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調理師・寿司職人の就労ビザ 国別まとめ

豪州・カナダ・シンガポール・マレーシア・米国・英国。直近1年半で3か国が変更、うち1か国は事実上閉鎖しました。各国政府の一次情報から。

最終更新 2026年9月21日 WashokuJob

目次

  1. 6か国まとめ
  2. オーストラリア
  3. カナダ
  4. シンガポール
  5. マレーシア
  6. 米国
  7. 英国
  8. 調理師免許は効くのか
  9. よくある落とし穴

「海外のレストランは就労ビザを出してくれるのか」という問いには、国ごとにまったく違う答えがあります。しかも直近1年半で、6か国のうち3か国で制度が動きました。うち1か国は「出せる」から「出せない」に変わっています。

以下はすべて各国政府の公式ページと法令を2026年9月に確認した内容です。一般情報であり、法務・入管の助言ではありません。

1. 6か国まとめ

主な経路給与下限結論
オーストラリアSkills in Demand(サブクラス482)Core SkillsA$79,423(2026-27年度)開いている。Chefは職業リスト掲載
カナダLMIA、NOC 62200 Chefs州中位賃金+20%(例:オンタリオ C$36.92/時)基準超なら開いている。下回ると厳しい制限
シンガポールEmployment Pass / S PassEP:月S$5,600〜/S Pass:月S$3,300〜開いているが、Work Permitは日本国籍不可
マレーシアEmployment PassカテゴリーIII:月RM5,000(2026年6月1日〜)開いている。基準はほぼ倍増
米国E-2/O-1B/EB-3経路により異なる料理人専用ビザなし。資本構成と経歴次第
英国Skilled Worker£41,700 または going rate新規の海外採用は事実上不可

2. オーストラリア

2024年12月7日にTSSビザを引き継ぐ形でSkills in Demandビザ(サブクラス482)が導入されました。Core Skills、Specialist Skills、Labour Agreementの3ストリームがあり、レストランの料理人はCore Skillsを使います。

Chef(ANZSCO 351311)はCore Skills Occupation Listに掲載されています。Cook(351411)も同様です。現行の法令には2つのcaveat(除外条件)があります。工場での大量生産に従事する職ではないこと、そして「limited service restaurant」ではないこと。後者はファストフード・テイクアウト、ファストカジュアル、限定的な食事提供のみの飲酒店、限定サービスのカフェやピザ店を含むと法令上定義されています。フルサービスの日本食レストランはこの除外に当たりません。

付記しておくと、2024年12月の制定当初はChefに「国際貿易協定に基づく職であること」というcaveat 14が付いており、これがあると大半の指名が通りませんでした。この条件はその後の改正で削除され、現行版ではcaveat 3と4のみです。

雇用主の義務:

本人の要件:指名職種または関連分野での実務経験が1年以上(旧TSSの2年から短縮)。英語要件(免除規定あり)。滞在は最長4年で、永住への道があります。

日本人にとって実務上大きいのは、ChefのTRA技能評価が指定国のパスポート保持者にのみ義務づけられている点です。指定国はバングラデシュ、ブラジル、中国、フィジー、香港、インド、マカオ、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、南アフリカ、タイ、ベトナム、ジンバブエ。日本は含まれません。技能評価の工程を丸ごと省けます。

3. カナダ

NOC 2021では Chefs が62200(TEER 2)、Cooks が63200(TEER 3)。免除規定がなければLMIA(労働市場影響評価)が必要です。どのストリームになるかは職種ではなく提示賃金で決まります。

分岐点は州・準州の中位時給+20%。2026年7月17日発効の基準:

州・準州C$/時州・準州C$/時
アルバータ37.50ノバスコシア31.96
ブリティッシュコロンビア38.40ヌナブト45.00
マニトバ31.33オンタリオ36.92
ニューブランズウィック31.73プリンスエドワードアイランド31.20
ニューファンドランド・ラブラドール33.60ケベック36.00
ノースウエスト準州48.00サスカチュワン34.62
ユーコン45.60

基準以上(高賃金ストリーム):申請前3か月以内に4週間以上連続の求人広告が必要。開始予定日の6か月前から申請可能で、雇用期間は最長3年まで要求できます。BC、マニトバ、サスカチュワン、ノバスコシアでは州の登録証明が必要、ケベックは州への同時申請が必要です。

基準未満(低賃金ストリーム):ここが厳しい。事業所単位で低賃金外国人労働者は全従業員の10%まで。さらに2024年9月26日以降、失業率6%以上の国勢調査都市圏に所在する職位については低賃金LMIAを処理しないという運用です。雇用期間は最長1年。雇用主は往復渡航費の負担、適切で手頃な住居の確保、州によっては民間医療保険の負担が義務づけられます。

実務上の結論はシンプルで、州基準を超える提示をしたほうが安いケースが多いということです。

4. シンガポール

まず使えない経路から。人材開発省(MOM)のサービス業Work Permitは、受入可能な出身国・地域をマレーシア、中国、北アジア(香港特別行政区旅券、マカオ、韓国、台湾)、および限定職種のNon-Traditional Sourcesと定めています。日本は含まれていません。日本国籍の料理人をサービス業Work Permitで受け入れることはできません。

S PassEmployment Pass
現行の資格給与(金融業以外)23歳以下 月S$3,300 → 45歳以上 S$4,80023歳以下 月S$5,600 → 45歳以上 S$10,700
2027年1月1日以降の新規申請S$3,600 → S$5,100S$6,000 → S$11,500
ポイント制なしCOMPASS 40点(月給S$22,500以上は免除)
サービス業サブクォータ 全従業員の10%なし
レビー月S$650(2025年9月1日から統一)なし

新レートは2027年1月1日以降の新規申請と、2028年1月1日以降に期限が来る更新に適用されます。

資格給与が年齢とともに上がる点に注意してください。47歳のベテランは、同じ技能の30歳より高い給与でないと同じパスを取れません。欲しい人材ほど基準が高いという構造です。

EPのCOMPASSで料理人が不利になるのは資格要件(C2)です。世界上位100位相当または評価の高いアジアの大学の学位で20点、その他の学位相当で10点、学位相当の資格がなければ0点。京都の料亭で10年修業した職人は、まさにこの0点に当たります。給与や企業側の評価項目で40点に届かせることは可能ですが、オファー前に点数を試算する必要があります。

なお、MOMはEP・S Passについて職種の適格リストを公表していません。「料理人は対象か」という問い自体が成立せず、給与とポイントの問題です。

5. マレーシア

内務省の改定Employment Pass給与方針が、2026年6月1日以降に提出される新規・更新のすべてに適用されています。ここでいう給与はマレーシアで課税される基本給のみで、手当・インセンティブ・賞与・国外払い給与は算入されません。

カテゴリー従来の最低基本給2026年6月1日以降帯同家族
カテゴリー IRM10,000以上RM20,000以上
カテゴリー IIRM5,000〜9,999RM10,000〜19,999
カテゴリー IIIRM3,000〜4,999RM5,000〜9,999可(従来は不可)

2027年1月1日からは、カテゴリーIIおよびIIIの申請に後継者育成計画(succession plan)の提出が必須になります。既存パスは期限まで有効です。

低技能の外国人労働者制度(Visit Pass / Temporary Employment)の受入国リストにも日本は含まれていません。Employment Passが事実上唯一の経路です。

手続きはExpatriate Services Division(ESD)経由。公表処理日数は、企業登録5営業日、JTKSM/MYFutureJobs 10営業日、規制業種の推薦状3営業日(ファストトラック)〜10営業日、EP申請2〜5営業日。これは処理日数であって所要期間ではありません。書類準備と求人広告期間、本人の退職手続きが上に乗ります。

6. 米国

料理人専用のビザはありません。現実的に使われる経路は4つで、どれが適するかは料理人本人より会社の形で決まります。

E-2(条約投資家)— 日本資本のレストランなら本命

日本は米国との条約締結国で、E-2の対象です(条約発効1953年10月30日)。米国側事業体が条約国国民により50%以上保有されていること、投資が実質的であること、事業が現に稼働していることが要件。従業員は、監督的・経営的立場にあるか、事業の効率的運営に不可欠な専門技能を有する場合に対象となり、かつ同じ条約国の国籍が必要です。日本資本の店が日本人料理人を「不可欠な技能」で呼ぶ形が、実務上の主力です。年間の数量枠も労働証明も不要。

O-1B(卓越した能力・芸術分野)— 実績のある料理人向け

連邦規則8 CFR 214.2(o)は「芸術(arts)」の定義にculinary arts(料理芸術)を明示的に含めています。基準は「distinction」=通常遭遇する水準を実質的に上回る技能と評価を持ち、その分野で著名・第一人者であること。立証は、重要な国内・国際的な賞の受賞(またはノミネート)か、6項目のうち3項目以上の文書での立証です。主要紙・業界誌での批評や記事、評価の確立した店での主導的役割、商業的・批評的成功の実績、専門家からの評価、同分野で高額報酬を得ている(得る予定である)こと、など。同業団体の意見書(advisory opinion)が必要で、承認は最長3年、数量枠はありません。

EB-3(永住・技能職)— 長期戦

PERM労働証明を経てI-140を申請します。労働省が「適格な米国人労働者が十分に存在しないこと」「賃金・労働条件に悪影響を与えないこと」を証明する手続きです。2026年9月の国務省Visa Bulletinでは、EB-3 Skilled Workersの「その他の国」(日本を含む)の最終審査日は2024年9月1日。PERMとI-140の処理期間の上に、約2年の順番待ちが乗ります。

なお労働省は2026年3月27日に、PERM等の一般賃金水準を現行の17/34/50/67パーセンタイルから34/52/70/88パーセンタイルに引き上げる規則案を公示しました。2026年9月時点では規則案のままで最終規則は確認できていません。H-2Bには影響しません。

H-2B — よく聞かれるが、たいてい通らない

年間枠は66,000件で、上期・下期に分割されます。問題は枠ではなく「一時的な必要性」の要件です。8 CFR 214.2(h)(6)(ii)(B)は、雇用主が「近い将来の明確な時点で必要性が終了する」ことを立証しなければならず、原則1年以内と定めています。通年営業のレストランの常設ポストはこれを満たしません。季節性・一回限りの事象であれば使えます。

確認できなかった点を明示しておきます。H-2B対象国の指定について、確認できた最新の連邦官報告示は2024年11月8日付で日本を含んでいましたが、その効力は2025年11月8日までと記載されていました。その後の指定告示は見つけられていません。H-2Bを検討する場合は、日本の現在の指定状況を必ず確認してください。

7. 英国

ここが最も注意すべき変更です。SOC 2020のコード5434 Chefsは「Medium Skilled」に分類され、5435 Cooksは「Ineligible」です。GOV.UKによれば、Medium Skilledのコードでスポンサーできるのは、その職がImmigration Salary Listに載っている場合、Temporary Shortage Listに載っている場合、または2025年7月22日より前に最初のCertificate of Sponsorshipを取得していた人の更新に限られます。

5434はImmigration Salary ListにもTemporary Shortage Listにも載っていません。つまり海外から新規に採用する料理人をSOC 5434でスポンサーすることはできません

経過措置の対象者向けに参考値を挙げておくと、一般基準は年£41,700またはgoing rateの高いほう、5434のgoing rateは£33,400(時給£17.13)、2024年4月4日より前の最初のCoS保持者は£25,000。スポンサーライセンス料は小規模£611/中大規模£1,682、処理は通常8週間程度です。

英国で和食店を運営する場合、現実的な選択肢は、すでに英国の就労資格を持つ候補者、要件を満たす場合のYouth Mobility Scheme、あるいは現地育成です。

8. 調理師免許は効くのか

結論から言うと、日本の調理師免許それ自体を要件として挙げている国は、上記6か国の公式ページでは確認できませんでした。各国が見ているのは、職業コード、実務経験年数、給与水準、そして国によっては技能評価です。

ただし実務では役に立ちます。オーストラリアのCore Skillsストリームは「指名職種または関連分野で1年以上の実務経験」を求めますし、シンガポールのCOMPASSでは学位相当資格が点数に直結します。調理師学校の卒業証明や調理師免許は、経験と技能を裏づける書類として提出する価値があります。

また農林水産省の「海外における日本料理の調理技能認定」(ゴールド/シルバー/ブロンズ)は、ビザ要件ではないものの、雇用主側が技能を説明する材料にはなります。2026年3月31日時点の認定者は世界で計3,976名です。

9. よくある落とし穴

  1. 募集を出してから経路を調べる。採用できない候補者と面接する時間は戻りません。
  2. 市場賃金で予算を組む。オーストラリアのCSITは最上位のCook grade 5の年換算よりA$1.6万ほど高い。オファー後に気づくと厳しい。
  3. ランニングコストを忘れる。シンガポールのS Passレビーは月S$650、2年でS$15,600です。
  4. 去年のルールで考える。英国は2025年7月、マレーシアは2026年6月、シンガポールは2027年1月。オーストラリアは毎年7月に改定。
  5. 雇用主側の登録を最後に回す。スポンサーライセンス、ESD登録、労働市場テストはいずれも数週間かかり、すべて本人の申請より前に終わっている必要があります。

本記事は2026年9月に各国政府の公式情報を確認して作成した一般情報であり、法務・入管に関する助言ではありません。入管制度は頻繁に変わり、個別事案ごとに判断されます。下記の一次情報を確認のうえ、専門家にご相談ください。

出典

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