海外出店|仕入れ・在庫

和食店の歩留まり計算:魚・米・だしの仕入れ価格を一皿原価に変える

FAOの魚種別データ(丸の魚に対しマグロ類の可食部58%、太平洋サケ類の皮なしフィレ50%など)と成分表の米210%・かつおだし86%を使い、サーモン1尾から握り1貫の原価までを仮定例で計算し、自店での歩留まりの実測手順と端材の原価への反映方法を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 仕入れ単価を「使える量あたりの単価」に直す
  2. 魚の歩留まりの目安:FAOの魚種別データ
  3. 米とだしの「増える」歩留まり
  4. 計算例:サーモン1尾から握り1貫の原価まで
  5. 自店の歩留まりを測る手順
  6. 端材をどう原価に反映するか
  7. 原価表を更新するタイミング

和食店の原価計算でいちばん誤差が出やすいのは、仕入れた重量と皿に乗る重量の差です。丸の魚を仕入れれば頭・骨・皮・内臓が落ち、柵を取れば端が出ます。逆に、米やだしは水を含んで重量が増えます。仕入れ価格をそのまま一皿の原価に使うと、魚料理の原価は低く見積もられ、利益が出ているはずなのに現金が残らない、という事態になります。この記事では、国連食糧農業機関(FAO)の魚種別歩留まりデータ、文部科学省の日本食品標準成分表、英国WRAPの調査を使って、仕入れ価格を一皿の原価に変える手順を示します。計算例の価格はすべて仮のものです。

1. 仕入れ単価を「使える量あたりの単価」に直す

基本の式は1つです。

たとえば、kgあたり20ドルで仕入れた魚の歩留まりが50%なら、使える身1kgの単価は40ドルです。仕入れ単価だけを見て「20ドルの魚」と考えると、原価を半分に見誤ることになります。歩留まりは処理の段階ごとに掛け合わせます。丸から三枚おろしで50%、三枚おろしから柵取りで85%なら、丸からの歩留まりは0.50×0.85=42.5%です。

2. 魚の歩留まりの目安:FAOの魚種別データ

FAOの水産技術報告第309号「Yield and nutritional value of the commercially more important fish species」(1989年)は、主要な魚種について、文献から集めた歩留まりの値と、その中から選んだ代表値をまとめています。和食店に関係する魚種の代表値は次のとおりです(いずれも丸の魚の重量に対する割合)。

魚種(FAOの分類)皮なしフィレ可食部全体FAOの注記
マグロ類(クロマグロ、ミナミマグロ、キハダ、メバチ、ビンナガ等)[30%]58%フィレの値は1件のみ。可食部は44.9〜69.0%の10件の平均で、ばらつきが大きい
太平洋サケ類(カラフトマス、シロザケ、ベニザケ等)[50%]62%フィレの値は文献上の1件のみ
ブリ類(ブリを含むSeriola属)[46%][53%]フィレは大きく異なる2件の平均で信頼性は高くないと注記。可食部はデータがなく、同じアジ科の魚の値から推定
イカ類―67%集めた文献値全体の平均(可食部は胴・足など)
タコ類―[79%]データが少ない暫定値
ホタテ類―貝柱のみ[6%]、生殖巣を含む[15%]殻付きの重量に対する値

角かっこの値は、FAO自身がデータの不足から暫定的・仮のものとしている値です。報告書は、同じ属の魚どうしは似ているが、属が違えば大きく異なることがあり、フィレの取り方は国によって習慣が違うため平均値は国ごとの差を隠す、と注意しています。つまりこれらは、見積もりを比べる段階での「桁の確認」に使う数字で、原価計算には自店で実測した値を使います。

要点:FAOの代表値では、丸の魚の可食部はマグロ類58%、太平洋サケ類62%など5〜6割程度です。丸で仕入れる見積もりとロインや柵で仕入れる見積もりは、単価を歩留まりで割り戻してから比べます。

仕入れの形態を選ぶときは、単価の比較に加えて次の点も見ます。丸で買えば鮮度を目で確かめやすく、あらや端材を料理に使えますが、処理の時間と技術、ごみの処理が必要です。ロインや柵で買えば歩留まりが読みやすく、人手も減りますが、単価は高く、切り口が空気に触れている分だけ日持ちは短くなりがちです。料理人の人数と技術、あら汁などの副産物を使うメニューがあるかで、どちらが得かは店ごとに変わります。

3. 米とだしの「増える」歩留まり

米とだしは、水を加えることで重量が変わります。文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」の調理方法の記録によると、次のとおりです。

米なら、炊き上がりのご飯1kg(寿司酢を合わせる前)に必要な生米は約476g(1,000÷2.1)です。生米がkgあたり4ドルなら、炊いたご飯1kgの米代は約1.9ドルになります(寿司酢の材料費は別に足します)。自店の炊飯器と加水量で、実際の重量変化率を測って置き換えてください(→米選びの記事)。

4. 計算例:サーモン1尾から握り1貫の原価まで

仮に、養殖サーモンを丸(内臓付き)でkgあたり12ドルで仕入れ、5kgの魚を1尾処理するとします。

段階重量その段階の歩留まり使える身1kgあたりの単価
仕入れ(丸)5.00kg―12.0ドル
三枚おろし・皮引き(皮なしフィレ)2.50kg50%(FAOの代表値と同じと仮定)24.0ドル
柵取り(腹骨・血合い・端を除く)2.10kg84%約28.6ドル

握り1貫のネタを15gとすると、ネタの原価は28.6ドル×0.015kg=約0.43ドルです。シャリを1貫あたり20gとすれば、米代は1.9ドル×0.02kg=約0.04ドル。わさび、醤油、寿司酢などを加えても、1貫の原価はネタで大部分が決まることが分かります。

もし丸の仕入れ単価12ドルのまま計算していたら、ネタの原価は0.18ドルとなり、実際の4割程度に見積もってしまいます。同じ魚を柵で仕入れる見積もり(たとえばkgあたり27ドル)が来た場合、自店で処理する28.6ドルと比べて、処理の人件費と端材の使い道まで含めて判断します。メニュー全体の利益の比べ方はメニュー採算の記事で扱っています。

5. 自店の歩留まりを測る手順

歩留まりは、魚のサイズ、季節の脂の乗り、仕入れ先の処理、料理人の包丁で変わります。次の手順で実測し、記録を積み上げます。

  1. 仕入れた状態で量る:受け入れ時の実測重量を使います。氷や水、箱の重さを含めないこと(→検品の記事)。
  2. 段階ごとに量る:下処理後、柵取り後、切り付け後の重量をその都度量ります。
  3. 落ちた部分も分けて量る:頭・骨・皮など使えないもの、あら汁やまかないに回すもの、捨てるものを分けて量ります。
  4. 最低3回測って平均を取る:1回だけの値は、その魚の個体差を拾っているだけかもしれません。
  5. 条件と一緒に記録する:仕入れ先、サイズ、処理した人、日付。仕入れ先を替えたとき、サイズの規格が変わったときは測り直します。
記録欄例
品目・規格・仕入れ先養殖サーモン、4〜5kg、A社
仕入れ重量・単価5.00kg、12.0ドル/kg
各段階の重量フィレ2.50kg、柵2.10kg
副産物の重量と使い道腹身・端0.25kg(まかない)、あら1.40kg(あら汁)
廃棄の重量皮・内臓など
処理時間・担当者25分、料理長

6. 端材をどう原価に反映するか

柵取りで出た端や腹身を、ねぎとろ、手巻き、まかない、あら汁に回すなら、それは廃棄ではありません。原価計算では、次のどちらかの方法を決めて一貫して使います。

WRAPが2013年にまとめた英国の外食・中食部門の調査では、店舗で出る食品廃棄のうち平均45%が仕込みの段階で発生していました。同調査は、仕込み中に出るもののうち、食べられない部分(骨や皮など)を「避けられない廃棄」、本来は食べられた部分を「避けられる廃棄」と区別しています。歩留まりの記録で「使い道のない端」が多い魚種や担当者が分かれば、切り方の指導やメニューへの組み込みで減らせます。廃棄を理由別に記録する方法は食品ロス管理の記事を参照してください。

7. 原価表を更新するタイミング

一皿の原価は、仕入れ価格と歩留まりの2つで動きます。見落とされやすいのは歩留まりの変化です。先のサーモンの例で、柵取りの歩留まりが84%から78%に下がると、使える身1kgあたりの単価は約28.6ドルから約30.8ドルになり、仕入れ価格が変わらなくても原価は約8%上がります。仕入れ価格が10%上がった場合とほぼ同じ影響です。

変化(サーモンの仮定例)使える身1kgあたり握り1貫(ネタ15g)の原価
基準(丸12ドル、歩留まり50%×84%)約28.6ドル約0.43ドル
仕入れ価格が10%上昇(丸13.2ドル)約31.4ドル約0.47ドル
柵取りの歩留まりが78%に低下約30.8ドル約0.46ドル
両方が同時に起きた場合約33.8ドル約0.51ドル

原価表は、次のときに更新するルールにしておきます。

理論と実際の差が大きい場合、原因は歩留まりの悪化、盛り付け量のばらつき、廃棄、記録されていないまかないのどれかであることが多く、歩留まりの記録と廃棄の記録を並べると原因を絞り込めます。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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