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香港で和食店を開く|FEHDレストラン免許・暫定免許・酒牌・水産物輸入停止の確認点

香港の日本食店1,480店・在留邦人23,228人の概況、10都県産水産物の輸入停止、会社設立(HK$1,545)と商業登記、FEHD一般レストラン免許の物件条件・審査日数・床面積別の免許料、6カ月の暫定免許、酒牌の新聞公告と費用、2段階の事業所得税を公式資料で整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場:日本食店1,480店、在留邦人23,228人
  2. 最初に確認すること:日本産水産物の輸入停止
  3. 会社設立と商業登記
  4. レストラン免許の種類:和食店は「一般レストラン」
  5. 免許が下りない物件の条件
  6. 申請手続きと暫定免許
  7. 免許料:床面積で決まる
  8. 酒類免許:酒牌局への申請と新聞公告
  9. 税:事業所得税は2段階、消費税はなし
  10. 日本人料理人の就労ビザ
  11. 手続きを並べる順番

香港で和食店を開く手続きの中心は、食物環境衞生署(FEHD)のレストラン免許です。FEHDは申請を受けると屋宇署(建物)、消防處(消防)、規劃署(都市計画)に照会し、3部門が物件を見たうえで条件を示します。建物・消防・換気の条件を満たせば6カ月有効の「暫定免許」で先に営業でき、残りの条件を満たして正式免許に切り替える仕組みです。この記事では、FEHDの「Quick Reference Guide To Application for Restaurant Licences」(2025年11月版)を軸に、会社設立、酒類免許、税、そして和食店にとって避けて通れない日本産食材の輸入規制を、2026年9月時点の公式資料で整理します。

1. 市場:日本食店1,480店、在留邦人23,228人

農林水産省の2025年調査では、香港の日本食レストランは約1,480店で、2023年から約80店増えました(香港の店舗数は中国本土とは別に集計)。外務省の海外在留邦人数調査統計では、香港の在留邦人は2025年10月1日現在で23,228人(前年比1.5%増)、都市別の順位では10位です。

同じ調査で、シンガポールは約1,140店・在留邦人33,397人でした。香港は在留邦人がシンガポールより少ないのに日本食店は多く、現地の消費者に支えられた市場だと読めます。価格帯と業態は、日本人駐在員より地元客を主な客層として組み立てるのが前提になります。

2. 最初に確認すること:日本産水産物の輸入停止

香港は、原発事故に伴う日本産食品の輸入規制を続けている数少ない地域です。農林水産省の「香港の輸入規制の概要」によると、規制の内容は次のとおりです。

対象地域品目規制
福島、宮城、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、新潟、長野の10都県水産物(生きている、冷凍、冷蔵、乾燥などすべて)、海塩、海藻(加工品を含む)輸入停止(ALPS処理水の海洋放出に伴い2023年8月24日から)
福島野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉乳輸入停止
茨城、栃木、群馬、千葉野菜、果物、牛乳、乳飲料、粉乳日本の政府機関が発行する放射性物質検査証明書と輸出事業者証明書が必要
上記5県水産物、食肉、家禽卵政府機関発行の放射性物質検査証明書が必要

農林水産省の一覧(2025年11月21日現在)では、規制を措置した55の国・地域のうち50が撤廃済みで、一部都県を対象に輸入停止を続けているのは中国、香港、マカオ、韓国の4つです。寿司や海鮮を看板にする店は、仕入れる水産物・海藻・塩の産地が10都県に当たらないか、仕入れ先と一緒に確認する必要があります。メニューを決める前に、産地証明を含めた調達の流れを組んでおくと、開業後に品目が欠ける事態を避けられます。

3. 会社設立と商業登記

公司註冊處(Companies Registry)の料金表では、株式会社(非公開会社)の設立申請はオンラインでHK$1,545です(不成功の場合はHK$1,280の返金を申請可能)。同処のFAQによると、オンライン申請なら設立証明書と商業登記証が通常1時間以内に発行され、紙の申請なら4営業日以内です。

役員の要件は緩やかです。非公開会社には会社秘書役と、自然人の取締役が少なくとも1人必要ですが、取締役が香港居住者である必要はありません。一方、会社秘書役が個人の場合は香港に通常居住している必要があり、法人の場合は登記上の事務所が香港にある必要があります。登記上の事務所も香港に置かなければなりません。

商業登記の費用は税務局(IRD)の料金表で、2026年4月1日から2027年3月31日に始まる1年証がHK$2,350(登録費2,200+徴費150)、3年証がHK$6,170です。レストラン免許の申請は個人名でも法人名でもできます。

4. レストラン免許の種類:和食店は「一般レストラン」

食物業規例(第132X章)では、店内で食べる食事を売る事業はレストランにあたり、営業前にFEHDの免許を取らなければなりません。陸上の店舗の免許は2種類あります。

天ぷら、とんかつ、唐揚げを出すなら一般レストラン免許です。ラーメン店でも揚げ物や炒め物を出す場合は同じです。

5. 免許が下りない物件の条件

FEHDのガイドには、物件の段階で免許が出ない条件が具体的に書かれています。賃貸借契約の前に、少なくとも次の項目を確認してください。

また、店は常勤の衛生管理者(Hygiene Manager/Hygiene Supervisor)の監督下で営業する必要があり、FEHDが認める研修の修了が条件です。物件確認の進め方は物件調査の記事で詳しく扱っています。

6. 申請手続きと暫定免許

申請は所定の様式(FEHB 94)に、縮尺1:100以上・メートル法で描いたレイアウト図面3部を添えて、FEHDの免許事務所に窓口・郵送・オンラインで出します。FEHDの手続きガイド(Part IV)による主な節目は次のとおりです。

  1. FEHDが図面を予備審査する。通らなければ10営業日以内に図面が返却され、再申請が必要。
  2. 屋宇署・消防處・規劃署などに照会し、各部門が現地を検査する。
  3. 申請受理から通常20営業日以内に「申請審査委員会(Application Vetting Panel)」が開かれ、FEHD・屋宇署・消防處の担当者と、必要な改修内容や工事計画を協議する。
  4. 申請者が要件を満たしたと報告すると、通常8営業日以内に最終確認検査が行われる。
  5. 要件をすべて満たし、所定の免許料を払うと正式免許が出る。

正式免許の申請と同時に暫定免許を申請することもできます。衛生、建物安全、消防、換気の基本要件を満たしたことを、建築条例に登録された認可人(Authorized Person)、換気工事の専門業者、消防設備業者が証明すると、有効期間6カ月の暫定免許が出て営業を始められます。残りの要件は6カ月以内に満たし、正式免許を取らなければなりません。暫定免許を使う場合でも、認可人などの専門家の手配が前提になるため、設計段階から香港の建築・設備の専門家を入れておく必要があります。

7. 免許料:床面積で決まる

一般レストランの免許料はFEHDの料金表で床面積ごとに定められています(年額)。

床面積正式免許の交付正式免許の更新
100㎡以下HK$1,110HK$2,520
100㎡超〜150㎡HK$1,730HK$3,140
150㎡超〜200㎡HK$3,000HK$4,410
200㎡超〜250㎡HK$3,940HK$5,650

暫定免許の交付・更新料は、正式免許の更新料の半額です。料金表の注記によると、2025年11月1日の消防関連規則の施行に伴い、新規交付の料金からは消防處の手数料が除かれ、更新料は据え置かれています。

8. 酒類免許:酒牌局への申請と新聞公告

酒類を売るには酒牌局(Liquor Licensing Board)の酒牌が必要で、無免許販売は最高で罰金HK$1,000,000と禁錮2年です。FEHDの申請ガイドによると、酒牌はレストラン免許(暫定免許を含む)が出た物件に対して発行されます。

酒牌はレストラン免許のあとに出るため、開業日から日本酒を出したいなら、レストラン免許の申請と同時に酒牌の準備を始めておく必要があります。

9. 税:事業所得税は2段階、消費税はなし

法人の事業所得税(利得税)は2段階で、課税所得のうちHK$200万までが8.25%、超える部分が16.5%です。政府の税率ページによると、2025/26課税年度の事業所得税は1件あたりHK$3,000を上限に100%減免されます。ジェトロの税制ページが記すとおり、香港には消費税や付加価値税がないため、メニュー価格に税を上乗せする必要はありません。

10. 日本人料理人の就労ビザ

日本人の料理人を香港に呼ぶ場合、入境事務處の専門人材の一般雇用政策(GEP)を使うのが一般的です。対象は「香港で容易に得られない特別な技能・知識・経験」を持つ人で、通常は関連分野の学位が求められますが、特別な場合には技術資格や実務経験・実績の書類で代えられます。報酬は香港の専門職の市場水準に見合うことが条件です。飲食業の人員比率の規則や現地採用活動の要件も含め、香港で日本人料理人を採用するで詳しく説明しています。

11. 手続きを並べる順番

ここまでの内容を、実際に動く順番に並べ直すと次のようになります。各段階の日数はFEHDなどが示す標準的な目安で、改修工事の規模によって前後します。

  1. 物件の一次確認:用途(住宅用途の上層階でないか)、階段の数、床荷重、違法建築の有無、排気ダクトの経路を、契約前に建築の専門家と確認する。
  2. 会社設立と商業登記:オンラインなら証明書は通常1時間以内。香港に住む会社秘書役(または香港に事務所を持つ法人秘書役)を先に決める。
  3. レストラン免許の申請:図面3部を添えて申請し、暫定免許も同時に申請する。予備審査に通らなければ10営業日以内に図面が戻る。
  4. 審査委員会と工事:受理から通常20営業日以内に審査委員会で条件が示される。その条件に沿って内装・換気・消防工事を行う。
  5. 暫定免許で開業:認可人と専門業者の証明書を出して暫定免許(6カ月)を受け、営業を始める。並行して酒牌の新聞公告と審査(約8週間)を進める。
  6. 正式免許への切り替え:残りの条件を満たして報告すると、通常8営業日以内に最終確認検査。6カ月の期限内に正式免許を取る。

和食店の場合は、これに加えて「仕入れ品目ごとの産地確認」を2番目と3番目の間に入れておくと、メニュー表と申請図面(冷蔵・冷凍設備の容量)を同時に固められます。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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