給与・コスト

英国とシンガポールのサービス料・チップのルール

英国の2023年チップ分配法と行為準則(厨房スタッフへの分配、今後の変更を含む)と、シンガポールのサービス料について確認できたこと、できなかったことを整理します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 出発点がまったく異なる2か国
  2. 英国:チップに関する法律の要点
  3. 英国:厨房スタッフへの分配
  4. 英国:今後の変更
  5. シンガポール:確認できたこと
  6. シンガポール:サービス料の分配と給与ルール
  7. 両国共通のチェックリスト

ロンドンでもシンガポールでも、レストランのサービス料はごく一般的で、両都市の和食店の多くはスタッフへの支払いの一部をサービス料に頼っています。しかし法律上の位置づけは大きく異なります。英国には現在、チップとサービス料の分け方を定めた専用の法律があります。シンガポールでは同様のルールは見つからず、問題となるのは、分配金が賃金に関するルールとどう関わるかという点です。

本ガイドでは、2026年9月に公的な情報源で確認できた内容を整理し、確認できなかった点はそのように明記しています。米国については米国のチッププール:厨房スタッフへの分配ルールをご覧ください。

1. 出発点がまったく異なる2か国

英国(イングランド、スコットランド、ウェールズ)シンガポール
チップ・サービス料に関する専用の法律あり:2023年チップ分配法(Employment (Allocation of Tips) Act 2023)と法定行為準則。2024年10月1日施行今回の調査では見つからず
サービス料をスタッフに渡す義務あり。対象となるチップ、心付け、サービス料のすべてを控除なしで義務づけるルールは見つからず
チップを最低賃金に算入できるかできない。行為準則は、2009年以降チップは最低賃金に算入できないとしている現地スタッフには業種別の賃金下限(累進賃金モデル)が適用。第6章を参照

2. 英国:チップに関する法律の要点

2023年チップ分配法は、1996年雇用権法(Employment Rights Act 1996)に新たな条項を加えました。チップの公正かつ透明な分配に関する法定行為準則(Code of Practice on Fair and Transparent Distribution of Tips)は2024年10月1日に発効し、イングランド、スコットランド、ウェールズに適用されます。主な義務は次のとおりです。

労働者が現金で受け取り、雇用主が一切関与せずに本人が持ち帰るチップは、この法律の対象外です。

執行

労働者は雇用審判所に申立てができ、通常は違反(一連の違反であれば最後の違反)から12か月以内に行います。審判所はチップの再配分を命じることができ、制定時の法律では、金銭的損失について最大5,000ポンドの補償を命じられます。この金額は物価に応じて改定されるため、最新の上限をご確認ください。

3. 英国:厨房スタッフへの分配

法律が求めているのは、事業所の労働者の間での公正な配分であり、全員に同じ額を渡すことではありません。行為準則は、雇用主が考慮できる要素として、職種の違い(「例えば、ホールとバックヤードの労働者の間での配分」)、基本給、勤務時間、業績、職位、勤続年数、お客様の意図を挙げています。また、お客様へのサービス提供に関わるすべての労働者に十分配慮すべきこと、違法な差別を避けなければならないことも示しています。

つまり和食店では、厨房スタッフにもサービス料を分配でき、職種によって比重を変えることもできます。ただし、その方法が公正で、書面化され、一貫して適用されていることが条件です。認められないのは、一部を店の収入にすること、最低賃金までの補填に使うこと、労働者ではないオーナーに渡すことです。

多くのレストランはトロンク(tronc)を利用しています。トロンクマスターが運営する分配の仕組みで、トロンクマスターは外部の会社の場合も、スタッフから選ばれた人の場合もあります。行為準則は、公正かつ独立して運営されることを条件に、独立したトロンクを認めています。

書面のチップ方針は、日本人料理人には日本語で渡してください。日本から採用した料理人は、英国ではサービス料が法律上スタッフで分け合うものだとは知らないことが多く、明確な方針があれば、よくある不信感の種を取り除けます。

4. 英国:今後の変更

2025年雇用権法(Employment Rights Act 2025)は、書面のチップ方針を作成・改定する際に、雇用主が事業所の労働者と協議することを求めています。政府はこれを反映した行為準則の改訂案を2026年6月29日に公表しましたが(ページ更新は2026年7月29日)、新たなパブリックコンサルテーションを行うために取り下げました。それが終わるまでは、既存の行為準則に従うよう政府は示しています。協議義務がいつから適用されるかは確認できなかったため、次にチップ方針を見直す前にGOV.UKでご確認ください。

5. シンガポール:確認できたこと

レストランにサービス料やチップをスタッフへ渡すよう義務づける、あるいは分け方を定めるシンガポールの法令や人材開発省(MOM)のガイダンスを探しましたが、見つかりませんでした。実務上、サービス料をどう使うかは、店の方針と雇用契約で決まるということです。スタッフに分配を約束するなら、それは契約条件になるので、正確に書面化してください。

シンガポールのレストランがサービス料収入をどう使っているかについての公的な統計は確認できなかったため、本ガイドでは「一般的な」配分割合は紹介していません。

6. シンガポール:サービス料の分配と給与ルール

分配金と給与の関係には、MOMの2つのルールが関わります。

飲食サービス業の累進賃金モデル

現地の従業員(シンガポール国民と永住者)については、飲食サービス業の累進賃金モデル(PWM)が月額総支給額の最低水準を定めています。フルサービスのレストランでは、2026年7月1日から2027年6月30日までの下限はCookがS$2,520、Kitchen AssistantがS$2,320、WaiterがS$2,320です。MOMは月額総支給額を、基本給、手当、生産性インセンティブの合計とし、賞与、ストックオプション、経費の払い戻し、現物給付、雇用主のCPF拠出を除くと定義しています。この定義はサービス料の分配金に触れていません。したがって、サービス料の分配分をPWMの下限に含められるかどうかは、当てにする前にMOMに確認すべき点です。雇用主が就労パスを申請・更新するには、PWMの要件を満たす必要があります。

残業代は基本給で計算する

雇用法第4部の対象となる従業員(基本月給S$4,500以下のワークマン、またはS$2,600以下のノンワークマン)の残業代は、時間あたり基本給の1.5倍以上で、時間あたり基本給は「12 × 月額基本給 ÷(52 × 44)」で計算します。サービス料の分配金はこの計算式に含まれません。基本給を低くしてサービス料の分配を大きくした契約では残業単価が下がり、スタッフもそれに気づきます。国別の料理人の残業ルールもご参照ください。

7. 両国共通のチェックリスト

本記事は一般的な情報であり、法律上・税務上の助言ではありません。英国のチップに関するルールは変更が続いており、シンガポールでの扱いは各店の契約によります。サービス料の方針を決める、または変更する前に、各国の労働法専門の弁護士と会計士にご相談ください。

出典

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