飲食業に固有の採用単価の統計は、日本にも、確認した範囲では他国にもありません。今も引用される「103万3千円」(リクルート、2019年度、中途採用、全産業平均)は6年前の数字で、この指標は2020年版を最後に公表が止まっています。

最も近い現行の数字は性質が違いますが、自店の積み上げの1行として使えます。厚生労働省「職業紹介事業報告」の2024年度分(2026年3月31日公表)によれば、有料職業紹介事業者が常用就職1件あたりに請求する手数料の平均は約103万円です。これは紹介手数料であって、採用にかかる全コストではありません。請求方式は2種類あり、上限制(新規採用者の最初の6か月の賃金の10.8%が上限)と、上限のない実費制です。見積もりを受け取る前に、どちらの方式かを紹介会社に確認してください。

以下を積み上げれば、借り物の平均値ではなく、自分で説明できる数字になります。

項目出し方積み上げ例(国内採用、円)
チャネル手数料紹介会社の請求書、または求人媒体のプラン料金1,030,000円(厚労省2024年度平均、上限制の紹介会社)
管理者の選考時間書類選考・面接の時間 × 実際の時間単価20時間 × 3,000円 = 60,000円
欠員期間のカバー欠員中の残業代・応援スタッフの費用8週間 × 50,000円 = 400,000円
教育時間先輩スタッフの時間(同時に生産の損失でもある)30時間 × 2,500円 = 75,000円
立ち上がりギャップフルスピードに達するまでの週数 × 生産性の不足分6週間 × 30,000円 = 180,000円
国内採用の合計1,745,000円

これは日本国内で1人の料理人を見つけて採用するまでの費用です。海外でその料理人を雇用する費用ではありません。国際採用では、ここにビザ費用、レビー、代行手数料、渡航・住居支援が乗ります。海外からの料理人採用の予算の立て方の積み上げでは、給与・雇用主負担・政府手数料だけで初年度がオーストラリアで約A$97,300、シンガポールで約S$65,400、米国E-2で約US$85,100、オンタリオ州で約C$78,000です。2つの数字は同じ予算の別々の行として扱ってください。1つにまとめないことが大切です。

同じ5行に自店の数字を入れてみてください。たいてい2つのことが分かります。採用単価の大半はチャネル手数料ではなく時間と欠員コストだということ、そして早期離職が1件起きると年間の採用予算が壊れるということです。だからこそ次の章が重要になります。

3. 離職率という掛け算の要素

上記の費用は、料理人が早期に辞めればもう一度発生します。公的なベンチマークを要約すると、米国の宿泊・飲食サービス業の自己都合離職率は2025年で月4.2%(全産業2.0%、BLS JOLTS)、シンガポールの飲食サービス業は月2.2%の離職率(全産業1.2%、MOM)、日本の宿泊業・飲食サービス業は2025年の離職率が23.7%(全産業13.7%、厚労省)。いずれも直近のピークからは下がっていますが、なお全産業平均のおよそ2倍です。

予算の判断に一番効くのは次の数字です。シンガポールの飲食サービス業では、一般従業員が月2.8%辞めるのに対し、専門職・管理職は月1.2%。国よりも役職のほうが定着を左右します。全時系列、1人辞めたときのコストの計算例、定着のためのチェックリストは飲食店の離職率にまとめており、ここでは繰り返しません。

4. どこにお金をかけるか

自店の採用単価が出たら、次の順でお金をかけてください。

  1. まず上位の役職に。上記のシンガポールの差(2.8%対1.2%)はこの分野で最も明確な根拠です。役職を上げて定着させれば、チャネル手数料を払う回数そのものが減ります。
  2. 求人の掲載より最初の30日間に。空港の出迎え、銀行口座開設の同行、住居の段取り。1件あたりは安く、早期離職を防ぐのはここです。
  3. 露出を増やす前に求人票を書き直す。追加コストなしで応募の質を変えられる唯一の施策です。テンプレートは寿司職人の求人票。
  4. 成功報酬型をたまに使うより、固定費型のチャネルを常時回す。離職率が構造的に高い以上、採用は単発ではなく継続業務です。年間で見れば固定費のほうが安くつくことが多いです。
  5. お金をかける前にビザ経路を確認する。合法的に雇えない候補者にかけた時間は純粋な損失です。国別の就労ビザまとめを参照してください。

5. 今週やること

変わる数字:厚労省の有効求人倍率(毎月)、厚労省「職業紹介事業報告」の手数料平均(毎年春、前年度分)、BLSとMOMの離職率(毎年春)。2026年9月27日確認。

よくある質問

料理人を1人採用するのにいくらかかりますか。

飲食業に固有の数字はありません。チャネル手数料、管理者の選考時間、欠員期間のカバー、教育時間、立ち上がりギャップの5行で自店の数字を作ってください。国内採用の積み上げ例は約174万5千円です。国際採用ではここにビザ費用、レビー、渡航・住居支援が乗ります。総額は海外からの料理人採用の予算の立て方を参照してください。

日本には公式の平均採用単価がありますか。

現在はありません。リクルートの就職白書は2019年度版(中途採用103万3千円、全産業平均)を最後に採用単価の公表をやめています。現在参照できる最も近い数字は、厚労省の2024年度の紹介手数料平均約103万円ですが、これはチャネル手数料であり、全コストではありません。

今、日本の調理職の採用はどれくらい厳しいですか。

2026年7月時点で、飲食物調理従事者の有効求人倍率は2.18倍(全職業1.05倍)。2023年のピーク2.90倍からは下がっているので、人手不足はやや和らいでいますが、毎年悪化しているわけではありません。

離職率は本当に採用予算に影響しますか。

直接影響します。1人辞めるたびに、チャネル手数料、欠員コスト、教育時間がもう一度発生します。米国の宿泊・飲食サービス業も、シンガポールの飲食サービス業も、離職率はおおむね全産業平均の2倍。日本の宿泊業・飲食サービス業の離職率も全産業平均のおよそ1.7倍です。

ビザや渡航費用は採用予算のどこに入りますか。

採用コストとは別枠です。このページは料理人を探して選ぶ費用を扱っており、給与・雇用主負担・政府手数料・渡航支援は海外からの料理人採用の予算の立て方で扱っています。

本記事の数値は、各機関が公表した値をその期間表示とともに引用しています。公的統計が存在しない項目については、数字を代用せず「存在しない」と記載しました。

出典

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