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日本の食文化海外普及人材育成事業と海外店舗の活用法

調理師学校を卒業した外国人留学生が日本の飲食店で最長5年働ける農水省の制度を、実施要領に沿って解説。特定技能との違い、2026年10月からの申請方法の変更、海外の和食店から見た活用法をまとめました。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 制度の概要
  2. 誰が対象で、誰が受け入れるのか
  3. 実習計画に書かなければならないこと
  4. 特定技能(外食業)との違い
  5. 2026年10月からの申請方法の変更
  6. 海外店舗の側から見た3つの活用法
  7. 活用するときの注意点

「日本の食文化海外普及人材育成事業」は、日本の調理師学校や製菓学校を卒業した外国人留学生が、卒業後も日本国内の飲食店などで働きながら技術を学べる農林水産省の制度です。在留期間は最長5年。制度の目的は、帰国した彼らが母国で日本の食文化を広める担い手になることです。

つまりこの制度は、日本で本格的な修業を積んだ外国人料理人を、海外に送り出すための仕組みでもあります。海外で和食店を経営する側から見ると、将来の採用候補者を生み出している制度だと言えます。この記事では実施要領に沿って制度を整理し、海外店舗の側からの使い方を考えます。

1. 制度の概要

一般的な飲食店(日本料理店を含む)、製菓・製パンの小売店、ホテル・旅館などが受入先として想定されています。和食に限った制度ではない点に注意してください。

2. 誰が対象で、誰が受け入れるのか

制度には3者が関わります。

立場要件の概要
取組実施機関(学校)調理師養成施設、製菓衛生師養成施設、または所定の履修要件を満たす製菓分野の課程を置く大学等。実習計画の策定・実施に必要な人員があること、経営が健全であること、職業安定法に基づく職業紹介の許可を受けているか届出をしていること
外国人調理師等取組実施機関で知識・技能を修得し、調理師免許などを取得した人(または申請資格を得た人)。成績優秀かつ素行善良、技能を高める意思と帰国後に日本の食文化を世界へ発信する意思があること、活動開始時に18歳以上であること。調理師免許の申請資格がある人は、従事する時点で免許を取得していること
受入機関(飲食店など)日本国内の公私の機関。実習計画を適切に実施できる事業所があること、経営が健全であること、労働関係・社会保険関係の法令を守っていること、過去3年間に外国人の受入れ・就労に関する不正行為がないこと

受入機関は、外国人調理師等を雇用契約に基づく労働者として受け入れます。研修生ではなく労働者として雇う制度です。

3. 実習計画に書かなければならないこと

学校と受入機関は共同で、外国人1人ごとに実習計画を作り、原則として在留期間満了日の1か月以上前までに農林水産省に申請して認定を受けます。計画に含める事項には次のようなものがあります。

認定の条件として、次の点も定められています。

運用面では、学校が少なくとも年1回修得状況を評価して農水省に報告し、少なくとも半年に1回受入機関を監査して地方出入国在留管理局に報告します。最初の1年間は、監査とは別に半年に1回以上、学校が本人と面接します。帰国旅費は、本人が払えない場合に学校が負担し、学校がやむを得ず負担できないときは受入機関が負担します。

住居の確保、一時帰国の休暇、指導員と生活指導員の配置。これらは、海外から日本人料理人を呼ぶときに定着のために用意したいものとほぼ同じです。国をまたいで働く料理人の受け入れに何が必要かを、国が制度として書き出したものとして読むと参考になります(海外側の設計は住居・渡航費・赴任手当の設計で扱っています)。

4. 特定技能(外食業)との違い

外国人が日本の飲食店で働く在留資格には、特定技能(外食業分野)もあります。農水省は両者の違いを次のように整理しています(2023年4月の資料)。

項目日本の食文化海外普及人材育成事業特定技能1号(外食業)
目的日本の食文化の海外普及。帰国後に母国で普及を担う料理人を育成人手不足への対応。即戦力の外国人を受け入れ
在留資格特定活動特定技能
対象者調理師・製菓衛生師(申請資格を得た者を含む)等技能測定試験と日本語試験(日本語能力試験N4以上等)の合格者
在留期間上限5年(製菓衛生師資格がない場合は3年)上限5年
活動内容調理等の技術を要する業務に特化外食業全般(調理、接客、店舗管理)
支援体制学校と受入機関が連携受入機関(または登録支援機関)

ポイントは目的の違いです。特定技能は日本国内の人手不足を補うための制度、この事業は海外への普及人材を育てる制度です。だからこそ、海外の和食店と接点があります。

5. 2026年10月からの申請方法の変更

農林水産省は2026年7月8日、この事業について、農林水産省共通申請サービス(eMAFF)での申請受付を2027年2月で終了する予定だと告知しました。審査期間を踏まえ、2026年10月以降のすべての申請と報告は、Word形式の申請様式を使い、指定のメールアドレスに送付する方法に変わります。添付資料はPDFにし、資料ごとに別ファイルにしてZIPにまとめる、といった指定もあります。日本国内で受け入れを検討している企業は、最新の案内を農水省のページで確認してください。

6. 海外店舗の側から見た3つの活用法

受入機関は日本国内の機関に限られるので、海外の店が直接この制度で人を受け入れることはできません。そのうえで、海外店舗の側からの活用法は3つ考えられます。

活用法1:日本国内に店を持つ企業が、育てて母国の店に迎える

日本と海外の両方に店舗を持つ外食企業なら、日本の店で受入機関として外国人調理師を育て、在留期間の終了後に、本人の母国にある自社の店で働いてもらう道があります。

たとえば、ベトナム国籍の調理師学校卒業生を日本の店で数年育て、帰国後にホーチミンの店の料理長候補として迎える形です。本人が母国で働くのであれば、就労ビザの問題そのものが発生しません。日本人料理人を海外に送る場合と比べ、ビザの費用と期間、給与の国際水準の問題を大きく減らせます。制度の目的である「帰国後の日本食文化の普及」とも一致します。

ただし、在留期間中はあくまで日本国内での実習計画に基づく活動であり、帰国後の就職先を受入時の条件にするような運用が認められるかは、制度の趣旨と労働法の両面から確認が必要です。本人の職業選択の自由を前提に、「帰国後に働ける場所がある」という選択肢を示すのが適切な形でしょう。

活用法2:修了して帰国した人材を採用する

日本国内に拠点のない海外の店でも、この事業を修了して母国に帰った料理人は採用の対象になります。日本の調理師学校を卒業し、調理師免許を持ち、日本の飲食店で実務を積んだ人材は、現地採用の候補としては貴重な存在です。

実施要領では、学校は外国人調理師等が帰国後に日本の食文化の海外普及に関わる業務に就いた場合、農水省に報告することになっています。また、学校は職業紹介の許可または届出が要件になっています。帰国予定の修了生の情報について、卒業生の多い調理師学校の就職担当に相談してみる価値はあります。

活用法3:現地採用の選考で経歴を正しく評価する

現地で調理スタッフを採用するとき、応募者の履歴書に「日本の調理師学校卒業」「日本の飲食店で○年勤務」とあれば、この制度や特定技能で日本にいた可能性があります。どの制度で、どの業務に何年従事したかを聞くと、経験の中身がよく分かります。この事業の経験者なら、実習計画に沿って下ごしらえから完成までの一連の工程を実習しているはずです。

なお、農水省の調理技能認定制度では、日本国内の調理師養成施設の卒業者はシルバー認定の前提となるブロンズ認定が不要で、日本国内の日本食レストランでの実務経験はシルバー・ゴールドの経験年数に数えられます。この事業の修了者は、認定制度の上位を目指しやすい立場にあります。

7. 活用するときの注意点

本記事は一般的な情報であり、入管・労務に関する助言ではありません。制度の内容は2026年9月22日時点で農林水産省の公表資料から確認したものです。実際の受入れや採用にあたっては、農林水産省、取組実施機関、専門家に最新の情報をご確認ください。

出典

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