英国・欧州

アイルランドで日本人シェフを雇う:2026年の就労許可

アイルランドではコミ以上のシェフが就労許可の対象。2026年3月からのGEP基準額€36,605、28日間の労働市場ニーズテスト、50:50ルール、手数料を解説。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. アイルランドが他国と違う理由
  2. 対象となるシェフの職位
  3. 一般就労許可か、クリティカル・スキルか
  4. 2026年の給与基準額
  5. 労働市場ニーズテストの手順
  6. 50:50ルールとその他の条件
  7. 就労許可の統計からわかること
  8. ワーキングホリデー
  9. スケジュールとチェックリスト

アイルランドは、シェフの扱いを珍しいほど明確に定めている国です。コミ(commis)以上のシェフは就労許可の対象として明記され、手続きも詳しく公表されており、政府はシェフの申請専用のチェックリストまで用意しています。注意点は、2026年3月に引き上げられた給与基準額と、厳格な求人広告テストです。本記事ではこの2点を中心に解説します。

1. アイルランドが他国と違う理由

アイルランドの就労許可制度を所管するのは企業・観光・雇用省(Department of Enterprise, Tourism and Employment、DETE)です。同省のレストラン向けページには、エグゼクティブシェフ、ヘッドシェフ、スーシェフ、シェフ・ド・パルティ、コミシェフは、クリティカル・スキル、一般、企業内転勤のいずれかの就労許可の対象になりうると記載されています。業種上の条件は1つだけで、ファストフード店で雇用されないことです。雇用主はこれを確認する署名入りの書面を提出する必要があります。

シェフの新規スポンサーがまったくできなくなった英国(英国のガイドを参照)や、2024年にアジア料理の料理人向けの特別措置がなくなったオランダと比べてみてください。ダブリンの日本料理店にとって、ルートは存在し、道筋もはっきりしています。

2. 対象となるシェフの職位

職位就労許可の対象か
エグゼクティブシェフ対象
ヘッドシェフ対象
スーシェフ対象
シェフ・ド・パルティ対象
コミシェフ対象
ファストフード店のシェフ(職位を問わず)対象外

職名だけで申請が通るわけではありません。DETEのシェフ用チェックリストでは、詳細な職務内容、そのポジションに必要な資格と経験、そして候補者本人の資格と経験の提出が求められます。職務記述書の内容が申請する職位と一致しているか確認してください。「シェフ・ド・パルティ」なのに職務内容が洗い場(キッチンポーター)の仕事のように読めれば、不許可を招きます。

3. 一般就労許可か、クリティカル・スキルか

シェフはクリティカル・スキル職業リスト(Critical Skills Occupations List、CSOL)に載っていません。DETEはこのリストについて、医療、ICT、科学、金融、ビジネスなどの分野の職種を対象としていると説明しており、現行のリストに調理師やシェフの職業は含まれていません。ただし、対象外職業リスト(Ineligible List)に載っていない職業であれば、給与が€68,911以上ならクリティカル・スキル就労許可を取得できます。ほとんどの厨房のポジションでは届かない水準のため、一般就労許可(General Employment Permit、GEP)が通常のルートになります。

一般就労許可(GEP)クリティカル・スキル(CSOL外の職業)
最低給与(2026年3月1日から)€36,605€68,911
労働市場ニーズテスト必要この給与水準では不要
当初の期間最長24か月。さらに最長3年間の更新が可能許可期間の終了後、許可なしで居住・就労するための申請ができる
家族別のルールあり家族の即時呼び寄せが可能。配偶者やパートナーは就職活動ができる

4. 2026年の給与基準額

政府は2025年12月、2030年までに就労許可の給与基準額を段階的に引き上げるロードマップを公表しました。その第一段階が2026年3月1日に施行され、GEPの最低額は€34,000から€36,605に、クリティカル・スキルの最低額は€38,000から€40,904に引き上げられました。シェフや飲食業向けの特別な低い基準額はありません。低い€32,691の水準が適用されるのは、食肉加工作業員、園芸作業員、ヘルスケアアシスタント、在宅介護者に限られます。

DETEのシェフ用チェックリストには、いまも旧最低額の€34,000(週39時間で時給€16.77)が記載されています。DETEのGEPのメインページに掲載されている現行の基準額は€36,605です。高いほうの数字を使ってください。給与とは基本給のみを指し、賞与、シフト手当、残業代は含まれません。

年€36,605を週39時間で割ると時給は約€18.05となり、アイルランドの全国最低賃金である時給€14.15(2026年1月1日から)を大きく上回ります。ロードマップではさらなる引き上げが予定されているため、更新の前には改めて基準額を確認してください。

5. 労働市場ニーズテストの手順

シェフのGEPには労働市場ニーズテスト(Labour Market Needs Test、LMNT)が必要です。DETEのシェフ用チェックリストには、その内容が次のように示されています。

  1. JobsIrelandに広告を掲載する(社会保護省の雇用サービス/EURESネットワーク)。28日間、途切れなく、内容を変更せずに掲載します。参照番号は控えておきましょう。
  2. もう1つ別のオンライン媒体に広告を掲載する。新聞社のウェブサイトや、アイルランド国民とEEA国民が閲覧できる求人サイトなどで、こちらも28日間、途切れなく、内容を変更せずに掲載します。
  3. どちらの広告にも、職務内容、雇用主名、勤務地、週の勤務時間、最低年間給与を記載する必要があります。
  4. 広告を最初に掲載した日から90日以内に申請すること。

実務上のポイントは2つです。広告は28日間まるごと内容を変えずに掲載する必要があるため、最初に文面を固めておきましょう。また90日の期限は広告の初回掲載日から始まるため、掲載前に候補者、契約書、書類をそろえておいてください。

LMNTが不要になる場合もあります。たとえば給与が€68,911以上の職や、申請者が以前GEPを保有し、過去6か月以内に整理解雇(redundancy)された場合などです。

6. 50:50ルールとその他の条件

7. 就労許可の統計からわかること

DETEは就労許可の統計を毎月公表しています。2026年1月〜8月(2026年9月2日時点のデータ)の数字は次のとおりです。

統計は職業と国籍を組み合わせた内訳を示していないため、日本人シェフが何人許可を得たかはわかりません。わかるのは、飲食業の雇用主がこの制度を大規模に利用していること、そして今年は日本国籍者の申請が不許可になった例がごくわずかだということです。

8. ワーキングホリデー

アイルランドと日本は2007年からワーキングホリデー制度を実施しており、外務省によれば年間の発給上限は800件です。在日アイルランド大使館は2026年に2回の申請受付期間(1月15日〜2月6日、7月15日〜31日)を設けました。アイルランドの移民ルールでは、ワーキングホリデーの保持者は「滞在に付随するものとしての臨時の就労(casual employment as an incidental aspect of their visit)」を最長1年間行うことができ、90日を超えて滞在する場合は移民当局への登録が必要です。

そのため、ワーキングホリデーの料理人は短期的な戦力としては有効ですが、就労許可での採用の代わりにはなりません。力を発揮してくれた人がいれば、在籍中にGEPのためのLMNTを始めることができます。日本人料理人が海外の仕事を探す場所もあわせてご覧ください。

9. スケジュールとチェックリスト

  1. ポジションがコミ以上のシェフの職位で、ファストフード店ではなく、基本給が€36,605以上であることを確認する。
  2. 現在の従業員数で50:50ルールを満たすか確認する。
  3. 職務記述書と求人広告を作成する。寿司職人の求人票が参考になります。
  4. JobsIrelandともう1つの媒体に、28日間、内容を変えずに掲載する。
  5. 初回掲載から90日以内に、DETEのシェフ用チェックリストを使ってオンラインで申請する。
  6. 許可が下りたら、必要に応じてシェフが就労ビザを申請し、到着後に移民当局へ登録する。
  7. 許可の期限が切れる前に更新を計画し、その時点の給与基準額を確認する。

広告を出す前に、雇用契約のチェックリストリロケーションのガイドもお読みください。広告期間中に日本人料理人へ届けるには、WashokuJobに求人を掲載してください。

本記事は2026年9月に公的情報源をもとにまとめた一般的な情報であり、法律や移民に関する助言ではありません。アイルランドの基準額は段階的に引き上げられています。申請前にDETEで最新の数字を確認してください。

出典

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