給与・コスト

海外勤務料理人の給与設計:実例と為替条項

給与設計の入り口となるページ。シドニー・482ビザの実例をフルに計算し、ビザ給与基準への上乗せルール、手取りに関わる日本側の税、そのまま使える為替条項3種、賞与の設計、給与構成シートまでを扱います。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

海外で働く料理人の給与は、3つの基準を同時に満たす必要があります。日本の給与との比較、ビザの給与基準、そして出国後の為替と日本の税制です。基本給はビザの給与基準ちょうどではなく、5〜10%上乗せして設定してください。そうすれば、1年後の基準額の改定や為替の変動があっても、更新時に基準を下回りません。本ページは給与設計の入り口で、1つの実例を最後まで計算し、為替条項をそのまま使える形で示したうえで、各項目の詳細を扱うページへ橋渡しします。

本ページは、本サイトの給与関連記事群の入り口です。国別の給与相場とビザの給与基準は国別の寿司職人の給与、手数料を含めた採用1人あたりの総コストは国際採用の予算の立て方にまとめています。本ページは、それらの数字を1つのオファーに組み立てる場所です。手取り、為替リスク、賞与の設計を、出向・現地採用いずれの場合も、1つの都市の1つの役職で最後まで計算します。住居・渡航関連の費用は料理人の渡航・移住支援で別途扱っています。

目次

  1. 最初に決める3つのこと
  2. 実例:シドニーの寿司料理長、482ビザ
  3. ビザの給与基準に上乗せする理由
  4. 手取りを左右する日本側の税
  5. そのまま使える為替条項3種
  6. 賞与の設計
  7. 給与構成の設計シート

1. 最初に決める3つのこと

  1. 誰が雇うか。現地採用か、日本本社からの出向か。税、社会保険、給与の支払い方がすべてこれで変わります。海外赴任と現地採用の比較をご覧ください。
  2. どの通貨で約束するか。現地通貨か、円か、組み合わせか。為替の変動を誰が負担するかが決まります。
  3. 何を保証し、何を変動にするか。基本給、手当、残業代、賞与、サービスチャージ。ビザの審査で数えられるのは多くの場合「保証された部分」だけです。

2. 実例:シドニーの寿司料理長、482ビザ

現地採用、Skills in Demand(サブクラス482)ビザのCore Skillsストリームです。Core Skills所得基準は、2026年7月1日から2027年6月30日までのノミネーションで年A$79,423、前年のA$76,515から約3.8%上がっています。

項目金額根拠
提示する基本給年A$84,500CSITの基準額に約6%上乗せ(3章)
スーパーアニュエーション(12%)年A$10,140基本給の上に別途支払う
スポンサーシップ料(一回限り)A$420スポンサー企業ごとに一度
ノミネーション料(一回限り)A$330ポジションごとに一度
SAF levy年A$1,200売上高A$1,000万未満の企業。それ以上はA$1,800
ビザ手数料(一回限り)A$4,015本人分のみ、家族なしの例
初年度の雇用主負担合計約A$100,605基本給+スーパー+一回限りの手数料+levy

A$84,500からの手取り額はオーストラリアの所得税次第で、本ガイドでは確認していません。実際の手取りを提示する前に、ATO(豪州税務当局)の計算ツールで確認してください。スーパーアニュエーションは手取りではなく、給与とは別に本人の年金口座に積み立てられます。ビザの手続き自体、労働市場テスト、手数料の全体像は482ビザでの料理人スポンサーをご覧ください。

3. ビザの給与基準に上乗せする理由

基本給を現在の基準額ちょうどに設定しないでください。次回更新までに、2つの要因が不利に働きます。

目安は、現在の基準額の5〜10%上乗せです。ビザの有効期間が短く為替が安定している通貨ペアなら低めに、複数年のビザ、定期改定が決まっている基準額、または変動の大きい通貨ペアなら高めにしてください。シドニーの例では、A$79,423に6%上乗せして上記のA$84,500になります。実際に使う国・ビザ種類の基準額と改定時期は、本ガイド内の各国別ページで確認してください。

4. 手取りを左右する日本側の税

現地の税や社会保険料は国ごとに違い、本ページの範囲外です。ここでは、赴任先を問わず共通する日本側の扱いを整理します。

1年以上の予定で海外へ働きに出る料理人は、日本の所得税上は非居住者と推定されるため、海外での勤務に対する給与は日本の源泉徴収の対象になりません。それでも日本の給与計算には2つの点が残ります。出国後に日本から払う賞与は、日本勤務に対応する部分に20.42%が源泉徴収され、また出国した年の住民税は、1月1日に日本国内に住所がある人に、出国の時期にかかわらず前年の所得に対して課税されます。このことは出国前に本人へ伝え、海外生活1年目に驚かないようにしてください。予定が長引く・短くなる場合の扱いを含めた全体像は海外勤務の料理人の税金、年金・医療保障は料理人の年金・健康保険の扱い、出向の場合の社会保障協定は社会保障協定と料理人の海外派遣をご覧ください。

5. そのまま使える為替条項3種

いずれか1つを選び、オファーレターに明記してください。為替の扱いを暗黙のままにしないことが重要です。

条項A:現地通貨のみ。「あなたの給与は[現地通貨]で合意し、[現地通貨]で支払います。本オファーの他の箇所に記載する円建ての金額は参考値であり、保証された金額ではありません。」
トレードオフ:運用が最も簡単。為替リスクは本人が全て負い、現地では何も変わっていなくても円換算では「減った」と感じられ得ます。

条項B:現地通貨+見直し条項。「基本給は[現地通貨]で支払います。円/[現地通貨]のレートが本オファーの基準日から[X]%以上動いた場合、いずれの当事者も、次回の年次更新時に基本給の協議を求めることができます。本条項は協議する権利を定めるものであり、自動的な増額を約束するものではありません。」
トレードオフ:懸念を共有できますが確約はしません。トリガーとなるレートを管理し、協議の場を持つ担当者が必要です。

条項C:円建て保証+現地手当。「基本給は月額¥[X]を円建てで定め、支払いの前月[N]日に[参照銀行]が公表するレートで[現地通貨]に換算して支払います。生活費の違いを補うため、別途[現地通貨の金額]の現地手当を支給し、これは円建て保証部分には含みません。」
トレードオフ:本人の円での購買力を守れますが、為替リスクは雇用主が負い、レートが動くたびに換算後の現地通貨額がビザの基準額を上回っているかを都度確認する必要があります。

一時帰国の航空券のように、それ自体が為替で金額の変わる一回限りの費用は、金額ではなく中身を約束してください(「往復エコノミーの実費」など)。そうすれば、その項目からは為替の論点がなくなります。

6. 賞与の設計

日本の料理人にとって賞与は年収の一部として期待されるものです。一方、賞与の慣行がない国も多く、現地スタッフとの公平性も考える必要があります。

7. 給与構成の設計シート

項目保証か変動かビザの基準に数えられるか
基本給保証多くの国で数えられる
固定手当(住宅など)保証国により異なる。頼る前に確認
残業代変動通常は数えない
固定の年間手当保証国により異なる
業績賞与変動数えない前提で設計
サービスチャージ・チップの分配変動数えない前提で設計
一時帰国の航空券、医療保険保証(金額でなく中身を約束)通常は給与外

この表とあわせて、簡単な手取りの試算を渡してください。額面、現地当局の計算ツールなどで出した現地の税・社会保険料の概算、家賃の自己負担分、そして1年目に残る日本の住民税です。ここまで示す求人は多くなく、料理人が実際に判断できるシートと、御社だけが読めるシートとの違いはここにあります。

変わる数字:オーストラリアのCore Skills所得基準(毎年7月1日に改定、2026-27年度はA$79,423)、シンガポールのEmployment PassとS Passの基準額(2027年1月から再改定)。この日付を過ぎたら、実例の数字を使う前に両方を再確認してください。

よくある質問

実際のビザ給与基準や国別の給与相場はどこで見られますか。

国別の給与相場とビザの給与基準は国別の寿司職人の給与にまとめています。本ページは、その数字を1人の候補者への1つのオファーに組み立てる場所です。

ビザの給与基準に対して、どのくらい上乗せすればよいですか。

現在の基準額の5〜10%です。ビザの有効期間が短く通貨が安定していれば低めに、複数年のビザ、定期改定が決まっている基準額、変動の大きい通貨ペアなら高めにしてください。

給与は円と現地通貨のどちらで払うべきですか。

多くの現地採用では現地通貨です。生活費もビザの基準額も現地通貨で決まるためです。日本の給与体系を維持する出向では、円建て保証+現地手当という形もあります。いずれにせよ、5章の3条項のいずれかで書面にしてください。

賞与はビザの最低給与に数えられますか。

国によって、また賞与が固定か業績連動かによって異なります。固定の年間手当のほうが数えられやすく、業績賞与は数えない前提で扱い、ビザ用の金額には含めないでください。

料理人の実際の手取りはどのくらいになりますか。

赴任先の所得税と社会保険料次第で、国によって差が大きいためここでは示せません。その国の公式の税計算ツールを使ってください。日本側では、出国した年の住民税と、出国後に日本から払う賞与に対する日本勤務分の20.42%の源泉徴収を忘れないでください。

本記事は一般的な情報であり、税務・労務・入管に関する助言ではありません。税や社会保険の扱いは個人の状況や契約形態、各国の制度によって異なり、改正もあります。実際の給与設計は、下記の一次情報を確認のうえ、税理士・社会保険労務士・現地の専門家にご相談ください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

和食料理人を採用しませんか?

世界中の和食料理人が登録するWashokuJobに、貴店の求人を掲載できます。