海外出店|衛生・品質管理

海外和食店の温度記録:米英豪の基準比較と、測る場所・異常時の対応

冷蔵5℃・8℃・10℃、温蔵57℃・60℃・63℃と国で異なる基準を比較し、Food Codeの冷却・再加熱・凍結記録、豪州3.2.2Aの記録義務(3か月保管)、寿司飯の時間管理とpH記録、冷蔵庫故障や停電時の対応表、保管期間の決め方を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 冷蔵・温蔵・冷却の基準は国ごとに違う
  2. どこを測るか:庫内温度計と食品の中心温度
  3. 何を記録するか:受入、保管、冷却、再加熱、凍結
  4. 温度の代わりに「時間」で管理する方法
  5. 基準を外れたときの対応を先に決める
  6. 記録の保管期間と、検査で見られる点

温度記録は、衛生管理の中で最も「形だけ」になりやすい作業です。毎朝同じ数字が並ぶ記録表は、冷蔵庫が壊れた日に何をすべきかを教えてくれません。この記事では、米国FDAのFood Code 2022、ニューヨーク市保健法典、英国(イングランド)の温度管理規則、豪州のStandard 3.2.2・3.2.2A、シンガポール食品庁(SFA)の通達、日本の手引書をもとに、出店先の基準に合わせて「どこを、いつ、何度で測り、外れたら何をするか」を決める方法を整理します。

1. 冷蔵・温蔵・冷却の基準は国ごとに違う

日本で使っている記録表の基準値をそのまま使うと、出店先の基準を満たさないことがあります。下の表は、2026年9月時点で各機関の公開文書で確認した数字です。

項目米国(Food Code 2022)ニューヨーク市英国(イングランド)豪州日本の手引書(参考)
冷蔵保持5℃以下5℃以下8℃を超えて保管すると違反(陳列中4時間未満などの抗弁あり)5℃以下冷蔵庫内10℃以下を例示
温蔵保持57℃以上60℃以上63℃未満は違反(2時間未満などの抗弁あり)60℃以上-
加熱後の冷却57℃→21℃を2時間以内、→5℃以下を合計6時間以内60℃→21℃を2時間以内、21℃→5℃をさらに4時間以内-60℃→21℃を2時間以内、21℃→5℃をさらに4時間以内米国基準と、国内給食施設向けのより厳しい目安(30分以内に20℃以下、1時間以内に10℃以下)を紹介
再加熱74℃で15秒、2時間以内に到達73.9℃(165°F)で15秒、2時間以内に到達し、60℃以上で保持-60℃以上まで速やかに(2時間以内)-
冷凍凍結状態を保つ----15℃以下を例示

英国の数字は「食品安全・衛生(イングランド)規則2013」附則4の規定で、8℃を超える温度での保管や63℃未満での温蔵を違反とし、一定の条件を満たす場合の抗弁(陳列中で4時間未満、温蔵で2時間未満など)を設けています。シンガポールSFAは2024年12月の通達で、そのまま食べる食品を5〜60℃の危険温度帯に4時間を超えて置かないよう求めています。

要点:複数の国に出店する予定がある場合、記録表の基準値は「最も厳しい値」にそろえると運用が単純になります。冷蔵は5℃以下、温蔵は63℃以上にしておけば、上の表のどの基準も満たします。

2. どこを測るか:庫内温度計と食品の中心温度

温度の測り方は、規則で具体的に決まっています。

豪州FSANZの解説には、冷蔵庫の中に水を入れたボトルを置き、毎日プローブ温度計で水温を測って記録用紙に書き、その用紙を3か月保管する、という例が載っています。空気の温度は扉の開閉で大きく動くため、食品に近い温度を測る方法として参考になります。

3. 何を記録するか:受入、保管、冷却、再加熱、凍結

豪州のStandard 3.2.2Aは、カテゴリー1の事業者(生の食材からそのまま食べる要温度管理食品を作るレストランなど)に、次の工程の記録を義務づけています。どの国に出店する場合でも、記録項目の設計に使える一覧です。

工程示すこと(豪州3.2.2Aの例)記録すること和食店での例
受入要温度管理食品を5℃以下(温かいものは60℃以上)で受け取った品名、受入日時、温度鮮魚、刺身用の柵、鶏肉、豆腐
保管5℃以下または60℃以上で保管した冷蔵庫ごとの温度、日付ネタケース、ウォークイン
冷却60℃→21℃を2時間以内、21℃→5℃を4時間以内それぞれにかかった時間と温度、日付出汁、煮物、チャーシュー、茶碗蒸しの地
再加熱冷却済みの食品を2時間以内に60℃以上へ再加熱にかかった時間と到達温度、日付仕込み済みのスープやカレー
陳列5℃以下で陳列した陳列中の食品温度カウンターのネタケース

和食店では、これに生食用の魚の凍結記録が加わります。Food Code 2022は、寄生虫対策として生食用の魚を-20℃以下で7日間などの条件で凍結することを求め(3-402.11)、責任者が凍結の温度と時間を記録し、提供・販売から90日間保管することを定めています。仕入先が凍結した魚であれば、仕入先の書面による確認で代えられます(3-402.12)。ニューヨーク市の保健法典も同じ凍結条件を定めています(§81.09)。

酢で酸性化した寿司飯を常温で保管する場合は、温度ではなくpHを記録します。米国の食品保護会議(CFP)の指針は、pH計の校正記録、寿司飯のpH測定記録、是正措置の記録、責任者による確認記録、研修記録を挙げています。

4. 温度の代わりに「時間」で管理する方法

寿司飯やカウンターに出した寿司ネタのように、営業中ずっと冷やしておくのが難しい食品は、時間で管理する方法があります。

時間で管理する場合、記録するのは温度ではなく「出した時刻」と「期限の時刻」です。ニューヨーク市の食品保護講習の教材には、「寿司飯と生魚」を例にした6時間ルールの追跡ラベル(品名、保持温度、出した時刻、4時間時点の温度、廃棄時刻)が載っています。

5. 基準を外れたときの対応を先に決める

日本の手引書は、冷蔵庫の温度に異常があった場合の対応例として、原因を確認して設定温度を調整するか修理を依頼し、食材の状態に応じて使用しないか加熱して提供する、と示しています。海外の店では、判断する人が不在でも現場が動けるよう、数字で対応を決めておきます。

状況(例)その場の対応記録と報告
始業前点検で冷蔵庫が基準を超えている庫内の食品の温度を測る。基準内なら別の冷蔵庫へ移し、設定と扉を確認。食品も基準を超えていて、いつから超えていたか分からない場合は廃棄する、と店のルールで決めておくのが安全庫内温度、食品温度、移した先、廃棄した品名と量。責任者に報告し修理を手配
冷却が2時間で21℃(豪州・米国の中間基準)に届かない再加熱して冷却をやり直すか、廃棄するか。どちらが認められるかを保健当局の指導で確認し、手順書に書いておく冷却開始時刻、2時間時点の温度、とった措置
寿司飯のpHが管理基準(CFP指針ではpH 4.2未満)に届かない別の試料で再測定し、それでも基準以上なら酢を追加して再測定。時間管理への切替、冷却して冷蔵、廃棄も選択肢是正措置の記録
停電・断水が長引くFood Code 2022では、承認済みの緊急時運営計画がない限り営業を止めて保健当局に連絡する(8-404.11)停止時刻、再開の承認

CDCが2025年3月に公表した2014〜2022年の食中毒分析では、増殖に関わる寄与要因として「調理中に食品を長時間温度管理の外に置いたこと」が13.1%、「提供・陳列中に長時間温度管理の外に置いたこと」が11.5%、不適切な冷蔵保持が10.2%、不適切な温蔵保持が10.1%、不適切な冷却が9.4%を占めました(寄与要因の情報がある2,677件に対する割合)。記録の目的は、この「長時間」を作らないことにあります。

6. 記録の保管期間と、検査で見られる点

保管期間は制度によって異なります。豪州3.2.2Aの記録は作成から3か月(リステリアの潜伏期間を踏まえた期間と説明されています)、米国Food Codeの凍結記録は提供後90日、ニューヨーク市のHACCPプランの記録は喫食後少なくとも90日、CFPの寿司飯指針は少なくとも6か月(または管轄の定め)、日本の手引書は1年間程度を目安にしています。複数の制度にまたがる場合は、最も長い期間に合わせるのが安全です。

検査官が見るのは、記録があるかどうかだけではありません。豪州の解説は、記録は営業中いつでも取り出せる状態にしておくこと、日付(必要なら時刻)と対象の食品・工程を書くことを求めています。毎日まったく同じ数字が並んでいる、基準外の数字があるのに対応欄が空白、という記録は、かえって管理が機能していない証拠になります。電子の温度ロガーを使う場合も、異常時に誰に通知が届き、誰が対応を記録するかまで決めておいてください。仕入時の記録はロット管理とも関係します(→ロット管理の記事)。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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