海外出店|仕入れ・在庫

海外和食店の発注点:リードタイムと保存期限から在庫量を計算する

外食の食品廃棄の21%は保存中の傷み(WRAP)。Kura Sushi USAの週3回配送の開示も踏まえ、発注点・基準在庫・安全在庫の式を鮮魚・米・輸入冷凍品の仮定例で計算し、Food Codeの7日ルールなど保存期限による上限、まとめ買いの損得、棚卸し手順を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 在庫は「多すぎても少なすぎても」損をする
  2. 発注点と基準在庫の計算式
  3. 計算例:鮮魚・米・輸入冷凍品で比べる
  4. 保存期限が在庫の上限を決める
  5. 安全在庫の置き方:平均ではなく忙しい日を基準に
  6. まとめ買いの値引きは、廃棄と資金で相殺される
  7. 棚卸しと発注の週間スケジュール

海外の和食店の在庫管理は、日本の店よりも難しくなりがちです。日本食材の多くは輸入品で、届くまでに時間がかかり、入荷の頻度も限られます。欠品を恐れて多めに持てば、期限切れの廃棄と資金の寝かせが増え、少なく持てば看板メニューが出せなくなります。この記事では、英国食品基準庁(FSA)の在庫管理の手引き、英国WRAPの外食の食品ロス調査、米国FDAのFood Code、Kura Sushi USAの開示などを材料に、品目ごとの発注点を数字で決める方法を示します。計算例の数字はすべて説明用の仮のものです。

1. 在庫は「多すぎても少なすぎても」損をする

FSAの小規模飲食店向け手引き「Safer Food, Better Business」の在庫管理(Stock control)の手順は、メニューから食材ごとの必要量を見積もり、シフトごとに必要な在庫を計画し、発注の前に在庫を確認するよう求めています。その理由として「在庫を持ちすぎないことが、食品安全にとっても利益にとっても最善」と書いています。

持ちすぎの損失は、廃棄として表れます。英国の資源循環団体WRAPが2013年にまとめた外食・中食部門(ホスピタリティ・フードサービス)の調査では、この部門の店舗で出る食品廃棄の平均21%は保存中の傷み・期限切れ(spoilage)によるもので、45%が仕込み、34%が客の食べ残しでした。傷みによる廃棄は、発注量と在庫の回し方で減らせる部分です。

一方、大きなチェーンは在庫をどの程度持っているのでしょうか。Kura Sushi USAは、仕入れ先がおおむね週3回店舗に配送していると開示しており、貸借対照表の棚卸資産は2025年8月末で214.1万ドル、2024年8月末で221.9万ドルでした。配送の頻度を上げて、店の在庫を少なく保つ運用だと読み取れます。個店では、同じ頻度で配送してもらえるとは限らないため、品目ごとに発注の仕組みを決める必要があります。

2. 発注点と基準在庫の計算式

発注の方式は大きく2つあります。

方式いつ発注するかいくつ発注するか向く品目
発注点方式(定量発注)在庫が「発注点」を下回ったとき毎回決まった量(ケース単位など)常温の乾物・調味料、冷凍品など、使う量が安定し、いつでも注文できるもの
定期発注方式決まった曜日(配送日に合わせる)基準在庫-現在の在庫-発注済みで未着の量鮮魚、野菜、米など、配送日が決まっているもの

計算式は次のとおりです。

リードタイムは、発注してから店に届いて使える状態になるまでの日数です。輸入品は、卸の倉庫に在庫があれば短く、入荷待ちなら船便の到着まで延びます。卸に「通常時」と「入荷待ちのとき」の両方の日数を聞いておきます。

3. 計算例:鮮魚・米・輸入冷凍品で比べる

3つの品目で計算してみます。数字は仮のものです。

項目マグロの柵(冷蔵)米輸入の冷凍うなぎ
1日の平均使用量2kg20kg1.5kg
忙しい日の使用量3kg28kg2.5kg
方式定期発注(週3回配送)定期発注(週1回配送)発注点方式
発注間隔2〜3日(平均2.3日)7日―
リードタイム1日2日10日(卸の在庫切れ時は30日)
安全在庫(3-2)×1=1kg(28-20)×2=16kg(2.5-1.5)×10=10kg
発注点/基準在庫基準在庫:2×(2.3+1)+1=約7.6kg基準在庫:20×(7+2)+16=196kg発注点:1.5×10+10=25kg

冷凍うなぎの例で、卸が在庫切れで入荷まで30日かかる場合、発注点は1.5×30+(2.5-1.5)×30=75kgまで上がります。リードタイムが延びる品目ほど、持たなければならない在庫が増えることが分かります。入荷待ちが起きやすい品目は、卸から入荷予定の連絡を定期的にもらい、延びそうなときは早めに発注点を引き上げます(→仕入れ先との取り決め)。

4. 保存期限が在庫の上限を決める

計算式で出た量が、保存できる期間を超えていれば意味がありません。在庫の上限は「1日の使用量 × 品質と安全を保てる日数」です。制度や公的な目安が示す期間には、次のようなものがあります。

対象期間の定め・目安出典
店で仕込み、24時間を超えて冷蔵保存する、そのまま食べる要温度管理食品5℃以下で最長7日。仕込んだ日を1日目と数え、日付を表示するFDA Food Code 2022 3-501.17
店で調理・開封した、そのまま食べるリスクの高い食品メーカーの指示がなければ、合計3日まで(調理・開封日+2日)。安全に長く保存できる根拠があれば延長可FSA「Safer Food, Better Business」冷蔵保存
冷凍した食品凍結日を表示し、古いものから使うFSA「Safer Food, Better Business」在庫管理
精米した白米1か月くらいが目安農林水産省

米の例でいえば、1日20kgを使う店が精米後1か月を目安にするなら、手元に置くのは600kg程度までが上限です。先の計算例の基準在庫196kgはその範囲に収まっています。一方、仕込んだ合わせ酢やたれ、切り分けた刺身のように期限の短いものは、発注ではなく「仕込み量」で調整します。仕込み量の決め方も、同じ考え方で「1日の使用量 × 使える日数」を上限にします。温度の記録と日付表示の運用は温度記録の記事を参照してください。

5. 安全在庫の置き方:平均ではなく忙しい日を基準に

安全在庫は「平均より多く売れた日」と「届くのが遅れた日」に備えるためのものです。次の点に注意すると、多すぎず少なすぎない量に近づきます。

6. まとめ買いの値引きは、廃棄と資金で相殺される

輸入食材の卸からは「ケース単位で買えば安くなる」「月に一定額以上なら値引き」といった条件がよく提示されます。値引きが得かどうかは、増える在庫が期限内に使い切れるか、そして在庫に寝る資金をどう評価するかで決まります。

仮の数字で考えます。1日1.5kg使う冷凍うなぎを、通常は20kgずつ、kgあたり30ドルで買っているとします。卸から「100kgまとめて買えばkgあたり27ドル」と提案されたとき、値引き額は100kg×3ドル=300ドルです。一方、100kgを使い切るには約67日かかり、その間の在庫金額は平均で1,350ドル前後と、20kgずつ買う場合(平均300ドル前後)より約1,000ドル多くなります。冷凍庫の容量を占有し、長く置くほど品質の劣化や、停電・故障時に失う量も増えます。仮に100kgのうち5%が品質の問題で使えなくなれば、135ドル分が消え、値引きの半分近くが相殺されます。

判断の目安として、在庫が何日分あるかを表す「在庫日数」を月1回計算しておくと便利です。在庫日数=月末の在庫金額÷(その月の仕入れ額÷営業日数)で求められます。仮に月の仕入れが3万ドル、営業日が30日、月末在庫が9,000ドルなら、在庫日数は9日です。この数字が月ごとに増えていれば、発注点や基準在庫が実際の使用量に対して大きすぎる可能性があります。開業直後の資金繰りの見方は週次の資金確認の記事も参照してください。

7. 棚卸しと発注の週間スケジュール

FSAの手引きは、定期的に在庫を確認し、消費期限を過ぎた食品を捨て、先入れ先出しで古いものから使うこと、在庫確認を日誌に記録することを求めています。WRAPの報告書も、使いかけの原材料に札を付けるなど簡単な仕組みで、未開封品より先に使うよう促す方法を紹介しています。店の週間スケジュールの例は次のとおりです。

頻度作業
毎日(営業前)鮮魚・野菜・仕込み品の残量と期限の確認。仕込み量の決定
配送日の前日定期発注品の在庫を数え、基準在庫との差を発注
週1回米・調味料・冷凍品など主要品目の棚卸し。発注点を下回った品目の発注
月1回全品目の棚卸しと在庫金額の集計。使用量の実績から発注点・基準在庫を見直す

月末の棚卸し金額が分かれば、その月の実際の原価(期首在庫+仕入れ-期末在庫)を出せます。原価と売上の日々の追い方は日次ダッシュボードの記事、廃棄の記録の取り方は食品ロス管理の記事を参照してください。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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