海外出店|仕入れ・在庫

海外和食店の欠品対策:看板商品を守る3段階の代替計画

2025年の国内米価67.2%上昇、ホタテ加工品輸出の33.2%減、ウナギのワシントン条約提案(否決)、香港の10都県水産物停止など最近の供給変動を確認し、看板商品の食材分解、仕入れ先・食材・メニューの3段階の代替、アレルゲンや凍結証明の確認、欠品当日の手順と計画シートを示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 和食の食材で最近起きた供給の変動
  2. 看板商品を食材に分解し、止まりやすい所を探す
  3. 代替の3段階:別の仕入れ先、別の食材、メニューの変更
  4. 代替品を使う前に確かめる4つの条件
  5. 欠品が起きた日の動き方
  6. 値上がりへの備え:どの食材の値上がりが効くかを先に計算する
  7. 代替計画シートの例

海外の和食店では、看板商品に使う食材が入らなくなることを前提に計画を立てる必要があります。日本からの輸入品は、日本国内の作柄や漁獲、輸出入の規制、船便の遅れの影響を受け、現地の卸が1社しか扱っていない食材も少なくありません。この記事では、日本の統計と行政の公表資料で最近の供給の変動を確認したうえで、看板商品を守るための代替計画の作り方を示します。

1. 和食の食材で最近起きた供給の変動

過去2年ほどの間に、公的な資料で確認できるだけでも次のような変動がありました。

食材起きたこと出典
米2025年平均の消費者物価指数で「うるち米(コシヒカリを除く)」が前年比67.2%上昇。2025年12月も前年同月比34.3%上昇総務省統計局
ホタテの加工品2025年のホタテ貝加工品の輸出が前年比33.2%減(59億円減)。香港向けの干し貝柱やボイルほたてに回るホタテの不漁などが理由とされる農林水産省
ウナギ2025年11月24日〜12月5日のワシントン条約第20回締約国会議で、EUによるウナギ属全種の附属書II掲載提案が、11月27日の第1委員会で賛成35・反対100で否決され、12月4日の全体会合で否決が正式に決定水産庁
水産物・海藻(香港・マカオなど)香港はALPS処理水の海洋放出後、10都県の水産物・海塩・海藻の輸入を停止。2025年11月21日時点で、原発事故後の輸入規制を続ける国・地域は5つ農林水産省

これらはいずれも、店の努力では防げない変動です。日本国内の価格高騰は輸出向けの仕入れ値に波及しうるほか、不漁は加工品の供給量を減らし、規制は特定の国への輸入そのものを止めます。海外の店にとっては、「いつ起きるか」ではなく「起きたときに何日持ちこたえ、何に切り替えるか」を決めておくことが現実的な対策です。

ウナギの提案は否決されましたが、取引規制が議論の対象になったこと自体が、特定の食材に依存するリスクを示しています。また、米国のKura Sushi USAは年次報告書で、主要な仕入れ先から調達できなくなった場合に別の供給元に切り替えるつもりだが、同じ価格と品質で供給を受けられる保証はないと開示しています。上場チェーンでも、代わりが同等になる保証はないということです。

2. 看板商品を食材に分解し、止まりやすい所を探す

最初の作業は、売上の上位の料理と、店の看板になっている料理を、使っている食材に分解することです。そのうえで、食材ごとに次の4つを書き出します。

このうち「仕入れ先が1社しかない」「リードタイムが長い」「客から見た影響が大きい」が重なる食材が、代替計画を最優先で作る対象です。Kura Sushi USAが米酢をレシピを持つ親会社のくら寿司(日本)から単独で調達していると開示しているように、店の味を決める調味料は単独の供給元になりやすい食材の典型です。

3. 代替の3段階:別の仕入れ先、別の食材、メニューの変更

代替は、客への影響が小さい順に3段階で用意します。

段階内容例事前に準備すること
第1段階:同じ食材を別の仕入れ先から品名・規格が同じものを2社目から買う同じ銘柄の米を別の卸から2社目の口座開設、少量の試し買い、価格の確認
第2段階:似た食材に替える産地・品種・ブランドが違う同等品を使う日本産米から現地産の日本品種へ。日本製の醤油から現地製へ試食で合格を出した代替品、調整後のレシピ(加水量、配合)
第3段階:メニューを変える料理そのものを一時休止するか、別の料理に置き換えるうな重を休止し、別の丼を出す置き換えの料理の原価と売価、メニュー表示とPOSの変更手順

第2段階の代替品は、欠品が起きてから探すのでは間に合いません。開業前の試作の段階で、看板商品ごとに少なくとも1つの代替品で実際に作り、料理長が合格を出したレシピを残しておきます。米の代替の準備は米選びの記事、調味料の規格での指定はだし・調味料の記事で扱っています。

4. 代替品を使う前に確かめる4つの条件

  1. アレルゲンと原材料:英国食品基準庁(FSA)の小規模事業者向け手引き「Safer Food, Better Business」は、原材料を代替品に替える場合にアレルゲン情報が正しいか確認するよう求めています。醤油のブランドを替えるだけで原材料が変わることがあるため、アレルゲン表も同時に直します(→アレルゲン表の記事)。
  2. 生食用の魚の書類:魚を別の仕入れ先や魚種に替える場合、米国のFood Codeを採用している地域では、店で凍結して記録を残すのでなければ、寄生虫対策の凍結を供給元が行ったことを示す書面(3-402.12)を新しい仕入れ先からも受け取る必要があります(→魚の仕入れ仕様)。
  3. メニューの表記:「日本産」「○○県産」のように産地や品種をメニューに書いている場合、代替品に替えたら表記も替えます。農林水産省の「日本産食材サポーター店」のガイドラインは、認定の要件に日本産食材を使った料理を常に提供し、メニューに日本産である旨を表示することを挙げています。認定を受けている店は特に注意が必要です。
  4. 原価と売価:代替品の価格で1皿の原価を計算し直し、決めておいた利益の下限を割るなら、売価を変えるか第3段階に進みます(→歩留まり計算)。

5. 欠品が起きた日の動き方

欠品は、仕入れ先からの連絡か、自店の在庫が安全在庫を割ったことで分かります。気づいてからの動きを、あらかじめ決めておきます。

要点:欠品そのものより、客が注文した後に「今日はありません」と伝えることのほうが評価を下げます。営業前に品切れを決め、メニューと接客に反映させることが大切です。

6. 値上がりへの備え:どの食材の値上がりが効くかを先に計算する

供給の変動は、欠品だけでなく急な値上がりとしても表れます。値上がりに対しては、どの食材がどれだけ上がると、どの料理の利益がどれだけ減るかを先に計算しておくと、慌てずに判断できます。

仮の数字で比べます。定食(売価18ドル、食材原価5.4ドル、原価率30%)に使う米が1人前0.29ドルだとして、米の仕入れ価格が67%上がると、米代は約0.48ドルになり、原価率は約31.1%に上がります。一方、にぎりの盛り合わせ(売価40ドル、食材原価12ドル)のうちマグロが4ドルを占める場合、マグロが20%上がるだけで原価は0.8ドル増え、原価率は30%から32%に上がります。値上がり率が大きい食材が、必ずしも利益への影響が大きいとは限りません。

料理(仮定例)値上がりする食材値上がり率1皿の原価の増加原価率の変化
定食(18ドル)米(0.29ドル)+67%約+0.19ドル30.0%→約31.1%
にぎり盛り合わせ(40ドル)マグロ(4ドル)+20%+0.80ドル30.0%→32.0%

この計算を主要な料理について作っておき、「原価率が何ポイント上がったら売価を見直すか」「どこまでなら据え置くか」を決めておきます。判断の基準は、料理ごとの利益額で考えると整理しやすくなります(→メニュー採算の記事)。為替による輸入品の値上がりは為替リスクの記事で扱っています。

7. 代替計画シートの例

看板商品ごとに、次のようなシートを1枚作っておきます(内容は例です)。

項目記入例:特上にぎり
止まると困る食材本マグロ(冷凍)、日本産米、米酢、海苔
現在の仕入れ先と2社目本マグロ:A社(2社目:B社、口座開設済み)/米:C社(2社目:D社)
第2段階の代替本マグロ→メバチ(価格差と表示変更を確認済み)/日本産米→米国産の日本品種(加水量を記録済み)
第3段階の置き換え「上にぎり」に置き換え、売価を変更
切り替えの基準在庫が3日分を切り、次回入荷が5日以上先のとき
確認することアレルゲン表、メニュー表記、凍結証明、原価
判断する人料理長(不在時は店長)
最終見直し日四半期ごと

シートは四半期に一度見直し、仕入れ先の状況や価格が変わっていないかを確認します。仕入れ先との欠品時の取り決めは仕入れ先選びの記事で扱っています。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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