給与・コスト

海外勤務料理人の非居住者税務:給与担当者向け

1年以上の予定で海外に出向する料理人は出国時から原則非居住者になります。1年の推定ルール、予定変更の実際の2ケース、年末調整、賞与の源泉徴収、現地側の課税、出国60/30/0日前と初回賞与時の給与カレンダーを整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

1年以上の予定で海外に送る料理人は、出国した日から日本の所得税上は原則として非居住者となり、海外での勤務に対する給与は日本の源泉徴収の対象外になります。それでも会社は出国前に年末調整を済ませ、出国後に日本から払う賞与の源泉徴収に注意し、さらに現地でその同じ給与に対してどのような源泉徴収が課されるかを別途確認する必要があります。日本の非居住者になることは、現地の税金には一切関係しないからです。

本ページは、海外店舗に送る料理人の出国手続きを担当する日本の外食企業の給与・人事担当者、そして現地で何を源泉徴収すべきかを整理したい海外の店舗向けです。出向と現地採用のどちらを選ぶか自体は海外赴任と現地採用の違いで比較全体の一部として簡潔に扱っています。本ページはそのうち、日本の税務上の居住者判定と給与計算のカレンダー、そして多くの日本側の解説が省いている現地側の扱いを詳しく解説します。

目次

  1. 居住者と非居住者
  2. 1年の推定ルール
  3. 予定が変わった実際の2つのケース
  4. 出国前:年末調整
  5. 出国後に日本から払う給与
  6. 現地側の扱い
  7. 給与計算のカレンダー

1. 居住者と非居住者

所得税法では、国内に「住所」があるか、継続して1年以上「居所」がある人を居住者、それ以外を非居住者としています。「住所」は生活の本拠を指し、本人の意思ではなく客観的な事実で判定します。居住者は国内外を問わずすべての所得に、非居住者は国内源泉所得にのみ課税されます。

2. 1年の推定ルール

国税庁によると、国外で継続して1年以上住むことを通常必要とする職業に就く人は、国外での在留期間があらかじめ1年未満と明らかな場合を除き、国内に住所がない非居住者と推定されます。一緒に海外へ住む配偶者や扶養親族も同様に推定されます。出向辞令や雇用契約に予定期間を明記することが判定の出発点であり、それだけで判定が確定するわけではありません。

3. 予定が変わった実際の2つのケース

海外店舗の開業は遅れがちで、赴任が予定より早く終わることもあります。国税庁の質疑応答事例では、どちらの方向にも区分がさかのぼって変わることはなく、変わるのは今後に向けての日付だけです。

実際のケース当初の予定何がいつ変わるか
開業が遅れて1年を超える。10か月の予定で送った料理人が、内装工事と許認可の遅れで13か月目もまだ現地にいる。1年未満出国時は居住者。1年以上になることが明らかになった日以後は非居住者。出国時にさかのぼらない
ビザの更新拒否などで赴任が早く終わる。2年の予定で送った料理人が更新を拒否され、10か月目に帰国する。1年以上出国時から非居住者。1年未満で帰国することが明らかになった日以後は居住者。さかのぼらない

予定変更が明らかになった日(許認可の遅れが確定した日、更新拒否の通知を受けた日)を社内で記録してください。出国日でも確定申告の日でもなく、この日こそが、判定の根拠として税務署に示せるものです。

4. 出国前:年末調整

扶養控除等申告書を提出していて、その年の給与が2,000万円以下の居住者が1年以上の予定で海外に転勤する場合、給与の支払者は出国日までに年末調整をしなければなりません。保険料控除は出国日までに支払った分に限られ、扶養控除・配偶者控除や家族のその年の所得見積もりは出国時点の状況で判定します。確定申告が必要な人(給与2,000万円超、または他の所得がある場合など)で納税管理人を選任していない人は、出国時までに準確定申告をしなければなりません。選任する場合は納税管理人の届出書を税務署に提出します。日本の自宅を賃貸に出す料理人などは、これに該当することが多くなります。

5. 出国後に日本から払う給与

支払うもの日本での源泉徴収
使用人の海外勤務に対する給与不要(国内源泉所得に当たらない)
国内で支払う賞与で、計算期間に日本での勤務期間を含むもの日本勤務に対応する部分に20.42%
日本の会社の役員としての報酬海外勤務分でも国内源泉所得となり20.42%。ただし海外支店長など使用人として常時海外で勤務する場合は不要

給与の計算期間が1か月以下の途中で非居住者になった場合、その期間に日本での勤務が含まれていても、全額が日本勤務に対応するのでない限り源泉徴収は不要です。

6. 現地側の扱い

日本の非居住者という扱いが決めるのは日本側だけです。現地の国は、給与を誰が払っているか、どの通貨か、日本がその人をどう扱うかにかかわらず、自国内で実際に働く人に対して初日から自国の所得税と源泉徴収を課すのがほとんどです。ここから2つのことが必要になります。

ここから先の給与設計は海外勤務の料理人の給与設計をご覧ください。

7. 給与計算のカレンダー

時期給与担当者がすること
出国60日前出向辞令の予定期間(1年未満か1年以上か)を確認する。納税管理人が必要かを判断する。本人に住民税と、必要ならタックス・イコライゼーションまたはプロテクションについて説明する。
出国30日前保険料控除申告書、扶養控除等申告書(変更があれば異動申告書)、基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書を集める。確定申告が必要かを確認する。
出国当日1年以上・2,000万円以下の条件を満たせば年末調整を済ませる。確定申告が必要で納税管理人がいない場合は準確定申告を行い、選任する場合は届出書を提出する。
出国後、日本から初めて賞与を払うとき計算期間のうち日本勤務分を確認し、その部分に20.42%を源泉徴収する。本人が役員も兼ねる場合は役員報酬の扱いを別途確認する。

3章のように予定が変わった場合は、5つ目の項目として「変更が明らかになった日」と「区分がどちらに動いたか」を記録に加えてください。同じ赴任中の社会保険については料理人の年金・健康保険の扱いと社会保障協定と料理人の海外派遣をご覧ください。住民税は、その年の1月1日に住所があった市区町村が、出国日にかかわらず前年の所得に対して課税します。出国前に本人へ説明しておけば、1年目の住民税の請求が驚きにならずに済みます。

数字は2026年9月に国税庁のタックスアンサーで確認しました。年末調整の2,000万円基準と20.42%の源泉徴収率は法令で定められており、変更は稀です。2027年分から源泉徴収の対象に新税が加わることは確認済みですが、税率はまだ公表されていません。次回確認は2027年の給与計算の前です。

よくある質問

日本で非居住者になれば、どこの国でも課税されないのですか。

いいえ。止まるのは、海外での勤務分に対する日本の源泉徴収だけです。現地の国は、ほとんどの場合その勤務に対して初日から自国の法令で課税するため、現地の源泉徴収は別途確認してください。

開業が遅れて赴任が1年を超えたらどうなりますか。

1年未満の予定で送った料理人は、1年以上になることが明らかになった日まで居住者のままで、その日以後に非居住者になります。出国時にさかのぼりません。

ビザの更新拒否で赴任が早く終わったらどうなりますか。

1年以上の予定で送った料理人は、1年未満で帰国することが明らかになった日まで非居住者のままで、その日以後に居住者に戻ります。拒否の通知など、明らかになった日を示す証拠を残してください。

年末調整は出国前に必ず済ませる必要がありますか。

扶養控除等申告書を提出していて給与2,000万円以下の居住者が1年以上の予定で海外転勤する場合は必要です。出国日までに支払った保険料と、出国時点の家族の状況をもとに行います。

現地で増える税金は誰が負担するか、誰が決めますか。

出国前に、御社がオファーや赴任条件のなかで決めます。タックス・イコライゼーションは日本にいた場合と同水準の手取りを保証し、タックス・プロテクションは赴任で増えた税額だけを補填します。どちらでも構いませんが、現地の最初の税金の請求が来る前に決めて書面にしてください。

本記事は一般的な情報であり、税務に関する助言ではありません。居住者・非居住者の判定は個別の事実によって決まり、現地の税制は本ページで確認した範囲の外です。2026年9月時点で確認した下記の国税庁などの資料をご確認のうえ、税務署、税理士、そして現地の専門家にご相談ください。

出典

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