海外出店|国・地域別の開業

フランスで和食店を開く|衛生研修14時間・DDPP届出・レストラン酒類ライセンスの手順

仏の日本食店3,390店(2年で1,290店減)の概況、企業手続き窓口での登記(33.83ユーロ+19.33ユーロ)、14時間の食品衛生義務研修とDDPPへの届出、無料のレストラン用酒類ライセンスと20時間の営業許可研修、ERPの防火規則、TVA10%・20%、SMICを公式情報で整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:フランスの日本食店は2年で1,290店減
  2. 手続きの一次情報は「Entreprendre.Service-Public.fr」
  3. 会社設立:企業手続きの単一窓口で登記する
  4. 衛生:14時間の義務研修とDDPPへの届出
  5. 酒類:レストラン用ライセンスと営業許可研修
  6. 物件:公衆受入施設(ERP)の防火規則
  7. 税:店内飲食は付加価値税10%、酒類は20%
  8. 人件費の前提:最低賃金(SMIC)
  9. 日本食材の輸入と料理人のビザ
  10. 手続きの一覧と順番

フランスで飲食店を開く手続きは、行政の公式サイト「Entreprendre.Service-Public.fr」(首相府の法令・行政情報局が運営)に、分野ごとにまとまっています。この記事では、同サイトの「飲食業・商業の衛生規則」「酒類販売免許」「外国人の起業」などのページと、司法省のJustice.frに掲載された登記費用の説明を使い、会社設立、衛生研修と届出、酒類のライセンスと営業許可研修、店舗の防火規則、付加価値税(TVA)の税率を、2026年9月時点の内容で確認します。この記事で扱う範囲では、行政の審査を経る許可よりも、事前の届出と義務研修が手続きの中心になります。

1. 市場:フランスの日本食店は2年で1,290店減

農林水産省の2025年調査では、フランスの日本食レストランは約3,390店で、2023年から約1,290店減りました。欧州では最大の店舗数ですが、減少数も最大です。同じ期間に英国は約560店、ドイツは約290店増えています。

外務省の統計(2025年10月1日現在)では、フランスの在留邦人は36,023人(前年比2.8%減、国別10位)、パリは10,037人(同6.7%減、都市別22位)です。単純に割ると日本食店1店あたりの在留邦人は約11人(筆者計算)で、英国(約34人)と比べても日本人客の比重は小さく、フランスの日本食店は現地の客に支えられています。店舗数も在留邦人も減っており、「日本食であれば客が来る」段階は過ぎていると読むべき市場です。出店を検討するなら、競合店の業態と価格帯を実地で調べ、差別化の根拠を持ってから進めてください(競合マップの作り方)。

2. 手続きの一次情報は「Entreprendre.Service-Public.fr」

Entreprendre.Service-Public.frの各ページには「確認日(Vérifié le)」が記されていて、法令の条文へのリンクも付いています。この記事で参照したページの確認日は、衛生規則が2024年3月12日、酒類免許が2025年11月27日、防火規則が2025年4月30日です。制度の変更が多い分野なので、手続きの直前に同じページで最新の確認日を見ておくと安全です。

3. 会社設立:企業手続きの単一窓口で登記する

2023年1月1日から、会社の設立・変更・廃止の手続きは、オンラインの「企業手続き窓口(Guichet des formalités des entreprises)」で行うことになり、従来の企業手続きセンター(CFE)は廃止されました。Justice.fr(2026年3月18日更新)によると、SAS(簡易株式会社)やSARL(有限会社)など商事会社の登記手続きの費用は33.83ユーロで、これに実質的支配者の届出19.33ユーロが必ず加わります。この料金は、手工業などの一部の例外を除き、事業の内容にかかわらず同じです。さらに、法定公告紙(annonce légale)への設立公告が義務で、掲載料は会社の形態と公告する県によって変わります。

外国人の起業について、Entreprendre.Service-Public.frは「外国人はフランスに住まずにフランスで会社を設立できる」と説明しています。ただし、フランスに住んで事業を実際に営むには、それを認める滞在許可(長期滞在ビザなど)が必要です。「Talent(会社役員)」の滞在許可は、外国人が会社を経営するための義務ではないとも明記されています。日本から役員を派遣して常駐させるのか、日本から経営して現地は雇用した店長に任せるのかで、必要な在留手続きが変わります。

4. 衛生:14時間の義務研修とDDPPへの届出

義務研修:商業的な飲食店(restauration commerciale)では、食品衛生の研修が義務です。Entreprendre.Service-Public.frによると、要件は次のとおりです。

日本の調理師免許はフランスの資格ではないため、フランスの研修を誰かが受ける前提で、開業前の日程に入れておきます。

届出:動物由来の食品を扱って消費者に販売・提供する事業は、県の住民保護局(DDPPまたはDDETSPP)に届け出る必要があり、開業前にオンラインか郵送で行います。この届出は、DDPPの食品衛生部門が衛生検査の計画を立てるためのものです。検査は営業時間中に予告なしで行われることがあり、定期的に予定されることもあります。

魚、肉、卵、乳製品を使う和食店は、ほぼ確実に届出の対象になります。店の配置についても、同じページで、洗い場やごみ置き場などの汚れた作業区域と、調理・保管の清潔な区域を分けること、厨房や売場を通らずにごみ置き場へ行けるようにすること、従業員用と客用のトイレを設けること、食材を床に直接置かないこと、揚げ油は認定業者に回収させることなどが示されています。物件を選ぶ段階で、ごみ置き場への動線とトイレの数を確認しておく必要があります。

5. 酒類:レストラン用ライセンスと営業許可研修

フランスでは酒類を売る店はすべてライセンスが必要ですが、Entreprendre.Service-Public.frによると、食事の時間に食事に付けてのみ酒類を出すレストランは、バー向けのライセンスIIIやIVは要らず、レストラン用のライセンスで足ります。

ライセンス提供できる酒類取得費用
小レストランライセンス(petite licence restaurant)アルコール度数18度以下(ワイン、ビール、日本酒など)を食事に付けて無料
レストランライセンス(licence restaurant)18度を超える酒類(ウイスキー、度数が18度を超える焼酎など)も食事に付けて無料
ライセンスIV(参考)食事なしですべての酒類を出す(バー営業)既存のライセンスを買い取る必要があり、一般に高額

取得の流れは次の3段階です。

  1. 営業許可(permis d'exploitation)の研修を受ける:最低20時間を少なくとも3日に分けて受講する(対面またはオンライン)。費用は研修機関と地域によって異なり、最大で1,000ユーロ程度。許可は10年間有効で、6時間以上の研修で更新する。
  2. 市役所に事前届出をする:開業の少なくとも15日前。パリとアルザス・モゼルでは市役所ではなく県庁(préfecture)に出す。
  3. 受領証を保管する:市役所が発行する受領証が、ライセンスを保有している証明になる。

ライセンスの取得に国籍の条件はありません。ただし、バ=ラン、オー=ラン、モゼルの3県では、フランスまたはEU・欧州経済領域の国籍の人に限られます。成年であること、後見を受けていないこと、一定の犯罪歴がないことも条件です。

6. 物件:公衆受入施設(ERP)の防火規則

客を受け入れる飲食店は「公衆受入施設(ERP)」にあたり、防火と避難の規則が適用されます。Entreprendre.Service-Public.frによると、ERPは、全員が迅速に避難できること、消防の活動ができること、火災の拡大を抑える材料を使うことを前提に設計され、規則は施設の区分(種類と規模)によって変わります。県の安全・アクセシビリティ諮問委員会(CCDSA)は、建設時、開業時、営業中に検査を行い、営業中の検査は3年または5年ごとです(宿泊施設のない第5区分のERPは定期検査の対象外)。委員会の意見を踏まえて、危険がある場合、市長は改善命令が守られなければ閉鎖を命じることができます。

内装工事の前に、ERPとしての工事許可の手続きが必要かどうかを設計者と確認し、厨房の排気や換気の経路と合わせて図面に落とし込んでおく必要があります。

7. 税:店内飲食は付加価値税10%、酒類は20%

8. 人件費の前提:最低賃金(SMIC)

Entreprendre.Service-Public.fr(2026年6月1日確認)によると、法定最低賃金(SMIC)は総額で時給12.31ユーロ、月額1,867.02ユーロ、年額22,404.20ユーロです。SMICは毎年1月1日に改定され、成人の従業員であれば、時間給、歩合、チップなど報酬の形にかかわらず適用されます。SMICを下回る賃金を払った雇用主には1,500ユーロの罰金が科される可能性があります。また、業界の労働協約が定める最低賃金がSMICより高い場合は、協約の額を払う必要があります。

仮にホールと調理補助で最低賃金の従業員を4人雇うとすると、総額の賃金だけで月7,468.08ユーロになります。これに雇用主負担の社会保険料が加わるため、事業計画では「賃金総額+雇用主負担」で人件費を見積もり、労働協約の最低額も確認してください。

9. 日本食材の輸入と料理人のビザ

農林水産省の資料では、EUは原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を2023年8月に撤廃しており、フランスもその対象です。放射性物質に関する産地証明は求められません。日本人の料理人を呼ぶ場合の滞在許可と雇用主の手続きはフランスで日本人料理人を採用するで扱っています。

10. 手続きの一覧と順番

順番手続き窓口費用・期限
1物件のERP区分と工事許可の要否を確認市役所・設計者賃貸借契約の前
2会社の登記企業手続き窓口(オンライン)33.83ユーロ+19.33ユーロ+公告費
3食品衛生の義務研修(1人以上)研修機関最低14時間、200〜500ユーロ程度
4営業許可の研修(酒類を出す場合)認定研修機関最低20時間・3日以上、最大1,000ユーロ程度
5酒類の事前届出市役所(パリは県庁)開業の15日前まで
6動物由来食品の取り扱いの届出DDPP/DDETSPP開業前

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

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