海外出店|物件・設計

海外和食店の客席設計:収容人数・出口・車いす席と厨房能力から席数を決める

英国Approved Document Bの1人1.0m²と60人で出口2つ、米国IBCの15平方フィートと49人、NYCの75人の集会場証明、ADAの5%・28〜34インチ・通路36インチを整理し、焼き台とホールの能力から「売れる席数」を出す計算例を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 席数を決める3つの上限:法規、厨房、ホール
  2. 法規の上限:床面積から収容人数を出す
  3. 収容人数で変わる出口の数と幅
  4. 車いすで使える席と通路(米国ADAの例)
  5. 厨房とホールの能力から「売れる席数」を出す
  6. カウンター、テーブル、個室の組み合わせ
  7. 席数を決めるための確認表

客席の数は売上の上限を決めるため、物件を検討するときには「何席取れるか」に目が行きがちです。しかし海外では、席数を増やすと避難経路や出口の数、車いす対応の席、店の許可の種類まで変わることがあります。そして法規上置ける席数と、厨房とホールのスタッフが実際にさばける席数は別物です。この記事では、英国の建築規則の指針(Approved Document B)、米国の国際建築基準(IBC)と障害を持つアメリカ人法(ADA)の設計基準を例に、法規の上限と運営の上限の両方から席数を決める方法を説明します。

1. 席数を決める3つの上限:法規、厨房、ホール

席数には、少なくとも3つの上限があります。

  1. 法規の上限:床面積と避難経路から決まる収容人数、トイレの数、車いす対応の要件。これを超える席は置けません。
  2. 厨房の上限:ピークの時間に、厨房が何人分の料理を、決めた提供時間内に出せるか。
  3. ホールの上限:ピークの時間に、ホールのスタッフが何卓の注文、配膳、会計を回せるか。

席数は、この3つのうち最も小さいものに合わせるのが基本です。法規上は40席置けても、厨房が30人分しか出せなければ、残りの10席は料理を待たせる席になり、評価を下げる原因になります。逆に、厨房とホールの能力に余裕があっても、法規の上限を超えた席は置けません。

2. 法規の上限:床面積から収容人数を出す

多くの国の建築・防火の規則は、部屋の床面積を「1人あたりの面積」で割って収容人数を出します。

基準レストランの客席の係数その他の係数の例
英国 Approved Document B 第2巻(イングランド)表D1食堂・レストラン:1人あたり1.0m²提供カウンターから2m以内のバーの立ち席:0.3m²、固定席のないバー:0.5m²、厨房:7.0m²
米国 国際建築基準(IBC 2021)表1004.5テーブルと椅子の集会用途(unconcentrated):1人あたり正味15平方フィート(約1.39m²)立ち席:正味5平方フィート、業務用厨房:総面積200平方フィート

英国の指針では、面積にカウンターや陳列台は含め、階段室、エレベーター、トイレ、建物の固定部分は除きます。また、通常は着席している場合は、固定席の数を収容人数とすることもできるとされています。米国ではIBCを州や市が採用して独自に修正しているため、実際の数値は出店先の建築基準で確認します。

計算例です。仮に客席部分の床面積が60m²だとすると、英国の係数では60人、IBCの係数(約1.39m²)では43人が収容人数の目安になります。和食店では、立ち飲みのカウンターを設けるとその部分の係数が小さくなり(英国なら0.3m²)、収容人数が一気に増えることに注意が必要です。

3. 収容人数で変わる出口の数と幅

収容人数が決まると、必要な出口の数と幅が決まります。英国のApproved Document B(第2巻)の表は次のとおりです。

最大人数部屋・階から必要な避難経路・出口の最小数(表2.2)避難経路・出口の最小幅(表2.3)
60人まで1750mm
61〜110人2850mm
111〜220人21,050mm
221〜600人21人あたり5mm
600人超31人あたり5mm

つまり、英国の係数で客席が60m²を超えると収容人数が60人を超え、出口が2つ必要になります。路面店で入口が1つしかない物件なら、席数(収容人数)を60人以内に抑えるか、2つ目の避難経路を確保できるかを検討することになります。

米国のIBC 2021では、集会用途(A)で出口が1つの空間の最大収容人数は49人です。係数15平方フィートで計算すると、テーブル席の客席で約735平方フィート(約68m²)を超えると、出口が2つ必要になる計算です。ニューヨーク市では、75人以上が集まる屋内空間には建築局の集会場の使用証明(Place of Assembly Certificate of Operation)が必要になります(→ニューヨーク市の記事)。

要点:席数を1つ増やすことで、出口の追加や許可の種類の変更が必要になる「境目」があります。英国なら60人、米国のIBCなら49人、ニューヨーク市なら75人といった境目の手前で計画するか、超えるなら必要な工事と手続きを見積もってから決めてください。

4. 車いすで使える席と通路(米国ADAの例)

米国では、2010年ADA設計基準が飲食店の客席に具体的な要件を定めています。

和食店で気をつけたいのは、寿司カウンターや高いカウンター席、小上がり(座敷)です。客が飲食するカウンターも飲食のための面にあたるため、カウンターの天板が34インチより高い設計なら、カウンター席の5%以上を28〜34インチの高さにする、あるいは同じ体験ができる低い席を設けるなどの対応を設計者と検討します。小上がりは段上げの客席にあたるため、そこにしかない眺めやサービスがある場合は、経路の確保が必要か設計者に確認してください。

英国のApproved Document Bも、避難経路の幅はアクセシビリティの指針であるApproved Document Mによってさらに広くする必要がある場合があると注記しています。国ごとに数値が違うため、出店先の基準で確認が必要です。

5. 厨房とホールの能力から「売れる席数」を出す

法規の上限が分かったら、次に運営の上限を出します。ここは公的な基準がないため、自店の料理とサービスの形から計算します。以下はすべて仮定の数字による計算例です。

厨房の能力:仮に、夜のピーク(19時〜20時)に、焼き台1台で1時間に120本の串を焼けるとします。1人あたり平均6本注文されるなら、焼き台がさばけるのは1時間に20人分です。客の滞在が平均1時間半で、ピークの1時間に来店するのが全席の3分の2だとすると、焼き台だけで見た席数の上限は30席(20人÷3分の2)になります。

ホールの能力:仮に、1人のホールスタッフがピーク時に無理なく担当できるのが5卓(4人掛けで約20席)だとします。2人体制なら約40席です。和食店は、料理の説明、日本酒の提案、器の多いコースの配膳など、1卓あたりの手間が多い業態です。自店のサービスの形で、1人が担当できる卓数を開業前の模擬営業で確かめてください(→模擬営業の記事)。

この例では、法規上は60席まで置けても、焼き台の能力は30席、ホール2人で40席となり、「売れる席数」は30席です。席を増やすなら、焼き台を2台にするか、焼き物以外の料理の比率を上げる必要があります。

6. カウンター、テーブル、個室の組み合わせ

同じ床面積でも、席の種類の組み合わせで、売上と運営の負担が変わります。

席の種類向いている来店動機運営上の特徴計画上の注意
カウンター1〜2人客、料理人との会話を楽しむ客、おまかせ料理人が直接サービスでき、ホールの手間が少ない。1〜2人客で席が埋まりやすい車いす対応の高さの席、足元の空間
2人掛けテーブルカップル、少人数つなげて4人席にでき、柔軟つなげたときの通路幅
4人掛けテーブル家族、グループ2人客で使うと席の稼働率が下がるピーク時の2人客の扱い
個室・小上がり接待、記念日、グループ単価は高いが、稼働が予約に左右される避難経路、段差、車いすの経路

来店動機ごとの客の人数構成(1人、2人、4人以上の割合)が分かっていれば、席の組み合わせを合わせられます。昼の定食店なら1〜2人客が多いためカウンターと2人席中心、夜の居酒屋ならグループ向けの4人席と個室を増やす、といった具合です。来店動機の整理は商圏選びの記事、予約の組み方は予約枠の設計を参照してください。

7. 席数を決めるための確認表

確認項目確認方法
客席部分の床面積(除外部分を除く)実測、図面
出店先の収容人数の係数と計算結果出店先の建築・防火基準
必要な出口の数と幅、物件の現状基準の表、図面、現地確認
許可の種類が変わる人数の境目出店先の規則(NYCなら75人の集会場証明など)
車いす対応の席の数・高さ・通路幅出店先のアクセシビリティ基準
厨房のピーク能力(1時間あたりの提供数)料理長と試作・試験調理で計測
ホールのピーク能力(1人あたりの担当卓数)模擬営業で計測
客の人数構成と席の組み合わせ来店動機の調査、競合店の観察

席数は、物件の賃料が見合うかどうかの判断に直結します。席数と回転数から出した売上で、賃料を含む費用をまかなえるかは損益分岐点の記事で確認してください。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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