海外出店|衛生・品質管理

海外和食店のロット管理:FSMA204の対象食品と回収連絡に答える受入記録

米国の食品トレーサビリティ規則(執行は2028年7月20日以降)の対象食品と飲食店の記録項目・免除条件(年25万ドル以下など)、Food Codeの貝タグと凍結記録の90日保管、EU一般食品法の一歩前原則をもとに、受入記録と仕込み品ラベルでロットをつなぎ、回収連絡に対応する手順を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 飲食店に求められるのは「一歩前」をたどれること
  2. 米国の食品トレーサビリティ規則:対象食品と期限の現状
  3. 飲食店が記録する項目と、免除・緩和の条件
  4. すでに適用されている記録:貝のタグと生食用魚の凍結記録
  5. 店内でロットをつなぐ:仕込み品ラベル
  6. 回収連絡を受けたときの手順

仕入先から「〇月〇日出荷の冷凍えびを回収します」と連絡が来たとき、店がすぐに答えなければならないのは、その商品を受け取ったか、いつ、どれだけ、すでに使ったか、残りはどこにあるか、の4点です。和食店は鮮魚、貝類、葉物、薬味、卵など、回収の対象になりやすい食材を多く扱います。この記事では、EUの一般食品法、米国FDAの食品トレーサビリティ規則(FSMA第204条)、Food Code 2022、シンガポール食品庁(SFA)の考え方をもとに、回収連絡に対応できる受入記録とロット管理の作り方を整理します。

1. 飲食店に求められるのは「一歩前」をたどれること

EUの一般食品法(規則178/2002)第18条は、食品事業者に対し、食品や原材料を「誰から」供給されたかを特定できること、自社の製品を「どの事業者に」供給したかを特定できる仕組みを持つことを求めています(第18条は2005年1月1日から適用)。一般に「一歩前・一歩後」と呼ばれる考え方で、消費者に直接提供するレストランの場合、実務の中心は「一歩前」、つまり仕入先と受入の記録です。第19条は、自社が扱った食品が安全要件を満たさないと考える理由がある事業者に、直ちに回収手続きを始め、当局に知らせることを求めています。

シンガポールSFAの食品安全管理システム(FSMS)の説明も、前提条件プログラムの例として「回収とトレーサビリティのプログラム」を挙げ、正確な記録が食品安全事故の原因究明に役立つとしています。国によって条文は違いますが、「受け取った記録を、後から品目と日付で引ける状態にしておく」という要求は共通です。

2. 米国の食品トレーサビリティ規則:対象食品と期限の現状

米国では、FDAが2022年11月に「特定食品の追加トレーサビリティ記録に関する規則」(Food Traceability Rule)を最終化しました。規則は「食品トレーサビリティリスト(FTL)」に載った食品を製造、加工、包装、保管する者に、重要な追跡工程(CTE)ごとに重要データ要素(KDE)を記録することを求めています。レストランも受け取る側として対象になります。

期限の現状(2026年9月確認):当初の遵守期限は2026年1月20日でした。FDAは2025年8月7日、これを30か月延長して2028年7月20日とする規則案を官報で公表しました。FDAの規則ページによれば、その後成立した「2026年継続歳出等法(Continuing Appropriations, Agriculture, Legislative Branch, Military Construction and Veterans Affairs, and Extensions Act, 2026)」が、2028年7月20日より前にこの規則を執行しないようFDAに指示しています。FDAは2026年も、質疑応答のガイダンス案(2026年2月)やロット単位の追跡に関する公開会合(2026年5月告知、6月15日開催)を出しており、準備は続いています。

FTLのうち、和食店に関係が深いものは次のとおりです。

FTLの区分和食店での例
ヒスタミン産生種の魚(生鮮・冷凍・解凍)マグロ、カツオ、サバ、ブリなど赤身魚(種ごとの該当はFDAのリストで確認)
シガテラ毒の可能性がある種、その他の魚白身魚、サーモンなど
燻製の魚スモークサーモン
甲殻類(生鮮・冷凍・解凍)えび、かに、甘えび
二枚貝(生鮮・冷凍・解凍)牡蠣、ほたて(貝柱のみの製品の扱いは要確認)、はまぐり
生鮮ハーブ、葉物野菜(生鮮・カット)、きゅうり、トマト、ピーマン類、スプラウト大葉、ねぎ類(ハーブに当たるかはリストで確認)、サラダ、かっぱ巻きのきゅうり、かいわれ
殻付き卵、ナッツバター、ソフトチーズ、そのまま食べるデリサラダ卵焼き・茶碗蒸しの卵など

3. 飲食店が記録する項目と、免除・緩和の条件

FTL食品を受け取ったとき、受入者は原則として次の項目を記録し、トレーサビリティ・ロットコードにひも付けます(21 CFR 1.1345(a))。

  1. トレーサビリティ・ロットコード
  2. 数量と単位(例:6ケース、200ポンド)
  3. 品名(製品説明)
  4. 直前の供給元の所在地情報(運送業者を除く)
  5. 受け取った場所
  6. 受け取った日付
  7. ロットコードを付けた事業所の所在地情報、またはその参照情報
  8. 参照文書の種類と番号(納品書番号など)

規則の対象外の相手から受け取った場合、受入者は自分でロットコードを付けることになっていますが、レストランと小売店はこの付番義務から外れています(1.1345(b))。

飲食店向けの免除・緩和は次のとおりです(21 CFR 1.1305)。

記録は作成または取得から2年間保管し、FDAから求められたら24時間以内(またはFDAが同意した期間内)に提出します。食中毒の拡大防止や回収のために求められた場合は、電子的に並べ替えができる表計算形式で提出するのが原則ですが、過去3年間の平均年間食品売上が100万ドル以下(インフレ調整)のレストラン・小売店は、それ以外の形式で提出できます。英語以外で記録している場合、FDAの求めに応じて英訳を提出します(21 CFR 1.1455)。

要点:執行は早くても2028年7月20日以降ですが、必要な記録の中身は、納品書に書かれたロットコードと数量を受入時に記録として残すことです。開業時から受入記録にロットコード欄を作っておけば、期限が来たときに仕組みを作り直す必要がありません。

4. すでに適用されている記録:貝のタグと生食用魚の凍結記録

FSMA第204条とは別に、Food Codeを採用している州・郡では、和食店に関係する記録がすでに求められています。

生牡蠣を出すオイスターバーや、寿司店で貝を扱う場合、タグの保管は日々の作業に組み込まれていないと抜けやすい項目です。受入時にタグの写真を撮り、最後の1個を出した日をタグに書いてから専用のファイルに綴じる、という流れを決めておきます。

5. 店内でロットをつなぐ:仕込み品ラベル

回収連絡への対応で難しいのは、受け取った食材がすでに仕込み品になっている場合です。例えば、回収対象の冷凍えびが、天ぷら用に下処理された状態で冷蔵庫に入っていると、どの容器が対象かを特定できなければ、関係しそうなものをすべて廃棄するしかありません。

Food Code 2022は、店内で調理して24時間を超えて保存する、そのまま食べる要冷蔵食品に、5℃以下で最長7日(調理日を1日目と数える)の期限表示を求めています(3-501.17)。このラベルに、元の食材の受入日か仕入先のロットコードを1行加えるだけで、店内のロット管理ができます。

ラベルの項目記入例用途
品名海老(天ぷら用下処理済み)対象の特定
仕込み日と期限9/10(1日目)〜9/16期限表示(Food Code 3-501.17)
元の食材の受入日・ロット9/8受入、ロットA1234回収連絡との照合
作業者イニシャル確認と教育

6. 回収連絡を受けたときの手順

回収連絡は、営業中に電話やメールで届くことが多いため、誰が受けても同じ対応ができるよう手順を1枚にまとめておきます。

  1. 連絡内容を記録する:品名、ロットコード、出荷日、回収の理由(病原菌、表示漏れのアレルゲン、異物など)、連絡者。
  2. 受入記録を引く:該当ロットを受け取ったか、日付と数量を確認します。
  3. 在庫と仕込み品を隔離する:該当ロットと、それを使った仕込み品に「使用禁止」の表示をして別の場所に移します。Food Code 2022も、回収された食品を店内で保管する場合は他の食品と分けることを求めています(3-302.11、6-404.11)。
  4. 提供済みの量を推計する:受入量から在庫量を引き、どの期間にどのメニューで出したかを売上記録と照合します。
  5. 報告と記録:仕入先の指示に従って返品・廃棄し、実施内容を記録します。客から体調不良の連絡がある場合の対応は食品苦情対応の記事で扱います。

開業前に一度、架空の回収連絡を想定して、受入記録からロットを特定し、冷蔵庫の中の仕込み品までたどれるかを試しておくと、記録の抜けが見つかります。受入時の温度確認と同じ用紙で記録すると、作業が増えにくくなります(→受入検品の記事)。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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