採用の進め方

海外で日本人料理人を雇う雇用契約チェックリスト

日本から呼ぶ料理人との雇用契約に盛り込むべき条項を、試用期間、残業、予告期間まで整理。ビザ費用の返還請求に関する各国の規則と、競業避止条項の現状も解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. まず法定の最低限から
  2. 条項チェックリスト
  3. 試用期間
  4. 労働時間、休日、残業
  5. 予告と雇用の終了
  6. ビザ費用の返還請求が禁じられている国
  7. 競業避止条項とレシピに関する条項
  8. 言語と署名

日本から来る料理人との雇用契約には、現地の一般的な契約以上の役割が求められます。自国の雇用法を満たすこと、出入国管理当局に申告した内容と一致していること、そして第二言語で読む人にも理解できること。どれかひとつでも欠けると、ビザの問題や紛争を招いたり、3か月目に料理人が「話が違う」と感じたりするおそれがあります。

このチェックリストでは、盛り込むべき条項と、慎重に扱うべき条項を取り上げます。テンプレートではありませんので、最終的な契約書は現地の雇用法に詳しい弁護士に作成または確認してもらってください。

1. まず法定の最低限から

多くの国では、雇用主が書面で示さなければならない事項が定められています。わかりやすい例がシンガポールです。人材開発省(MOM)は、雇用法(Employment Act)の適用を受け、契約期間が14日以上の従業員に対して、勤務初日から14日以内に主要雇用条件(Key Employment Terms、KETs)を書面で交付するよう雇用主に求めています。KETsには、職名と職務内容、開始日、勤務形態(1日の労働時間、週の勤務日数、休日)、給与の計算期間、基本給、固定の手当と控除、残業の割増率と計算期間、賞与などその他の給与項目、休暇、医療給付、試用期間、予告期間が含まれます。どの国でも使える、よい最低限のリストです。

次に、スポンサー制度の側を確認します。契約書の給与、職名、職務、労働時間、勤務地は、ビザや労働市場テストの申請で申告した内容と一致していなければなりません。ノミネーションやLMIAと密かに異なる契約書は、当事者間の問題ではなく、コンプライアンス上の問題です。

2. 条項チェックリスト

条項記載する内容注意点
当事者と開始日法的な雇用主の名称。開始日は「[日付]またはビザ発給日のいずれか遅い日」とするビザの手続き期間では間に合わない固定の開始日
職名と職務ビザの職種と一致する職名。職務の実態に即した説明スポンサーを受けた職種の範囲外の職務
勤務地具体的な勤務地(複数可)スポンサーを受けた労働者を別の店舗に異動させる前に、ビザの条件を確認する
給与総支給額、計算期間、支払日、通貨現物給付を含めずに、ビザの最低給与額を満たす必要がある
賞与、チップ、サービス料それぞれの計算方法と分配方法変動給はビザの最低給与額に算入されない場合がある(オーストラリアでは賞与と保証されない残業代が除外される。規則2.57A)
労働時間と休日週の労働時間、シフトの形態、休日の日数第4章を参照
残業割増率または代休、記録の方法管理職の適用除外は国によって異なる
休暇年次有給休暇、病気休暇、祝日、提供する場合は一時帰国休暇一時帰国の航空券は、頻度と手配する人を明記する
試用期間期間、評価面談、試用期間中の予告第3章を参照
予告試用期間後の双方の予告期間第5章を参照
渡航・移住支援項目ごとの上限額。ビザが却下された場合の扱い渡航・移住支援パッケージのガイドを参照
住居提供の有無、家賃または控除額、住居の水準制度によっては家賃の負担上限に関する規則がある
返済条件合法で、明確に列挙した費用に限る第6章を参照
守秘義務とレシピ自店のレシピと仕入先との取引条件を守る第7章を参照
準拠法勤務国の法律日本の本社の契約書式は、海外では通用しない場合がある

3. 試用期間

3〜6か月の試用期間が一般的です。料理人が示すべきことと、それをいつ評価するかを書面にしておきましょう(実技試験のガイドで測定可能な目標の例を紹介しています)。注意点が2つあります。

4. 労働時間、休日、残業

料理人とのトラブルの多くは、ここから始まります。日本の厨房は長時間労働になりがちです。厚生労働省の2025年の調査(常用労働者30人以上の企業が対象)では、宿泊業,飲食サービス業の週所定労働時間は平均40時間2分で全産業の中で最も長く、年次有給休暇の取得率は付与日数の50.7%で最も低くなっています。料理人は長時間労働を習慣として受け入れ、後になって不満を募らせることがあります。

5. 予告と雇用の終了

6. ビザ費用の返還請求が禁じられている国

料理人が早期に辞めた場合、ビザや採用にかかった費用を返済させる条項を入れたいと考える雇用主は多くいます。それが認められるかどうかは国とビザの種類によって異なり、いくつかの国では、スポンサーに関する費用については明確に認められていません。

国と制度規則の内容(2026年9月に確認)
オーストラリア、承認済みの就労スポンサースポンサーは、スポンサーになること・スポンサーであることに伴う費用、ノミネーションに伴う費用(ノミネーション申請料と研修負担金を含む)、そして労働者の採用に特有の費用(移民エージェントの費用を含む)を、他者から回収してはならず、回収しようとしてもならない(1994年移民規則、規則2.87)。
英国、スポンサーを受ける労働者英国内務省によると、雇用主が労働者にスポンサー証明書の手数料、移民技能負担金、または雇用主の申請に関連する費用を支払わせた場合、スポンサーライセンスが取り消されることがある。
カナダ、低賃金枠のLMIA往復の交通費と義務づけられた医療保険の費用は労働者から回収できず、採用手数料を直接・間接を問わず労働者に請求したり回収したりしてはならない。
米国、H-2B雇用主とその代理人は、労働認定や雇用に関して、弁護士費用、申請・請願の手数料、採用費用を含め、いかなる種類の支払いも労働者に求めたり受け取ったりしてはならない。賃金からの控除も支払いとみなされる(20 CFR 655.20(o))。

一部の費用の返還請求が合法な場合でも、範囲は狭くとどめましょう。対象となる項目を具体的に列挙し(たとえば、法律上は支払う義務がないが店が支払った航空券など)、月ごとに減っていく段階的な返済額を設定し、法定の最低賃金を下回るような給与控除は決して行わないでください。候補者を怖がらせる返還条項は、採用そのものを失う原因にもなります。12か月や24か月の勤続を条件とする完了ボーナスのほうが、摩擦が少なく同じ効果を得られると考える雇用主も多くいます。

7. 競業避止条項とレシピに関する条項

料理人が辞めて、自店のレシピを持って向かいに店を開くのではないかと心配するオーナーは少なくありません。しかし競業避止条項は、多くの場合、適切な手段ではありません。

より役に立つ保護策は、レシピ、仕入価格、顧客リストを対象とする明確な守秘義務条項、合法な範囲でのスタッフの引き抜き禁止条項、そしてレシピを特定の個人の記憶ではなく店の資産とするための、きちんとした文書化です。

8. 言語と署名

署名が済んだら、次は最初の90日間です。日本から来る料理人の受け入れをご覧ください。

本記事は一般的な情報であり、法律や出入国に関する助言ではありません。雇用とスポンサーに関する規則は、国、州、ビザの種類によって異なり、頻繁に変わります。契約書を使用する前に、資格を持つ現地の弁護士に確認してもらってください。

出典

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