海外出店|仕入れ・在庫

海外和食店の仕入れ先選び:日本食材卸・現地卸を価格と欠品対応で比べる

くら寿司USAが食材・飲料費の約9割を日本食材卸2社から仕入れる開示、FDA Food Codeの適法な供給元と生食用魚の書面、英国FSAの仕入れ先チェック、SFAの輸入許可料金をもとに、仕入れ先の型の比較、使える量あたりの価格比較、欠品時の取り決めと評価表を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. くら寿司USAの開示:食材・飲料費の約9割を日本食材卸2社から仕入れている
  2. 仕入れ先の4つの型と、それぞれの強み・弱み
  3. 最初に確かめる法令上の条件:正規の供給元と生食用魚の書面
  4. 見積もりは「届いて使える量あたり」で比べる
  5. 欠品と代替品の扱いを、取引開始前に文書で決める
  6. 取引を始めた後の評価表と見直しの頻度

海外で和食店を開くとき、仕入れ先の選び方は日本と大きく違います。醤油や米、海苔のような基本の食材でも、日本から輸入する日本食材卸、現地の一般卸、水産専門業者、自社輸入のどれを使うかで、価格も届く頻度も、欠品したときの対応も変わります。この記事では、米国の上場回転寿司チェーンの開示、米国FDAのFood Code、英国食品基準庁(FSA)の小規模事業者向け手引き、シンガポール食品庁(SFA)の公式ページを材料に、仕入れ先を比べるときの具体的な観点を整理します。

1. くら寿司USAの開示:食材・飲料費の約9割を日本食材卸2社から仕入れている

海外の和食チェーンが実際にどう仕入れているかを数字で確認できる資料として、米ナスダック上場のKura Sushi USAの年次報告書(Form 10-K、2025年8月期)があります。仕入れ先に関する記載は次のとおりです。

この開示から読み取れるのは、2025年8月末時点で米国22州とワシントンD.C.に79店を運営するチェーンでも、日本食材の調達は少数の専門卸に集中しているということです。専門卸に集中させれば、品揃えと配送の手間の面では効率的です。一方で、その卸が欠品したり値上げしたりすれば、代わりを探すのは簡単ではありません。個店や数店規模の出店であれば、なおさら選べる卸は限られます。仕入れ先を「安いところ」で選ぶのではなく、「止まったときにどうなるか」まで含めて選ぶ必要があるのはこのためです。

要点:味の決め手になる調味料(くら寿司USAの場合は米酢)は、代わりのきかない単独の供給元に依存しやすくなります。どの食材が単独供給になっているかを、開業前に一覧にしておきます。

2. 仕入れ先の4つの型と、それぞれの強み・弱み

海外の和食店が使う仕入れ先は、おおむね次の4つに分けられます。どれか1つに決めるのではなく、食材ごとに組み合わせるのが普通です。

型主に扱うもの強み弱み・確認点
日本食材の専門卸(輸入卸)醤油、味噌、米、海苔、乾物、冷凍水産物、日本酒日本の商品名で注文でき、品揃えが広い。輸入手続きと書類を卸が担う輸入品は為替と運賃で値段が動く。人気商品は入荷待ちになりやすい。最低発注額や配送曜日の制約
現地の一般卸(ブロードライン)野菜、肉、乳製品、油、包材、洗剤価格競争力があり、配送頻度が高いことが多い和食向けの規格(切り方、サイズ)に対応できるか。日本食材の品揃えは限られる
水産専門業者鮮魚、冷凍魚、貝類魚種・サイズ・処理の指定に応じやすい。相場を毎日聞ける生食用の凍結記録や貝のタグなど書類の出し方を確認。価格は日替わり
自社輸入店の看板になる特定の調味料・酒・食材他店にない商品を扱える。量が多ければ単価を下げられる輸入許可・通関・保管を自社で負う。1回の発注量が大きく在庫と資金が膨らむ

現地調達と輸入のどちらを選ぶかの総費用の比べ方は和食食材を現地調達するか輸入するかで扱っています。ここでは、どの型を使うにしても共通して確認すべき点を見ていきます。

価格の比較より前に、その仕入れ先から買ってよいかどうかを確認します。国ごとに言い方は違いますが、「法令を守っている供給元から買う」ことはどこでも求められます。

米国:Food Codeの「適法な供給元」と生食用魚の書面

米国の多くの州・郡が採用するFDA Food Code 2022は、3-201.11で食品は法令を順守した供給元から入手すること、3-201.14で魚は商業的かつ合法に漁獲されたものであることを求めています。寿司店にとって重要なのは生食用の魚の扱いで、3-201.11(D)は、寄生虫対策の凍結(3-402.11)を行う供給元から入手するか、店で凍結して記録を残すことを条件にしています。3-402.12(B)では、供給元が凍結した場合、所定の温度と時間で凍結したことを記した供給元の書面(written agreement or statement)で店の記録の代わりにできるとしています。つまり、水産業者を選ぶときには「この書面を出せるか」が選定条件になります。凍結の条件そのものは魚の仕入れ仕様の記事で詳しく扱います。

英国:FSA「Safer Food, Better Business」の仕入れ先チェック

FSAが小規模飲食店向けに出している「Safer Food, Better Business(SFBB)」の「Suppliers and contractors」の手順では、仕入れ先を選ぶときに次の点を確かめるよう書かれています。

同じ手順書は、何をいつ、誰から、どれだけ買ったかの記録を残すことを法的な要件とし、請求書と領収書をすべて保管するのが最も簡単な方法だとしています。知らない業者から売り込みがあったときは、地方自治体に登録済みの業者かを確認するよう注意しています。

シンガポール:生食用の魚と、自社輸入する場合の許可

SFAは、生で食べる魚(RTE raw fish)について、許可を受けた事業者から購入し、生食に適した(生食を意図した)ものであることを確かめるよう案内しています。また、店が自ら食品を輸入する場合は、SFAへの登録と輸入のための許可が必要です。SFAの料金表(2026年9月7日更新)では、食肉・魚介類の輸出入・積み替え許可は年84シンガポールドル、加工食品の輸入登録は無料、米の輸出入許可は1件50シンガポールドルです。専門卸から買う場合は卸がこれらを負いますが、特定の調味料だけ自社輸入する場合には、店側の手続きになります。

4. 見積もりは「届いて使える量あたり」で比べる

見積書の単価だけを並べると、判断を誤ります。比べるべきなのは、店に届き、下処理を終えて実際に皿に乗せられる量あたりの費用です。次の項目を同じ表に並べます。

仮の数字で比べてみます。サーモンのフィレを、A社はkgあたり24ドル、B社は22ドルで出しているとします。A社は皮と小骨を処理済みで、柵取り後に使える割合が85%、B社は未処理で、自店で処理すると使える割合が75%だとすると、使える量1kgあたりはA社が約28.2ドル(24÷0.85)、B社が約29.3ドル(22÷0.75)になり、見積単価の安いB社のほうが高くつきます。さらにB社は処理の人手がかかります。数字は説明のための仮のものですが、必ず自店で実測した歩留まりで計算し直してください。

5. 欠品と代替品の扱いを、取引開始前に文書で決める

海外の日本食材は、船便の遅れや産地の不作、輸出入の規制変更で入らなくなることがあります。欠品は避けられないものとして、起きたときの扱いを最初に決めておきます。FSAのSFBB「Stock control」の手順は、仕入れ先と配送条件について書面で取り決めておくことを勧め、原材料を代替品に替える場合にはアレルゲン情報が正しいか確認するよう求めています。取り決める内容は次のとおりです。

項目決めておく内容理由
欠品の連絡いつまでに、誰に、どの手段で知らせるか(例:配送前日の営業時間内に電話とメッセージ)当日の朝に知ると代わりを探せない
代替品の送付無断の代替を認めない。代替は品名・メーカー・規格を示し、店の了承を得てから醤油のブランドが変わるだけで原材料とアレルゲンが変わりうる
欠品分の請求届かなかった分は請求書から差し引くか、次回に相殺するか請求書と納品の差を月末にまとめて直すのは手間がかかる
不良品の返品温度逸脱・破損・期限切れの品を受け取らない場合の返品と返金の手順受け入れ拒否の判断を現場が迷わない(→検品の記事)
入荷見込みの共有入荷待ち商品の次回入荷予定を週1回知らせるメニューの一時変更や在庫の積み増しを判断できる

くら寿司USAが開示しているように、主要な仕入れ先を替えても同じ価格と品質が保証されるわけではありません。重要な食材ほど、2社目の仕入れ先を開業前から「少量でも実際に買って試す」形で確保しておくと、いざというときに切り替えられます。欠品が起きたときの店側の手順は欠品対策の記事でまとめています。

6. 取引を始めた後の評価表と見直しの頻度

仕入れ先は、取引を始めた後の実績で評価し直します。検品の記録と請求書を月ごとに集計すれば、次のような評価表が作れます。

評価項目測り方見直しのきっかけ(例)
納品率発注した品目数のうち、指定日に届いた品目数の割合主要品目で欠品が月に複数回
時間どおりの配送約束した時間帯に届いた回数の割合仕込み開始に間に合わない配送が続く
受け入れ拒否の件数温度逸脱、破損、期限の問題で返品した件数同じ理由の返品が繰り返される
請求の正確さ請求書の単価・数量の誤りの件数訂正の依頼が毎月発生する
価格の動き主要10品目の単価の前月比事前の通知なく値上げされる
書類の提出凍結証明、貝のタグ、アレルゲン情報、規格書がそろっているか求めても出てこない書類がある

FSAのSFBBは、問題が繰り返される場合の対応として、電話での連絡、書面での苦情、仕入れ先の変更、地方自治体への連絡の順を示しています。店としては、主要な仕入れ先とは四半期に一度、評価表をもとに話し合う場を持ち、年に一度は見積もりを取り直して他社と比べるのが現実的な頻度です。受け入れた食材の記録は、回収連絡への対応にも使います(→ロット管理の記事)。

仕入れ先の選定は、開業準備の中で後回しにされがちですが、料理長が決まったら早めに一緒に進めるのが安全です。現地の食材で日本と同じ味を出せるかは料理人の経験に左右されるため、採用の段階で海外の食材事情に慣れた人を探すことも選択肢になります(→日本人料理人の採用)。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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