海外出店|衛生・品質管理

海外レストランの防虫防鼠:NYC検査の配点と物件・業者契約・日常点検

ニューヨーク市検査でネズミ・ゴキブリ・ハエが5〜8点、最重度28点となる配点、シンガポールの防除契約要件(12か月以上・月1回以上)と減点制度、Food Code 2022の4つの対策と開口部・ベイトステーション規定をもとに、物件選び、業者との契約項目、日々の点検と発見時の対応を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 検査での扱い:ニューヨーク市の配点を例に
  2. 規則が求める4つの対策
  3. 物件と内装の段階で決まること
  4. 防除業者との契約で決めること
  5. 日々の点検表
  6. ごみと不要品:餌と隠れ場所を減らす
  7. 見つけたときの対応

ネズミやゴキブリは、海外の飲食店検査で最も厳しく扱われる項目の一つです。料理の品質や温度管理がどれほど良くても、厨房でネズミのふんが見つかれば、評価が下がるだけでなく、営業停止につながることがあります。しかも、防虫防鼠の成否は、日々の清掃だけでなく、物件の構造や建物全体の管理に大きく左右されます。この記事では、ニューヨーク市の検査規則、米国FDAのFood Code 2022、シンガポール食品庁(SFA)の開業要件、英国の食品衛生評価制度、日本の手引書をもとに、物件選びから日常点検までの防虫防鼠の進め方を整理します。

1. 検査での扱い:ニューヨーク市の配点を例に

ニューヨーク市保健局は、少なくとも年1回、予告なしで飲食店を検査し、違反の点数に応じてA・B・Cの評価を付けます。点数が低いほど評価が高く、13点以下でA、再検査で14〜27点ならB、28点以上ならCです(市規則第23章)。害虫に関する違反は次の4つで、程度(条件レベルI〜V)に応じて点数が決まります。

違反レベルI〜IVレベルVレベルの目安(市規則の例示)
4K ネズミ(ラット)の痕跡または生体5〜8点28点店内で新しいふん1〜10個でレベルI。生きたラット3匹以上やふん100個超などでレベルV
4L ハツカネズミの痕跡または生体5〜8点28点1か所に新しいふん1〜10個でレベルI。生きたネズミ2匹以上やふん100個超などでレベルV
4M 生きたゴキブリ5〜8点28点1〜5匹でレベルI。生きたゴキブリ20匹超などでレベルV
4N ハエ類などの害虫5〜8点28点イエバエ、クロバエ、ニクバエ、チョウバエ、ノミバエ、ショウジョウバエなどを含む

レベルVの例示には、検査官が事務所に連絡して閉鎖などの措置を協議する、と書かれています。なお、種類の違う害虫が同時に見つかった場合は、種類を問わず最も高い条件レベルで1件の害虫違反として採点されます(ネズミのふんとゴキブリがどちらもレベルIIなら、合計ではなく6点)。仮に、1か所でネズミのふんが31〜70個見つかり(レベルIII、7点)、校正済みの温度計がない違反(4J、5点)と2点の一般違反が重なれば、合計14点で初回検査のA評価を逃します。害虫の違反は、1つの発見で評価の境目を越えやすい項目です(→開業前衛生点検の記事)。

シンガポールでは、食品安全違反に減点(デメリット)ポイントが付き、12か月以内に12点以上たまると営業許可の停止や取消しの対象になります。2026年1月に始まったSAFE制度では、許可停止は「重大な違反」として扱われ、評価は直ちにCに下がります。英国の食品衛生評価(0〜5の6段階)でも、防虫防鼠は清潔さ、配置、照明、換気とともに「施設の物理的状態」の評価要素で、衛生状態が非常に悪く差し迫った健康リスクがあれば、営業の一部または全部が止められることがあります。

2. 規則が求める4つの対策

Food Code 2022の6-501.111は、施設を昆虫、げっ歯類、その他の害虫がいない状態に保ち、次の方法で管理することを求めています。

  1. 入荷する食品と資材を日常的に点検する。
  2. 施設内に害虫の痕跡がないか日常的に点検する。
  3. 害虫が見つかった場合は、わななどの方法で駆除する。
  4. 害虫の隠れ場所となる状態をなくす。

関連する規定として、外に通じる開口部は、床・壁・天井の穴やすき間をふさぎ、窓を閉じてすき間がないようにし、扉は自動で閉まる堅牢な扉にすること(6-202.15)、換気などで窓や扉を開けておく場合は16メッシュ(1インチあたり16目)以上の網戸やエアカーテンなどで防ぐことが定められています。ショッピングモール、空港、オフィスビルなど大きな建物の中にある店で、その建物の外部開口部が守られている場合は、この規定は適用されません。

殺鼠剤の餌は、ふた付きでいたずらできない構造のベイトステーションに入れること(7-206.12)、殺虫成分を含むトラッキングパウダーは使わないこと(7-206.13)、使用制限農薬は認定を受けた散布者かその直接の監督下でのみ使うことも定められています。わなにかかった害虫や死がいは、たまったり腐敗したりしない頻度で取り除きます(6-501.112)。

3. 物件と内装の段階で決まること

防虫防鼠の条件の多くは、賃貸借契約と内装工事の段階で決まります。シンガポールSFAの飲食店向け事前チェックリストには、防虫防鼠に関係する設計要件が並んでいます。

物件を内見するときは、既存のふんやかじり跡、配管の貫通部のすき間、裏口とごみ置き場の位置、隣接する飲食店の状態を確認します。建物全体の害虫管理を家主やビル管理者が行うのか、テナントが自分で行うのか、共用部で見つかった場合の費用負担はどうなるのかも、契約前に確認しておきたい項目です(→物件調査の記事)。

4. 防除業者との契約で決めること

シンガポールでは、署名済みの害虫防除契約が飲食店営業許可の書類要件で、ネズミ、ゴキブリ、ハエを対象に少なくとも12か月、点検・処理の頻度は少なくとも月1回と定められています。SFAは2024年12月の通達でも、登録された害虫防除業者を使い、ひび割れなどの隠れ場所をすぐに補修するよう求めています。日本の手引書の衛生管理計画の記載例では、そ族・昆虫対策の頻度を「6月と11月」の年2回としており、出店先によって求められる頻度が大きく違うことが分かります。

業者と契約するときは、少なくとも次の点を書面で決めます。

項目決めること
対象ネズミ類、ゴキブリ、ハエ類(チョウバエ、ショウジョウバエを含むか)、その他
頻度定期点検の間隔(シンガポールは月1回以上が要件)、繁忙期や発見時の臨時対応の条件
設置図ベイトステーションやモニタリング用トラップの位置と番号を記した図面
報告書毎回の点検結果、捕獲数、使用薬剤、指摘事項を書面で受け取り、店で保管
薬剤の使用条件営業時間外の作業、食品・器具の退避や被覆、作業後の洗浄の分担

5. 日々の点検表

防除業者の月1回の点検だけでは、発生を早く見つけられません。店のスタッフが行う点検を、清掃表と同じ用紙に組み込みます。

和食店では、米、乾物(昆布、かつお節、干し椎茸)、ごまなどの乾燥食材を多く保管します。これらは袋のまま床に置かず、ふた付きの容器に移して棚に置くことで、発生源と餌を同時に減らせます。

6. ごみと不要品:餌と隠れ場所を減らす

害虫を呼び寄せる最大の要因は、生ごみと、使っていない物の山です。Food Code 2022は、ごみや資源ごみの容器について、店内では食品残渣が入っていて常時使っていない場合や満杯になった後はふたをすること、屋外に置く場合はぴったり閉まるふたや扉を付けることを定めています(5-501.113)。容器は汚れを防げる頻度で洗浄し(5-501.116)、ごみそのものは、においや害虫を引き寄せる状態を最小限にする頻度で搬出します(5-502.11)。施設内には、使わなくなった設備などの不要品やごみを置かないことも求められています(6-501.114)。

和食店では、魚のあら、貝殻、出汁がら、揚げかすなど、においの強い生ごみが毎日出ます。これらは閉店まで厨房に置かず、ふた付きの容器で決まった時刻にごみ置き場へ出す、ごみ置き場の回収頻度が足りなければ家主や回収業者と増便を交渉する、といった点を開業前に決めておきます。壊れた冷蔵庫や使わない什器を倉庫や裏口に置いたままにすることも、ネズミやゴキブリの隠れ場所を増やします。

7. 見つけたときの対応

日本の手引書は、作業中にそ族・昆虫を見つけた場合、可能な限り駆除するとともに、繁殖場所や侵入経路を確認して必要な対策をとる、という対応例を示しています。海外の店では、これに次の手順を加えます。

  1. 汚染の範囲を確認する:ふんや死がいが見つかった周辺の食品、器具、包装資材を確認し、汚染の可能性がある食品は廃棄します。
  2. 清掃・消毒する:見つかった場所と周辺を洗浄・消毒し、ふんを取り除いた後にもう一度確認できるようにします。
  3. 業者に臨時点検を依頼する:侵入経路の特定と封鎖を依頼し、報告書を受け取ります。
  4. 記録する:発見日時、場所、数、対応、業者の報告を残します。次の検査で同じ場所に痕跡があった場合、対応の記録があるかどうかで、管理が機能しているかの判断が変わります。

要点:防虫防鼠は「見つけてから駆除する」より「入らせない、住ませない」の比重が大きい分野です。物件の構造、ごみの扱い、乾物の保管、業者の契約内容を開業前に決めておくことが、開業後の検査対策になります。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

和食料理人を採用しませんか?

世界中の和食料理人が登録するWashokuJobに、貴店の求人を掲載できます。