海外出店|物件・設計

海外和食店の電気と水:日本の厨房機器を持ち込む前の電圧・認証・給排水

日本の100V・50/60Hzと、NYCの120/208V、英国・シンガポールの230Vの違い、米OSHAのNRTL認証要件、SP Groupの容量区分、手洗い29.4℃・エアギャップ25mm・間接排水、PUBのグリーストラップ基準から機器購入前の確認表を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 電圧と周波数:日本の厨房機器がそのまま使えない理由
  2. 安全認証:変圧器で動いても「使ってよい」とは限らない
  3. 電気容量:機器リストから必要な容量を出し、引込みを確認する
  4. 給水・給湯:ピーク時の量と温度
  5. 排水:間接排水とグリーストラップ
  6. ガス:使える燃料と機器を確かめる
  7. 機器を買う前の確認表

海外で和食店を開くとき、「使い慣れた日本の炊飯器や製麺機、焼き台を持って行きたい」という相談はよくあります。ところが、日本の電気は100Vで、北米は120V、英国やシンガポールは230Vと、国によって電圧と周波数が違います。さらに、動けば使ってよいわけではなく、多くの国で職場の電気機器には現地の安全認証が求められます。水についても、給湯の能力、手洗いの温度、排水のつなぎ方に具体的な基準があります。この記事では、厨房機器を買う・送る前に確認すべき電気と水の条件を、各国の公式情報をもとに整理します。

1. 電圧と周波数:日本の厨房機器がそのまま使えない理由

主な出店先の電気の条件を、各国の規則や電力会社の資料で確認できた範囲でまとめます。

国・都市電圧周波数出典の種類
日本標準電圧100V(101Vの上下6V以内)、200V(202Vの上下20V以内)東日本50Hz、西日本60Hz電気事業法施行規則第38条、経済産業省資料
ニューヨーク市(Con Edison管内)三相4線120/208V、単相120V など。負荷や場所により三相265/460V60Hz(米国)Con Edisonの電気設備仕様、米国商務省資料
英国低圧は相と中性線の間で230V(上10%・下6%の範囲)50Hz(上下1%)Electricity Safety, Quality and Continuity Regulations 2002 第27条
シンガポール低圧は単相230V(最大23kVA、100A)、三相400V50HzSP Groupの接続申請ハンドブック

日本の100V機器を230Vの国で使うには降圧用の変圧器が要り、120Vの北米でも電圧が合いません。日本国内でも東西で周波数が違うため、機器の銘板に「50/60Hz」と両方書かれているか、片方だけかを確認します。圧縮機やモーターを使う冷蔵庫、製氷機、製麺機、食器洗浄機は、周波数が違うと性能が変わったり、使えなかったりすることがあるため、メーカーに現地の電圧・周波数での使用可否を書面で確認してください。

日本の業務用機器には、標準電圧200Vの三相で動くものもあります。現地の三相の電圧(208V、400Vなど)とは一致しないため、同じ型番の現地仕様品があるかどうかも確認点です。

2. 安全認証:変圧器で動いても「使ってよい」とは限らない

電圧を変圧器で合わせて機器が動いたとしても、現地の規則上その機器を店で使えるとは限りません。

米国:職場の電気機器は「承認」されたものに限る

米国労働安全衛生局(OSHA)の規則(29 CFR 1910.303(a))は、電気の導体と機器は1910.399で定義する「承認(approved)」を受けたものでなければ認めないとしています。1910.399では、OSHAが認定した全国認定試験所(NRTL)が認証・リスト掲載・ラベル表示などで安全と判断したものが「受け入れ可能(acceptable)」とされています。また、リスト掲載やラベル表示のある機器は、その条件に含まれる指示どおりに設置・使用しなければなりません(1910.303(b)(2))。レストランの厨房も職場なので、厨房機器は米国の認証機関のマークがあるものを選ぶのが基本です。変圧器を介して使うことが、認証の条件に合うかどうかも確認が必要です。

衛生面では、FDA Food Code 2022(4-205.10)が、米国規格協会(ANSI)認定の認証プログラムで衛生の認証を受けた食品機器は、設備の材質・設計の要件を満たすものとみなすと定めています。電気の安全認証と衛生の認証は別のものなので、両方を確認します。

英国:輸入者にも義務がある

英国のElectrical Equipment (Safety) Regulations 2016は、交流50〜1000V、直流75〜1500Vで使う電気機器を対象とし、製造者、その代理人、輸入者、販売業者に義務を課しています。日本から自社で機器を持ち込んで使う場合、自社がどの立場にあたり、どの表示(UKCAや、英国で認められているCEマーク)が必要になるかを、輸入の前に確認してください。英国政府の指針は2025年3月25日に更新されています。

要点:日本の機器を持ち込むかどうかは「現地で認証された同等品があるか」を先に調べてから決めます。多くの場合、炊飯器や製氷機は現地仕様の業務用品を買い、日本から持ち込むのは電気を使わない道具(包丁、まな板、寿司桶、焼き網など)に絞るほうが、許可と保守の両面で問題が少なくなります。

3. 電気容量:機器リストから必要な容量を出し、引込みを確認する

和食店の厨房では、炊飯器、食器洗浄機、IHコンロ、スチームコンベクションオーブン、冷蔵・冷凍庫、製氷機、給湯器、排気ファンと、電気を多く使う機器が並びます。物件の電気容量が足りないと、引込みの増設工事が必要になり、工期と費用が大きく変わります。

手順は次のとおりです。

  1. 機器リストを作る:機器ごとに、電圧、相(単相・三相)、消費電力(kWまたはA)を銘板やカタログから書き出します。
  2. 同時に使う機器を見積もる:営業のピークに同時に動く機器の合計を出します。
  3. 物件の容量と比べる:分電盤の主幹ブレーカーの容量、相、電力会社との契約を確認します。
  4. 足りなければ電力会社に照会する:増設の可否、工事の期間と費用。

ニューヨーク市の電力会社Con Edisonの電気設備仕様は、「新しい設備では、電気機器を購入する前に、供給される電気の特性についてCon Edisonに相談すること」と明記しています。同社の標準的な供給は三相4線120/208Vや単相120Vで、負荷の大きさや場所によっては三相265/460Vもあります。機器の電圧が208Vなのか240Vなのかは、購入前に確認しておく必要があります。

シンガポールでは、電力網を運営するSP Groupの資料によると、低圧の単相230Vは最大23kVA(100A)までで、それを超える場合は三相400Vになります。低圧で電力網から直接受けられるのは280kVA(400A)までで、それを超える場合は需要家側で変電設備を用意します。申請は、商業施設では有資格の電気技術者(Licensed Electrical Worker)が行う必要があり、資格の区分によって扱える容量が決まっています(Licensed Electricianは45kVAまで、Licensed Electrical Technicianは設計150kVAまで、Licensed Electrical Engineerは上限なし)。SP Groupは、申請には通常10営業日以内に回答するとしています。

4. 給水・給湯:ピーク時の量と温度

和食店は、米研ぎ、魚の下処理、野菜洗い、食器洗浄で水を多く使い、営業のピークには給湯の需要も重なります。FDA Food Code 2022は次のように定めています。

項目Food Code 2022の定め計画での確認点
給水・給湯の能力給水はピーク時の需要を満たす能力、給湯設備もピーク時の給湯需要を満たす能力(5-103.11)食器洗浄機、シンク、手洗い器の同時使用で湯が足りるか
手洗い器の湯混合栓などで29.4℃(85°F)以上の湯を出せること。自動で閉まる蛇口は、再操作なしで15秒以上水を出すこと(5-202.12)手洗い器まで給湯管を引けるか
逆流防止(エアギャップ)給水口と器具のあふれ縁の間の空間は、給水口の直径の2倍以上、かつ25mm以上(5-202.13)シンクや機器の給水の取付け方
洗浄機の湯最終すすぎは90℃以下で、機種により74℃または82℃以上(4-501.112)ブースターヒーターの要否と電気容量

給湯器の能力は、電気かガスかで設置場所と容量が変わります。食器洗浄機のブースターヒーターは電気を大きく使うことが多いため、第3章の電気容量の計算に含めてください。

5. 排水:間接排水とグリーストラップ

排水には、衛生と環境の2つの基準がかかります。

ニューヨーク市の環境保護局(DEP)のグリース規則(油脂の堆積を液深の25%以下に保つ、添加物の禁止など)は、居抜き物件の記事で詳しく扱っています。

6. ガス:使える燃料と機器を確かめる

ラーメンの寸胴、天ぷらの揚げ場、ガス炊飯器など、和食の厨房はガスに頼る機器が多くあります。確認することは次の3つです。

ガスが使えない物件では、IHや電気式の機器に置き換えることになり、その分の電気容量が必要になります。ガスの有無は、電気容量の計算より先に確認してください。

7. 機器を買う前の確認表

確認項目確認方法
物件の電圧・相・容量分電盤の銘板、電力会社への照会
機器の電圧・相・周波数・消費電力銘板、カタログ、メーカーへの書面照会
電気の安全認証(米国ならNRTLのマークなど)銘板のマーク、認証機関のリスト
衛生の認証(米国ならANSI認定の認証)銘板のマーク、メーカーの資料
同時使用のピーク容量と、増設の要否機器リストから計算、電気技術者の確認
給湯の能力と温度給湯器の仕様、洗浄機のブースターの有無
手洗い器・シンクの給排水図面上の配管位置、エアギャップと間接排水の取り方
グリーストラップの容量・位置・承認図面、当局の基準
ガスの有無・種類・圧力ガス会社・家主への照会
日本から持ち込む物の範囲電気・ガス機器か、道具類か

ここで確認した容量と配管の位置は、物件の選定と厨房の配置に直接関わります。内見時の確認は物件内見の確認リスト、配置の考え方は厨房レイアウトの記事を参照してください。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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