採用の進め方

調理師専門学校から海外の和食店へ採用するルート

調理師養成施設の制度、学校経由の無料職業紹介の仕組み、新卒者とビザの経験要件の関係を整理。ワーホリ、国内系列店経由、経験のある卒業生という3つの現実的なルートを解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 調理師養成施設とはどんな学校か
  2. 学校数と入学者数の推移
  3. 学校経由の求人はどういう仕組みか
  4. 新卒をすぐ海外に呼べるか:ビザの壁
  5. 現実的な3つの採用ルート
  6. 学校へのアプローチ手順
  7. 留学生の卒業生について

海外の和食店が若手の料理人を探すとき、調理師学校は有力な窓口です。卒業生は基礎を学んでいて、海外で働くことにも前向きな人が一定数います。ただ、「卒業したばかりの人を来月から海外店へ」は、ビザの条件を考えるとほとんどの国で難しいのが実情です。

この記事では、調理師学校(調理師養成施設)の制度上の位置づけ、学校経由で求人を出す仕組み、そしてビザの条件を踏まえた現実的な採用ルートを整理します。学校名や数値は、公的な資料と業界団体の統計で確認できたものだけを使っています。

1. 調理師養成施設とはどんな学校か

調理師法第3条は、調理師免許を受ける道を2つ定めています。

  1. 都道府県知事の指定する調理師養成施設で1年以上、調理・栄養・衛生に関して必要な知識と技能を修得した人
  2. 飲食店などで2年以上調理の業務に従事したあと、調理師試験に合格した人

1つ目の道をとるのが、いわゆる調理師学校です。卒業すれば試験なしで免許を申請できます。学校の形は専門学校(専修学校)が中心ですが、高等学校の調理科や短期大学などもあります。専門課程の昼間部では1年制と2年制が中心です。

海外の雇用主にとって大事なのは、卒業時点では実務経験がほとんどないということです。学校で学んだ期間は、ビザの審査でいう「職歴」とは別に扱われるのが普通です。

2. 学校数と入学者数の推移

養成施設の業界団体である公益社団法人全国調理師養成施設協会(全調協)の統計によると、令和7年度の調理師養成施設は266施設です。内訳は専修学校143、高等学校111などで、設置者別では学校法人立が221を占めます。

入学者は減っています。同協会の集計対象となっている専修学校の入学者数は次のとおりです。

年度入学定員入学者数うち専門課程・昼間部 1年制うち専門課程・昼間部 2年制
平成29年度(2017)19,524人10,344人3,794人4,822人
令和4年度(2022)17,486人8,556人2,973人4,017人
令和7年度(2025)15,332人8,830人2,770人4,439人

同協会は、この表の専修学校入学者の計はすべての専修学校入学者の計ではないと注記しています。それでも、平成29年度から令和7年度にかけて入学者がおよそ15%減っていることは読み取れます。令和7年度は前年度(8,232人)より増えましたが、定員に対する充足率は6割に届きません。

一方、日本国内の飲食物調理従事者の有効求人倍率は2026年7月時点で2.18倍(パートタイムを含む)です。卒業生は国内でも引く手あまたで、学校には国内の求人が多数届いていると考えるのが自然です。海外の求人は、その中で目に留まる内容にする必要があります。

3. 学校経由の求人はどういう仕組みか

学校の就職支援は、法律上は職業紹介の一種です。職業安定法第33条の2は、学校や専修学校の長が厚生労働大臣に届け出て、無料の職業紹介事業を行えると定めています。専修学校の場合、対象は「当該専修学校の学生若しくは生徒又は当該専修学校を卒業した者」です。

ここから実務上のポイントが3つ出てきます。

また、職業安定法第5条の3により、求人者は職業紹介事業者(学校もこれに含まれます)に求人を申し込むとき、業務の内容、賃金、労働時間などの労働条件を明示しなければなりません。海外の雇用主にこの規定がどこまで及ぶかは個別の判断になりますが、学校の側は日本の求人票の形式で条件を受け取ることに慣れています。給与、休日、住居、渡航費、ビザの扱いを日本式に書いた求人票を用意してください。書き方は海外求人票の書き方で解説しています。

4. 新卒をすぐ海外に呼べるか:ビザの壁

料理人を受け入れる就労ビザの多くは、実務経験や給与水準を条件にしています。新卒者と相性が悪いのはこのためです。

国・制度新卒者にとっての主な壁
オーストラリア Skills in Demand ビザ(482)関連する実務経験1年以上が必要
ドイツ 特別料理人の枠2年間の調理学校に加えて2年間の実務経験が必要
シンガポール Employment PassCOMPASSの学歴項目は学位相当の資格がなければ0点。月給の基準額(年齢により異なる)も満たす必要がある
英国 Skilled Worker調理師(SOC 5434)の新規スポンサーは事実上閉じている
米国 E-2従業員は監督・管理職か、事業に不可欠な専門技能を持つ人であることが条件

一方で、ワーキングホリデーは経験を問いません。オーストラリア、カナダ(IEC)、英国(ユース・モビリティ・スキーム)はいずれも18〜30歳の日本人が対象で、調理師学校の卒業生はほぼ全員が年齢の条件に入ります。制度の比較はワーキングホリデーでの和食人材採用にあります。

5. 現実的な3つの採用ルート

ルートA:ワーキングホリデーの卒業生

ワーホリ協定国に店があるなら、卒業直後の人を最も早く迎えられるルートです。ワーホリの期間中に店で実務経験を積めば、その経験が後の就労ビザで数えられる可能性もあります(数え方は各国の規定によります)。ただし、ワーホリは本人が申請する制度で、雇用主が保証するものではありません。国ごとの定員や条件は変わるので、時期を決める前に確認してください。

ルートB:日本国内の系列店で経験を積んでから異動

日本に本店や系列店がある企業なら、新卒で国内採用し、1〜3年の実務を積んでから海外店に送る形がとれます。ビザの経験要件を満たしやすく、本人も店の仕事を覚えてから海外に出られます。採用時点で「海外店への異動の可能性」を労働条件として明示しておくことが大切です(就業場所の変更の範囲)。出向と現地採用の違いは海外赴任と現地採用の比較で扱います。

ルートC:数年の経験を持つ卒業生

学校の職業紹介は卒業生も対象です。卒業後3〜5年ほど経った人は、国内で一通りの仕事を覚え、次の一歩を考える時期にあたります。就労ビザの経験要件も満たしやすい層です。学校の就職担当に「卒業生向けの求人として扱ってもらえるか」を相談してみてください。

6. 学校へのアプローチ手順

  1. 学校を探す。全調協のサイトに全国の調理師養成施設の一覧があります。和食の専攻やコースがある学校、店の業態(寿司、割烹、ラーメンなど)に近い授業がある学校を選びます。
  2. 就職担当に連絡する。最初に確認するのは、海外の求人を受け付けているか、卒業生への紹介に対応しているか、求人票の書式と受付時期です。
  3. 日本語の求人票と店の資料を送る。店の写真、厨房の様子、日本人スタッフの人数、住居の手配を具体的に書きます。学生は海外の生活を具体的に想像できないことが多く、写真の効果が大きい層です。
  4. 説明の機会を求める。オンラインでの説明会や、日本出張時の学校訪問が可能か相談します。受け入れの形は学校ごとに違います。
  5. 結果を記録する。どの学校から何人応募があり、何人が採用され、1年後に何人残っているかを記録します。学校ごとの相性がわかってきます。

学校は、卒業生を送り出した先で何が起きたかを気にします。約束した条件と実際が違えば、次の年から紹介してもらえなくなります。求人票に書いたことは必ず守り、採用した卒業生の様子を学校に伝えると、関係が続きやすくなります。

7. 留学生の卒業生について

調理師学校には外国人留学生も在籍しています。農林水産省の「日本の食文化海外普及人材育成事業」は、日本の調理師養成施設を卒業した外国人が、日本国内の和食店などで最長5年間働きながら技能を高められる制度です。これは日本国内で働くための制度で、海外店への派遣制度ではありません。詳しくは制度の解説をご覧ください。

ただ、日本で学び、働いた外国人の料理人が母国や第三国に戻って和食店で働くことは十分考えられます。母国で採用する場合は、その国の就労資格がそのまま使えることが多く、ビザの壁が低くなります。店のある国の出身者が在籍しているかを学校に聞いてみるのも一つの方法です。

学校ルートは、すぐに即戦力を得る方法ではありません。1〜3年先の人材を育てる投資と考え、ワーホリや経験者の採用と組み合わせてください。採用チャネル全体の考え方は日本の料理人はどこで海外の仕事を探すか、英語での解説はRecruiting from Japanese culinary schoolsにあります。

本記事は一般的な情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。ビザの要件、ワーキングホリデーの条件、学校の職業紹介の取り扱いは変わることがあります。採用の前に各国の公式情報と各学校に確認してください。

出典

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