海外出店|衛生・品質管理

海外和食店のアレルゲン表の作り方:米国9品目・英国14品目と醤油・出汁

米国9品目(ごまは2023年から)、英国・EUの14品目、日本の特定原材料9品目(2026年4月にカシューナッツ追加)の違いを比較し、醤油・味噌・出汁・衣に潜むアレルゲンを下ごしらえまでさかのぼって表にする手順と、Food Code 2022の書面通知、英国FSAの情報提供ルール、接客・厨房の運用を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 対象アレルゲンは国ごとに違う:9品目、14品目、日本の9品目
  2. 和食の基本調味料に隠れているアレルゲン
  3. 飲食店に求められる情報提供:米国・英国・EU
  4. アレルゲン表の作り方:レシピから下ごしらえまでさかのぼる
  5. 仕入先や配合が変わったときに表を更新する仕組み
  6. 接客:注文を受けるときの確認と伝え方
  7. 厨房:交差接触を避ける手順と「対応できない」と言う基準

和食は醤油、味噌、出汁、ごま、天ぷらの衣など、複数のアレルゲンを含む基本素材を多くの料理で共有します。そのため、メニューごとに「この料理に何が入っているか」を即答できる状態を作るには、最終的な料理ではなく、たれや合わせ調味料といった下ごしらえの段階までさかのぼった表が必要です。この記事では、米国FDA、英国食品基準庁(FSA)、EU規則1169/2011、日本の手引書を材料に、レシピと接客をつなぐアレルゲン表(アレルゲンマトリクス)の作り方を説明します。

1. 対象アレルゲンは国ごとに違う:9品目、14品目、日本の9品目

最初に確認すべきは、出店先の法律が「表示・情報提供が必要」と定めるアレルゲンの範囲です。日本のリストをそのまま持ち込むと、抜けが生じます。

品目米国(9品目)英国・EU(14品目)日本の特定原材料(9品目)
小麦(グルテンを含む穀物)○(小麦)○(小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦など)○(小麦)
大豆○○-
魚○○-
甲殻類(えび、かに等)○○○(えび、かに)
軟体動物(貝、イカ、タコ等)-○-
卵○○○
乳○○○
落花生○○○
木の実○○○(くるみ、カシューナッツ)
ごま○(2023年1月1日から)○-
そば--○
セロリ、マスタード、ルピナス-○-
二酸化硫黄・亜硫酸塩-○(10ppm超の場合)-

米国では、2004年の食品アレルゲン表示・消費者保護法(FALCPA)が8品目を定め、2021年4月23日に成立したFASTER法でごまが9品目目に加わりました(表示義務は2023年1月1日から)。FDAのFood Code 2022も「主要食品アレルゲン」の定義にごまを加えています。英国の14品目はFSAのガイダンスに、EUの14品目は規則1169/2011の附属書IIに列挙されています。日本の特定原材料は、厚生労働省掲載の小規模飲食店向け手引書(2024年1月改訂)では8品目(えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生)ですが、2026年4月1日の食品表示基準改正でカシューナッツが加わり9品目になりました(表示切替の経過措置は2028年3月31日まで)。

和食店にとっての注意点は3つあります。まず、そばは日本では表示対象ですが、米国の9品目にも英国・EUの14品目にも入っていません。現地の法定リストに載っていないからといってメニュー表から外すと、日本人客や、そばアレルギーを知っている客への説明に困ります。次に、イカ・タコ・貝類は英国・EUでは「軟体動物」として表示対象ですが、米国の「甲殻類」には含まれません。最後に、魚は米国・英国・EUで対象ですが、日本の特定原材料には入っていないため、日本で作った表には「魚」の列がないことがあります。

要点:表の列は「出店先の法定品目」+「日本の特定原材料(9品目)」+「店として追加する品目(そばなど)」の和集合で作ります。英国に出店する店なら14品目にそばを加えた15列前後が目安です。

2. 和食の基本調味料に隠れているアレルゲン

料理名から想像しにくいアレルゲンが入るのが和食の難しいところです。以下は一般的な原料での例で、実際には使っている製品の原材料表示で確認する必要があります。

3. 飲食店に求められる情報提供:米国・英国・EU

米国:Food Code 2022では、包装されていない食品に主要食品アレルゲンが原材料として含まれる場合、営業許可保持者が書面で客に知らせることが新たに規定されました(3-602.12(C))。あわせて、責任者の職務として、従業員が担当業務に応じた食品安全教育を受けており、そこに食物アレルギーの知識(主要食品アレルゲンの種類とアレルギー反応の症状)が含まれることを確保するよう定めています(2-103.11(O))。Food Codeはモデル規則で、州・郡がどの版を採用しているかで実際の義務は変わるため、出店する郡の規則を確認します。

英国(イングランド、北アイルランド、ウェールズ):FSAのガイダンスは、包装済み食品と非包装食品の両方でアレルゲン情報を提供すること、スタッフにアレルゲン教育を受けさせることを求めています。レストランの料理のような非包装食品では、14品目のいずれかを含むすべての品目について情報を提供しなければなりません。方法は、メニューや黒板、冊子に書面で示すか、口頭で伝える場合は「情報はスタッフにお尋ねください」という趣旨の掲示を見やすい場所に出すかです。FSAは「書面の情報と会話の組み合わせが最もよい」と助言しています。店内で包装して同じ店で売る食品(PPDS、いわゆるナターシャ法)は、2021年10月1日から全原材料とアレルゲンの強調表示が必要です。持ち帰りの弁当やおにぎりを店頭に並べる場合は、この規則に該当しないかを確認してください。

デリバリーや電話注文では、注文の確定前と受け渡し時の2段階でアレルゲン情報を提供する必要があります。違反があった場合、地方自治体が改善通知を出すことがあり、通知には発行日から14日以内に不服申し立てができます。

EU:規則1169/2011の第9条1項(c)は附属書IIのアレルゲンを義務表示事項とし、第44条は包装されていない食品についても、この情報の提供を求めています。提供方法の細則は加盟国が国内規則で定めるため、フランス、アイルランドなど国ごとに確認が必要です。

日本(参考):手引書は、消費者庁が外食事業者に対し、最新で正確な情報を提供すること、あいまいな回答をしないこと、分からないときは分からないと答えること、意図しない混入(交差接触)の可能性も伝えることを推奨していると紹介しています。

4. アレルゲン表の作り方:レシピから下ごしらえまでさかのぼる

FSAは、アレルゲン原材料の情報を書面で記録し、それを製品規格書、原材料ラベル(元の容器か、ラベルを貼った容器での保管)、レシピや料理の説明に含め、常に最新にしておくよう求めています。これを表にする手順は次のとおりです。

  1. 仕入品の一覧を作る:醤油、味噌、みりん、酢、出汁の素、パン粉、冷凍えびなど、すべての仕入品について、ブランド名・品番と規格書(原材料、アレルゲン)を集めます。
  2. 下ごしらえ(サブレシピ)の表を作る:たれ、合わせ酢、天つゆ、ごまだれ、ポン酢、衣など、店内で作る中間品ごとに、使う仕入品からアレルゲンを集計します。
  3. メニューの表を作る:各メニューに使うサブレシピと仕入品から集計します。付け合わせ、薬味、仕上げのごま・ねぎ、添える醤油まで含めます。
  4. 「含む」と「交差接触の可能性」を分ける:原材料として入っているものと、同じ揚げ油・同じまな板を使うことによる可能性を別の記号にします。
メニュー(例)使うサブレシピ含む交差接触の可能性
海老天うどん天つゆ(醤油・かつお出汁)、衣(小麦粉・卵)小麦、大豆、魚、卵、甲殻類揚げ油共用の他の品目
野菜天ぷら衣(小麦粉・卵)、天つゆ小麦、大豆、魚、卵甲殻類(海老天と同じ油の場合)
冷奴醤油、薬味(ねぎ・かつお節)大豆、小麦、魚-
イカの塩辛自家製(イカ、塩)軟体動物同じまな板を使う魚介

表の内容は例示で、実際の配合によって変わります。重要なのは、「冷奴」のような一見アレルゲンの少ない料理でも、添える醤油と薬味で大豆・小麦・魚が入ることを表に反映することです。

5. 仕入先や配合が変わったときに表を更新する仕組み

海外では、日本から輸入する調味料が欠品し、現地品で代替することがよくあります。このとき表が更新されないと、昨日まで正しかった説明が今日から誤りになります。更新の仕組みとして、次の3つを決めておきます。

6. 接客:注文を受けるときの確認と伝え方

表があっても、接客で使われなければ意味がありません。注文時の流れを決め、研修で練習します。

  1. 客からアレルギーの申告があったら、アレルゲン名と、ごく微量でも反応するかを確認する。
  2. 表を見て答える。記憶で答えない。表にない質問は「確認します」と言い、料理長に確認する。
  3. 注文伝票やPOSにアレルギー情報を入力し、厨房に口頭でも伝える。
  4. 提供時に、どの皿がアレルギー対応の皿かを客に伝える。

英国では「情報はスタッフにお尋ねください」という掲示で口頭対応を選ぶ店が多いため、スタッフ全員が表の場所と使い方を知っていることが前提になります。FSAは無料のオンライン食物アレルギー研修とチェックリストを提供しており、新人研修に組み込めます。

7. 厨房:交差接触を避ける手順と「対応できない」と言う基準

FSAのガイダンスは、使用前の器具洗浄、アレルゲンを扱った後の手洗い、ふた付き・ラベル付き容器での分別保管を挙げ、同じ揚げ油の使用でも交差接触が起こると例示しています。交差接触を避けられない場合は、アレルゲンを含まない料理は提供できないと客に伝えるべきだとしています。また「グルテンフリー」などの表示は、アレルギーのある人すべてに安全であることの保証になるため、厨房で小麦粉を扱っていて時間と場所で分離できないなら、そうした表示をすべきではないとしています。

天ぷら油、うどんの茹で湯、寿司カウンターのまな板など、和食の厨房は共有する設備が多い構造です。どの品目なら分離できて、どの品目は分離できないかを料理長が事前に決め、表の「交差接触」欄と接客の説明をそろえておくことが、事故を防ぐ現実的な方法です。生の食材と加熱済み食品の分け方は交差汚染の記事で扱います。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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