海外出店|国・地域別の開業

イングランドで和食店を開く|食品営業登録・Premises Licence・物件用途・税の要点

英国の日本食店1,820店(2年で560店増)の概況、Companies House登録(£100)、無料・開業28日前の食品営業登録と衛生評価FHRS、用途区分E(b)、課税評価額で決まるPremises LicenceとDPS、VAT20%、シェフのビザ制約を整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:英国の日本食店は2年で560店増
  2. イングランドで必要な登録と許可の一覧
  3. 会社設立:Companies Houseで最短24時間
  4. 食品営業登録:無料・拒否されない・開業28日前
  5. 衛生検査と衛生評価(FHRS)
  6. 物件:用途区分と課税評価額を確かめる
  7. 酒類:Premises LicenceとDPS
  8. 日本食材の輸入
  9. 税:法人税19〜25%、飲食提供はVAT20%
  10. 日本人料理人のビザ:シェフは新規のSkilled Workerが使えない
  11. 手続きの順番
  12. 公的費用を見積もる(仮の計算例)

英国は地域ごとに制度が分かれていて、食品衛生は英国食品基準庁(FSA)がイングランド・ウェールズ・北アイルランドを、酒類免許はイングランドとウェールズで共通のLicensing Act 2003が扱います。この記事はイングランド、主にロンドンでの出店を想定し、会社設立、食品営業登録、衛生検査、物件の用途、酒類のPremises Licence、税、料理人のビザを、2026年9月時点のGOV.UKとFSAの公式ページで確認した内容で整理します。イングランドの食品営業は「許可制」ではなく「登録制」で、登録そのものは拒否されません。その代わり、開業後の衛生検査の結果が評価として公開されます。

1. 市場:英国の日本食店は2年で560店増

農林水産省の2025年調査では、英国の日本食レストランは約1,820店で、2023年から約560店増えました。欧州ではフランス(約3,390店、1,290店減)、イタリア(約2,160店、300店減)が減るなかで、英国とオランダ(約1,550店、370店増)が伸びています。調査は国単位のため、イングランドだけの数字はありません。

外務省の統計(2025年10月1日現在)では、英国の在留邦人は62,270人、大ロンドン市は30,515人(前年比3.5%減、都市別7位)です。ロンドンの在留邦人は減る一方で店舗数は大きく増えており、英国の日本食は現地の消費者が支える市場になっていると読めます。

2. イングランドで必要な登録と許可の一覧

手続き窓口費用(2026年9月確認)時期・日数
会社設立Companies Houseオンライン£100(郵送£124)オンラインは通常24時間以内、郵送は8〜10日
食品営業登録地元自治体(council)無料営業開始の28日前までに
Premises Licence(酒類)地元自治体(licensing authority)申請料£100〜£1,905(課税評価額の区分による)申請通知を28日間店舗に掲示
Personal Licence(DPS用)地元自治体認定資格の取得が前提Premises Licence申請前に
VAT登録HMRC—課税売上が£90,000超(または30日以内に超える見込み)
用途の確認地元自治体(planning)—賃貸借契約の前に

3. 会社設立:Companies Houseで最短24時間

GOV.UKの案内では、オンラインでの会社登録は£100で、通常24時間以内に登録されます。郵送(様式IN01)は8〜10日かかり£124です。取締役は1人以上必要で16歳以上、取締役が英国に住んでいる必要はありませんが、会社の登記上の住所は英国に置く必要があります。会社秘書役の選任は任意です。登録の画面で、法人税の手続きやPAYE(従業員の源泉徴収)の登録もまとめて進められます。

4. 食品営業登録:無料・拒否されない・開業28日前

イングランド、ウェールズ、北アイルランドでは、食品を販売・調理・保管・取り扱う事業は、地元自治体への登録が必要です。FSAのガイダンス(2026年6月25日更新)は、営業開始の少なくとも28日前に登録するよう求め、あまり早く登録せず28日前を目安にするよう勧めています。FSAの開業準備ページによると、登録は無料で、拒否されることはありません。既存の店を引き継ぐ場合も新たに登録します。

登録と並行して、次の準備が求められます。

FSAの「Safer Food, Better Business」は、FSAがHACCPに基づく食品安全管理システムの例として挙げるもので、個人衛生、害虫対策、交差汚染、清掃などの内容が入っています。和食店では、生魚、酢飯、出汁の温度管理をどう記録するかをHACCPの計画に落とし込むことになります。書き方は食品安全計画の記事で扱っています。

5. 衛生検査と衛生評価(FHRS)

登録すると、自治体の食品安全担当官または環境衛生担当官(FSAではなく自治体の職員)が検査に来ます。検査では、施設、食品の衛生的な取り扱い、食品安全管理システムが見られ、記録や手順の確認に加えて食品のサンプル採取や写真撮影が行われることもあります。

結果は食品衛生評価制度(Food Hygiene Rating Scheme)で0〜5の6段階で評価され、自治体が公表します。料理の質や接客は評価の対象外です。FSAは「すべての事業者が最高評価の5を取れるはず」としていて、5に届かなかった場合は担当官が改善点を示します。評価は公開されるため、開業直後の最初の検査で低い評価がつくと、その後の集客に響きかねません。開業前の模擬点検を工程に入れておく価値があります(開業前の検査対応)。

6. 物件:用途区分と課税評価額を確かめる

イングランドの用途区分では、店内で主に飲食する飲食店はClass E(b)(主に店内で消費される飲食物の販売)に入ります。一方、主に持ち帰りで食べる温かい料理の店(hot food takeaway)と、パブ・ワインバーなどの飲酒店は、2020年9月1日からどの区分にも属さない「sui generis」になりました。Class Eの物件でも、持ち帰り中心のラーメン店や酒場色の強い居酒屋を計画している場合は、計画許可が必要にならないか自治体に確認しておく必要があります。

物件の課税評価額(rateable value)は、酒類免許の申請料と年間手数料の区分を決めます(次節)。評価額は評価庁(Valuation Office Agency)のサイトで確認できます。

7. 酒類:Premises LicenceとDPS

内務省のガイダンスによると、酒類を継続的に販売・提供する事業者は店舗ごとのPremises Licenceが必要です。酒類を販売する店舗には、日々の運営に責任を持つ「指定店舗責任者(DPS)」を置かなければならず、DPSはPersonal Licenceの保有者でなければなりません。Personal Licenceは18歳以上で、原則としてBIIAB Level 2などの認定資格を取得していることが申請の条件です。

申請には、申請者とDPSの情報、店舗の詳細図面、酒類の販売時間などを書いた営業計画(operating schedule)が必要で、申請通知を提出日の翌日から28日間、店舗に掲示しなければなりません。警察や消防などの関係当局や住民から意見(representation)が出なければ、自治体は営業計画と法定条件に沿った条件で許可しなければなりません。意見が出た場合は審問が開かれ、決定に不服があれば治安判事裁判所に上訴できます。

申請料は、Licensing Act 2003 (Fees) Regulations 2005の区分表で、課税評価額に応じて次のとおりです(GOV.UKは申請料の幅を£100〜£1,905としています)。

区分課税評価額申請料
A評価額なし〜£4,300£100
B£4,300〜£33,000£190
C£33,001〜£87,000£315
D£87,001〜£125,000£450
E£125,001以上£635

区分DとEで、主に店内での酒類提供を目的とする店舗は、この2倍・3倍になります(規則4条)。飲食が主体のレストランであれば通常は上の表の額です。500人未満・168時間以内の催しであれば、Temporary Event Notice(臨時催事届)で酒類を出せるため、ポップアップでの試験営業に使えます。

8. 日本食材の輸入

農林水産省の資料では、英国は原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を2022年6月に撤廃しています。放射性物質に関する産地証明は求められません。鮮魚や和牛などを自社で輸入する場合は、原発事故関連とは別に英国側の輸入要件があるかを、輸入業者や通関業者と品目ごとに確認してください。

9. 税:法人税19〜25%、飲食提供はVAT20%

10. 日本人料理人のビザ:シェフは新規のSkilled Workerが使えない

GOV.UKの職種コード表では、シェフ(5434)は「Medium Skilled(中位技能)」に分類されています。中位技能の職種でSkilled Workerビザを申請できるのは、その職種が移民給与リスト(Immigration Salary List)か一時的不足職種リスト(Temporary Shortage List)に載っている場合などに限られ、2026年9月時点でシェフはどちらにも載っていません。つまり、日本から料理人を新たにスポンサーして呼ぶ道は、現状では大きく狭まっています。採用の現実的な選択肢は2025年以降の英国での日本人料理人採用で整理しています。

11. 手続きの順番

  1. 物件の用途区分(E(b)かsui generisか)と課税評価額を確認し、排気ダクトの経路を設計者と確かめる。
  2. Companies Houseで会社を登録し、法人税とPAYEの登録を済ませる。
  3. 賃貸借契約を結び、DPSになる人のPersonal Licence取得(資格講座の受講)を始める。
  4. 店舗図面と営業計画を作り、Premises Licenceを申請して28日間の掲示期間に入る。
  5. 内装工事と並行してHACCPの計画とスタッフ研修を用意し、開業の28日前に食品営業登録をする。
  6. 開業後の最初の衛生検査に備え、記録と手順を開業日から運用する。

12. 公的費用を見積もる(仮の計算例)

仮に、課税評価額が£40,000のロンドンの路面店(区分C)で、飲食が主体のレストランを会社形態で開くとします。この場合、行政に払う主な費用は、会社のオンライン登録£100、食品営業登録£0、Premises Licenceの申請料£315です。これに、DPSになる人のPersonal Licence取得のための資格講座の受講料と自治体への申請料、Premises Licenceの年間手数料(区分ごとに別の表で定められています)が加わります。

金額そのものは開業費全体から見れば小さい一方、日数は小さくありません。Premises Licenceは申請から最低28日の掲示期間があり、意見が出れば審問まで進みます。食品営業登録も28日前が目安です。つまり、開業日の少なくとも1カ月以上前に、店舗図面と営業計画が確定している必要があります。内装の設計が遅れると、この2つの手続きがそのまま後ろにずれます。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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