採用の進め方

海外店舗の現地スタッフ教育マニュアルの作り方

料理長の頭の中にある味と衛生の基準を文書にする方法。4層の構成、米英の食品安全ルールを踏まえた衛生の章、伝わる書き方、レシピ表のひな形、確認と更新のしくみを解説します。

最終更新 2026年9月22日 WashokuJob

目次

  1. なぜ「料理長の頭の中」を文書にするのか
  2. マニュアルの全体構成
  3. 法令に関わる部分を最初に固める
  4. 現地スタッフに伝わる書き方
  5. レシピ・仕込み表のひな形
  6. 段階と確認のしくみ
  7. 更新と管理

海外の和食店の味と衛生は、多くの場合、日本から来た料理長の頭の中にあります。その料理長が休めば店が回らず、辞めれば味が変わる。現地スタッフの教育マニュアルは、この状態から抜け出すための道具です。

この記事では、マニュアルそのものの「作り方」に絞って解説します。教育の期間や段階の組み方は現地スタッフの和食教育(英語)、寿司に特化した教育は現地スタッフ向け寿司教育プログラムで扱っています。

1. なぜ「料理長の頭の中」を文書にするのか

飲食業は人の入れ替わりが多い業種です。シンガポール人材省の統計では、2025年の飲食サービス業の月平均の離職率は2.2%で、全業種の1.2%を大きく上回りました。スタッフが入れ替わるたびに料理長が口頭で一から教えるやり方では、教える側がもちません。

マニュアルには、ほかにも役割があります。

2. マニュアルの全体構成

1冊にすべてを詰め込むと、誰も読みません。次の4層に分けると、更新も教育もしやすくなります。

内容誰が書くか更新の頻度
1. 衛生と安全手洗い、温度管理、アレルゲン、生魚の扱い、清掃、体調不良時の対応店長と料理長。現地の規則を確認して規則の改定時、年1回の見直し
2. 基本技術包丁の扱い、米の研ぎ方と炊き方、だしの取り方、魚の下処理料理長ほとんど変わらない
3. 店のレシピと仕込み1品ごとのレシピ、仕込み表、盛り付け写真料理長と担当者献立が変わるたび
4. 営業の流れ開店・閉店の手順、発注、ホールとの連携店長運用が変わるたび

第1層の衛生と安全は、店のある国・地域の規則で中身が決まります。料理長の経験だけで書かず、現地の公式資料を土台にしてください。以下は公式に確認できた例です。

米国

英国

第1層は、現地の検査で「書いてあるとおりにやっているか」を見られる部分です。書けることより、守れることを書いてください。国別の食品衛生の資格は国別の食品安全資格(英語)で扱います。

4. 現地スタッフに伝わる書き方

5. レシピ・仕込み表のひな形

品名:Chawanmushi(茶碗蒸し) 版:v3(2026年9月1日) 責任者:料理長 ○○
仕上がり量:10個 保存:卵液は冷蔵○℃以下で当日中
材料:卵 ○g/一番だし ○ml/薄口醤油 ○ml/みりん ○ml/塩 ○g/具(○○)
アレルゲン:卵、魚(だし)、小麦・大豆(醤油)
工程:1. 卵を溶き、だしと調味料を合わせる(泡立てない:写真1)2. 漉す(写真2)3. 器に具と卵液を入れる(1個○g)4. 蒸し器で○℃・○分(写真3)5. 中心の固まり具合を確認(写真4)
よくある失敗:すが立つ → 火が強い。温度を確認
盛り付け写真:(完成写真)

版と日付、責任者を必ず入れてください。古い版が厨房に残っていると、スタッフによって味が変わります。

6. 段階と確認のしくみ

マニュアルは読ませて終わりではありません。項目ごとに「説明を受けた」「料理長の前でできた」「一人で任せられる」の3段階で記録し、料理長か店長がサインする形にすると、誰が何をできるかが一目でわかります。

外部の目安として、農林水産省の「海外における日本料理の調理技能認定制度」があります。2024年4月1日の改正以降、ブロンズは約10時間の講習と試験、シルバーはブロンズに加えて約150時間の講座、2年の実務経験、または農林水産省のコンテストでの入賞が条件です。店のマニュアルの第2層(基本技術)を、この制度の講習内容と照らし合わせて組み立てる方法もあります。制度の詳細は調理技能認定制度の解説をご覧ください。

7. 更新と管理

マニュアルづくりは、料理長にとって手間のかかる仕事です。営業の合間にやらせるのではなく、作成の時間を勤務時間として確保してください。それが、料理長が一人で店を背負い続ける状態から抜け出す近道です。

本記事は一般的な情報であり、食品衛生・法務に関する助言ではありません。食品安全の規則は国・州・地域によって異なり、改定もあります。マニュアルの衛生部分は、店のある地域の保健当局の最新の規則を確認して作成してください。

出典

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