給与・コスト

海外勤務の料理人の税金:非居住者の判定と手続き

1年以上の予定で海外に出向する料理人は一般的に非居住者になります。住所の推定、予定変更時の扱い、出国前の年末調整、出国後の賞与・役員報酬の源泉徴収を国税庁の資料で整理します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 居住者と非居住者の違い
  2. 海外勤務者は「住所の推定」で判定する
  3. 予定が変わったときの扱い
  4. 出国前に会社がすること
  5. 出国後に日本から払う給与・賞与
  6. 租税条約との関係
  7. 住民税と現地の税金
  8. 担当者向けチェックリスト

日本の外食企業が料理人を海外店舗に送るとき、給与計算の担当者が最初に迷うのが「この人は日本の所得税の居住者なのか、非居住者なのか」です。判定によって、出国前の年末調整、出国後の源泉徴収、賞与の扱いがすべて変わります。

この記事では、国税庁のタックスアンサーと質疑応答事例をもとに、海外で働く料理人(会社員)の日本の所得税の扱いを整理します。内容は2026年9月に国税庁のページで確認したものです(一部のページは令和8年4月1日現在の法令等に基づく表示です)。

1. 居住者と非居住者の違い

所得税法では、国内に「住所」があるか、現在まで引き続き1年以上「居所」がある個人を居住者、それ以外の個人を非居住者としています。「住所」は個人の生活の本拠をいい、生活の本拠かどうかは客観的な事実で判定されます。

区分課税される所得の範囲
非永住者以外の居住者国内と国外で生じたすべての所得
非永住者(日本国籍がなく、過去10年以内に国内に住所・居所があった期間が5年以下の居住者)国外源泉所得以外の所得と、国外源泉所得のうち国内で支払われたもの・国外から送金されたもの
非居住者国内源泉所得のみ

日本人の料理人が海外店舗で働く場合、論点になるのは「非永住者以外の居住者」か「非居住者」かです。

2. 海外勤務者は「住所の推定」で判定する

国税庁によると、国外に住むことになった人が、国外で継続して1年以上住むことを通常必要とする職業に就く場合、その人は国内に住所がない者と推定されます。生計を一にする配偶者や扶養親族が一緒に国外に住む場合は、その家族も同様に推定されます。

実務上の目安は次のとおりです。

国税庁は、国外での在留期間があらかじめ1年未満であることが明らかな場合を除き、原則として非居住者と推定されると説明しています。出向の辞令や契約に、予定期間を明記しておくことが判定の出発点になります。

3. 予定が変わったときの扱い

海外店舗では、開業の遅れや後任の不在で赴任期間が延びたり、逆に短くなったりします。国税庁の質疑応答事例では、次のように整理されています。

当初の予定変更扱い
1年以上1年未満で帰国することになった出国時から非居住者。1年未満になることが明らかになった日以後は居住者。出国時にさかのぼって居住者にはならない
1年未満海外勤務が1年以上になることになった出国時は居住者。1年以上になることが明らかになった日以後は非居住者

いずれの場合も、区分がさかのぼって変わることはありません。予定を変更した時点を社内の記録に残しておくと、判定の根拠を説明しやすくなります。

4. 出国前に会社がすること

年末調整

国税庁によると、扶養控除等申告書を提出していて、その年の給与の支給額が2,000万円以下の居住者が1年以上の予定で海外に転勤する場合、給与の支払者は出国する日までに年末調整をしなければなりません。

確定申告が必要な人と納税管理人

給与収入が2,000万円を超える人や、給与以外に一定の収入がある人など確定申告が必要な人が、納税管理人の届出をしないまま出国する場合は、出国の時までに確定申告(準確定申告)をしなければなりません。

出国後も日本で確定申告や税務書類の受け取りが必要な場合は、納税管理人を定め、「所得税・消費税の納税管理人の選任・解任届出書」を税務署長に提出します。納税管理人は法人でも個人でも構いません。日本に家を持っていて賃貸に出す料理人などは、該当する可能性があります。

5. 出国後に日本から払う給与・賞与

非居住者になった後の源泉徴収は、使用人(従業員)と役員で扱いが異なります。

支払うもの源泉徴収
使用人の海外勤務に対する給与国内源泉所得に当たらないため不要
国内で支払う賞与で、計算期間に日本での勤務期間が含まれるもの日本での勤務期間に対応する部分に20.42%
内国法人の役員としての報酬海外勤務に対するものでも国内源泉所得となり20.42%。ただし海外支店長など使用人として常時海外で勤務する場合は不要

料理長を現地法人の取締役にするケースでは、日本の親会社の役員を兼ねているかどうかで扱いが変わることがあります。給与の計算期間の途中で非居住者になった場合、計算期間が1か月以下であれば、日本での勤務期間が含まれていても源泉徴収しなくてよいとされています(全額が日本での勤務に対応する場合を除く)。

なお、国税庁のページには、令和9年分以後は所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を源泉徴収する旨の記載があります。2027年以降の税率は、その時点の国税庁の案内を確認してください。

6. 租税条約との関係

日本と相手国の双方がその人を居住者として扱う場合、租税条約がどちらの国の居住者とするかの判定方法を定めています。国税庁が示す一例では、個人については恒久的住居、利害関係の中心、常用の住居、国籍の順で判定します。

また、勤務先の国と日本の間に租税条約がある場合、条約によって所得税が免除されることがあります。国税庁は例として、日本での滞在が12か月の期間で合計183日以下であること、日本の雇用者から給与が支払われないこと、日本の支店等が給与を負担しないこと、の全ての要件を満たせば日本の所得税が免除されることがあると説明しています(要件は条約ごとに異なります)。海外店舗の料理長が日本に一時帰国して本社の催事を手伝う、といった場面で関係します。

日本の租税条約の締結状況は財務省の一覧で確認できます。たとえば米国、オーストラリア、UAEとは租税条約が発効しています。

7. 住民税と現地の税金

総務省によると、個人住民税はその年の1月1日時点で住所がある市町村(都道府県)で、前年の所得に対して課税されます。年の途中で出国しても、その年度の住民税は残ります。出国のタイミングと翌年の住民税の関係は、出国前に本人に説明しておくと混乱を防げます。

現地での所得税や社会保険料は、勤務する国の法令で決まります。日本で非居住者になっても、現地で課税されないという意味ではありません。現地の税務は現地の専門家に確認してください。

8. 担当者向けチェックリスト

  1. 出向辞令・雇用契約に予定期間を明記する(1年以上か未満か)。
  2. 1年以上の予定なら、出国日までに年末調整を行う。
  3. 確定申告が必要な人には、準確定申告か納税管理人の選任を案内する。
  4. 出国後に日本で払う賞与は、計算期間のうち日本勤務分を確認する。
  5. 役員を兼ねる人は、役員報酬の扱いを別に確認する。
  6. 予定変更があれば、変更が明らかになった日を記録し、区分を見直す。
  7. 住民税と在留届(旅券法第16条、3か月以上の滞在)について本人に案内する。

社会保険の扱いは料理人の年金・健康保険の扱い、出向と現地採用の比較は海外赴任と現地採用の違い、手取りを踏まえた給与の組み方は海外勤務料理人の給与設計をご覧ください。

本記事は一般的な情報であり、税務に関する助言ではありません。居住者・非居住者の判定は個別の事実によって決まります。2026年9月時点で確認した下記の国税庁などの資料をご確認のうえ、税務署または税理士にご相談ください。

出典

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