中東・中南米

ドバイ出店の人材確保:日本からの派遣と現地採用

在UAE邦人の大半は長期滞在者で、現地に日本人料理人のプールはほとんどありません。MOHREの就労許可の使い分け、社会保障協定がないことの影響、役割ごとの調達先を整理します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. 数字で見るドバイの日本人と和食市場
  2. 就労許可の種類を出店準備で使い分ける
  3. 日本から送る人の社会保険と税
  4. 現地で探す場合の現実
  5. 役割ごとの調達先を決める
  6. 準備の順番

ドバイへの出店を検討する外食企業からは、「料理長は日本から送るとして、残りをどう集めるか」という相談が多く聞かれます。UAEの就労許可は雇用主単位で出る仕組みで、ポイント制や労働市場テストはありません。その分、手続きの難しさよりも、会社のライセンス、日本から送る人の社会保険、現地に日本人の人材プールがほとんどないという事情が、人材計画を左右します。

この記事では、日本本社の海外展開担当者の目線で、ドバイ出店時の人の集め方を整理します。UAEの就労許可や労働法の詳細は英語版のHiring a Japanese chef in Dubaiで解説しているので、ここでは出店計画に関わる部分に絞ります。

1. 数字で見るドバイの日本人と和食市場

注目すべきは永住者の少なさです。ロサンゼルスやシドニーのように、日本人の永住者が厚い層をつくっている都市では、現地で日本語が話せる料理人を探す選択肢があります。UAEの在留邦人は大半が長期滞在者、つまり仕事や家族の帯同を理由に滞在している人たちです。現地にいる日本人料理人は、ほぼ全員がすでにどこかの雇用主のもとで働いていると考えたほうが現実的です。

2. 就労許可の種類を出店準備で使い分ける

UAE政府ポータルによると、UAE労働法(2021年連邦法令第33号)第6条により、人材・首長国民化省(MOHRE)が発行する就労許可なしに働くことはできず、雇用主も許可なしに人を雇うことはできません。MOHREの就労許可は13種類あり、出店時に関係するのは主に次の4つです。

許可の種類内容(UAE政府ポータルの説明)出店時の使いどころ
国外からの採用UAE国外の労働者を採用する。有効期間2年日本から料理長・寿司職人を呼ぶ
事業所間の移籍UAE内の別の事業所から非UAE国籍の労働者を移す。有効期間2年ドバイの他店で働く日本人料理人を採用する
ミッション許可特定の一時的な仕事や期限付きのプロジェクトのために国外から呼ぶ開業前後の立ち上げ応援
一時就労許可UAE内の労働者を期限付きで別会社の業務に就かせ、その後元の雇用主に戻すグループ会社間の一時的な応援

発行の条件として、職種が会社の事業活動と合っていること、トレードライセンスが有効で違反がないこと、会社を代表する権限のある人が申請することなどが挙げられています。出店準備で最初に確認したいのは、取得する(または取得した)ライセンスの事業活動が飲食店の営業をカバーしているかどうかです。ここがずれていると、料理人の許可申請の段階で止まります。

就労許可の発行・更新の費用は、MOHREによる会社の格付け(A・B・C)に応じてAED 250〜3,450です。格付けは労働法や賃金保護制度(Wages Protection System)の遵守状況などを反映し、違反歴のある会社はCに分類されます。また、賃金保護制度に従っていない事業所に対しては、MOHREが許可の発行や更新を拒むことがあるとされています。給与を制度に沿って支払う体制は、開業前に整えておく必要があります。

3. 日本から送る人の社会保険と税

社会保障協定はない

厚生労働省の資料(2026年6月2日現在)によると、日本の社会保障協定は24か国と発効済みで、署名済みがポーランド、政府間交渉中がトルコ・ノルウェー・ベトナム、予備協議中等がタイです。UAEはいずれにも含まれていません。協定による加入先の調整(日本の制度だけに加入し、相手国の制度を免除する仕組み)はUAEでは使えないということです。

日本年金機構の資料では、日本の適用事業所との雇用関係を続けたまま海外で勤務し、出向元から給与の一部または全部が支払われている場合、健康保険・厚生年金保険の加入は原則として継続するとされています。在籍出向で送る場合、日本側の社会保険は続く前提で費用を見積もり、UAE側で何が適用されるかは現地の専門家に確認してください。社会保険の全体像は料理人の年金・健康保険の扱いにまとめています。

租税条約はある

財務省の「我が国の租税条約等の一覧」(2026年6月26日現在)によると、日本とUAEの租税条約は2013年5月2日に署名され、2014年12月24日に発効しています。国税庁によると、1年以上の予定で海外に転勤・出向する人は一般的に所得税法上の非居住者となり、非居住者となった使用人の海外勤務に対する給与は国内源泉所得に当たらないため、源泉徴収は不要です。出国前には年末調整を行います。詳しくは海外勤務者の税金をご覧ください。

4. 現地で探す場合の現実

ドバイで日本人料理人を現地採用する場合、相手はほぼ確実に他の雇用主のもとで就労許可を持っています。採用には事業所間の移籍許可が必要で、本人の現在の契約条件や退職の手順も絡みます。引き抜きを前提にした計画は、人数も時期も読みにくいのが実情です。

そのため、現地採用の中心は、日本人以外で和食の経験がある調理スタッフとホールスタッフになります。この層を採用する場合でも、職種と会社の事業活動の整合、就労許可の取得は同じように必要です。現地スタッフへの教育の進め方はTraining local staff in Japanese cuisineが参考になります。

店舗規模が大きい場合は、UAE国民の雇用を求める首長国民化(Emiratisation)の対象になるかも確認が必要です。従業員数と事業活動によって義務が変わるため、厨房の人数計画と一緒に数えてください。対象の基準は英語版のドバイ記事で解説しています。

5. 役割ごとの調達先を決める

以上を踏まえると、ドバイ出店では役割ごとに調達先を分けて考えるのが現実的です。

役割主な調達先使う許可検討のポイント
料理長・寿司カウンター日本本社からの出向、または日本での新規採用国外からの採用出向なら日本の社会保険が続く前提で費用を組む
立ち上げ応援日本の既存店の料理人ミッション許可期限と業務内容を明確にしておく
副料理長クラスドバイの他店で働く人材、または第三国の経験者移籍許可/国外からの採用現在の契約と退職時期を早めに確認する
調理スタッフ・ホール現地採用(日本人以外が中心)職種に応じた許可職種名を実際の業務に合わせる

6. 準備の順番

  1. トレードライセンスの事業活動が飲食店営業をカバーしているか確認する。
  2. MOHREでの会社の格付けを確認し、許可費用を見積もる。
  3. 従業員数の見込みを出し、首長国民化の対象になるか確認する。
  4. 日本から送る人を決め、出向か新規採用か、日本側の社会保険と給与の支払元を決める。
  5. 現地採用の職種名と給与水準を決め、求人を始める。
  6. 立ち上げ応援の人数と期間を決め、ミッション許可の要否を確認する。
  7. 出向者の出国前に年末調整と住民税・在留届の案内をする。

出店全体の人材スケジュールの立て方は海外出店の人材計画、出向と現地採用の比較は海外赴任と現地採用の違いで詳しく扱っています。

本記事は一般的な情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。UAEの就労許可の条件や費用、日本の社会保険・税の取扱いは変更されることがあります。2026年9月時点で確認した下記の一次情報をご確認のうえ、必要に応じてMOHRE、現地の専門家、年金事務所、税務署にご相談ください。

出典

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