皆さんは、「あぶり餅」という食べ物をご存知ですか?京都北部の今宮神社の参道脇にある一文字屋和助(通称『一和』)で売られているお餅です。

 このあぶり餅は、お餅に黄粉(きなこ=大豆の粉)と白味噌をかけ、炭火で炙ったものです。もち米100%でできたお餅はとても柔らかく、黄粉と白味噌の甘味がとても美味しいです。竹串に刺して一人前13本で500円というのも、お得な値段だと思います。

 このあぶり餅のすごい良いところは、美味しさだけではありません。実はこのお餅、千年以上まえからずっとこのお店で売られているのです!

 一文字屋和助という茶店は、今宮神社が創建された長保2年(西暦1000年=平安時代後期)に開業し、今年でなんと1018年目になる、歴史のあるお店です。すなわち、このお店は現存する日本最古の飲食店ということになります。売っているのは、この「あぶり餅」だけ。代々店の当主である女将さんがこのお餅を作り続けており、現在の女将さんは25代目だそうです。あぶり餅の由来は、神社に奉納される竹の注連縄(しめなわ)のお下がりを使い、串刺しにしたお餅が出来上がったとのこと。確かにお餅の大きさは女性の親指のサイズで、一口で食べるのにちょうどよいのです。女将さんたちが手の感覚でちぎった餅は、一つぴったり3グラムになるそうです。

 あぶり餅は、さまざまなこだわりが詰まっているそうです。たとえばお餅の材料のもち米は近江の羽生産、黄粉と白味噌はすべて京都のもの、炭は土佐か日向の備長炭と決まっています。お店で出されるお茶は、何とこのお店の創業以前からある井戸から汲んだお水が使われているそうです。

 このお餅は保存料などは一切使っていないので、お店でしか買えません。千年以上も続くお餅があまり知られていないのは、そういう理由もあるのかもしれません。かつて京都に上洛した織田信長も食べたと言われている「あぶり餅」。皆さんも機会があったら、千年前から変わらないこの味をぜひ楽しんでみてください。

出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座

https://www.sushi-tokyo.jp/blog-headmaster

写真の出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座

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