給与・コスト

飲食店のスタッフ住居:賃金ルールとコスト

飲食店のスタッフ住居4つの形態、米国・英国・カナダ・シンガポールで住居費を賃金に算入する際に確認できたルール、住宅手当との比較方法、ビザの給与基準、雇用終了時の扱いを解説します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

飲食店のスタッフ住居は主に4つの形態に分かれます。入居先が決まるまでの一時滞在費用の負担、住宅手当、店が借りる個別の部屋、複数人で使う共同住宅です。米国・英国・カナダ・シンガポールでは、住居費を賃金の一部として扱える範囲が法律で決まっており、英国は週77.70ポンドの上限、シンガポールは給与の25%が上限です。住居と雇用は別の契約として書面にし、どちらかが終わったときに部屋がどうなるかをあらかじめ決めておいてください。

本ページは、来日する料理人に住居を用意すべきか手当で済ませるべきか迷っているオーナー、そして日々スタッフ住居を運営する担当者向けです。米国・英国・カナダ・シンガポールにおける住居費と賃金の関係、そしてビザの給与基準における住居の扱いを解説します。住居以外を含めた渡航支援全体は料理人の渡航・移住支援、国別のビザ給与基準と採用総コストは飲食店はビザをスポンサーできるかと海外採用1人あたりのコストをご覧ください。オーストラリアとEUの住居ルールは本ページでは確認していません。

目次

  1. 4つの住居の形態
  2. 住居と賃金:確認できたルール
  3. 住居と住宅手当の比較
  4. 住居とビザの給与基準
  5. 住居契約と雇用契約は分けて書く
  6. スタッフ住居の日々の運営
  7. 雇用が終わるとき

1. 4つの住居の形態

日本から来た料理人にとって、住まい探しは移住のなかで最も難しい部分になりがちです。現地での信用履歴も保証人もなく、敷金の用意がないこともあり、家主とのやりとりには言葉の壁もあります。

形態仕組み向いているケース注意点
一時滞在のみ最初の数週間はサービスアパートの費用を雇用主が負担し、その後は本人が自分で借りる賃貸市場が機能している都市十分な期間を確保し、内見・保証人探し・契約を手伝う
住宅手当毎月一定額を給与に上乗せし、本人が自分で借りる自立志向の料理人、ベテラン現地での課税の扱い。来たばかりの人の入居しにくさは解決しない
店が借りる個別の部屋店が部屋を借り、無償または有償で提供するベテランの料理人、家族連れ賃貸契約と雇用期間のずれ、家主の同意
スタッフの共同住宅店が大きめの物件を借り、複数のスタッフがそれぞれ1部屋を使うリゾート地、若手調理スタッフのチームハウスルール、プライバシー、もめごとが厨房に持ち込まれること

いずれの形態にも、物件の管理、同居人同士のトラブル、雇用が終わったときの扱いというリスクと手間がともないます。5〜7章でそのリスクを、2〜4章でお金の話を扱います。

2. 住居と賃金:確認できたルール

どの国でも法律上の論点は同じです。住居を賃金の一部として扱えるか、扱えるならいくらまでで、本人にいくら請求できるかです。

米国(公正労働基準法)

連邦のルールでは、通常提供している住居の「合理的な費用」を賃金に算入できます。29 CFR 531.3によると、これは雇用主の実費以下(減価償却を含む運営・維持費に、償却後の投下資本への5.5%以内の利息を加えたもの)で、適正な賃料相当額を超えることはできず、利益を含んではなりません。主に雇用主自身の便宜のために提供される設備は算入できません。州によっては、最低賃金に対する住居費の算入自体を認めていません。

英国(全国最低賃金)

最低賃金に算入できる現物給付は住居だけで、住居オフセット(accommodation offset)という仕組みを通じて認められます。2026年4月から1日£11.10、または1週£77.70です(2025年は£10.66/£74.62)。これを超える家賃を取ると、超過分が最低賃金の判定に使う賃金から差し引かれます。住居が無償なら、逆にオフセット額が賃金に加算されます。全国生活賃金(2026年4月から時給£12.71)に近い水準で家賃を取る場合は、給与期間ごとに確認してください。

カナダ(低賃金枠のLMIA)

一時外国人労働者プログラムの低賃金枠では、雇用主は適切で手頃な住居を提供するか確保しなければなりません。「手頃」とは、住居費(家賃またはローン、電気、燃料、水道その他の公共料金)が税引前収入の30%未満であることです。「適切」とは、配管や配線、構造上の大規模な修繕が不要であることです。これは住居そのものの適格性テストであり、家賃控除の上限ではありません。手続きは調理スタッフのLMIA手続きをご覧ください。

シンガポール(雇用法)

雇用主は提供する住居・設備・サービスの費用を給与から控除できますが、人材開発省のルールは明確です。控除額は提供した価値を超えてはならず、かつその給与期間の給与の25%を超えてはなりません。あらゆる種類の控除を合計しても、1回の給与期間の50%が上限です。英国のような固定額はなく、上限は設定した給与額に応じて動きます。

3. 住居と住宅手当の比較

上記の4つのルールはどれも相場の家賃を示すものではありませんが、それぞれが1人の料理人についての上限額に変換できます。

これらの上限を使って、同額の住宅手当と住居の提供を比較してください。実際のコストが現地の上限より十分低ければ、現物での住居提供のほうが有利なことが多いです。住宅手当では解決できない「入居のしにくさ」を解決できるためです。コストが上限に近い、または上回る場合は、住宅手当のほうが運用が簡単で、家賃相場が上がっても法律違反になりません。これらの都市について、単一の公的な相場家賃の数字は見つかりませんでした。実際に提供する部屋の水準で、現地の物件情報を確認してから金額を決めてください。

4. 住居とビザの給与基準

ビザで最低給与が定められている場合、無償や格安の住居でその不足分を埋めることは通常できません。オーストラリアの482ビザCore Skillsストリームでは、現物給付を除いた年収がCore Skills所得基準(2026年7月1日からA$79,423)を満たす必要があります。オーストラリアでの日本人料理人の採用をご覧ください。シンガポールのEmployment Passの基準額とCOMPASSの給与項目は、どちらも固定の現金月給で判定され、住居は「固定」給与に含まれません。COMPASSポイントの取り方をご覧ください。設計の原則は、基準を満たす現金給与の上に住居を上乗せすることであり、基準に届かない給与を住居で補うことではありません。オファーレターでも住居は給与と分けた独立の項目にしてください。

5. 住居契約と雇用契約は分けて書く

住居トラブルの最大の原因は、部屋を仕事の一部として扱い、賃貸としての書面を別に残していないことです。料理人が入居する前に、雇用契約とは別に、次を書面にしてください。

この取り決めに優先する借家人の権利を本人が持つかどうかは、現地の法律によります。4か国のいずれについても本ページでは確認していないため、「雇用終了とともに住居も終了する」という条項に頼る前に現地の弁護士に相談し、上記の解約予告期間はいずれにせよ定めておいてください。

6. スタッフ住居の日々の運営

7. 雇用が終わるとき

店が用意する住居で最もトラブルになりやすいのがこの場面で、「雇用終了とともに住居も終了する」という一文だけでは足りません。部屋の退去予告と、解雇や自己都合退職の予告は、多くの国で別々の時計で進んでおり、そのずれがトラブルの発端になります。

雇用の終わり方あらかじめ決めておくこと
通常の予告期間での自己都合退職最終出勤日の後、どのくらい部屋に住み続けてよいか、その間の家賃の有無。
予告期間つきの解雇住居の退去予告が解雇日から始まるか最終出勤日から始まるか、どちらかを書面にしておく。
即時解雇退去に必要な最短の適法な予告期間。ゼロになることはまずないため、退去日を決める前に現地の借家法を確認する。
終了理由を問わず敷金があれば、いつどのように返還するか、誰が先に部屋を確認するか。

スポンサービザの料理人の場合は、住居のスケジュールを出国に関する義務と合わせてください。例えばシンガポールでは、本人が書面で別途同意しない限り、雇用主はEmployment Passを取り消す前に帰国の航空券を購入しなければなりません。試用期間の評価と日本から着任する料理人の受け入れもご覧ください。

変わる数字:英国の住居オフセットは毎年4月に改定されます(次回確認は2027年4月)。シンガポールの上限は法律上安定していますが、依拠する前にMOMのサイトで確認してください。米国とカナダのルールは年次改定ではなく規則によるもので、変更頻度は低めです。

よくある質問

料理人の給与から家賃を控除できますか。

米国・英国・カナダ・シンガポールでは可能ですが、上限の決め方が国ごとに違います。米国は実費、英国は固定額のオフセット(2026年4月から週£77.70)、シンガポールは給与の25%かつ部屋の価値以下、カナダは住居そのものに対する収入の30%以内という適格性テストです。上限を超えて控除すると、実質的な賃金が法定最低額を下回ったり、ビザの住居審査に落ちたりすることがあります。

住居を提供するのと住宅手当を払うのでは、どちらがよいですか。

実際のコストが現地の上限より十分低いなら、住居の提供のほうが良いことが多いです。来たばかりの人が抱える入居のしにくさを、住宅手当では解決できないためです。コストが上限に近い、または上回るなら、住宅手当のほうが運用が簡単で、家賃相場の上昇による法律違反も避けられます。

無償や格安の住居は、ビザの最低給与に算入されますか。

基本的にはされません。オーストラリアのCore Skills所得基準は現物給付を除きますし、シンガポールのEmployment PassとCOMPASSの給与判定も固定の現金給与だけを見ます。基準を満たす給与の上に住居を乗せるのが正しい使い方で、給与不足を住居で埋めるものではありません。

解雇したら、料理人の住居はどうなりますか。

事前に決めておいてください。どのくらい住み続けられるか、その間の家賃の有無、敷金の返還方法です。現地の借家法が「雇用終了とともに住居も終了する」という条項より優先する権利を本人に与えることがあるため、退去日を決める前に弁護士に確認してください。

住居契約は雇用契約と別に作る必要がありますか。

必要です。解約予告期間、解雇と自己都合退職の扱いの違い、敷金、立ち入りの権利、光熱費の負担者を、雇用条件とは別の書面にしてください。そうすれば、一方のトラブルがそのまま両方のトラブルになりません。

本記事は一般的な情報であり、法律上・税務上の助言ではありません。賃金控除、住居の給付、借家に関するルールは国・州・都市によって異なり、変わることもあります。スタッフに住居を提供する前に、現地の労働法専門の弁護士と会計士にご相談ください。

出典

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