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シンガポールで和食店を開く|Food Shop Licence・ACRA登記・酒類免許・税の手順と費用

日本食店1,140店・在留邦人33,397人の市場概況、ACRA登記(S$315)と現地取締役要件、SFAのFood Shop Licence(S$195、12段階)、物件の用途承認と排気、SPF酒類免許、法人税17%・GST9%、料理人ビザの要点を公式情報で整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 市場の規模:日本食店1,140店、在留邦人33,397人
  2. 開業に必要な手続きの一覧
  3. 会社設立:ACRAのBizfileで登記する
  4. Food Shop Licence:申請から営業開始までの12段階
  5. 物件:用途承認と調理排気を契約前に確かめる
  6. 酒類:警察(SPF)の酒類免許は時間帯と品目で6区分
  7. 日本食材の輸入:原発事故関連の規制は撤廃済み
  8. 税:法人税17%、GST9%
  9. 日本人料理人を呼ぶ場合のビザ
  10. 手続きを並べる順番

シンガポールで飲食店を開くときの主な窓口は、会社登記の会計企業規制庁(ACRA)、飲食店の営業許可を出すシンガポール食品庁(SFA)、酒類免許のシンガポール警察(SPF)、税務の内国歳入庁(IRAS)です。申請の多くは政府の事業者ポータル「GoBusiness」に集約されていて、手続きそのものは速く進みます。ただし、SFAの許可は「物件の用途承認」と「承認済みの図面どおりの内装」を前提にしているため、物件選びでつまずくと全体が止まります。この記事では、2026年9月時点で各機関の公式ページに書かれている費用・日数・条件を、手続きの順番に沿って整理します。

1. 市場の規模:日本食店1,140店、在留邦人33,397人

農林水産省が2025年11月に公表した「海外における日本食レストランの数」では、シンガポールの日本食レストランは約1,140店で、2023年の前回調査から約70店減りました。同じ調査で香港は約1,480店(80店増)、マレーシアは約2,200店(310店増)です。

一方、外務省の海外在留邦人数調査統計(2025年10月1日現在)では、シンガポールの在留邦人は33,397人で前年比2.6%増でした。単純に割ると日本食店1店あたりの在留邦人は約29人(筆者計算)で、周辺国より日本人客の厚みがある市場です。逆に言えば、日本人客だけでは店数が増えにくく、既存店の入れ替わりが起きている市場とも読めます。店舗数の減少は、出店の余地がないことを意味するわけではありませんが、立地と業態の選び方で差が出やすいと考えてください。

2. 開業に必要な手続きの一覧

手続き窓口費用(2026年9月確認)所要日数の目安
会社名の申請・会社登記ACRA(Bizfile)社名申請S$15、登記S$300多くは支払い後すぐ承認。複雑な案件は最長15営業日、他機関の審査が必要な場合は14〜60日
Food Shop Licence(飲食店許可)SFA(GoBusiness)S$195(有効期間1年)申請審査7営業日、図面承認7営業日。その後に内装工事と許可前検査
酒類免許SPF(GoBusiness)Class 1A S$880/年などGoBusinessの目安で約3週間
GST登録IRAS—課税売上が年S$100万を超える場合に義務
食材の自社輸入(該当する場合)SFA肉・魚の輸入ライセンスS$84/年など1営業日(書類が揃っている場合)

3. 会社設立:ACRAのBizfileで登記する

ACRAの料金表(2026年1月29日更新)では、新しい事業体名の申請がS$15、事業体の登録がS$300です。登録の手順ページによると、多くの登録は支払い後まもなく承認され、複雑な申請は最長15営業日、他の機関(照会先当局)の承認が必要な場合は14〜60日かかります。登録後は、ほかの役員全員が60日以内に申請内容を承認(endorse)する必要があります(登記代行業者が申請した場合は不要)。

役員について、ACRAの案内は「会社には少なくとも1人の取締役と1人の会社秘書役が必要」としたうえで、会社法上の取締役の要件として「通常居住していること(ordinarily resident)」、18歳以上であること、シンガポール国民・永住者または居住要件を満たす人であることを挙げています。日本本社の役員だけで取締役会を組むことは想定されていないため、現地に住む取締役を誰にするかは、会社を作る前に決めておく必要があります。会社秘書役は登記から6カ月以内に選任しなければならず、空席が6カ月を超えると取締役に最大S$1,000の罰金が科される可能性があります。

SFAの許可申請者は「シンガポール国民、永住者、内務省登録団体、ACRA登録事業体」に限られます。日本法人のままでは申請できないので、会社登記が許可申請の前提になります。

4. Food Shop Licence:申請から営業開始までの12段階

レストランやカフェなど、店内で調理・提供する店舗にはSFAのFood Shop Licenceが必要です。SFAの「申請手続きと料金」ページは、流れを次の12段階で示しています。

  1. 要件を満たしているか確認する(SFAのセルフチェックリスト)
  2. レイアウト図面を用意する(縮尺、厨房機器と設備、客席エリアの境界を記載)
  3. SingpassまたはCorppassを用意する
  4. GoBusinessで申請する
  5. SFAが申請を審査する(7営業日以内)
  6. レイアウト図面を承認する(7営業日以内)
  7. GIRO(口座振替)を登録する(最大8週間)
  8. 承認された図面どおりに内装工事をする
  9. 未提出書類を出す(2カ月以内)
  10. 許可前検査を受ける(オンライン検査または写真提出。オンライン検査は5営業日前までに予約)
  11. 検査から28日以内に料金(S$195、有効期間1年)を支払う
  12. 営業を始める

申請時点で、食品を扱う従業員全員がWSQの食品安全講習(Food Safety Course Level 1)の受講・再受講要件を満たし、SFAに登録されている必要があります。提出書類には、賃貸借契約書と、その契約についてIRASが発行する印紙税の証明書が含まれます。SFAのチェックリストでは、2つ以上の隣接区画にまたがるレストラン、または厨房面積が16平方メートルを超えるレストランには食品衛生責任者(Food Hygiene Officer)の配置が求められます。一定の店舗には環境庁(NEA)の環境衛生プログラム(Environmental Sanitation Regime)の実施も求められます。

要点:審査そのものは7営業日単位で進みますが、実際の日数を決めるのは8番目の内装工事です。図面承認のあとに設計を変えると承認をやり直すことになるため、厨房レイアウトは申請前に固めておきます。

5. 物件:用途承認と調理排気を契約前に確かめる

SFAのチェックリストは、必要書類の最初に土地・建物当局の承認(建築建設庁BCAの仮使用許可、都市再開発庁URAの用途変更承認、住宅開発庁HDBの用途承認など)を挙げています。URAの「Criteria for Restaurant」では、ショッピングセンターと商業ビルでは飲食店に計画許可は不要とされる一方、ショップハウスの用途変更は個別審査で、Balestier Road、East Coast Road、Joo Chiat Road周辺などは新規の飲食店が「承認されにくい地区」として列挙されています。

排気については、SFAのチェックリストが「調理レンジからの煙はすべて直ちに吸引し、空気清浄装置で処理すること」を許可前の要件にしています。焼き場や揚げ場がある和食店では、ダクトを通せる経路があるかどうかで物件の可否が決まります。ほかに、食品を扱う区域にマンホール、グリーストラップ、排水管の点検口などがないこと、調理区域に流し1つ以上と手洗い器1つ以上を置くことも要件です。契約前の確認項目は排気計画の記事と契約前の判断表にまとめています。

6. 酒類:警察(SPF)の酒類免許は時間帯と品目で6区分

店内で酒類を提供するには、SPFの酒類免許が必要です。SPFの料金表(返金不可、有効期間1年)は次のとおりです。

区分内容販売時間年間料金
Class 1A全酒類を店内で提供6:00〜23:59S$880
Class 1B全酒類を店内で提供6:00〜22:00S$660
Class 2Aビールのみ店内で提供6:00〜23:59S$460
Class 2Bビールのみ店内で提供免許に記載の時間S$285
Class 3A/3B持ち帰り用の小売(3Bはビールのみ)7:00〜22:30S$110
Class 5イベントなど30日以内の臨時指定時間1日S$22〜30日S$220

日本酒や焼酎を出す和食店は、閉店時間に応じてClass 1Aか1Bを選ぶことになります。GoBusinessの案内では処理期間の目安は約3週間です。ポップアップで酒類を出す場合はClass 5の臨時免許が使えます。

7. 日本食材の輸入:原発事故関連の規制は撤廃済み

農林水産省の「原発事故に伴う諸外国・地域の食品等の輸入規制の概要」(2025年11月21日現在)では、シンガポールは規制を撤廃した50の国・地域に含まれ、撤廃は2021年5月です。日本産の水産物や加工食品を、産地による追加の証明なしに輸入できる状態です。

通常は現地の輸入業者から仕入れますが、自社で直接輸入する場合はSFAのライセンスや登録が必要です。SFAの料金表では、肉・魚製品の輸入・輸出・積み替えライセンスが年S$84、生鮮果実・野菜の輸入ライセンスが年S$378、加工食品の輸入登録は無料で、いずれも書類が揃っていれば処理は1営業日です。米の輸入はライセンスごとにS$50で、処理の目安は3営業日です。米は政府指定倉庫との調整が入るため処理が長くなる場合がある、とSFAは注記しています。

8. 税:法人税17%、GST9%

仮に客単価S$80、1日80人、月26日営業とすると、年間売上は約S$200万になり、開業初年度からGST登録の対象に入ります。メニュー価格をGST込みで表示するか、別途加算するかは開業前に決めておく必要があります。

9. 日本人料理人を呼ぶ場合のビザ

日本人の料理人を雇う場合は、人材開発省(MOM)のEmployment PassかS Passを使うのが一般的です。MOMのページでは、金融業以外の最低給与は、Employment Passが月S$5,600(2027年1月1日以降の新規申請はS$6,000)、S Passが月S$3,300(同S$3,600)で、どちらも年齢とともに上がります。給与水準、ポイント制審査(COMPASS)、外国人雇用税を含めた比較はシンガポールで日本人料理人を採用するで詳しく扱っています。ビザの取得時期は内装工事の完了時期と重なることが多いため、料理長の着任日から逆算して申請を始めてください。

10. 手続きを並べる順番

  1. 候補物件の用途(URA・HDB・BCAの承認状況)と排気経路を確認する。
  2. ACRAで会社を登記し、現地に住む取締役と会社秘書役を決める。
  3. 賃貸借契約を結び、IRASで印紙税を納めて証明書を得る。
  4. 厨房レイアウトを確定し、GoBusinessでFood Shop Licenceを申請する(申請審査と図面承認はそれぞれ7営業日以内)。
  5. 承認図面どおりに内装工事をし、同時に従業員の食品安全講習と登録、酒類免許の申請(約3週間)、料理人のビザ申請を進める。
  6. 許可前検査を受け、28日以内に許可料を払い、営業を始める。

開業までの全体の工程表の作り方は開業のクリティカルパスで説明しています。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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