海外出店|業態・商品設計

海外焼き鳥店の出店計画:焼き場と串打ちの能力を測り、加熱基準と排気規則を確認する

鳥貴族の米国出店と海外31店・先行赤字の開示を踏まえ、中心温度(米国74℃、東京都の指針75℃1分)の記録から焼き場の1時間あたり本数を出す方法、串打ちの人時計算、レアの鶏とFood Codeの扱い、NYCのグリル排出規則(週875ポンド)を解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 米国で焼き鳥店の出店が続いている
  2. 焼き場の能力:1本の焼き時間と中心温度から1時間の本数を出す
  3. 串打ちの能力:仕込みの人時が1日の上限を決める
  4. レアの鶏をメニューに載せるか
  5. 炭火と排気:ニューヨーク市のグリル排出規則
  6. 開業前の測定と準備の一覧

焼き鳥店の売上は、焼き台の前に立つ焼き手が1時間に何本焼けるか、その串を前日までに何本打てるか、という2つの能力で上限が決まります。席数を増やしても、焼き場と串打ちの能力が追いつかなければ、提供が遅れて回転が落ちるだけです。海外ではさらに、鶏の加熱温度の基準、炭火の排気規制が加わります。この記事では、ジェトロの米国調査、エターナルホスピタリティグループ(鳥貴族)の開示、米国FDA Food Code 2022、東京都のカンピロバクター対策資料、ニューヨーク市環境保護局の規則をもとに、焼き場と串打ちの能力を測って出店計画に落とし込む方法を整理します。

1. 米国で焼き鳥店の出店が続いている

ジェトロの「2025年度 米国における日本食レストラン動向調査」は、ロサンゼルスで焼き鳥がトレンドになっていると報告しています。鳥貴族が2024年8月にレドンドビーチに和モダンの高級業態「Zoku」を開き、2025年1月にはトーランスに「Torikizoku」の米国1号店を開いて行列ができるほど話題になった、と記載されています。同調査は、ニューヨークのミシュラン1つ星の日本食店として焼鳥店の「Torien」も挙げています。

エターナルホスピタリティグループの2026年7月期決算説明会資料によると、海外店舗は2026年7月末で7つの国・地域に31店(前期末17店)でした。米国は直営3店舗で、多店舗展開に向けてフランチャイズの準備に着手したとしています。一方で、海外事業は「いずれも先行赤字が継続」とも書かれています。国内で1,000店を超える規模の会社でも、海外の焼き鳥店は立ち上げに時間がかかるということです。同社は研究開発のテーマに「自動串挿し機の検討」を挙げており、串打ちの人手が焼き鳥業態の課題であることがうかがえます。

同じ資料は、香港(フランチャイズ5店)と台湾(合弁6店)について、パートナー企業の外食経営の基盤と鳥貴族の高い認知度によって業績が安定して推移していると説明しています。自社で運営基盤を作る直営の市場と、現地企業の知見を使う合弁・フランチャイズの市場を分けて考えている、ということです。焼き場と串打ちの人材を自社で育てるのか、現地の外食企業に任せるのかは、進出形態の選択そのものでもあります(→直営・合弁・フランチャイズの比較)。

2. 焼き場の能力:1本の焼き時間と中心温度から1時間の本数を出す

焼き場の能力は、次の3つの数字で決まります。

  1. 焼き台に同時に並べられる串の本数
  2. 1本が焼き上がるまでの時間(中心温度の基準を満たすまで)
  3. 焼き手1人が同時に管理できる本数

2つ目の「焼き上がり」は、見た目ではなく温度で決まります。FDA Food Code 2022は、鶏肉(poultry)を全体が74℃(165°F)以上になるまで加熱するよう定めています(3-401.11、保持時間は瞬間でよい)。日本では、東京都がカンピロバクター対策として飲食店向けに「中心温度75℃1分間と同等以上の加熱」を示し、メニューごとに原料肉の大きさや重さ、火の強さや炭の量などの加熱条件と、中心温度が75℃に達してからさらに1分間加熱するまでに要した時間を記録するよう勧めています。

この記録は、そのまま焼き場の能力の測定になります。仮に、ねぎまの焼き上がりに平均8分、1回に焼き台に並べられるのが24本、焼き手1人が目を離さずに管理できるのが24本だとすると、焼き手1人の能力は1時間に最大180本(24本×60分÷8分)です。1人の客が平均6本頼むとすれば、1時間に30人分です。串の種類ごとに焼き時間は違うので、つくね、手羽、皮、野菜串もそれぞれ測り、注文比率で加重平均をとります。

測る項目測り方計画への使い方
串ごとの焼き時間中心温度計で基準温度に達するまでの時間を、10本以上測って平均をとる1時間あたりの焼き本数の計算
同時に並べられる本数焼き台の有効幅÷串の間隔焼き台の長さの選定
1人が管理できる本数模擬営業で焦がし・焼きむらが出ない上限を確かめる焼き手の人数とシフト
客1人あたりの本数ポップアップや試食会の注文データ席数の上限(→ポップアップで試す)

3. 串打ちの能力:仕込みの人時が1日の上限を決める

焼き場の能力が1時間180本でも、その串を前日までに打てなければ売れません。串打ちの能力は、1人が1時間に打てる本数で測ります。仮に、慣れた人が1時間に120本、慣れていない現地スタッフが60本打てるとして、1日600本を売る計画なら、慣れた人で5時間、現地スタッフだけなら10時間の仕込みが要ります。

この仕込み時間は人件費にそのまま乗ります。海外の人件費水準では、串打ちの時間を売上計画の段階で人時として計上しておかないと、原価率は合っているのに利益が出ない店になります。串打ちの速さと大きさのそろい方は、日本から来る料理長が現地スタッフにどれだけ早く教えられるかにかかっているため、研修期間も計画に入れます(→開業前の厨房研修、焼き鳥職人の採用)。

要点:1日の販売本数の上限は、「焼き場の能力×営業時間」と「串打ちの能力×仕込み時間」の小さい方です。どちらが上限になっているかで、投資すべきものが焼き台なのか人なのかが変わります。

4. レアの鶏をメニューに載せるか

日本の焼き鳥店では、ささみの半生や鶏わさなど、中心まで火を通さない品を出す店もあります。海外でこれを出せるかは、規則の読み方と保健当局の判断に左右されます。

Food Code 2022の3-401.11(D)は、生の卵、生の魚、生の二枚貝、ステーキタルタル、軽く火を通した魚、半熟卵、レアの肉(MEAT)といった生や半生の動物性食品について、高リスク集団に提供する施設でないこと、子ども向けメニューからの選択では挽き肉を含まないこと、消費者に安全のためには十分に加熱すべきだと知らせていること(3-603.11の注意書き)を条件に、客の求めや選択に応じて提供できるとしています(このほか、保健当局がHACCP計画に基づく適用除外(variance)を認めた場合も提供できます)。Food Codeの定義では、肉(MEAT)に鶏肉(POULTRY)は含まれず、(D)の例示にも鶏肉は挙がっていません。一方、3-603.11の注意喚起の文言には鶏肉が含まれています。レアの鶏を出す場合に保健当局がどう判断するかは、開業地の当局に確認するしかありません。

東京都の資料は、「湯引き、炙り程度の加熱では、鶏肉を汚染しているカンピロバクターを死滅させることはできない」と明記し、たとえ新鮮でも生や加熱不十分な鶏肉の提供は避けるよう求めています。海外出店では、日本の店の看板メニューであっても、レアの鶏はメニューから外すことを基本にしておくのが無難です。外すと決めた場合は、日本から来る料理人に最初に伝えておく必要があります。

5. 炭火と排気:ニューヨーク市のグリル排出規則

ニューヨーク市環境保護局(DEP)は、業務用のグリル(char broiler)からの粒子状物質の排出を規制しています。

週875ポンドは、1日あたりに直すと約125ポンド(約57kg)です。仮に1本30gの鶏を使う店なら、1日約1,900本に相当します。小規模な焼き鳥店がすぐに該当する量ではありませんが、多店舗化や大型店を考えるなら、使う焼き台がこの規則の対象になるか、排気設備を設計する段階で確認しておく必要があります。排気の経路やダクトの計画全体については排気計画の記事で扱っています。

6. 開業前の測定と準備の一覧

項目準備すること
焼き時間の記録串の種類ごとに、中心温度が基準に達するまでの時間を測り、加熱条件の表を作る(米国74℃、日本の指針は75℃1分)
焼き場の能力焼き台の長さ、同時に焼ける本数、焼き手の人数から1時間の本数を計算
串打ちの能力1人1時間あたりの本数を、日本人スタッフと現地スタッフで別々に測る
生・半生の品出すか出さないかを決め、出す場合は開業地の保健当局に事前確認し、注意書きを用意
炭と排気焼き台の種類、1週間の肉の使用量、排出規則の対象かどうかを確認
生の鶏の保管と器具生の鶏と、そのまま食べる食材の置き場と器具を分ける(→交差汚染対策)

焼き鳥は、仕入れた鶏をさばき、串を打ち、焼くという工程のすべてに人の手がかかる業態です。席数や客単価から計画を立てる前に、焼き場と串打ちの能力を実際に測り、どちらが上限になっているかを確かめてから、物件の広さと人員を決める順番をおすすめします。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

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