海外出店|仕入れ・在庫

海外和食店のだし・調味料調達:醤油の等級、みりん、かつお節の規制で味をそろえる

醤油のJAS等級(こいくち特級は全窒素分1.50%以上)、本みりんが酒税法上の酒類である点、成分表のだしの取り方(削り節3%で86%)と原価計算、EUのかつお節ベンゾピレン5.0μg/kgや混合食品規制、香港の海藻輸入停止を踏まえ、調味料台帳と変更記録の作り方を示します。

最終更新 2026年9月27日 WashokuJob

目次

  1. 味の土台は、ブランドではなく規格で指定する
  2. 醤油:JASの等級と全窒素分で比べる
  3. みりん:本みりんは日本の法律上「酒類」
  4. だし:成分表の取り方を基準レシピにする
  5. かつお節と昆布に関わる輸入規制:EUと香港
  6. 味と原材料をそろえ続けるための記録

海外の和食店で「日本と同じ味が出ない」原因として多いのが、醤油、みりん、酢、だしといった味の土台のぶれです。同じブランドの醤油でも製造国が違うことがあり、だしの原料は国によって輸入できないことがあります。この記事では、日本農林規格(JAS)、国税庁の酒類の定義、文部科学省の食品成分表、EU規則、農林水産省の輸出統計と輸入規制の資料をもとに、調味料とだしの調達で「味」と「原材料」をそろえる方法を整理します。

1. 味の土台は、ブランドではなく規格で指定する

農林水産省の輸出統計では、2025年の醤油の輸出は134.9億円(59,778トン)で、最大の輸出先は米国(21.0億円)でした。味噌は71.4億円、カレー調製品やドレッシング、酢などを合わせた「ソース混合調味料」は721億円です。一方で、キッコーマンは米国、シンガポール、オランダ、中国などに醤油工場を持っており(詳しくは現地調達と輸入の比較)、海外の店頭には日本製と現地製が並んでいます。

また、店の味を決める調味料は、代わりが利かないことがあります。米国のKura Sushi USAは年次報告書(2025年8月期)で、米酢はレシピを持つ親会社のくら寿司(日本)が唯一の供給元だと開示しています。チェーンでも個店でも、「この調味料でなければこの味にならない」ものは、供給が止まったときの影響が大きくなります。

そこで、調味料は「○○社の醤油」というブランド名だけでなく、種類・等級・製造方式・原材料といった規格で指定しておきます。規格で指定しておけば、欠品時に代わりを探すときも、何が同等なのかを判断できます。調味料ごとに、最低限次の項目を仕入れ先から取り寄せて台帳に残します。

調味料指定・確認する項目代わりを探すときの見方
醤油種類(こいくち・うすくち等)、JAS等級、製造方式、製造国、原材料同じ種類・等級で、塩分と全窒素分が近いもの
味噌米・麦・豆の別、色(白・赤・淡色)、塩分、製造国原料の種類と塩分をそろえる
酢米酢・穀物酢の別、酸度、原材料酸度が違えば寿司酢の配合を直す
みりん本みりんか、みりん風調味料か、アルコール分区分が変わると配合と扱いが変わる
だし原料かつお節の種類(荒節・本枯れ節)と削り方、昆布の種類と産地、だしの素の原材料産地が出店国の規制対象でないか

2. 醤油:JASの等級と全窒素分で比べる

日本製の醤油であれば、JAS(日本農林規格)の表示が比較の手がかりになります。「しょうゆの日本農林規格」は、醤油をこいくち、うすくち、たまり、さいしこみ、しろの5種類に分け、こいくちしょうゆについて次の基準を定めています。

等級製造方式全窒素分無塩可溶性固形分
特級本醸造方式であること1.50%以上16%以上
上級定めなし1.35%以上14%以上
標準定めなし1.20%以上定めなし

全窒素分はうま味の元になるアミノ酸などの量の目安です。刺身や寿司に付ける醤油と、煮物や照り焼きのたれに使う醤油で、等級を分けるのも一つの方法です。現地製の醤油でJASの表示がない場合は、仕入れ先に規格書を求め、塩分と全窒素分、原材料を確認します。

原材料にも注意が必要です。同じJASの定義で、たまりしょうゆは「大豆若しくは大豆に少量の麦を加えたもの」などを原料とするとされており、たまりだから小麦を含まないとは限りません。小麦を避けたい客への対応は、商品ごとの原材料表示で判断します(→アレルゲン表の記事)。

3. みりん:本みりんは日本の法律上「酒類」

国税庁の資料によると、日本の酒税法では「みりん」は混成酒類の一つで、米・米こうじに焼酎またはアルコールを加えてこしたもので、アルコール分が15度未満、エキス分が40度以上などのものと定義されています。つまり本みりんは、日本の法律上は調味料ではなく酒類です。

このため、海外で本みりんを扱う場合は、その国で酒類として輸入・販売・保管の規制を受けるかどうかを確認する必要があります。規制の内容は国や州で異なるため、仕入れ先の日本食材卸に、その国で本みりんをどの区分で扱っているかを聞くのが早道です。アルコールを含まない「みりん風調味料」を使う場合は、甘みと照りの出方が違うため、たれの配合を別に決めておきます。卸の商品一覧では両者が似た名前で並ぶことがあるため、台帳には「本みりん(酒類)」「みりん風調味料」のように区分まで書き、発注や代替のときに取り違えないようにします。

4. だし:成分表の取り方を基準レシピにする

だしは店ごとに取り方が違いますが、配合と歩留まりを記録しないと、原価も味も安定しません。文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)」は、分析に使っただしの取り方を次のように記録しています。

だし取り方(成分表の方法)得られた量(水に対して)
かつおだし(荒節・本枯れ節)沸騰した水1Lに対し3%の削り節を加え、弱火で1分加熱して火を止め、こす86%
昆布だし(水出し)水1Lに3%の昆布を加え約60分置いてこす88%
昆布だし(煮出し)水1Lに3%の真昆布を加え、沸騰後に水700mLを4回に分けて足しながら2時間加熱35%(全使用水量に対して)
かつお・昆布だし3%のかつおだしと3%の昆布だしを2対1で混合(かつお節2%と真昆布1%でとっただしに相当)―

この表を基準にすると、原価を計算できます。仮に、水10Lに削り節300gでかつおだしを取ると、得られるだしは約8.6Lです。削り節が1kgあたり40ドルなら材料費は12ドルで、だし1Lあたり約1.4ドル、汁物1杯150mLあたり約0.21ドルになります(価格は仮の数字)。店の配合が成分表と違っていても、「水の量、原料の量、得られた量」を毎回記録すれば、同じ計算ができます。仕込み表には、少なくとも次の5つを毎回書く欄を設けます。

得られた量が普段より大きく少ない日は、原料の吸水や火加減が変わった合図です。歩留まりの考え方は歩留まり計算の記事で詳しく扱います。

5. かつお節と昆布に関わる輸入規制:EUと香港

だしの原料は、国によって輸入の条件が厳しくなります。

EU:かつお節の多環芳香族炭化水素と、動物性原料の施設認定

EUの汚染物質の最大基準値を定める規則(EU)2023/915は、かつお節(dried bonito, Katsuwonus pelamis)について、ベンゾ[a]ピレンを5.0μg/kg、4種類の多環芳香族炭化水素の合計を30.0μg/kgまでとしています。燻して作るかつお節では、この基準を満たす製品を選ぶ必要があります。

さらにジェトロの解説によると、EU向けの水産物は、EU基準を満たすと日本の所轄当局に認定された施設で加工し、政府発行の衛生証明書を付ける必要があります。動物性の加工原料と植物性原料を両方含む「混合食品」(たとえば魚の成分と昆布や調味料を合わせただしの素)は2021年4月21日から新しい公的管理制度の対象で、含まれる動物性の加工原料はEU向け輸出認定施設などに由来しなければなりません。一方、植物由来の食品添加物を加えただけのかつお節は、混合食品ではなく水産の加工食品に分類されることがある、とされています。欧州で出店する場合は、日本で使っていただしの素がそのまま使えるとは考えず、EUで流通している商品の中から選ぶことになります。

香港:海藻と水産物の産地

農林水産省の整理(2025年11月21日時点)では、香港はALPS処理水の海洋放出に伴い、福島、宮城、東京など10都県の水産物、海塩、海藻(加工品を含む)の輸入を停止しています。昆布、海苔、煮干しなどの産地が対象の都県でないかを、仕入れ先の書類で確認します。

6. 味と原材料をそろえ続けるための記録

調味料とだしは、仕入れ先やロットが変わると味が動きます。次の3つを記録しておくと、ぶれに気づけます。

  1. 調味料の台帳:品名、メーカー、製造国、JASの種類・等級(ある場合)、原材料、アレルゲン、仕入れ先、代替品の候補。
  2. 基準レシピ:だし、たれ、合わせ酢ごとに、材料の重量、手順、仕上がり量。塩分計や糖度計があれば、仕上がりの数値も書いておきます。
  3. 変更の記録:調味料のブランドや製造国を変えたとき、いつ、何を、なぜ変えたか。試食の結果と、アレルゲン表を直したかどうか。

英国食品基準庁(FSA)の小規模事業者向け手引き「Safer Food, Better Business」は、原材料を代替品に替える場合はアレルゲン情報が正しいか確認するよう求めています。醤油やだしの素は多くの料理に使われるため、1つの変更が多数のメニューのアレルゲン表示に影響します。変更の記録とアレルゲン表の更新を同じ手順にしておくと、漏れを防げます。欠品時の切り替え手順は欠品対策の記事にまとめています。

2026年9月に公開情報をもとにまとめた一般的な情報であり、法務・税務・入国管理に関する助言ではありません。制度や金額は変わるため、行動する前にリンク先でご確認ください。

出典

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