海外出店|物件・設計

海外の飲食店物件を内見する:用途・建築年・厨房条件・設備経路の確認リスト

NYCの使用許可証(CO)とアスベスト調査(ACP-5/ACP-7)、FDA Food Code 2022と英国食品衛生規則が求める手洗い器・トイレ・照度・換気などをもとに、和食店の物件内見で確認する書類、厨房条件、排気・電気・給排水の経路をチェックリストにまとめます。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 内見の前に取り寄せる書類
  2. 建物の「法的な用途」を公的記録で確かめる
  3. 建築年を聞く理由:ニューヨークのアスベスト調査
  4. 厨房になる部分の確認:衛生基準が求める物理条件
  5. 排気・電気・給排水・ガスの経路を図面で追う
  6. 搬入口、ごみ置き場、客の動線
  7. 内見チェックリスト

海外の物件内見は、日本より1回の重みが大きくなります。遠方から出張して見られる回数が限られるうえ、一度署名すると、許可が取れない・設備が足りないと分かっても賃料は止まりません。この記事では、和食店の候補物件を内見するときに、建物の法的な用途、建築年、厨房の衛生要件、設備の経路、搬入とごみの動線を1回で確認するための手順をまとめます。米国の食品衛生のモデル規則であるFDA Food Code 2022、英国の食品衛生規則、ニューヨーク市建築局(DOB)の公開情報を根拠にしています。

シンガポールの用途承認と排気の許可前要件は出店判断の記事で扱ったので、ここでは他の都市の確認方法と、どの国でも共通する厨房の物理条件を中心にします。

1. 内見の前に取り寄せる書類

現地に行く前に、仲介業者か家主から次の書類を取り寄せておくと、内見の時間を「書類と現物の食い違いを探す」ことに使えます。

書類がそろわないこと自体が判断材料になります。家主が使用許可証や図面を出せない物件は、許可申請の段階で同じ書類を求められたときに止まる可能性が高いからです。

「前も飲食店だったから大丈夫」は、海外でも通用しないことがあります。前テナントが許可の範囲を超えて営業していた、あるいは軽食の許可で営業していた、ということがあるためです。

ニューヨーク市では、DOBの説明によると、使用許可証(CO)は建物の法的な用途と、許可された占有の種類を示す書類です。新築の建物には必ず必要で、既存の建物でも用途、避難経路(egress)、占有の種類を変える場合には、新しいCOまたは変更したCOが必要になります。COは住所から検索でき、2021年3月1日より前に発行されたものは建築情報システム(BIS)、それ以降はDOB NOWの物件ページで、階ごとの用途とあわせて確認できます。1938年より前に建てられた建物は、その後の改修で用途・避難経路・占有を変えていなければCOがなくてもよく、合法的な用途の証明として区のDOB事務所に「Letter of No Objection」を求めることができます。

内見では、COに書かれた用途と階、許容人数が、自分の計画(客席数、階をまたぐ使い方、地下の利用)と合っているかを確認します。客席数が増えると避難経路や集会用途の扱いが変わるため、席数の考え方は客席設計の記事もあわせて見てください。英国の用途区分(Use Class E)はイングランドの記事で扱っています。

要点:用途の確認は仲介業者の口頭説明ではなく、公的な記録で行います。記録と現況が違う場合は、用途変更の手続きと期間を見積もってから契約条件を交渉してください。

3. 建築年を聞く理由:ニューヨークのアスベスト調査

古い建物では、内装を壊す前にアスベストの有無を調べる手続きが必要になることがあります。ニューヨーク市では、DOBの工事許可を出す前に、環境保護局(DEP)の認定を受けたアスベスト調査員(Certified Asbestos Investigator)が調査を行い、工事がアスベスト工事に当たるかどうかを判断します。

和食店の内装では、排気ダクトの貫通、厨房の床の防水、配管の引き直しなど、既存の天井・壁・床を壊す工事がほぼ必ず発生します。1987年以前の建物なら、調査費と、除去が必要になった場合の期間を、工事工程と賃料発生日の交渉に織り込んでおく必要があります。他の国でも古い建物の解体・改修には同様の規制があることが多いため、内見時に建築年を必ず聞いてください。

4. 厨房になる部分の確認:衛生基準が求める物理条件

厨房の衛生要件は国ごとに条文が違いますが、求めている物理条件はよく似ています。米国のFDA Food Code 2022(州や郡が採用するモデル規則)と、英国の食品衛生規則(Regulation (EC) No 852/2004の附属書IIを英国法として引き継いだもの)から、内見で確認できる項目を抜き出すと次のとおりです。

項目FDA Food Code 2022英国の食品衛生規則(附属書II)内見で見ること
手洗い器最低1台。調理・盛付け・洗浄の各場所で従業員が使いやすい位置と、トイレの中かすぐ隣に設置(5-203.11、5-204.11)手洗い器には温水と冷水、手を洗い乾かす用品が必要厨房内の給水・排水の取出し位置。追加の手洗い器を置ける壁があるか
トイレ最低1つ、かつ法令が求める数以上(5-203.12)。営業時間中、従業員が使いやすい位置(6-402.11)十分な数の水洗トイレ。食品を扱う部屋に直接開いてはならないトイレの扉が厨房に直接開いていないか。客用と従業員用の数
照明包丁などを使う作業面で540ルクス以上、手洗い・洗浄・トイレで215ルクス以上、冷蔵室や乾物庫で108ルクス以上(6-303.11)十分な自然光または人工照明天井高と照明の増設余地
換気熱、蒸気、結露、臭気、煙を除くのに必要なら十分な能力の機械換気(6-304.11)適切で十分な自然換気または機械換気排気ダクトの経路(→排煙計画)
清掃用シンクモップ洗い用のサービスシンクか、床排水付きの清掃場所を最低1つ。トイレをモップ水の廃棄に使ってはならない(5-203.13)—床排水の位置。サービスシンクを置く場所
床・壁・天井清掃しやすい材料と仕上げ(第6章)床・壁は不浸透・洗浄可能・非毒性の材料。天井は汚れやかびの付着を防ぐ構造既存の仕上げを残せるか、全面やり直しか
排水逆流防止(5-203.14)汚れた区域から清潔な区域へ排水が流れない構造床の勾配、排水の位置、グリーストラップ
更衣日常的に着替えるなら更衣場所を指定し、私物のロッカー等を設ける(6-305.11)必要に応じて更衣設備更衣とロッカーの場所が取れるか
水の量給水・給湯はピーク時の需要を満たす容量(5-103.11)—給水管の口径と給湯器の設置場所(→電気と水)

和食店に特有の注意点は、洗い物と仕込みで水を大量に使うことです。寿司店や定食店では米を研ぐシンク、魚をおろすシンク、食器洗浄機がそれぞれ給排水を必要とします。既存の排水の位置から離れた場所に水回りを置くと床を上げるか配管を掘ることになり、工事費と工期が一気に増えます。内見では、平面図に既存の排水の位置を書き込み、自分の厨房レイアウトの水回りと重ねてみてください(→厨房レイアウト)。

5. 排気・電気・給排水・ガスの経路を図面で追う

内見で最も時間をかけるべきなのは、厨房の外につながる「経路」です。室内の広さや内装は工事で変えられますが、経路は建物の構造と他のテナントとの関係で決まり、変えられないことが多いからです。

  1. 排気:フードからの排気ダクトを、どこを通してどこから外に出すか。共用シャフトを使えるか、外壁を貫通できるか、屋上まで何階分あるか。上階が住宅なら臭気の苦情が起きやすい点も確認します。
  2. 給気:排気した分の空気を補う給気口をどこに設けるか。排気だけ強くすると店内が負圧になり、扉が重くなったり、隣の区画から臭気を引き込んだりします。
  3. 電気:契約容量と、容量を増やす場合の引込み工事の要否。電気式の食器洗浄機、IH、スチームコンベクションオーブンを使う計画なら特に重要です。
  4. ガス:ガスの引込みがあるか、配管の径と圧力は計画の機器に足りるか。建物によってはガスを使えないこともあります。
  5. 給排水とグリーストラップ:給水管の口径、給湯器の置き場所、グリーストラップの位置と容量、点検のためのアクセス。

それぞれの経路について、内見には設備業者か、現地で同種の飲食店を手がけた設計者に同行してもらうのが確実です。経路が確認できない物件は、契約書に「許可と設備工事が可能であることを条件とする」旨を入れられるかを交渉する材料になります(→賃貸契約の読み方)。

6. 搬入口、ごみ置き場、客の動線

設備と同じく、建物の使い方の決まりも工事では変えられません。

7. 内見チェックリスト

内見当日に持っていく確認表です。「確認方法」の列にある書類や測定は、その場でできないものも含みます。空欄のまま残った項目は、契約前に追加で確認する項目として扱います。

分類確認項目確認方法
法的条件公的記録上の用途・階・許容人数が計画と合うCO(NYC)、用途承認(SG)、計画許可記録(英国)
法的条件前テナントの営業許可の種類家主への書面での質問、保健当局の公開情報
建物建築年、アスベスト調査の要否家主の資料、調査員の見積り
建物天井高、梁の位置、床の耐荷重図面と実測
排気ダクトの経路と排出位置、給気の確保設備業者の同行、図面
電気契約容量(アンペア・相数)、増設の可否分電盤の銘板、電力会社への照会
ガス引込みの有無、配管の径と圧力ガスメーター、ガス会社への照会
給排水給水管の口径、排水の位置、グリーストラップの有無と容量図面、現地確認
衛生手洗い器・トイレ・清掃用シンクを置ける位置、トイレが厨房に直接開かない平面図に計画を重ねる
運用搬入時間と経路、ごみ置き場、室外機の置き場管理規約、管理会社への質問
客入口の視認性、段差、車いすでの入店現地確認、写真
近隣上下階と両隣の用途、過去の苦情現地確認、管理会社への質問

内見では、すべての場所を写真と動画で記録し、分電盤の銘板、ガスメーター、排水口、天井裏の点検口の中も撮っておきます。日本にいる料理長や設計者と後から確認するとき、現地に戻らずに判断できる材料になります。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

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