海外出店|国・地域別の開業

ドバイで和食店を開く|ドバイ市の図面承認・PIC・寿司の規定・酒税30%を工程に入れる

UAEの日本食店190店・ドバイ在留邦人3,433人(13.2%増)の概況、外資100%の条件とフリーゾーン、工事前に必要なドバイ市Food Codeの図面承認と記載事項、常勤PICとHACCP、寿司・刺身の規定、FIRSでの輸入登録、30%の酒税、法人税9%・VAT5%を整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:在留邦人は1年で13.2%増
  2. ドバイの手続きは「商業ライセンス→図面承認→工事」の順
  3. 会社の形:本土(メインランド)かフリーゾーンか
  4. ドバイ市の図面承認:工事の前に通す
  5. 図面に書くこと、設計で押さえること
  6. 衛生管理:食品安全の責任者(PIC)と食品安全プログラム
  7. 寿司・刺身に関するFood Codeの規定
  8. 日本食材の輸入:FIRSへの登録
  9. 酒類:30%の酒税と政府系輸入卸
  10. 税:法人税9%、VAT5%
  11. 工程表への入れ方

ドバイで和食店を開くとき、日本の感覚と最も違うのは「内装工事の前に、ドバイ市(Dubai Municipality)の食品管理部門に店のレイアウト図面を承認してもらう」ことが工程の中心にある点です。ドバイ市の食品衛生規範(Food Code)は、新築・改装する食品施設の図面は工事の前に食品管理部門の審査と承認を受けなければならない、と定めています。承認前に工事を進めると、やり直しになるおそれがあります。この記事では、ドバイ市のFood Code、ジェトロの制度解説、農林水産省の輸入規制資料をもとに、2026年9月時点で確認できた手続きの順番と条件を整理します。ドバイ経済観光局(DET)の商業ライセンスの料金は、この記事の執筆時に公式ページを確認できなかったため記載していません。

1. 市場:在留邦人は1年で13.2%増

農林水産省の2025年調査では、アラブ首長国連邦(UAE)の日本食レストランは約190店で、2023年から約20店増えました。中東ではイスラエル(約320店)、トルコ(約480店)より少ない数字です。この調査は、現地のウェブサイトやガイドブックで紹介されている、日本人会や日本商工会議所が日本食レストランとして扱っている、在外公館が認識しているといった基準で数えたもので、店舗数は一の位を四捨五入しています。190店という数字は、ドバイのホテルや商業施設に入る日本食店を網羅したものとは限らないため、現地で実際の競合店を数えてから判断してください。

外務省の統計(2025年10月1日現在)では、UAEの在留邦人は5,300人(前年比11.0%増)、ドバイは3,433人(同13.2%増、都市別47位)です。在留邦人の規模は小さいものの、伸び率は主要都市のなかで目立っています。客層の中心は日本人以外になるため、ハラールへの対応、酒類を出すかどうか、出店する施設の種類(ホテル内、商業施設、路面)を最初に決める必要があります。

2. ドバイの手続きは「商業ライセンス→図面承認→工事」の順

段階窓口内容(Food Codeなどで確認した条件)
1. 商業ライセンスDET(本土)またはフリーゾーン当局営業開始前に有効な商業ライセンスが必要。事業内容は食品に関するもので、正確な業種を記載する。記載外の事業はできない
2. 図面の審査・承認ドバイ市 食品管理部門新築・改装の図面は工事の前に承認を受ける(サービス名「Request for Layout Assessment for Food Establishment Licensing」)
3. 内装工事—承認図面どおりに施工。配置や動線を変える大きな変更は事前承認が必要
4. 衛生管理の体制ドバイ市食品安全の認定を受けたPICを常勤で置く。HACCPに基づく食品安全プログラムを運用
5. 食材の輸入(自社で行う場合)ドバイ市(FIRS)輸入前に電子システムとFIRSに登録。ラベル承認、品目ごとの登録

3. 会社の形:本土(メインランド)かフリーゾーンか

ジェトロの「外資に関する規制」(2026年8月25日更新)によると、UAEでは2021年6月に、現地法人の設立にUAE国民の51%以上の出資を求める条件が廃止され、外国資本は最大100%まで出資できるようになりました。ただし運用は首長国ごと、事業分野ごとに異なり、100%出資を認める業態は首長国ごとのリストで決められています。ドバイで本土に会社を作る場合は、飲食業の出資条件をDETのリストで確認する必要があります。

フリーゾーンに会社を設立する場合も外資100%が可能です。ジェトロの税制ページによると、フリーゾーン企業は施行規則の条件をすべて満たせば法人税が免除され、原則として本土との取引がなければ課税対象外です(申告は必要)。ただし、一般の客を相手にする飲食店は、店を置く場所と取引の相手によって本土かフリーゾーンかの選択が変わるため、会社の形を決める前に、出店予定の施設がどの管轄にあるかを確認してください。

4. ドバイ市の図面承認:工事の前に通す

Food Codeの第2.2節は次のように定めています。

居抜き物件を借りて厨房機器の位置を入れ替える場合も、「設備の移動」として事前承認の対象になり得ます。寿司カウンターの新設や焼き台の追加は、既存店の改装でも承認を前提に計画してください。

5. 図面に書くこと、設計で押さえること

Food Codeは、図面に記載する事項として少なくとも次を挙げています。

  1. 調理・加熱、洗浄、食品保管、客席に割り当てる面積と場所
  2. 衛生設備、空地、トイレ、倉庫
  3. すべての窓と機械換気の系統
  4. 機器の配置
  5. すべての出入口

設計の条件では、機械換気または混合換気で室内の空気の質を保つこと、換気設備はドバイ市の公衆衛生・安全部門の要件に基づいて設計すること、壁や天井に油や結露がたまらない能力を持たせ、グリースフィルターなどは清掃・交換のために取り外しやすくすることが求められています。グリーストラップは可能な限り施設の外に置くこと、定期的に点検し、油脂の廃棄物はすぐに取り除くことも定められています。揚げ物や焼き物の多い和食店では、排気とグリーストラップの位置が図面承認の通りやすさを左右します(厨房の動線設計)。

6. 衛生管理:食品安全の責任者(PIC)と食品安全プログラム

Food Codeの第3.1節は、すべての食品施設に食品安全の認定を受けた常勤の責任者(Person in Charge、PIC)を少なくとも1人置くことを求めています。さらに、高リスクの食品、そのまま食べる食品、生の食品を調理する飲食店では、営業中のすべてのシフトに認定を受けたPICが1人以上いなければなりません。刺身や寿司を出す和食店はこの条件に当たるため、シフトの数だけPICの資格者が必要になります。

またFood Codeは、すべての食品施設にリスクに基づく食品安全プログラムの実施を求めており、その考え方はCodex(WHO/FAO)のHACCPに基づいています。研修についても、すべての食品取扱者が食品安全の正式な研修を受けること、全従業員の研修計画を文書で持つことが求められ、ビュッフェやデリバリーなど食品に関わる業務の担当者にも必要に応じて研修を行うとされています。料理長と店長の両方がPICの認定を取っておくと、シフトの組み方に余裕が出ます。

7. 寿司・刺身に関するFood Codeの規定

Food Codeには、和食店に直接関わる規定がいくつもあります。高リスク食品の例として「生で食べる食品(牡蠣、寿司など)」が明記され、生または軽く加熱した動物性食品・魚介(寿司、生牡蠣、タルタルステーキ、カルパッチョなど)を出す場合について、次の対策が求められています。

温度については、多くの病原菌は5度から60度の間で急速に増えるとして、高リスク食品は配送中も5度以下または60度以上に保つこと、温かく出す料理は60度以上で保温すること、冷凍品は零下18度以下が望ましいことが示されています。食品安全プログラムは書面にして店に置き、少なくとも年1回見直す必要があります。寄生虫を除去する方法(冷凍処理など)は、仕入れ先の情報と合わせてプログラムの中で決めておきます。

8. 日本食材の輸入:FIRSへの登録

農林水産省の資料では、UAEは原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を2020年12月に撤廃しています。放射性物質に関する産地証明は求められません。

一方、ドバイ側の手続きとして、Food Codeの第7.1節は、食品を輸入・再輸出する事業者に、ドバイ市の電子政府システムと食品管理部門の食品輸入・再輸出システム(FIRS)への登録を求めています。輸入の前にFIRSでラベルの承認を受け、輸入する食品は品目ごとにFIRSに登録しなければなりません。味噌、醤油、だしの素など、和食で使う加工食品は品目数が多いため、自社で輸入するなら登録作業の手間を見込んでおく必要があります。ドバイ市のサービス一覧には、輸入食品の貨物を市場に出すための申請(Apply to Release Imported Food Consignments)もあります。

9. 酒類:30%の酒税と政府系輸入卸

ジェトロのビジネス短信(2024年12月9日)によると、ドバイ首長国は2023年1月1日から期限付きで撤廃していた30%の酒税を、2025年1月1日から再び課しています。ドバイにアルコール飲料を輸入するには、政府系の2社の酒類輸入卸(Maritime and Mercantile International〔MMI〕とAfrican Eastern)を通す必要があり、市内のレストランやホテルには両社から酒税の再徴収の連絡があったと報じられています。日本酒を仕入れる場合も、この2社の取り扱い銘柄と価格が前提になります。レストランの酒類販売の許可の条件は、出店する施設と管轄当局に確認してください。

10. 税:法人税9%、VAT5%

11. 工程表への入れ方

  1. 出店する施設(ホテル、商業施設、路面)と管轄(本土かフリーゾーンか)を決め、飲食業の外資出資の条件を確認する。
  2. 商業ライセンスを取得する。業種は「食品に関する正確な活動」で記載する。
  3. 厨房設計を固め、ドバイ市に図面を提出して承認を受ける。承認前に工事を始めない。
  4. 承認図面どおりに工事をし、並行してPICの認定取得と食品安全プログラムの作成を進める。料理人のビザはドバイで日本人料理人を採用するを参照。
  5. 自社輸入をするなら、FIRSへの事業者登録と品目登録を開業前に済ませる。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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