アジア・オセアニア

台湾出店:まず新設法人の資格、次に料理長

台湾出店で最初につまずくのは、新設法人がそもそも雇用主になれるかという点です。設立1年未満の会社向けの払込資本金500万台湾ドルの代わりの基準、開業日までの逆算スケジュール、許可が下りるまでの厨房の回し方、出向者と現地採用の社会保険・税金の違いを解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

台湾出店の人材計画で最初につまずくのは、就労許可の中身よりも「新設した自社の台湾法人が、そもそも雇用主になれるか」という点です。雇用主には売上高1,000万台湾ドル以上(直近1年または過去3年平均)という基準がありますが、設立1年未満の会社には払込資本金500万台湾ドル以上という代わりの基準があり、これを満たせば開業初年度から自社を雇用主にできます。この一点を押さえたうえで、許可が下りるまでの厨房の回し方と、出向者・現地採用の社会保険・税金の違いを解説します。

就労許可の対象区分、雇用主の判定フロー全体、「創見及特殊表現」の証拠の集め方、給与の下限と相場、1人を雇う場合の初年度費用と申請の週単位のスケジュールはHiring a Japanese Chef in Taiwan(英語)に詳しくまとめています。台北の現地人材やワーキングホリデー、現地の給与水準は台北のページ(英語)にあります。このページが扱うのは、複数人を送る「出店」というプロジェクトに固有の、新設法人の資格の通し方と、許可が下りるまでの期間の厨房の回し方です。

目次

  1. 誰が雇用主になれるか:新設法人の近道
  2. 出店チームの逆算スケジュール
  3. 許可が下りるまで厨房をどう回すか
  4. 出向者と現地採用:社会保険と税金
  5. 台北の現地人材
  6. チェックリスト

1. 誰が雇用主になれるか:新設法人の近道

飲食業の料理人の仕事は、外国人の専門的な仕事として制度上認められています。ただし雇用主となる会社には基準があり、設立1年以上の会社は売上高1,000万台湾ドル以上(直近1年または過去3年平均)を満たす必要があります。開業したばかりの会社にはこの実績がありません。

ここで重要なのが、設立1年未満の会社向けの代わりの基準です。払込資本金500万台湾ドル以上を用意すれば、売上の実績がなくても雇用主として申請できます。つまり、法人設計の段階でこの資本金を用意しておけば、「開業から1年待たないと料理長を呼べない」という事態は避けられます。資本金をこの水準に置かない場合、あるいはホテル・観光業のライセンスによる別ルートを使わない場合の詳しい判定フローは英語記事の決定表にまとめています。合弁やフランチャイズで、すでに実績のあるグループ会社を雇用主にする選択肢もそこで扱っています。

2. 出店チームの逆算スケジュール

台湾には、シンガポールや香港のような「現地雇用の人数が輸入の枠を決める」という制度上の縛りはありません。ボトルネックは、雇用主となる会社の資格と、料理人本人の証拠書類です。開業日から逆算すると、次のようになります。

開業日からの週数やること
16週前法人の資本金を500万台湾ドル以上に設定するか、売上基準を満たす既存のグループ会社を雇用主にするかを決める。
14週前料理長候補を決め、第5条のどの要件で申請するかを選ぶ(5年以上の経験と創見・特殊表現の証拠が通常のルート)。経歴・受賞歴・推薦状などの証拠集めを始める。
8週前労働部に就労許可を申請する(申請料500台湾ドル)。
5週前許可が下りる。料理人が居留ビザを申請する。ここで初めて日本の勤務先に退職を伝える。
開業入国。入国から30日以内に、許可書と在職証明を添えて居留証(ARC)を申請する。

手数料と法定の手続きは公式情報にもとづきますが、週数は計画上の目安です。1人を雇う場合の費用総額と、より詳しい週単位のスケジュールは英語記事にあります。日本から複数人を送る場合は、それぞれについてこの週数を確保し、雇用主となる会社が着任日の時点で資格を満たしているかを、逆算の起点で必ず確認してください。

3. 許可が下りるまで厨房をどう回すか

資本金を500万台湾ドル以上に設定しておけば、待ち期間は基本的に上の許可手続きの期間(3〜4か月程度)だけで済みます。それでも、開業日と料理長の着任日がぴったり一致するとは限りません。開業を早めたい場合や、資本金をこの水準に置かない場合に厨房を回す方法は次のとおりです。

4. 出向者と現地採用:社会保険と税金

誰を出向にして誰を現地採用にするかは、就労許可の要件とは別の判断です。審査自体はどちらでも変わりませんが、社会保険と税金の扱いは変わります。

5. 台北の現地人材

在留邦人は台湾全体で21,755人、台北だけで9,693人(外務省、2025年10月1日)です。永住者の割合はアジアの中でも高く、台湾に定住している日本人の中に飲食の経験がある人がいる可能性もありますが、採用時は本人の居留資格で就労できるかを必ず確認してください。台北の現地採用の相場や、就労許可を持つ外国人の給与下限(月47,971台湾ドル)と最低賃金との差は台北のページに詳しくまとめています。

6. チェックリスト

変わる数字:外国人専門職の給与下限(月47,971台湾ドル、2025年12月時点で引き上げが検討中と報じられたが2026年9月時点で未確定)、労働保険・全民健康保険の保険料率(毎年1月見直し)。雇用主の資本金・売上基準は大きくは変わっていません。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

開業したばかりの会社でも、日本人料理人を雇用できますか。

できます。雇用主には通常、売上高1,000万台湾ドル以上(直近1年または過去3年平均)の基準がありますが、設立1年未満の会社には払込資本金500万台湾ドル以上という代わりの基準があります。法人設計の段階でこの資本金を用意しておけば、開業初年度から自社を雇用主にできます。

就労許可が出るまで、開業日をどう決めればよいですか。

許可が出る前に台湾国内で料理長を働かせることはできません。申請から許可まで、公式な処理期間の目安と合わせて3〜4か月前後を見込み、開業日をそのあとに置くか、その期間は台湾人スタッフとワーキングホリデーの人材で厨房を回してください。

許可待ちの間、厨房はどう回せばよいですか。

台湾人スタッフを中心に据え、和食の経験がある候補者がいれば先に育成しておく方法と、年間発給枠10,000人のワーキングホリデーの人材をつなぎに使う方法があります。どちらも料理長着任までの橋渡しと位置づけてください。

出向者と現地採用で、社会保険の扱いはどう違いますか。

台湾の労働保険・全民健康保険はどちらも対象です。日本と台湾の間に社会保障協定はないため、出向者を日本の健康保険・厚生年金に継続加入させると、台湾側とは別に日本側の保険料も会社が負担することになります。

誰を出向にして、誰を現地採用にすればよいですか。

帰任させて別の拠点でも使いたい料理長は出向、台湾に長くとどまってもらいたい調理スタッフは現地採用という分け方が一般的です。どちらでも就労許可の申請自体は変わりませんが、契約書と社内の人事制度は法人設計の段階で決めておく必要があります。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。基準は2026年9月時点で確認したものです。個別の案件は台湾の専門家、日本側の税理士にご確認ください。

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