秋も深まり、少し肌寒さを覚える季節となりました。こんな時期はやはり「鍋もの」が恋しくなります。今日は「湯豆腐」の話です。
豆腐は日本料理に欠くことのできない食材で、庶民の貴重なタンパク源として親しまれてきました。その起源は、紀元前2世紀に中国で誕生したという説があるくらい、古くから人々に馴染みのある食材です。日本には、鎌倉時代の初めに遣唐使が伝えたといわれ、精進料理の発展とともに広まってきました。江戸時代には、いろいろな豆腐の料理を紹介した「豆腐百珍」という本まで出版されるほど人気の食材となりました。
スーパーの豆腐売場に行くと「絹ごし豆腐」と「木綿豆腐」の2種類が売られています。これらは材料である大豆に違いはなく、製法上の違いです。水分の多い「絹ごし豆腐」に比べ、布を敷いた容器で、ある程度水分を切ったのが「木綿豆腐」です。そのため、絹ごしでは豆腐のツルンとした美味しさが楽しめるのに対して、木綿はしっかりとしていて大豆の味がやや濃いのが特徴です。どちらでも湯豆腐を楽しめますが、美味しい湯豆腐を作るには、やはり「絹ごし豆腐」が良いですね。
湯豆腐は、シンプルな方が美味しくいただけます。まず鍋に水を張り、出汁昆布を入れます。1時間くらい置いて昆布が柔らかくなったら、食べやすい大きさに切った絹ごし豆腐をいれて火にかけ、ゆっくりと熱していきます。この時ポイントになるのは、沸騰させないこと。沸騰してしまうと、豆腐の香りも飛んでしまいます。豆腐が「ぐらりとよろめく」ようになった時が食べごろです。柔らかい湯豆腐が好みの人は、鍋にひとつまみの塩、または刻んだ大根を入れるとよいといわれています。佐賀県の嬉野温泉では、温泉水で作った「温泉湯豆腐」が有名ですが、面白いことに温泉水で作ると豆腐がだんだん溶けていってしまいます。
暖まった豆腐を取り皿に掬い上げ、醤油・酒・みりん・出汁などで作ったタレにつけていただきます。代表的な薬味は、刻み葱とかつお節。いろいろとくわえたくなりますが、薬味を少なめにしておくと豆腐の味がより引き立って美味しくいただけます。
湯豆腐料理といえば京都が有名です。京都市内にはたくさんの湯豆腐屋さんがありますが、東山南禅寺と、嵐山嵯峨野に有名店が集まっています。やはり美味しい豆腐を作るには良い水が必要なのですね。
安価な食材で手軽に作れ、栄養たっぷりな湯豆腐。ぜひ今夜試してみませんか。
出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座
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写真の出典:東京すし和食調理専門学校 学校長の一膳講座