海外出店|国・地域別の開業

カナダで和食店を開く|トロントとバンクーバーの食品営業・事業免許・酒類免許の窓口

カナダの日本食店3,080店の概況、連邦法人設立(C$200)と居住取締役要件、トロントの保健所通知・DineSafe・事業免許区分、BC州の図面承認とFOODSAFE、AGCOとBCの酒類免許、CFIAの輸入ライセンス、売上税を比較します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:日本食店3,080店、2年で470店増
  2. カナダの制度は州と市で決まる
  3. 会社設立:連邦法人は取締役の25%がカナダ居住者
  4. トロント(オンタリオ州):保健所への事前通知と市の事業免許
  5. バンクーバー(BC州):図面承認と営業許可、FOODSAFE
  6. 2都市の比較表
  7. 酒類免許:オンタリオのAGCOとBCのFood Primary
  8. 日本食材の輸入:CFIAの輸入ライセンス
  9. 税:連邦・州の法人税と売上税
  10. 日本人料理人のビザ
  11. トロントで開業するまでの順番

カナダで飲食店を開く手続きは、連邦よりも州と市の制度で決まります。食品衛生は州の規則(オンタリオ州のFood Premises Regulation、ブリティッシュコロンビア州のFood Premises Regulation)を地域の保健当局が運用し、事業免許とゾーニングは市、酒類免許は州の機関が扱います。連邦の役割は、会社の設立(州で設立することもできます)、税、そして食品の輸入を管轄するカナダ食品検査庁(CFIA)です。この記事では、日本人の多いトロントとバンクーバーを例に、2026年9月時点の公式ページで確認した手続きと費用を整理します。

1. 市場:日本食店3,080店、2年で470店増

農林水産省の2025年調査では、カナダの日本食レストランは約3,080店で、2023年から約470店増えました。北米では米国(約26,360店、320店増)に次ぐ規模で、増加数は米国を上回っています。

外務省の統計(2025年10月1日現在)では、カナダの在留邦人は75,316人(前年比2.6%減)で国別4位です。都市別ではバンクーバー都市圏が28,090人(8位、2.7%減)、トロント大都市圏が18,101人(13位、0.3%減)でした。在留邦人が減るなかで店舗数が増えており、現地の消費者向けの需要が伸びている市場と読めます。単純に割ると日本食店1店あたりの在留邦人は約24人(筆者計算)で、日本人客だけで店を支える前提は成り立ちません。

2. カナダの制度は州と市で決まる

同じカナダでも、トロントとバンクーバーでは許可の名前も順番も違います。最初に、出店する州と市を決め、その州の食品衛生規則、市の事業免許・ゾーニング、州の酒類規制当局の3つを確認するところから始めます。以下では2都市の手続きを順に見たうえで、比較表にまとめます。

3. 会社設立:連邦法人は取締役の25%がカナダ居住者

カナダ法人は、連邦法(カナダ事業会社法、CBCA)でも各州の法律でも設立できます。連邦のCorporations Canadaの料金表では、オンラインでの設立はC$200で、処理は1日です。C$100を追加すると4時間の特急処理になります。

連邦法人の取締役について、Corporations Canadaは「通常、取締役の少なくとも25%はカナダ居住者でなければならない。取締役が4人未満の場合は、少なくとも1人がカナダ居住者でなければならない」と説明しています。日本本社の役員だけで取締役会を作ることはできないため、現地に住む取締役を誰にするかを先に決めておきます。州法で設立する場合は、州ごとに取締役の要件が違うので、それぞれの州の登記当局で確認してください。

4. トロント(オンタリオ州):保健所への事前通知と市の事業免許

トロント市の公衆衛生部門(Toronto Public Health)の案内によると、トロントで食品施設を営業しようとする人は、オンタリオ州の健康保護増進法とFood Premises Regulationに基づき、営業開始前に保健医務官(Medical Officer of Health)に通知しなければなりません。既存の店を買い取る場合も同じです。通知すると保健検査官から連絡があり、施設の構造要件の説明や、新築・改装する施設の図面の審査を受けられます。案内は「賃貸借契約の前に、ゾーニングの条例や建築図面の提出が必要かを調べること」と注意しています。

検査結果は市のDineSafeで公開され、店舗にも検査通知が掲示されます。評価は「合格(Pass)」「条件付き合格(Conditional Pass)」「閉鎖(Closed)」の3種類で、違反は重大(crucial)、重要(significant)、軽微(minor)に分類されます。

これとは別に、市の事業免許「Eating or Drinking Establishment」が必要です。市の案内では、申請前に事業免許のためのゾーニング審査の承認を得る必要があり(有効な免許のある既存店を同じ区分で引き継ぐ場合などは不要)、法人の場合は全役員・取締役の犯罪歴照会が求められます。料金は申請料と免許料の合計でC$536.64です。また、店で食品を扱うスタッフは、ウェイター、ホスト、バーテンダー、調理人を含め、認定された食品取扱者の資格(Accredited Food Handler Certification)を持っている必要があります。

トロント市は2025年1月1日に飲食店・バー・娯楽施設の免許とゾーニングの条例を改め、免許の区分を整理しました。通常のレストランは「Eating or Drinking Establishment」(2025年の申請料C$516、更新料C$349)ですが、次の4条件のうち3つ以上に当てはまる店は「Expanded Activity Eating or Drinking Establishment」(申請料C$723、更新料C$525)になります。

酒類を出し、深夜まで営業する大型の居酒屋は、3条件を満たしてExpanded Activityの区分に入る可能性があります。持ち帰り専門の店は「Take-Out or Retail Food Establishment」(申請料C$380)という別の区分です。どの区分になるかで、ゾーニング審査の内容も変わるため、業態を決めた段階で市の免許検索ツールで確認しておきます。

5. バンクーバー(BC州):図面承認と営業許可、FOODSAFE

BC州のFood Premises Regulation(2025年10月27日改正)は、工事の段階から保健当局の関与を求めています。

居抜き物件を引き継ぐ場合も、許可は譲渡できないため新たに取得する必要があります。改装を伴うなら、第3条の図面承認から始めることになります。

6. 2都市の比較表

項目トロント(オンタリオ州)バンクーバー(BC州)
衛生当局への手続き営業前に保健医務官へ通知。図面審査あり工事前に図面承認、営業には許可が必要
研修食品を扱うスタッフに認定資格(市の事業免許の条件)経営者にFOODSAFE等。不在時は資格者1人以上
市の事業免許Eating or Drinking Establishment(C$536.64、ゾーニング審査が先)市の事業免許は市に確認
検査結果の公開DineSafe(合格・条件付き合格・閉鎖)保健当局に確認
酒類免許AGCOのLiquor Sales Licence(新規2年C$1,055)LCRBのFood Primary(申請と初年度でC$950)
売上税HST13%GST5%+PST7%

7. 酒類免許:オンタリオのAGCOとBCのFood Primary

オンタリオ州:アルコール・ゲーミング委員会(AGCO)のLiquor Sales Licenceの料金は、公告を伴う新規申請で2年間C$1,055、4年間C$1,355です(公告が免除される場合はC$925/C$1,225)。更新は2年C$300、4年C$600です。申請前に、市でゾーニングを確認し、州の納税状況確認(Tax Compliance Verification)を済ませておく必要があります。申請後は、市の担当窓口が署名する自治体情報様式と、消防・建築・保健などの機関の承認書(compliance letters)を提出します。

BC州:酒類・大麻規制局(LCRB)のFood Primary licenceは、申請と初年度の免許料の合計がC$950で、翌年以降の更新料は酒類の仕入れ量で決まります。対象は設備の整った厨房と、1つの店が管理する客席エリアを持つ店で、持ち帰り専門店、フードコート、フードトラックは対象外です。申請には、自治体の収容人数スタンプを押した平面図、犯罪歴照会などが必要で、深夜0時以降の営業には自治体または先住民自治体の同意が要ります。

8. 日本食材の輸入:CFIAの輸入ライセンス

農林水産省の資料では、カナダは原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を2011年6月に撤廃しており、最初に撤廃した国の1つです。

カナダの食品安全規則(SFCR)では、CFIAの説明によると、食品を輸入するにはライセンスが必要です(食品添加物と酒類などは除く)。一方、レストランが店で調理・包装した食品を他州や国外へ送る場合でも、消費者に直接届けるのであればライセンスは不要とされています(この除外は輸入には当たりません)。店として日本から食材を直接輸入するなら、輸入ライセンスを取るか、ライセンスを持つ輸入業者を通すかを決める必要があります。

9. 税:連邦・州の法人税と売上税

10. 日本人料理人のビザ

日本人の料理人を雇う場合の就労許可の手続き、雇用主側の要件、時間の見込みはカナダで日本人料理人を採用するで扱っています。就労許可の審査期間は店の許可より読みにくいため、料理長の着任時期を先に固め、それに合わせて内装工事の開始時期を決めるのが安全です(海外出店の採用スケジュール)。

11. トロントで開業するまでの順番

  1. 業態を決め、市の免許区分(通常かExpanded Activityか)と、物件のゾーニングを確認する。
  2. 会社を設立する(連邦ならオンラインで1日)。カナダ居住の取締役を決めておく。
  3. 賃貸借契約の前に、Toronto Public Healthへ新規施設を通知し、図面の審査と構造要件の説明を受ける。
  4. 市の事業免許のゾーニング審査を申請し、承認後に事業免許(C$536.64)を申請する。役員の犯罪歴照会を用意する。
  5. 内装工事と並行して、スタッフの食品取扱者資格の取得を進める。酒類を出すならAGCOに申請し、市の自治体情報様式と各機関の承認書をそろえる。
  6. 保健検査を受けて営業を始める。検査結果はDineSafeで公開される。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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