海外出店|物件・設計

和食店の厨房レイアウト:搬入から洗浄まで動線を一方向に描く

厚労省マニュアルの汚染・非汚染区域の考え方と、FDA Food Codeの寿司ネタと生肉の分離、手洗い器の位置、3槽シンク・77℃・82℃の洗浄基準、床上15cmの保管、SFAの頭上排水管の禁止などから、和食店の厨房図面を確認する手順を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 「一筆書き」で描く理由:汚れた側から清潔な側へ
  2. 和食店の厨房を7つの工程に分ける
  3. 生の肉と寿司ネタを同じ動線に乗せない
  4. 手洗い器は「使う場所」に置く
  5. 洗浄エリアの広さは、洗い物の量とシンクの規定で決まる
  6. 保管:床から離し、汚れの下に置かない
  7. 業態別のレイアウトの勘所
  8. 図面で動線を追う確認表

和食店の厨房は、魚をおろす、米を炊く、出汁をとる、焼く、揚げる、握る、と工程が多く、それぞれに水と火と作業台が要ります。海外の物件は日本より狭い、または形が細長いことも多く、機器を「置けるところに置く」と、生の食材と完成品、汚れた器と洗った器が同じ通路で交差する厨房になりがちです。この記事では、食材が届いてから器が洗い終わるまでを一本の線で追い、その線が交差しないように配置を考える方法を、米国のFDA Food Code 2022と、日本の厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」の考え方をもとに説明します。

1. 「一筆書き」で描く理由:汚れた側から清潔な側へ

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成29年6月16日改正の通知で確認)は、施設を汚染作業区域(検収場、原材料の保管場、下処理場)と非汚染作業区域に分け、非汚染作業区域をさらに準清潔作業区域(調理場)と清潔作業区域(放冷・調製場、製品の保管場)に分けて、明確に区別することを求めています。手洗い設備は各作業区域の入口手前に置き、床はできるだけ乾いた状態で使う「ドライシステム」を積極的に目指すことが望ましいとしています。

このマニュアルが適用されるのは、同じメニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設です。一般的な和食店は対象外ですが、「汚れた食材が入ってくる側から、清潔な料理が出ていく側へ、一方向に流す」という考え方は、規模に関係なく厨房レイアウトの基本になります。海外の保健当局の図面審査でも、生の食材と調理済みの食品が交差しない配置かどうかは必ず見られます。

要点:厨房図面の上で、食材の流れ(入口から客席まで)と器の流れ(客席から洗浄、保管まで)を別の色で1本ずつ引き、線が交差する場所を探してください。交差点が、衛生と作業効率の両方の問題点です。

2. 和食店の厨房を7つの工程に分ける

配置を考える前に、自店の料理を工程に分けます。和食店では次の7つに分けると整理しやすくなります。

工程主な作業必要な設備区域の性格
1. 搬入・検収納品物の温度・品質の確認、段ボールの開梱検収台、温度計、台車の通路汚染
2. 保管冷蔵、冷凍、乾物、米の保管冷蔵庫・冷凍庫、棚、米びつ汚染
3. 下処理魚をおろす、鶏肉を切る・串を打つ、野菜を洗う、米を研ぐシンク(用途別)、まな板、作業台汚染
4. 加熱調理焼く、揚げる、煮る、炊く、出汁をとる焼き台、フライヤー、コンロ、炊飯器、排気フード準清潔
5. 盛付け・仕上げ刺身を引く、寿司を握る、盛付けネタケース、作業台、手洗い器清潔
6. 提供料理の受け渡し、配膳パス(受け渡し台)清潔
7. 下げ・洗浄・ごみ下げた器の残飯処理、洗浄、乾燥、ごみの一時保管下げ台、洗浄機、シンク、水切り台、ごみ容器汚染(洗った後の器は清潔)

工程1〜3は汚れた側、工程5〜6は清潔な側です。工程7は、汚れた器が入ってきて、清潔な器として出ていく、厨房の中にもう一つの「一筆書き」を作る場所です。

3. 生の肉と寿司ネタを同じ動線に乗せない

和食店の配置で特に注意が要るのは、生のまま出す魚と、加熱して出す肉や魚が同じ厨房にあることです。FDA Food Code 2022(3-302.11)は、交差汚染を防ぐために次のことを求めています。

つまり、焼き鳥用の生の鶏肉と、寿司用の生の魚は、規則の上では「別のもの」として分けて扱う必要があります。配置で対応するなら、鶏肉の下処理(串打ち)をする台と、刺身や寿司ネタを切る台を分け、それぞれにまな板と包丁と冷蔵庫の置き場を決めます。場所が足りない場合は時間で分けますが、その場合は切り替えの間に洗浄・消毒する手順を決めておく必要があります。手順の作り方は交差汚染の防止の記事で扱っています。

冷蔵庫の中でも同じ考え方が必要です。1台の冷蔵庫に入れる場合、そのまま食べる食品を上の段、加熱が必要な生の肉を下の段にして、汁が垂れても完成品にかからないようにします。

4. 手洗い器は「使う場所」に置く

手洗い器の数と位置は、図面審査で最もよく指摘される項目の一つです。FDA Food Code 2022では次のように定められています。

「厨房の奥に1台」では、寿司カウンターの板前が手を洗うたびに厨房の奥まで歩くことになり、実際には洗わなくなります。シンガポールのSFAのチェックリストも、厨房の従業員用にハンドソープ付きの手洗い器を少なくとも1台求め、2槽シンクの片方を手洗い専用にする場合は蛇口を別々にすること、蛇口はセンサー式が望ましいことを示しています。和食店では少なくとも、下処理の場所、加熱調理の場所、寿司カウンターなどの盛付けの場所、洗浄の場所のそれぞれから数歩で届く位置に手洗い器が必要になると考えて、給排水の位置を計画します。

5. 洗浄エリアの広さは、洗い物の量とシンクの規定で決まる

和食店は器の数が多い業態です。小鉢、醤油皿、箸置き、丼、汁椀、寿司下駄と、1人の客に何枚も器を使います。洗浄エリアが狭いと、営業のピークに下げた器が積み上がり、洗った器を置く場所がなくなって、汚れた器と洗った器が混ざります。

FDA Food Code 2022の洗浄に関する主な定めは次のとおりです。

項目Food Code 2022の定めレイアウトへの影響
手洗い用のシンク手で器を洗う場合、洗浄・すすぎ・消毒のために少なくとも3槽のシンクを設ける。各槽は最も大きい器具が浸かる大きさ(4-301.12)寸胴や大きな飯台が浸かる3槽シンクの幅
水切り台営業中にたまる汚れた器と洗った器をすべて置ける大きさの水切り台、ラック、台を設ける(4-301.13)シンクの両側に「汚れ物」と「洗い上がり」の台
手洗いでの熱湯消毒熱湯に浸けて消毒する場合、77℃以上を保つ(4-501.111)給湯能力、ブースターヒーター
洗浄機での熱湯消毒最終すすぎの湯は90℃以下で、据置ラックの単一温度機は74℃以上、その他の機械は82℃以上(4-501.112)洗浄機の電気容量と給湯
薬剤での消毒塩素系は濃度とpHに応じた最低温度で使う(例:50〜99mg/Lなら、pH10以下で38℃以上、pH8以下で24℃以上)(4-501.114)濃度を測る試験紙の置き場
乾燥洗浄・消毒後の器は自然乾燥するか十分に水を切ってから使い、布で拭いて乾かしてはならない(4-901.11)乾燥用のラックの置き場

配置の基本は、客席からの「下げ口」を洗浄エリアの汚れ物側につなげ、洗い上がった器が盛付けの場所に向かって出ていく流れにすることです。下げた器を持ったホールのスタッフが、盛付け台の前を横切らないように通路を分けます。洗浄機の最終すすぎの温度と給湯の関係は電気と水の記事で扱っています。

6. 保管:床から離し、汚れの下に置かない

保管場所の配置にも、Food Codeの具体的な定めがあります。

シンガポール食品庁(SFA)の飲食店許可の事前チェックリストはさらに具体的で、マンホール、点検桝、排水槽、グリーストラップ、頭上の汚水・雑排水管を、食品の調理・加熱・保管・提供を行う区域に置かないことを求めています。英国の食品衛生規則(附属書II)も、排水が汚れた区域から清潔な区域へ流れない構造を求めています。海外の物件では、天井裏に上階の排水管が通っていることがよくあります。保管棚を置く場所の上に排水管がないかは、内見のときに天井の点検口から確認しておくと安心です(→物件内見の確認リスト)。

7. 業態別のレイアウトの勘所

同じ考え方でも、業態によって「交差しやすい場所」が違います。

8. 図面で動線を追う確認表

設計者から図面を受け取ったら、次の項目を図面の上で確認します。

確認項目見るところ
食材の流れが一方向か搬入口→検収→保管→下処理→加熱→盛付け→パスの線が、途中で逆行・交差しないか
器の流れが一方向か下げ口→汚れ物置き場→洗浄→水切り・乾燥→保管→盛付けの線が、盛付け台を横切らないか
生の肉と生食用の魚の分離下処理の台、まな板、冷蔵庫の置き場が分かれているか、時間で分ける場合の手順があるか
手洗い器の位置下処理、加熱、盛付け、洗浄の各場所とトイレの近くにあるか
洗浄エリアの広さ3槽シンクの大きさ、両側の水切り台、乾燥ラックの置き場
保管の位置床から15cm以上の棚、排水管の下やトイレ・ごみ置き場の近くにないか
ごみの経路ごみの搬出が食材の搬入と同じ扉・通路を同時に使わないか
人の流れホールのスタッフが厨房の作業場所を通らずに受け渡しと下げができるか

図面上で問題がなさそうでも、開業前のリハーサルで実際に料理と器を流すと、想定外の交差が見つかります。リハーサルの進め方は模擬営業の記事を参照してください。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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