海外出店|仕入れ・在庫

海外鮨店の魚の仕入れ仕様:生食用途と凍結条件を仕様書で伝える

「sushi grade」は規格ではなく、Food Codeが求めるのは-20℃168時間等の凍結と供給元の書面の90日保管です。英国の-20℃24時間・-35℃15時間、シンガポールの淡水魚禁止、FDAのヒスタミン指標50ppmを比べ、仕様書の12項目と英語での伝え方を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 「寿司グレード」は規格ではない:規則が求めるのは凍結と書面
  2. 米国・英国・シンガポールの生食用魚のルールを比べる
  3. マグロ・カジキ類のヒスタミン:凍結でも加熱でも消えない
  4. 仕入れ仕様書に書く12項目
  5. 仕入れ先への伝え方:用途を先に書く
  6. 届いた魚が仕様どおりかを確かめる

海外で寿司や刺身を出す店にとって、魚の仕入れで最も大事なのは、その魚を「生で出す」ことを仕入れ先と共有することです。日本の市場では当たり前に通じる「刺身用」という言葉は、海外では規格として定義されておらず、仕入れ先によって意味が違います。この記事では、米国FDAのFood Code 2022と水産物の危害管理ガイダンス、英国食品基準庁(FSA)、シンガポール保健省・食品庁の公式情報をもとに、生食用途を仕入れ先に正確に伝えるための仕様書の作り方を示します。

1. 「寿司グレード」は規格ではない:規則が求めるのは凍結と書面

米国の店頭やネット通販では「sushi grade」「sashimi grade」という表示を見かけますが、米国の多くの州・郡が採用するFDA Food Code 2022の条文には、この言葉は出てきません。Food Codeが生食用の魚に求めているのは、寄生虫を殺すための凍結と、その記録です。

Food Codeの解説(Annex 3)は、目視や透かし(キャンドリング)による検査では、凍結していない魚の寄生虫リスクを避けるには不十分だと述べています。見た目がきれいかどうかではなく、凍結の条件を満たしているかどうかと、それを示す書面があるかどうかが判断基準です。凍結記録の保管については温度記録の記事、ロットのたどり方はロット管理の記事も参照してください。

2. 米国・英国・シンガポールの生食用魚のルールを比べる

国・地域凍結の条件主な適用除外書類・仕入れの条件
米国(FDA Food Code 2022を採用する州・郡)-20℃で168時間、-35℃で固化後15時間、または-35℃で固化後-20℃で24時間指定のマグロ類、条件を満たす養殖魚、二枚貝、貝柱、洗った魚卵店の凍結記録または供給元の書面を提供後90日保管
英国(イングランド、ウェールズ、北アイルランド)全体を-20℃で24時間以上、または-35℃で15時間以上一定の方法で養殖した大西洋サケ、オヒョウ、ニジマスなど。天然魚の適用除外は現在なし凍結した事業者は最終消費者以外への販売時に凍結処理の情報を提供。誰が凍結義務を負うかは取引の取り決めで定められる
シンガポール公式情報では凍結条件の明示を確認できず―2015年12月5日から、淡水魚を生食用料理に使うことを禁止。生食用の魚は許可を受けた事業者から買い、生食に適したものか確認し、0〜4℃で保管するよう案内(消費者向けの注意)

英国FSAの「Freezing fish, fishery products and treatment for parasites」は、寿司と刺身を名指しで凍結処理の対象に挙げ、凍結は食品供給の流れの中で最も適切な時点で行えばよく、仕入れ先と買い手の取引上の取り決めで、どちらが凍結の義務を負うかを定められるとしています。つまり、仕様書に「誰が凍結するか」を書くことそのものが、規則の想定する手順です。適用除外の養殖魚を凍結せずに使う場合も、適用除外の条件を満たすことを商業書類で示す必要があります。

シンガポールでは、国家環境庁(NEA)、農畜産・獣医庁(AVA)、保健省が2015年12月5日、B群レンサ球菌(GBS)の感染者増加を受けた調査の後、飲食店を含む小売飲食事業者が淡水魚を生食用料理に使うことを直ちに禁止すると発表しました。生食用料理には、生食を意図した海水魚だけを使うこととされ、その魚は比較的きれいな海域で育成・漁獲され、適切なコールドチェーンで保管・流通し、加熱用の魚と分けて扱う必要があると説明しています。

3. マグロ・カジキ類のヒスタミン:凍結でも加熱でも消えない

寄生虫とは別に、赤身魚ではヒスタミンによる食中毒(スコンブロイド中毒)に注意が必要です。FDAの「Fish and Fishery Products Hazards and Controls Guidance」第7章は次のように説明しています。

寄生虫対策の凍結はヒスタミンを減らしません。漁獲から店に届くまでの温度管理が悪ければ、凍結品でも問題は残ります。マグロやカジキを仕入れるときは、凍結の書面に加えて、漁獲後の冷却と輸送温度の管理について仕入れ先に確認します。

4. 仕入れ仕様書に書く12項目

ここまでの規則を踏まえ、仕入れ仕様書(buyer specification)には次の項目を書きます。魚種ごとに1枚ずつ作り、仕入れ先と双方で保管します。

項目書く内容の例理由
1. 用途「生食用(寿司・刺身)として加熱せずに提供する」用途で凍結の要否と扱いが変わる
2. 魚種一般名と学名(例:Thunnus obesus)Food Codeのマグロ類の適用除外は種で決まる
3. 天然・養殖と産地漁獲海域または養殖場の国・地域養殖の適用除外、輸入規制の確認に必要
4. 養殖の条件配合飼料のみで育てたことを示す書面の有無凍結なしで使う根拠になる
5. 凍結の担当と条件仕入れ先が凍結する場合の温度・時間。書面の提出店の凍結記録の代わりになる
6. 形態ラウンド、セミドレス、ロイン、柵。皮・血合い・骨の有無歩留まりと価格の比較の前提(→歩留まり計算)
7. サイズと重量1尾または1本あたりの重量の範囲1貫あたりの原価と切り方が決まる
8. 包装真空包装か。ラベルに「解凍まで冷凍保存」の表示があるか表示付きの真空包装魚は、冷蔵解凍の前に包装から出す必要がある(Food Code 3-501.13(E))
9. 納品温度冷蔵品は氷で囲むか中心4.4℃以下、冷凍品は凍結状態ヒスタミンと微生物の管理
10. 表示と書類品名、ロット、漁獲日または凍結日、凍結証明、請求書の記載記録保管と回収対応
11. 品質の基準色、身の締まり、脂、寄生虫の目視基準受け入れ・返品の判断をそろえる
12. 規格外の扱い返品、値引き、代替品の条件欠品時に無断の代替を防ぐ

5. 仕入れ先への伝え方:用途を先に書く

海外の水産業者に「sushi grade」とだけ伝えると、業者ごとの社内基準で解釈されます。用途と条件を具体的に書くほうが確実です。英語で伝える場合の書き方の例を挙げます(法的な文言ではなく、仕様を明確にするための例です)。

日本から冷凍で輸入する魚の場合は、輸出側の加工施設の認定と証明書も関わります。たとえばEU向けの水産物は、日本の所轄当局からEU基準を満たすと認定された施設で加工し、政府発行の衛生証明書を付ける必要があるとジェトロが解説しています。日本の業者から直接買う場合は、出店国向けの書類を出せるかを最初に確認します。

6. 届いた魚が仕様どおりかを確かめる

仕様書を作っても、届いた魚を確かめなければ意味がありません。受け入れ時には、仕様書の項目のうち少なくとも次の点を毎回確認します。

  1. 魚種・形態・重量が発注どおりか(重量は必ず量る)。
  2. 冷蔵品は氷で覆われているか、プローブ温度計で中心温度を測る。冷凍品は硬く凍っているか、解凍・再凍結の跡(霜の塊、ドリップの凍結)がないか。
  3. 凍結の書面(または養殖の書面)がそのロットについて届いているか。
  4. ラベルのロット番号を受入記録に書き写す。

書面が届いていない生食用の魚は、書面が届くまで生食に使わない、あるいは加熱料理に回す、という扱いを事前に決めておきます。受け入れ全体の手順と判断表は検品の記事にまとめています。寿司店の立ち上げ全体は寿司カウンターの記事も参照してください。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

料理人の採用でお困りですか

WashokuJobは海外の和食店専門の求人サイトです。掲載中の求人は世界各国の日本食レストランから集まっています。掲載のご相談はお問い合わせフォームからどうぞ。

和食料理人を採用しませんか?

世界中の和食料理人が登録するWashokuJobに、貴店の求人を掲載できます。