アジア・オセアニア

マレーシアで日本人料理人を雇う:EP要件と給与

日本人料理人がマレーシアのEmployment Passを取れるか、決め手(会社、経験、基本給RM5,000)、給与の決め方、初年度コスト、ESDの日程、後継者育成計画の書式をまとめました。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

マレーシアの飲食店は、Employment Pass(EP)で日本人料理人を雇えます。認可職種や禁止職種の一覧は公表されていないため、「料理人」はどちらにも当たりません。決め手は、会社(ESD登録と払込資本金)、料理人本人(技能資格と7年の経験、またはディプロマと5年)、2026年6月1日からの基本給月RM5,000以上の3点です。この下限なら、航空券・住居・手数料別で年約RM62,250です。

このページは、マレーシアで日本人料理人を採用するかどうか、どう進めるかを決めるオーナーや本部の人事担当者向けです。要件、給与、総コスト、日程を扱います。2026年6月1日からの給与カテゴリーと、すでに雇っている料理人の更新についてはマレーシアEP改定(2026年)と和食店で詳しく解説しています。クアラルンプールの人材についてはクアラルンプールでの採用をご覧ください。

目次

  1. 3つの関門:会社、料理人、給与
  2. 「料理人」はEPの認可職種か
  3. いくら払うか
  4. 1人採用したときの初年度コスト
  5. 採用決定から初出勤までの日程
  6. 申請が却下されたら
  7. 今日から始められる後継者育成計画

1. 3つの関門:会社、料理人、給与

確認できなかった点で、採用そのものを止めかねないもの:ESD Onlineのガイドブックには、流通取引サービスへの外資参入ガイドラインにより、制限業種の会社からのEP申請は認められないとあり、その一覧に「restaurant (non-exclusive)」が含まれています。「non-exclusive」の定義も、外資系の会社だけに適用されるのかどうかも書かれていません。外国資本が少しでも入っている会社は、採用活動の前にMYXpatsのヘルプデスク(helpdesk@myxpats.com.my、03-7839 7171)と国内取引・生計費省に確認してください。

関門要件出典
会社ESD Onlineへの登録。払込資本金はマレーシア資本100%でRM250,000、合弁(外資30%以上)でRM350,000、外資100%でRM500,000ESD Onlineガイドブック
料理人関連分野で、学位と3年、ディプロマと5年、または技能資格(またはそれと同等)と7年の経験ESD Onlineガイドブック
給与マレーシアで課税される基本月給。カテゴリーIIIはRM5,000〜9,999、IIはRM10,000〜19,999、IはRM20,000以上。手当や賞与は算入されない改定後の外国人給与ブックレット(2026年6月1日から)
在留資格EPのみ。日本は一時雇用訪問パス(VP(TE))の労働者送出国に含まれないマレーシア入国管理局

厨房の申請で最も弱くなりやすいのは経験の要件です。資格を持たず現場で育った料理人は、書類上は道がありません。日本の調理師学校の卒業資格と調理師免許を持つ料理人のほうが有利ですが、ESDが日本の調理師免許を「技能資格またはそれと同等」とどう評価するかは確認できませんでした。経験年数は履歴書ではなく、日付入りの在職証明書で数えてください。

2. 「料理人」はEPの認可職種か

ESDは職種の一覧を公表していないので、調べて答えが出る問題ではありません。ただし、ガイドブックの記載で実務上の疑問はほぼ解消します。

職名は「Cook」ではなく、「Head Chef (Japanese Cuisine)」や「Sushi Chef」など、技能と責任が伝わるものにします。業務には、現地の採用者にはまだできないこと、たとえば魚のおろしと熟成、シャリと合わせ酢、献立づくり、指名した現地スタッフの育成を挙げます。育成の業務は、後述の後継者育成計画にもつながります。

3. いくら払うか

2026年9月27日確認の数字。2026年6月1日からのEP基本給の下限:RM5,000(カテゴリーIII)、RM10,000(II)、RM20,000(I)。マレーシア統計局 賃金調査2024(2025年9月29日公表):サービス・販売従事者の平均月給RM2,561、クアラルンプールの平均RM4,782(国民)。厚生労働省(2025年):日本の飲食物調理従事者のきまって支給する現金給与額は月286,600円。統計局の調査は例年秋に公表されます。

日本人料理人の給与を示すマレーシアの公的な数字は見つかりませんでした。公的データから分かるのは、RM5,000という下限がマレーシアのサービス従事者の平均賃金のおよそ2倍だということです。つまり日本から呼ぶ料理人の場合、最低額を決めるのは相場ではなくこの下限です。提示額は3段階で組み立てます。

  1. 欲しいパスに合わせてカテゴリーを選ぶ。カテゴリーIII(RM5,000以上)は通算最長5年で、2026年6月から家族帯同も可能です。カテゴリーII(RM10,000以上)は最長10年。長く任せたい料理長ならカテゴリーIIを検討する価値があります。
  2. お金は基本給に入れる。基本給RM4,000と住宅手当RM1,500の組み合わせでは下限を満たしません。
  3. 日本と比べる。料理人は、税金と住居を差し引いた後の手取りを日本の収入と比べます。比較は国別の寿司職人の給与にまとめています。

税金についても事前に伝えましょう。暦年でマレーシア滞在が182日未満の人は非居住者となり、一律30%で課税されます。年の途中で着任した料理人は最初の数か月に30%を払うことがあり、手取りへの影響はEP改定が店の予算に与える影響よりも大きくなります。差額を店が負担するかどうかは、内定前に決めておいてください。

4. 1人採用したときの初年度コスト

カテゴリーIIIの下限で計算します。外国人従業員のEPF(従業員積立基金)は2025年10月分の給与から義務化され、雇用主負担は2%です。外国人労働者のSOCSO(社会保障)は雇用主負担1.75%(業務災害1.25%、障害0.5%)で、対象賃金の上限は月RM6,000です。

項目月額初年度
基本給RM5,000RM60,000
EPF 雇用主負担2%RM100RM1,200
SOCSO 雇用主負担1.75%RM87.50RM1,050
小計RM5,187.50RM62,250
パス・審査・i-KADの手数料、医療保険、航空券、住居、税金の補填各社の見積もり。ESDはEPのページに手数料を掲載していません

基本給RM10,000の料理長なら、小計は約RM123,660です(SOCSOは上限のRM6,000で頭打ち)。追加費用で最も大きくなりがちなのは住居です。選択肢はスタッフ住居のガイドにまとめています。

5. 採用決定から初出勤までの日程

ESDが公表している処理期間を12週間の計画に当てはめました。これは処理期間だけで、求人広告、書類集め、料理人の日本での退職期間は含みません。

勤務開始の何週間前やること公表されている期間
12ESDへの会社登録(新規の会社のみ)。制限業種の問題を確認する。5営業日
11労働局の60K条承認と、該当する場合はMYFutureJobsへの求人掲載。「Chef」がポータルになければ職種の追加申請。10営業日。職種追加は5営業日
9所管機関の一覧に該当する場合は支援レター(観光は観光芸術文化省)3営業日(ファストトラック)または10営業日
7ESD OnlineでEPを申請2営業日(ファストトラック)または5営業日
6承認とビザ承認レター(有効期間6か月)。料理人が日本の職場に退職を伝えるのはここから。公表なし
0入国。KLIAまたはESDでパスの裏書とi-KAD交付到着時または1営業日

ファストトラックの対象はESDのTier 1・2の会社と重要業種です。多くの独立系飲食店は通常の扱いで計画してください。

6. 申請が却下されたら

ガイドブックにはEPの決定に対する正式な不服申立ての手続きは書かれておらず、支援レターについては待機期間なしで再申請するよう案内されています。却下されない前提ではなく、却下に備えて計画します。

7. 今日から始められる後継者育成計画

2027年1月1日から、カテゴリーIIとIIIの申請には後継者育成計画が必要になり、内務省は計画を実行しなければ今後の申請に影響しうるとしています。更新時に約束ではなく育成記録を見せられるよう、今から記録を始めましょう。そのまま使える書式です。

後継者育成計画:[役職 例:Head Chef (Japanese Cuisine)]、[店舗名]
外国人従業員:[氏名]、EPカテゴリー[III]、パスの期間[日付]
現地の後継者:[氏名、現在の役職、入社日]
引き継ぐ技能と目標時期:
1. [魚の受け入れ、おろし、保管]、[年月]までに独り立ち
2. [炊飯と合わせ酢]、[年月]までに独り立ち
3. [出汁と基本のたれ]、[年月]までに独り立ち
4. [発注と原価管理]、[年月]までに独り立ち
5. [季節の献立づくり]、[年月]までに共同で担当
育成方法:[毎日の現場指導、週1回1時間の勉強会、外部講座名]
残す記録:[双方が署名する月次の育成記録、技能チェックリスト、試作品の写真]
見直し:[四半期ごと]、[オーナー/GM]が確認

変わる数字:EPの給与カテゴリー(2026年6月1日施行、後継者育成計画は2027年1月1日から)、外国人のEPFとSOCSOの料率(SOCSOの業務外災害制度は2026年6月1日開始)、統計局の賃金調査(例年秋に公表)。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

マレーシアのEPで料理人は認可職種ですか。

ESDは認可職種も除外職種も一覧を公表していません。料理人の申請も他の職種と同じく外国人雇用委員会が審査し、ガイドブックは飲食店の申請者に店舗の組織図の提出を求めています。ESDのポータルに「Chef」がなければ、会社が職種の追加を申請します。

2026年の日本人料理人のEPの最低給与はいくらですか。

2026年6月1日以降に提出する新規・更新申請では、カテゴリーIIIで基本給月RM5,000です。手当、賞与、マレーシア国外で支払う給与は算入されません。カテゴリーIIはRM10,000からです。

日本人料理人1人の初年度の費用はいくらですか。

基本給RM5,000なら、雇用主負担のEPF(2%)とSOCSO(1.75%)を加えて年間約RM62,250です。パスの手数料、医療保険、航空券、住居、税金の補填は別にかかります。

日本人料理人はマレーシアでどのくらい税金を払いますか。

暦年で182日未満の滞在なら非居住者として一律30%で課税されます。居住者になれば累進税率が適用されます。初年度の差額をどちらが負担するか、内定時に取り決めてください。

EPの取得にはどのくらいかかりますか。

ESDが公表している処理期間を足すと、会社登録から承認まで通常の扱いで営業日ベースの約4〜6週間です。書類集めや料理人の日本での退職期間を含めると、約12週間を見込んでください。

本記事は2026年9月時点のマレーシア政府の情報に基づく一般的な情報で、法律、税務、出入国手続きの助言ではありません。外国人雇用委員会は案件ごとに判断します。実行前にESD、労働局、専門家に確認してください。

出典

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