英国・欧州

アイルランドで日本人シェフを雇う:許可、50:50ルール、費用

コミ以上のシェフは、2026年3月から€36,605の一般就労許可(GEP)の対象。50:50ルールの実践、職位別のダブリンの相場、総費用、16週間の逆算スケジュールを解説。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

アイルランドはコミ以上のシェフを一般就労許可(GEP)の対象として明記しており、2026年3月からの最低給与は€36,605、求人広告期間は28日間です。2025年にシェフの新規スポンサーを止めた英国より門戸は開いています。実際の壁は、小規模な独立系レストランが満たせないことのある50:50ルールと、ダブリンの相場です。相場はスーシェフやヘッドシェフではすでに法定最低額を上回っています。許可手数料と登録費用でおよそ€1,900、それに給与を見込み、厨房にシェフが必要になる少なくとも4か月前から手続きを始めてください。

このページは、アイルランドで日本人シェフのスポンサーを検討しているオーナー、GM、グループ人事向けに、ルートの選び方、50:50ルール、ダブリンの相場、総費用、逆算スケジュールをまとめたものです。EUブルーカードはアイルランドには適用されません(アイルランドは指令の適用対象外)。詳しくは第2章で触れています。ワーキングホリデーのシェフを許可と組み合わせる方法は欧州のワーキングホリデーガイドで、アイルランドの規定も同じ表に載せています。契約書そのものは雇用契約のチェックリストとリロケーションのガイドをご覧ください。

目次

  1. どの許可が合うか、対象となる職位
  2. 50:50ルール
  3. 労働市場ニーズテストの手順
  4. €36,605の下限とダブリンの相場
  5. 1人あたりの総費用
  6. 逆算スケジュール
  7. 最初の一歩としてのワーキングホリデー

1. どの許可が合うか、対象となる職位

アイルランドの就労許可制度を所管するのは企業・観光・雇用省(DETE)で、レストラン向けの案内はシェフについて珍しいほど具体的です。エグゼクティブシェフ、ヘッドシェフ、スーシェフ、シェフ・ド・パルティ、コミシェフはいずれも就労許可の対象として明記されています。業種上の条件はただ一つ、ファストフード店ではないことで、雇用主はこれを確認する署名入りの書面を提出します。

一般就労許可(GEP)クリティカル・スキル就労許可
向いている人ほぼすべてのシェフ採用下記の高い基準額を満たす場合のみ。シェフはクリティカル・スキル職業リストに載っていない
最低給与(2026年3月1日から)€36,605€68,911(CSOL外の職業)
労働市場ニーズテスト必要この給与水準では不要
期間最長24か月。さらに最長3年間の更新が可能許可終了後、許可なしで居住・就労するための申請ができる
家族別のルールあり家族の即時呼び寄せが可能。配偶者は就職活動ができる

ほとんどのシェフにとってはGEPがルートです。€68,911は単店舗の厨房には届きません。政府は2025年12月、2030年までに段階的に基準額を引き上げるロードマップを公表したため、GEPの数字は今後も上がります。初回申請時だけでなく、更新のたびに確認してください。

DETEのシェフ用チェックリストPDFには、いまも旧基準額の€34,000が記載されています。使うべきは€36,605、DETEの一般就労許可ページに載っている数字です。申請時点で両者が食い違っていたら、GEPページの数字を優先し、日付入りのスクリーンショットを控えておきましょう。審査で食い違いを指摘された場合の備えになります。

EUブルーカードはこの判断には関係ありません。アイルランドはブルーカード指令の適用対象外で、そもそも制度自体がありません。大陸側の市場と比較する場合は、どの市場にブルーカードが実際に合うかをEUブルーカードのガイドで解説しています。

2. 50:50ルール

一般就労許可が発給される時点で、自社の従業員の少なくとも半数がEEA国籍者でなければなりません。DETEの案内には、創業間もないスタートアップやごく小規模な雇用主向けの免除があると書かれていますが、今回アクセスできた資料からは、正確な営業年数や従業員数の基準を確認できませんでした。したがって、どちらの免除にも頼らず、まずDETEまたは移民の専門家に現行の条件を確認してください。

免除の可否にかかわらず、できることは次のとおりです。

3. 労働市場ニーズテストの手順

シェフのGEPには労働市場ニーズテスト(LMNT)が必要です。ただし給与が€68,911以上の場合や、申請者が以前GEPを保有し過去6か月以内に整理解雇された場合は不要です。DETEのシェフ用チェックリストは手順を次のように示しています。

  1. JobsIrelandに広告を掲載する(社会保護省の雇用サービス、EURESと連携)。28日間、途切れなく、文言を変えずに掲載し、参照番号を控えます。
  2. もう1つ別の媒体に広告を掲載する。アイルランド国民とEEA国民が閲覧できる新聞社サイトや求人サイトなどで、こちらも28日間、文言を変えずに掲載します。
  3. どちらの広告にも、職務内容、雇用主名、勤務地、週の勤務時間、最低年間給与を記載します。
  4. 広告を最初に掲載した日から90日以内に申請すること。

つまずきやすい点が2つあります。第一に、広告は28日間、内容を変更できないため、給与額を含めて文面を先に固めておくこと。第二に、90日の期限は掲載を終えた日ではなく最初に掲載した日から始まるため、候補者、契約書、添付書類を掲載前にそろえておくことです。

4. €36,605の下限とダブリンの相場

GEPの下限は法律上の最低額であって相場ではありません。アイルランドの中央統計局(CSO)はシェフの職位別の公式な賃金統計を公表していないため、直接照らし合わせる政府統計はありません。この点を追っている求人サイトのデータを見ると、コミの水準を超えると下限はあまり意味を持たなくなります。

職位報告されている範囲出典
シェフ・ド・パルティ年収およそ€24,000〜€31,000(時給ではおよそ€14〜16)SalaryBand、PayScale(ダブリン掲載分)
スーシェフ年収€28,300〜€61,000、平均およそ€39,600。サウス・ダブリンの掲載はさらに高く平均€43,800Indeed(アイルランド全体、ダブリンの内訳あり)
ヘッドシェフ年収€30,000〜€64,000、中央値およそ€42,000PayScale(ダブリン、23件のプロフィール)

これらは自己申告の求人サイトのデータであり、政府統計ではないため、参考値として扱ってください。PayScaleのヘッドシェフの数字も2024年2月更新のままです。それでも傾向ははっきりしています。€36,605は、報告されているシェフ・ド・パルティの水準の範囲内かそれ以下で、スーシェフやヘッドシェフの相場をはるかに下回ります。スーシェフやヘッドシェフの採用では、まずダブリンの相場から提示額を決め、€36,605を上回っているかは形式的な確認にとどめましょう。これから育てるコミやジュニアのシェフ・ド・パルティなら、下限そのものが実際の職務価値に近いこともあります。

5. 1人あたりの総費用

DETEの公表手数料をもとに、GEPの下限で1人を雇う場合の費用は次のとおりです。

項目費用
GEP申請手数料(最長24か月)€1,000
給与、€36,605で1年分€36,605
雇用主負担の社会保険(PRSI、クラスA)予算編成のたびに変わるため、歳入庁(Revenue)の現行のクラスAの料率を確認してください
入国後の登録、航空券、最初の1か月の住居各社の見積もり
給与を除く確定費用€1,000

申請が不許可になった場合、DETEは手数料の90%を返金します。更新時は、最長36か月で€1,500です。数字を経営陣に示す前に、リロケーションのガイドにある項目も加えてください。

6. 逆算スケジュール

目標の勤務開始日から逆算し、最低16週間を見込みます。

時期やること
16週間前ポジションがシェフの職位でファストフード店ではないことを確認し、EEA国籍者の割合を数える。
14週間前職務記述書を作成し、€36,605以上かつダブリンの相場に見合う給与を設定する。寿司職人の求人票のテンプレートが参考になる。
13週間前JobsIrelandともう1つの媒体に、28日間、内容を変えずに掲載する。
9週間前広告期間が終了。納税証明、食品衛生登録、会社情報、候補者の資格をそろえて申請書類を準備する。
8週間前初回掲載から90日以内にオンラインで申請する。
4〜6週間前DETEの決定。処理期間は件数によって変わり、決まった週数はありません。
2〜4週間前必要に応じてシェフが就労ビザを申請し、渡航を手配する。
到着シェフが移民当局に登録し、許可のもとで働き始める。

7. 最初の一歩としてのワーキングホリデー

アイルランドと日本は2007年からワーキングホリデー制度を実施しており、年間800件の枠があります。アイルランドの規則では、就労はフルタイムの仕事ではなく滞在に付随するものと位置づけられており、この点は欧州のワーキングホリデーガイドで他国と同じ表にまとめています。許可での採用を決める前に、料理人と出会い実際の仕事ぶりを見る手段としては妥当ですが、許可の代わりにはなりません。力を発揮してくれた人がいれば、ワーキングホリデーの1年が終わるかなり前から、28日間の広告掲載を含めたGEPの手続きを始めましょう。

変わる数字:GEPの給与基準額は、政府の2025年ロードマップのもとで2030年まで段階的にさらに引き上げられます。最低賃金(2026年1月から時給€14.15)は毎年1月に改定されます。ダブリンの相場は求人サイトの推計値で、更新時期は定まっていません。次回確認は2027年1月、または更新のたびに。

よくある質問

アイルランドでシェフのスポンサーに必要な最低給与はいくらですか。

2026年3月1日から、一般就労許可では年€36,605(基本給のみ)です。DETEの古いシェフ用チェックリストPDFにはいまも€34,000とありますが、使うべきは一般就労許可ページに載っている現行の数字で、政府の2025年ロードマップのもとで今後も引き上げられる見込みです。

50:50ルールとは何ですか。小規模な日本料理店でも満たせますか。

許可が発給される時点で、自社の従業員の少なくとも半数がEEA国籍者でなければなりません。非EEA国籍者が中心の小規模なレストランはこれを明確に満たせないことがあります。申請前に現在の人数を数え、際どければ空いているポジションにEEA国籍者を先に雇ってください。DETEは一部のスタートアップやごく小規模な雇用主向けの免除があるとしていますが、該当すると思い込まず、DETEに直接現行の基準を確認しましょう。

ダブリンのスーシェフやヘッドシェフの実際の給与はどれくらいですか。

求人サイトのデータ(政府の公式統計ではありません)によれば、ダブリンのスーシェフはおよそ年€28,300〜€61,000、平均約€39,600、ヘッドシェフはおよそ年€30,000〜€64,000、中央値約€42,000です。いずれも€36,605の法定下限を大きく上回るため、これらの職位では許可の基準額ではなく相場で提示額を決めるべきです。

求人広告からシェフの到着まで、全体でどのくらいかかりますか。

最低16週間を見込んでください。28日間の広告掲載、申請書類の準備期間、DETEの審査(件数により変わり、決まった週数は公表されていません)、そしてビザと渡航の時間です。日本の現職での退職交渉も並行するなら、さらに早めに動き出してください。

ワーキングホリデーのシェフは、そのまま許可に切り替えて残れますか。

自動的にはできません。ワーキングホリデービザと一般就労許可は別の手続きです。ワーキングホリデーのシェフが活躍しているなら、28日間の広告掲載を含むGEPの申請を、ワーキングホリデーの1年が終わるかなり前から始めておけば、切り替えがスムーズになります。

本記事は2026年9月に公的情報源をもとにまとめた一般的な情報であり、法律や移民に関する助言ではありません。アイルランドの基準額は段階的に引き上げられており、50:50ルールの免除の詳細は本記事の作成にあたり十分に確認できませんでした。申請前に現行の数字と基準をDETEに確認してください。

出典

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