中東・中南米

ドバイ出店の人材確保:出向のコストと役割分担

ドバイ出店で日本から誰を送るか、UAEに社会保障協定がないことによる出向者の追加費用、首長国民化の基準、日本人以外のスタッフの調達先を整理します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

ドバイ出店では、料理長は本社からの出向か日本での新規採用、それ以外の厨房・ホールは現地採用という組み合わせが基本になります。UAEには日本との社会保障協定がないため、出向者の日本側の社会保険料(健康保険・厚生年金の労使双方負担分)は原則そのまま続くと見込んで予算を組んでください。就労許可の手続きそのものと現地採用の相場は英語版の「Hiring a Japanese chef in Dubai」に譲り、この記事では出向者1人あたりの追加費用、首長国民化(Emiratisation)の基準、日本人以外のスタッフの調達先を扱います。

このページは、ドバイへの出店を計画する日本本社の海外事業・人事担当者向けです。日本から送る人と現地で採用する人をどう組み合わせるか、出向者にかかる日本側の追加費用、首長国民化の基準を扱います。UAEの就労許可の種類・費用・エミレーツID・健康保険といった現地側の実務と、ドバイの相場・候補者探しは英語版のHiring a Japanese chef in Dubaiに譲り、ここでは繰り返しません。アブダビへの出店はアブダビでの日本人シェフ採用をご覧ください。

目次

  1. 数字で見るドバイの日本人と和食市場
  2. この記事と英語版の役割分担
  3. 首長国民化(Emiratisation)の基準
  4. 日本から送る人の社会保険と税
  5. 出向者1人あたりの追加費用
  6. 日本人以外のスタッフをどこで探すか
  7. 役割ごとの調達先を決める
  8. 準備の逆算スケジュール

1. 数字で見るドバイの日本人と和食市場

注目すべきは永住者の少なさです。ロサンゼルスやシドニーのように永住者の層が厚い都市とは違い、UAEの在留邦人はほぼ全員が仕事や家族の帯同を理由に滞在しています。現地にいる日本人料理人はほぼ全員がすでにどこかの雇用主のもとで働いていると考えたほうが現実的です。

2. この記事と英語版の役割分担

ドバイの記事は2本に分かれています。この記事は本社側の目線で、出向か新規採用かの判断、日本側の社会保険と税、首長国民化を見込んだ人員計画を扱います。MOHRE(人材・首長国民化省)の就労許可の種類・費用・審査、GDRFAのビザ・居住許可、健康保険や退職金といった現地側の実務、ドバイでの相場と候補者の探し方は、英語版のHiring a Japanese chef in Dubaiにまとめてあります。許可の種類だけ触れておくと、国外からの新規採用、事業所間の移籍、ミッション許可、一時就労許可の4種類が主に関係しますが、条件や費用は英語版を参照してください。

3. 首長国民化(Emiratisation)の基準

UAE政府ポータルとMOHREによると、首長国民化の義務は次の2つの基準で発生します。

従業員数義務の内容
50人以上技能職におけるUAE国民の割合を毎年2%引き上げる目標。2026年までに10%が目標水準
20〜49人(ホスピタリティを含む14業種)UAE国民を1人採用(2024年分)、さらに1人追加(2025年分)。未達の場合の罰金はAED 96,000(1年目)、AED 108,000(2年目)

この基準は厨房の日本人出向者の人数とは別枠で、店舗全体の従業員数に対してかかります。厨房を日本人中心の少人数編成にしても、ホールやバックオフィスを含めた総人数が20人を超えれば対象になり得るため、人員計画の初期段階で従業員数の見込みを出し、20人と50人のラインを意識してください。またMOHREは会社の格付け(A・B・C)に応じて就労許可の費用をAED 250〜3,450の範囲で決めており、この格付けは労働法や賃金保護制度の遵守状況を反映するとされています。首長国民化の遵守状況がこの格付けにどこまで反映されるかは公式ページで明記されていなかったため、該当するかどうかはMOHREに確認してください。

4. 日本から送る人の社会保険と税

社会保障協定はない

厚生労働省の資料(2026年6月2日現在)によると、日本の社会保障協定は24か国と発効済みで、署名済みがポーランド、政府間交渉中がトルコ・ノルウェー・ベトナム、予備協議中等がタイです。UAEはいずれにも含まれていません。協定による加入先の調整(日本の制度だけに加入し、相手国の制度を免除する仕組み)はUAEでは使えません。

日本年金機構の資料では、日本の適用事業所との雇用関係を続けたまま海外で勤務し、出向元から給与の一部または全部が支払われている場合、健康保険・厚生年金保険の加入は原則として継続するとされています。在籍出向で送る場合、日本側の社会保険料(労使双方負担分)は続く前提で費用を見積もってください。具体的な料率は加入している健康保険組合や協会けんぽ、厚生年金の標準報酬月額表によって変わるため、給与担当者または保険者に確認してください。社会保険の全体像は料理人の年金・健康保険の扱いにまとめています。

租税条約はある

財務省の「我が国の租税条約等の一覧」(2026年6月26日現在)によると、日本とUAEの租税条約は2013年5月2日に署名され、2014年12月24日に発効しています。国税庁によると、1年以上の予定で海外に転勤・出向する人は一般的に所得税法上の非居住者となり、非居住者となった使用人の海外勤務に対する給与は国内源泉所得に当たらないため源泉徴収は不要です。出国前には年末調整を行います。詳しくは海外勤務者の税金をご覧ください。

5. 出向者1人あたりの追加費用

UAE側の就労許可・ビザの費用は英語版の記事に確定済みの数字があるので、ここでは在籍出向にした場合に日本側で追加でかかる費用を中心に示します。金額の根拠は英語版の記事と同じ一次情報です。

費目金額の目安負担する側
MOHRE就労許可AED 250〜3,450(会社の格付けによる)ドバイの現地法人
GDRFA入国ビザ・居住許可(2年)AED 210+AED 240程度ドバイの現地法人
健康保険、医療検査、エミレーツID見積もりが必要(現地当局のページで確認できず)ドバイの現地法人
退職一時金(勤続1〜5年、基本給21日分/年)労働法第51条に基づき発生ドバイの現地法人
日本の健康保険・厚生年金保険料(労使双方)標準報酬月額に応じた料率。保険者に要確認日本側(出向元)が継続負担する前提
航空券、住居手当見積もりが必要多くの場合、日本側とドバイ側で分担を取り決め

在籍出向では、ドバイの現地法人が負担するUAE側の費用に加えて、日本側が社会保険料を負担し続けるかどうかで総コストが大きく変わります。どちらの法人がどの費目を負担するかを出向契約の段階で文書化してください。

6. 日本人以外のスタッフをどこで探すか

ドバイで日本人料理人を現地採用する場合、相手はほぼ確実に他の雇用主のもとで就労許可を持っており、採用には事業所間の移籍許可が必要です。引き抜きを前提にした計画は人数も時期も読みにくいのが実情です。そのため現地採用の中心は、日本人以外で和食の経験がある調理スタッフとホールスタッフになります。

ドバイのホスピタリティ業界全般では、インド、フィリピン、ネパール、スリランカの出身者が厨房・ホールの現場人員の中心を占めることが広く知られていますが、和食店に限った公式な国籍別の内訳は見つかりませんでした。この点は方向性としての参考にとどめ、実際の調達先と採用にかかる期間は、ドバイ現地の人材紹介会社に確認してください。同じ職種と会社の事業活動の整合、就労許可の取得は日本人スタッフと同様に必要です。現地スタッフへの教育はTraining local staff in Japanese cuisineをご覧ください。

7. 役割ごとの調達先を決める

役割主な調達先検討のポイント
料理長・寿司カウンター日本本社からの出向、または日本での新規採用出向なら日本の社会保険料が続く前提で費用を組む
立ち上げ応援日本の既存店の料理人(ミッション許可)期限と業務内容を明確にしておく
副料理長クラスドバイの他店で働く人材、または第三国の経験者現在の契約と退職時期を早めに確認する
調理スタッフ・ホール現地採用(日本人以外が中心)職種名を実際の業務に合わせ、首長国民化の対象人数に数える

8. 準備の逆算スケジュール

時期やること
開業16週間前トレードライセンスの事業活動が飲食店営業をカバーしているか確認する。従業員数の見込みを出し、首長国民化の20人・50人のラインを確認する。
14週間前MOHREでの会社の格付けを確認し、許可費用を見積もる。料理長を出向にするか新規採用にするかを決める。
12週間前出向の場合は日本側の社会保険の継続と給与の支払元を決め、出向契約を作成する。現地採用の職種名と給与水準を決め、求人を始める。
8週間前立ち上げ応援の人数と期間を決め、ミッション許可の要否を確認する。現地の人材紹介会社に厨房・ホールスタッフの調達を依頼する。
6週間前出向者・新規採用者ともに、MOHRE就労許可とGDRFAビザの申請を進める(詳細手順は英語版参照)。
出国前出向者の年末調整を行い、住民税・在留届の案内をする。
開業後首長国民化の採用実績と就労許可の更新時期を管理する。

変わりうる数字:MOHREとGDRFAの手数料、首長国民化の基準と罰金額、日本の社会保障協定の締結国数(2026年6月2日時点で24か国)。これらは随時改定されるため、開業直前に英語版の記事とあわせて再確認してください。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

ドバイ出店では、どの役割を日本から送るべきですか。

料理長や寿司カウンターなど、店の和食としての質を決める役割は出向か日本での新規採用が基本です。立ち上げ応援はミッション許可で短期の派遣にし、副料理長クラス以下は現地採用や第三国の経験者を組み合わせるのが現実的です。

UAEに社会保障協定がないと、何が変わりますか。

日本の制度だけに加入して相手国の制度を免除する仕組みが使えません。在籍出向で日本の雇用関係を続け、出向元が給与の一部または全部を払う形なら、日本の健康保険・厚生年金保険料は労使双方の負担分とも原則として続くと見込んで予算を組んでください。

首長国民化はどのくらいの規模から関係しますか。

従業員20人以上でホスピタリティなど14業種に該当する会社はUAE国民を1人以上(2024年分)、さらに1人(2025年分)採用する義務があり、未達の罰金はAED 96,000とAED 108,000です。50人以上の会社は技能職での国民比率を毎年2%引き上げる目標があります。厨房の人数だけでなくホールやバックオフィスも含めた総人数で見てください。

出向者1人あたり、UAE側の費用以外に何を見込むべきですか。

日本側で継続する健康保険・厚生年金保険料(労使双方分、標準報酬月額に応じた料率)が主な追加費用です。正確な料率は自社の健康保険組合や協会けんぽに確認してください。UAE側の就労許可・ビザ・退職一時金の費用は英語版の記事にまとまっています。

日本人以外のスタッフはどこで採用すればよいですか。

ドバイのホスピタリティ業界ではインド、フィリピン、ネパール、スリランカ出身の人材が現場の中心を占めることが多いとされていますが、和食店に限った公式な内訳は確認できませんでした。現地の人材紹介会社に、実際の調達先と採用にかかる期間を確認してください。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。UAEの就労許可の条件や費用、日本の社会保険・税の取扱いは変更されることがあります。2026年9月時点で確認した下記の一次情報をご確認のうえ、必要に応じてMOHRE、現地の専門家、年金事務所、税務署にご相談ください。

出典

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