今年も残すところあとわずかとなってしまいました。今回は少し気が早いですが、年末の食文化である「年越しそば」のお話です。

 大みそかにそばを食べる習慣は、江戸時代の中頃から定着してきました。これを「年越しそば」と呼んでいます。そもそもどうしてこの習慣が始まったのでしょうか。これにはいろいろな理由があるようですが、大きくは以下の3つです。

(1) そばは「細く長い」食べ物なので、長寿を願って年末に食べるようになった。

(2) 蕎麦は切れやすい食べ物なので、一年間の苦労や借金などを切り翌年に持ち越さないよう願って食べるようになった。

(3) 金銀細工師がこぼれた金や銀を集めるのにそば粉で練った団子を使ったため、金運向上を願って食べるようになった。

どれももっともらしい理由ですが、おそらくこれらの理由が合わさって、「年越しそば」として定着してきたのではないでしょうか。ちなみに、地域によっては大みそかではなく、お正月に「元旦そば」を食べるところもあるようです。

 郷土料理が豊富な日本では、一口に「年越しそば」と言っても、その種類や食べ方は地域によってずいぶんと違うようです。郷土料理として有名なそばがある地方では、やはり年越しそばには郷土そばを食べます。たとえば北海道や京都では、身欠き鰊の甘辛煮を載せた「にしんそば」。鰊の子供は数の子ですから、子孫繁栄も願っているようです。また、福井の「越前そば」や、海藻を練りこんだ新潟の「へぎそば」なども、それぞれの地方で年越しそばとして食べられています。「わんこそば」で有名な岩手県盛岡市では、古くは自分の年の数だけ食べなければならなかったそうです。 うどんで有名な香川県は、年越しそばならぬ「年越しうどん」を食べる習慣があります。さすが「うどん県」ですね。東京の郷土そばは「おかめそば」です。おかめそばとは、かまぼこや鳴門、お麩などの具材を顔に見立てて盛り付けたそばで、見た目が縁起ものの「おかめ(お多福)」の面に似ていることからこの名がつきました。

 年越しそばは、健康上の理由というよりは、やはり縁起をかついで食べられているようです。一番多いのはやはり海老の天ぷらが乗った「天ぷらそば」ではないでしょうか。海老は腰が曲がっているので、やはり長寿を願うおせち料理に欠かせない食材の一つです。

 皆さんも、平成最後の大晦日の夜は、ぜひ温かい天ぷらそばを食べてみませんか。きっと心も体も温まること間違いないと思います。これから寒い日が続きます。どうぞ風邪などひかないで、良い年をお迎えください。

出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座

https://www.sushi-tokyo.jp/blog-headmaster

写真の出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座

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