海外出店|国・地域別の開業

オーストラリアで和食店を開く|ASIC登録・FSANZ 3.2.2A・NSWとビクトリアの窓口

豪州の日本食店2,230店・在留邦人10.6万人の概況、ASIC会社登録(A$636)と現地取締役要件、FSANZ Standard 3.2.2Aの食品安全責任者・研修・記録、シドニー市の開発許可と屋根上排気、NSWの酒類免許(A$965)、法人税25〜30%とGST10%を公式情報で整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:日本食店2,230店、在留邦人は世界2位の10.6万人
  2. 連邦・州・自治体:どの手続きがどこか
  3. 会社設立:ASICの登録とABN
  4. 全国共通の衛生基準:FSANZ Standard 3.2.2A
  5. ニューサウスウェールズ州(シドニー)の手続き
  6. ビクトリア州(メルボルン)の手続き
  7. 酒類免許:NSWのOn-premises licence
  8. 税:法人税25%または30%、GST10%
  9. 日本食材の輸入と料理人のビザ
  10. 契約前に確認する項目
  11. シドニー出店の公的費用を見積もる(仮の例)

オーストラリアで飲食店を開くときは、連邦、州、自治体(council)の3層の手続きを分けて考えると整理しやすくなります。会社の登録と税は連邦、食品衛生の基準は全国共通の食品基準(FSANZ)を各州の法律が取り込み、実際の届出・登録と検査は多くの場合自治体、酒類免許は州です。この記事では、シドニーのあるニューサウスウェールズ州(NSW)とメルボルンのあるビクトリア州を例に、2026年9月時点で連邦・州・自治体の公式ページに書かれている要件と費用を確認します。

1. 市場:日本食店2,230店、在留邦人は世界2位の10.6万人

農林水産省の2025年調査では、オーストラリアの日本食レストランは約2,230店で、2023年から約230店増えました。ニュージーランドは約500店(20店増)です。外務省の統計(2025年10月1日現在)では、オーストラリアの在留邦人は105,566人で、国別では米国に次ぐ2位です。都市別ではシドニー都市圏が31,673人(6位)、メルボルン都市圏が19,671人(12位)でした。

単純に割ると、日本食店1店あたりの在留邦人は約47人(筆者計算)で、シンガポール(約29人)より日本人の人口に厚みがあります。日本語を話すスタッフを現地で探す際の母集団が大きい、ということです。ただし店の売上を日本人客だけで支えられる規模ではないため、業態は現地の消費者の利用場面から考える必要があります(利用場面から業態を決める)。

2. 連邦・州・自治体:どの手続きがどこか

手続き窓口費用(2026年9月確認)メモ
会社登録ASIC(連邦)株式会社の登録A$636、年次審査料A$3422026年7月1日からの料金。社名予約はA$65(2カ月)
ABN(事業者番号)Australian Business Register(連邦)無料GST登録やインボイスに使う
GST登録ATO(連邦)—GST売上A$75,000以上で義務。超える見込みを知ってから21日以内
食品事業の届出・登録自治体(NSWは自治体またはNSW Food Authority、ビクトリアは自治体)自治体ごと営業開始前に
開発許可(用途・工事)自治体自治体ごとシドニー市は許可なしの営業を違法と明記
酒類免許州(NSWはLiquor & Gaming NSW)NSWのOn-premises licenceはA$965RSA資格など

3. 会社設立:ASICの登録とABN

ASICの料金データ(2026年7月1日から)では、株式資本を持つオーストラリア会社の登録がA$636、非公開会社(proprietary company)の年次審査料がA$342です。社名の予約はA$65で最長2カ月です。

役員の要件として、ASICは「非公開会社には、通常オーストラリアに住む取締役が少なくとも1人必要」と説明しています。役員は18歳以上で、取締役は就任前に取締役ID(director ID)を申請しなければなりません。会社情報に変更があれば28日以内に届け出ます。日本本社の役員だけでは登録できないため、現地に住む取締役を誰にするかを先に決めておく必要があります。

事業者番号(ABN)は連邦政府の事業者登録(ABR)で無料で取得できます。

4. 全国共通の衛生基準:FSANZ Standard 3.2.2A

2023年12月から、飲食店やケータリングなどには、食品基準コードのStandard 3.2.2A(食品安全管理ツール)が適用されています。FSANZの解説によると、要点は次の3つです。

ツール対象内容
食品安全責任者(FSS)カテゴリー1・2の事業者「指定活動」(包装されていない、そのまま食べられる要注意食品の取り扱い)を始める前に、認定されたFSSを任命する。証明書は登録研修機関または州の食品規制当局が認める機関が発行したもので、過去5年以内に取得したもの。FSSは各食品取扱者に助言・監督できるよう「合理的に対応できる」状態でなければならない
食品取扱者の研修カテゴリー1・2の事業者包装されていない要注意食品を扱う前に、食品安全の研修を修了するか、十分な技能と知識を持っていること。研修には安全な取り扱い、汚染、清掃と消毒、個人衛生を含む
記録による実証カテゴリー1の事業者のみ指定活動で食品安全のリスクを管理したことを示す記録を作り、少なくとも3カ月保管する(検査官に実演などで示せる場合は記録以外の方法も可)

FSANZは、FSSは日々の食品取り扱いに関わり、現場で監督するか電話などですぐ連絡がつく人であるべきだとし、普段食品を扱わない人や店に来ない人をFSSに任命するのは合理的でない、と説明しています。日本の本社にいる役員を名目上のFSSにすることはできない、ということです。刺身や寿司は、まさに「包装されていない、そのまま食べられる要注意食品」です。和食店は、温度や時間の管理を日々記録する前提で、開業前にFSSを任命しておく必要があります。

5. ニューサウスウェールズ州(シドニー)の手続き

Service NSWの案内では、食品を販売する事業は営業開始前に地元自治体またはNSW Food Authorityに届け出る必要があり、カフェ、レストラン、持ち帰り店は自治体への届出です。連邦のABLISに掲載された料金では、NSW Food Authorityの検査・監査料は1時間A$370(2026-27年度、最低30分)です。届出はオンラインの様式(Food Business Notification)で行えます。自治体の検査料は自治体ごとに定められているため、店舗のある自治体の料金表で確認してください。

シドニー市(City of Sydney)の「Get approval for a food business」では、次の点が明記されています。

「屋根より上で垂直に排気」は、ビルの中層階や路面店で焼き場を持つ店にとって、物件選びの決定的な条件になります。詳しくは排気計画の記事を参照してください。

6. ビクトリア州(メルボルン)の手続き

ビクトリア州の食品安全機関Safe Food Victoriaは、病院、カフェ、レストラン、スーパー、製造業者などほとんどの食品事業の登録と規制は自治体が担当すると説明しています。Safe Food Victoria自体が許可を出すのは、肉・家禽・水産物・乳製品の事業と新しい技術を使った食品の製造です。メルボルンで和食店を開く場合は、店舗のある自治体の環境衛生部門に、登録の区分と必要な食品安全の書類を確認するのが最初の手順です。FSANZの3.2.2Aはビクトリア州でも同じく適用されます。

7. 酒類免許:NSWのOn-premises licence

NSW州政府の料金表では、レストランなどが取得するOn-premises licence(様式APP600)の申請費用は、免許料A$376と処理料A$589の合計A$965です。深夜0時から午前1時30分まで営業を延ばす承認はA$3,451と、免許本体より高くなります。Service NSWの申請案内では、個人で申請する場合、責任ある酒類提供(RSA)の資格、3カ月以内に発行された全国警察証明(National Police Check)などが必要です。ビクトリア州は州の酒類規制当局の制度で別に申請します。

8. 税:法人税25%または30%、GST10%

9. 日本食材の輸入と料理人のビザ

農林水産省の資料では、オーストラリアは原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を2014年1月に撤廃しています。放射性物質に関する産地証明は求められません。ただし、原発事故関連とは別に、オーストラリア側の輸入条件が品目ごとに定められている場合があるため、自社で輸入する場合は輸入業者と確認してください。

日本人料理人を雇う場合の就労ビザの種類と要件はオーストラリアで日本人料理人を採用するで扱っています。

10. 契約前に確認する項目

  1. 物件に飲食店としての開発許可があるか。なければ開発申請の期間と費用を見込む(シドニー市は事前相談が無料)。
  2. 厨房排気を屋根より上に垂直に出せるか。グリーストラップの位置が厨房の外に取れるか。
  3. 現地に住む取締役を確保できるか(ASIC)。
  4. FSSの資格を持つ人を開業時に確保できるか。和食の指定活動を誰が監督するか。
  5. 酒類を出すなら、RSA資格と警察証明を持つ申請者、深夜営業の有無。
  6. 初年度売上がA$75,000を超えるか(GST登録の時期)。

11. シドニー出店の公的費用を見積もる(仮の例)

仮に、シドニー市内で酒類を出す和食店を、新設の非公開会社で開くとします。ここまでに確認した公的な費用を並べると次のとおりです。

項目金額支払先
社名予約(任意)A$65ASIC
会社登録A$636ASIC
年次審査料(毎年)A$342ASIC
ABN無料ABR
On-premises licenceA$965Liquor & Gaming NSW
深夜0時〜1時30分の延長(必要な場合)A$3,451Liquor & Gaming NSW

これに、開発申請の手数料、食品事業の登録・検査の手数料(自治体ごと)、FSSとRSAの研修費が加わります。金額より大きいのは時間で、開発許可が必要な物件では、申請から許可までの期間が開業日を左右します。シドニー市の無料の事前相談を物件の申込み前に使い、既存の許可で営業できる物件かどうかを早めに見極めるのが、工程を短くする最も確実な方法です。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

和食料理人を採用しませんか?

世界中の和食料理人が登録するWashokuJobに、貴店の求人を掲載できます。