アジア・オセアニア

マレーシアEP2026年改定:和食店が今すべき対応リスト

マレーシアEPの2026年給与改定を日本側の視点で解説。今週決めるべきこと、手当を基本給に組み替える試算例、料理人が日本で用意する書類、日本の給与との比較まで。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

マレーシアのEmployment Pass(EP)給与方針は2026年6月1日に改定されました。最低基本給はカテゴリーごとにほぼ倍増し、判定に使うのは基本給のみ、そして2027年1月1日からはカテゴリーIIとIIIで後継者育成計画が必須になります。すでに日本人料理人を雇っている場合、次回の更新までは何も変わりませんが、更新申請は新基準で審査されます。このページはこの改定の日本側の視点、つまり今週決めるべきこと、会計士の最終数字が出る前の給与組み替えの考え方、料理人が用意する書類、そして日本の給与との比較を扱います。

日本の本部からマレーシアへ料理人を送る場合、また、すでに日本人料理人をEmployment Passで雇っている現地オペレーター向けです。そもそも雇えるかどうか、3つの条件、初年度費用、申請の日程はマレーシアで日本人料理人を雇うで詳しく扱っており、ここでは繰り返しません。クアラルンプールの候補者層はクアラルンプールでの採用をご覧ください。

目次

  1. 今週決めるべきこと
  2. 2026年6月1日の改定で何が変わったか
  3. カテゴリー別の基準
  4. 手当を基本給に組み替える:1つの例で最後まで
  5. 料理人が日本で用意する書類
  6. 日本側の手続き、週単位で
  7. マレーシアの給与と日本の給与の比較
  8. 後継者育成計画:何を示すべきか
  9. いま働いている料理人の扱い

1. 今週決めるべきこと

  1. 全EP保持者の更新時期と現在の基本給を一覧にする。カテゴリーの新基準に届かない人は、更新日より前に契約を組み替える必要があります。
  2. 給与を基本給中心に組み替える。下の試算を出発点にし、契約を結ぶ前に現地の会計事務所で最終的な人件費の変化を確認してください。
  3. カテゴリーII・IIIのすべての職位で、今から名前入りの後継者育成計画を始める。義務化は2027年1月1日からですが、初月から記録を積み重ねたほうが、申請直前に書いた計画より更新時に説得力があります。
  4. 新規採用の予算は基本給だけで組む。RM5,000の下限だけでなく、下の比較を使って料理人が日本で今もらっている給与とも照らし合わせてください。

2. 2026年6月1日の改定で何が変わったか

2026年6月1日以降に提出された申請はすべて新方針で審査されます。更新申請も含みます。

3. カテゴリー別の基準

カテゴリー最低基本給(改定前)最低基本給(2026年6月1日〜)雇用期間(改定後)家族帯同
IRM10,000以上RM20,000以上最長10年可
IIRM5,000〜9,999RM10,000〜19,999最長10年(後継者育成計画あり)可
IIIRM3,000〜4,999RM5,000〜9,999最長5年(後継者育成計画あり)可(新設)

雇用期間は、そのカテゴリーで最初のEPが承認された日から起算し、雇用する会社に紐づきます。会社を移った場合やカテゴリーが変わった場合は改めて数えます。帯同できる家族は、Dependant Passで配偶者と18歳未満の子、長期社会訪問パス(LT-SVP)で両親、配偶者の両親、18〜25歳の子、事実婚の配偶者です。

4. 手当を基本給に組み替える:1つの例で最後まで

基本給RM4,000に住宅手当RM1,500を加え、総額RM5,500を払っている料理人を例にします。基本給だけではカテゴリーIIIの下限RM5,000を満たしません。総額を変えずに手当をすべて基本給へ組み替えると、その先の数字がすべて動きます。

項目組み替え前(基本給RM4,000+手当RM1,500)組み替え後(基本給RM5,500)
EPの判定不合格:基本給がRM5,000未満合格:基本給RM5,500
月額総支給額RM5,500RM5,500(変わらず)
EPF 雇用主負担2%RM80RM110
SOCSO 雇用主負担1.75%RM70RM96.25
残業単価の目安(通常賃金率=基本給÷26日÷8時間)約RM19.20約RM26.40。約37%上昇

ここでのEPFとSOCSOの増加は小さく、合わせて月RM56程度です。予測しづらく影響が大きいのは残業代です。料理人が定常的に有給の残業をする場合、その時間分の支払いは基本給の上昇率と同じ割合で増えます。所得税の源泉徴収も、住宅給付ではなく給与としての支払いが増える分だけ動きます(住宅給付の形にして課税を繰り延べている会社もあります)。だからといって組み替えをやめる理由にはなりません。2026年6月1日以降、下限は選べる話ではないからです。理由になるのは、自社の実際の人数と労働時間を、契約を結ぶ前に現地の会計事務所で試算してもらうことです。EPFとSOCSOの変化だけがすべてだと思い込まないでください。

5. 料理人が日本で用意する書類

書類ESDが求める理由
パスポート(顔写真ページ)基本の本人確認書類。申請するパスの期間に対して残存有効期間を確認します。
最終学歴の卒業証明書マレーシア採用のページにある、学位プラス3年、ディプロマプラス5年、技術証明書プラス7年という経験年数の基準に使います。
勤務先ごとの在職証明書(履歴書ではないもの)ESDは経験年数をこの証明書から数え、履歴書からは数えません。申請で使う年数分、過去の勤務先すべてから取得してください。
調理師免許(お持ちの場合)ESDの公表リストには載っていませんが、在職証明書と合わせて申請を補強します。日本の免許を「技術証明書またはこれに相当するもの」としてESDがどう評価するかは確認できていません。
証明写真申請の基本要件です。

候補者にはこちらを送ってください。

JA:マレーシアでの就労パス申請のため、次のものをお送りください。(1) パスポートの顔写真ページの鮮明なカラー画像(有効期限もご確認ください)、(2) 最終学歴の卒業証明書、(3) これまでの勤務先ごとの在職証明書(在籍期間が分かるもの、履歴書ではなく証明書でお願いします)、(4) 調理師免許をお持ちの場合はその写し、(5) 証明写真データ。

EN: For your Malaysia Employment Pass application, please send: (1) a clear colour image of your passport photo page (please check its expiry date); (2) your highest qualification certificate; (3) a dated employment certificate from each past employer showing the period you worked there (a certificate, not a CV); (4) a copy of your cook's licence if you hold one; (5) a passport-size photo.

6. 日本側の手続き、週単位で

週0はマレーシアでの最初の勤務日です。マレーシア側の日程(会社登録、労働局の手続き、EP申請そのもの)はマレーシア採用のページにまとめており、こちらは日本側で並行して進める内容です。

週日本側でやること
-12週上記の書類を候補者に依頼する。パスポートの有効期限を確認する。
-10週基本給と手当を分けてRM建てで明記した内定を書面で出す。料理人が現在の勤務先の規定に従って退職を伝えるのは、内定の時点ではなくVisa Approval Letterが出てからです。
-6週マレーシアでESDに申請する。審査の間、料理人は現職を続けます。
-4週承認とVisa Approval Letter(有効期間6か月)の発行。退職を伝えるのは内定通知ではなくこの時点です。
-3〜-2週1年以上日本を離れる場合は市区町村での転出手続き、国民年金の任意加入の検討、健康保険の整理を行います。海外で働く料理人の年金・健康保険と海外勤務者の税金をご覧ください。
0到着。KLIAまたはESDでパスの裏書とi-KADの手続き。

日本とマレーシアの間に社会保障協定はなく(日本年金機構によると2026年3月2日時点で24の協定が発効していますが、マレーシアは含まれません)、現地採用の料理人が公的年金を維持する方法は国民年金への任意加入のみです。日本の本社からの出向として送る場合の条件は海外出向契約書のガイドをご覧ください。

7. マレーシアの給与と日本の給与の比較

円換算はマレーシア国立銀行(BNM)の2026年9月25日時点の参考レート(100円=RM2.5663)から、RM1=約38.97円として計算しています。

項目金額円換算
日本:飲食物調理従事者のきまって支給する現金給与額、2025年6月(厚生労働省)月286,600円—
マレーシア:EPカテゴリーIIIの下限、2026年6月1日〜月RM5,000約194,800円
マレーシア:EPカテゴリーIIの下限、2026年6月1日〜月RM10,000約389,700円
マレーシア:クアラルンプールの平均賃金、全業種、2024年(DOSM)月RM4,782約186,300円

カテゴリーIIIの下限は、それだけで見ると日本の調理師の平均を下回ります。候補者はRM5,000を昇給とは受け取らず、生活費や税金、住居費を考える前の段階で、今もらっている給与のおよそ3分の2程度と読むでしょう。カテゴリーIIなら日本の平均を上回る余裕があります。カテゴリーIIIの下限で提示するなら、料理人が自分で確認できる材料、つまり生活費の低さ、住居の支援、カテゴリーIIIで新たに可能になった家族帯同を、あわせて示してください。他のアジア市場との比較は国別の寿司職人の給与のページにまとめています。パッケージ全体の設計は海外で働く料理人の給与設計、費用の全体像は海外での和食人材の採用コストをご覧ください。

8. 後継者育成計画:何を示すべきか

公式資料が示すのは「EPの在任期間中に現地従業員のスキルを高める」という目的だけで、様式は定められていません。1つの職位向けのそのまま使える書式はマレーシア採用のページにあります。複数のEP保持者を抱えるグループでは、ESDが実際にチェックするであろう単位、つまり会社全体の1つの文章ではなく、職位・店舗ごとに計画を組み立ててください。

カテゴリーIIIの通算上限は5年です。採用した日から、5年後にどのポジションを現地スタッフに任せるかを決めておいてください。方法は現地スタッフへの和食研修(英語)や日本の食文化人材育成事業も参考になります。

9. いま働いている料理人の扱い

シンガポールと比べると、マレーシアには点数制もレビーもありませんが、基本給の下限と年数上限で管理される仕組みになりました。シンガポールの詳細はシンガポールEP・S Passをご覧ください。

変わる数字:EPの給与カテゴリー(2026年6月1日施行、後継者育成計画は2027年1月1日から)、非市民向けEPF・SOCSOの料率、DOSMの賃金調査(毎年秋に発表)、円/リンギ相場(マレーシア国立銀行、2026年9月25日)。次回確認は2027年1月です。

よくある質問

更新がまだ先の料理人については何かする必要がありますか。

特にありません。既存のパスは期限まで元の条件のまま有効です。新方針が適用されるのは2026年6月1日以降に提出する更新申請からなので、それまでの期間を使って給与を組み替え、後継者育成の記録を始めてください。

手当を基本給に組み替える際、費用を勘に頼らず試算するにはどうすればよいですか。

手当の金額を総支給額を変えずに基本給へ組み入れ、新しい基本給を基準にEPF、SOCSO、料理人が残業をする場合は残業単価を再計算します。EPFとSOCSOの変化は通常小さく、残業代と源泉徴収のほうが大きく動くことがあります。最終的な数字は現地の会計事務所に確認してください。

複数のEP保持者がいる場合、後継者育成計画には具体的に何を書けばよいですか。

職位・店舗ごとの個別記録です。名前入りの後任候補、日付付きの段階別技能目標、研修方法、その都度の記録、担当者と確認の頻度を含みます。会社全体で1つの意思表明を書くだけでは足りません。

EPカテゴリーIIIのRM5,000の下限は、日本での給与と比べてどうですか。

マレーシア国立銀行の2026年9月25日のレートでは、RM5,000は約194,800円で、日本の飲食物調理従事者の平均月286,600円(厚生労働省2025年)を下回ります。RM10,000以上のカテゴリーIIならこれを上回ります。カテゴリーIIIの下限で提示する場合は、給与の数字だけでなくパッケージ全体を打ち出してください。

日本から派遣された料理人は、マレーシアで働いている間も日本の年金に加入し続けられますか。

国民年金への任意加入によってのみ可能です。日本とマレーシアの間に社会保障協定はないため、マレーシアでの拠出が日本の年金加入期間に代わったり通算されたりすることはありません。

本記事はマレーシア入国管理局、MOTAC、マレーシア国立銀行、日本年金機構が公表した資料を2026年9月27日時点で確認して作成した一般情報であり、法務・税務・入管に関する助言ではありません。運用の詳細は変更される可能性があり、EPF・SOCSO・残業代の計算は自社の実際の給与体系によって変わります。申請前にESD/MYXpatsと現地の会計士に確認してください。

出典

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